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第330話 悪戯の森

 あれから1週間が経過した。この辺りはモンスターも多く、道も荒れているのでなかなか思うように進まない。それでも定期的に道中の村に立ち寄りながら休み休み進んでいるので疲労感だけはなく進めている。


 こんな旅をするのが初めてなエーラとエリーが、環境が変わったことによるストレスと疲労で倒れないように注意しながら進んでいる。そんな注意した甲斐あって二人は元気そうだ。しかしそれとは関係のない問題が発生した。


『ポチ・うぇ…ここ橋落ちてる。随分前から落ちているみたい。橋作るのも時間かかるし、迂回して橋探そうか。』


「そうだな。どっちに橋があるかわからないし右と左で別れるか。」


 その後左右に分かれて1時間ほど移動したところで再び落ちた橋の元に集まった。結果としてはこの先につながる橋は一つも残っていない。しかし目的地はこの先だ。右に行っても左に行っても遠回りすることになる。


「簡易的な橋をかけて人だけ渡った後に魔動装甲車は俺のスマホに収納してから運ぼう。それが一番楽だろ?ただ橋は丈夫なのにしてくれよ。ここの崖は落ちたら即死だ。」


 この崖は幅30m、高さは100m以上ありそうだ。同行している騎士の中に数人、この崖を魔法で飛び越えられる者がいたので彼らと協力し橋をかける。この崖を飛び越えられるものがもっと数多ければ彼らに運んでもらう手もあるのだが、人数的に難しい。


 それに橋は案外すぐにかけ終わった。ものの1時間程度だ。こんなもので橋がかかるのならば最初から橋を作ればよかった。対荷重の問題もあり、一度に大勢は渡れないが全員渡りきるのも30分ちょっとだ。


「これで全員渡ったな。それじゃあ行こうか。」


「いえ、少々お待ちください。この橋を片付けた方が良いかと。橋があればモンスターも渡ることができます。この橋ができたことでモンスターの分布に影響が出るやもしれません。」


 確かに橋ができたことでそういった弊害が起こる可能性がある。それにこの辺りはまともな街道はない。あくまでミチナガたちが最短距離で行くために来ているだけだ。ここに橋があったところで他に使うものなどそうそういないだろう。


 この橋を使うのはモンスターくらいなもの。つまりここに橋があることで有益になることはない。有害にしかならないのであれば橋は撤去するのが正しい。すぐに橋を撤去すると再び移動を始める。


 しかし移動は実に難航した。この辺りは人の手がまるで入っていないようで魔動装甲車に乗って移動することができない。鬱蒼とした木々の隙間を縫って走ることができないのだ。


 そこで小型の魔動戦車に乗り込む。使い魔たちが魔道砲を放つためだけに作られたこれならば一台に一人しか乗れないが、この森の中を移動することが可能だ。


 迷いそうな森のため、ミチナガがマップを確認しながら方角を定めて一直線に進んで行く。しかし進んで行くのだが、妙にぐるぐると回っているように思える。ただスマホのマップアプリを確認する限りちゃんと一直線に進んでいる。


「やっぱこれだけ鬱蒼とした森だとどこ進んでいるかわからなくなるな。あ、もう少し右の方向ね。」


『ポチ・…それにしてはおかしいよ。妙にぐるぐる進んでる。ちょっと他の使い魔に先行させよう。ちょうど良い奴もいるしね。』


 そういうとポチの指名を受けてスマホから使い魔が出て来た。その使い魔は妙に落ち着きのない使い魔だ。今もぐるぐると走り回っている。この使い魔は使い魔を増産している際に手に入れたスーパーレアの使い魔だ。


「よおダッシュ。このままここを真っ直ぐ走っていってくれ。」


『ダッシュ・いいの?いいの?思いっきり走っていいの?』


「ああいいぞ。魔力使って全速でいってこい。」


『ダッシュ・やっほう!それじゃあ全速力でいってくる!』


 そういうとダッシュは一直線に走っていった。使い魔のダッシュ。能力は速力100倍、魔法能力を使えばさらに早くなる。現時点での使い魔の状態での最高速度は驚異の時速100キロだ。ただし魔法能力を使わなければ時速40キロ程度だろう。まあそれでも十分早い。


 ただデメリットとして足が速い分、腕力がない。だから基本的には情報の連絡役に使うのだが、使い魔をあちこちに散らばらせている現状ではあまり意味はない。なのでいつもスマホの中で走り回っている。おかげで日々速度は上がっているらしい。


 ダッシュが真っ直ぐ走り始めてから1分。スマホを確認してダッシュの現在地を確認するとあらぬ方向へグネグネと曲がっている。しかしダッシュはちゃんと真っ直ぐ走っているはずだ。つまりここの森に惑わしの効果があるのだろう。


「この世界は本当によくこの手の道に迷う仕掛けあるよな。…面倒だし使い魔100人くらい出してこの辺りのマップ全部埋めちゃおうか。」


『ポチ・それが得策だね。一旦ここで休憩して、その間に周囲のマップを埋めておくよ。』


 ミチナガたちが優雅にティータイムを楽しむ中、使い魔たちが散会して周囲のマップを埋めて行く。スマホを確認するがものすごい速さでマップが埋められて行く。そして埋めていけばすぐにわかる。この惑わしの効果はどこにたどり着かないように設定されているのか。


「東の方向だな。そっちの方も探らせてくれ。」


『ポチ・了解。今班を分けて探らせるよ。』


 これで謎が解ける。安心して紅茶とケーキを楽しむミチナガの元へ通知が来た。その通知は使い魔の死亡を知らせるものだ。そんな知らせがどんどんくる。


「何があった!」


『ポチ・……待って。ちょっとやばいかも。今すぐに移動するよ。西の方向へ。急いで…急いで車に乗って!!』


 豹変したポチの様子を見たミチナガは瞬時にポチの指示に従い魔動戦車に乗り込む。そして全速力で西の方角へ向かう。やがて惑わしの効果がない森に出ると再び使い魔を散会させて周囲の安全を確保した。


「周囲の安全は確保できたな。ポチ、何があった。もう調べはついているんだろ?」


『ポチ・ピクシーゴブリン…他にも妖精種のモンスターが数多くいた。ピクシーゴブリンはB級の危険度だよ。原初ゴブリンまではいかないけど近いくらいの危険度はある。他にもやばそうなのがうじゃうじゃいた。一体なんなのあれ…近隣の人たちにも報告した方が良いかも。』


 もしもあのままミチナガたちが東の方向へ向かっていたらなすすべなく殺されていたことだろう。思わず身震いを起こすミチナガ。そんなミチナガは思わずめまいを起こした。


 あまりの恐怖によるめまい。そう思っていたがそうではない。ミチナガ以外もめまいを起こしているようだ。これは明らかな魔法による干渉。かなり危険な状態だ。すぐに立ち上がって逃げようと思ったが、めまいのせいでその場で尻餅をついた。


 そして尻餅をついた瞬間。わずかな間閉じた瞳を再び開くとそこはまるで違う世界であった。そんなミチナガたちを大勢の小さな、本当に小さな兵隊が取り囲んでいる。彼らは妖精だ。


「貴様!どうやってここに入った!ここは妖精の中でもわずかなものしか入ることができない危険地帯だぞ!」


「いや…俺たちは迷い込んだだけで…」


「嘘をつくな!迷い込んだだけで侵入できるような場所ではない!」


 ミチナガは混乱した頭を冷静にさせてようやくわかった。似たような場所に一度来たことがある。ずっと以前、まだミチナガがこの世界に来たばかりの頃。ファルードン伯爵とルシュール辺境伯に連れて来てもらったところだ。


 妖精の隠れ里、その中でもここは妖精の国だ。ミチナガは知らず識らずのうちに妖精の世界へと入ってしまったようだ。ただしあの時とはだいぶ状況は違うようだが。




 久々の妖精さんです。第39話とかその辺りぶりです。

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