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第302話 友達と確認

「みんな!おらにガチャ運分けてくれ!」


『ポチ&ピース・うおぉぉぉぉ!』


「うぉぉぉぉ!…ノーマル!」


『ポチ&ピース・あちゃぁぁ……』


「なんだよ。全然出ないじゃん。」


 この国に来てから今日で1週間が立つ。その間ミチナガたち一行はこの商館の建物の外へ一歩も出ていない。食料や娯楽はスマホでなんとか賄えるのでゆっくりと休暇を取れている。ただミチナガの護衛の騎士たちは日に日に苛立ちによる貧乏ゆすりが大きくなっている。


 そんな中ミチナガは日がな一日ベッドの上でスマホをいじっている。最近は白金貨を入手できるようになったので使い魔ガチャを回し放題だ。しかし結果はあまりよろしくはない。


「ミチナガ様。お昼の用意ができました。」


「ああ、もうそんな時間か。ありがとうメイド長。あ!そうだ!ちょっと一回ガチャ回さない?」


「ガチャとは?それをさわればよろしいのですか?それでは…」


「何が出るかな?メイド長の運は……うわ!ウルトラレア来た!すげぇ!!」


『ポチ&ピース・すごいやメイド長!そこに痺れる憧れるぅ!』


 ミチナガは喜びのあまりメイド長の手をとって踊り出している。かれこれ30連続くらいでノーマルを引き当てていたミチナガのテンションは少しおかしなことになっているようだ。踊り終えると昼食の前に今引き当てたウルトラレアの使い魔とご対面する。その使い魔はスマホから出ると…なぜか踊っていた。


『名無し・楽しい♪楽しい♪楽しいね!!友達いっぱい!みんな友達!僕ハッピー!!』


「濃いやつきたなぁ…」


『名無し・初めまして!僕の友達にして僕たちの王様!早速僕の能力を紹介するね!僕の能力はフレンズ!僕と触ればみんな友達だよ!』


「そうなのか。じゃあとりあえず名前は能力のままフレンズでいこう。それでどんな効果があるんだ?」


『フレンズ・良い名前をありがとう!能力の説明の通りの効果だよ!』


 どういうことなのかよくわからないのでメイド長に試してもらった。フレンズと手を繋いだメイド長は特に何事もないようであった。とりあえず昼食が冷める前に食堂へと移動する。


 ミチナガは最初、フレンズの能力を洗脳系かとも思った。触れられた相手はこちらのことを仲間だと認識する類だ。しかしそんなものではないようだ。それにこの使い魔たちならばそんな強力な能力を持てるはずもない。


 では一体どういう能力なのか。それを疑問に思っているとメイド長が驚いたように止まり、その場でキョロキョロと見回し、フレンズと目があうと何やら考え始めた。するとスマホに一件の通知が来た。


ルクシアナ『“ミチナガ様に伝えたいことを伝えられるとお聞きしましたが、伝わっているでしょうか?”』


「うわ何これ!ルクシアナって…メイド長のこと?」


「ええ、そうでございますが…本当に伝わったようですね。」


 突如来た通知はメイド長からのものであった。このことからフレンズの大体の能力がわかった。それは触れた相手に使い魔と同じくらいの権限を持たせるということだ。スマホへメッセージを送るのは使い魔しかできない。それをフレンズと触れたものにも与える能力だ。


 ただしスマホの中に入ることなど、他のことはできない。あくまで通信だけだ。こうなると正直微妙な能力だ。使い魔を通してミチナガと連絡が取れるか、直接取れるかの違いだけだ。


「まあうん…ウルトラレアが当たったっていう喜びだけでも嚙みしめよう。そんなことより飯だ飯だ!」


 みんなで昼食をとる。この1週間、毎日狭い部屋の中で皆食事を取っている。コミュニケーションは取りやすいが、さすがに狭くて嫌気がさす。そんな中、昼食を取り終えたところでポチが全員を集めさせた。


『ポチ・みんな、ずいぶん待たせたね。ある程度の情報収集を完了したから今から作戦会議するよ。ボス、スマホでよろしく。』


「ほいほい。」


 ミチナガはスマホを机の上に置いてマップアプリを起動する。すると3D化されたこの国のマップが投影された。そこには細かくこの国の全貌が映し出されている。


『ポチ・まず結論から。この国はすでにダエーワの拠点の一つにされている。地下では麻薬の合成、それから近くの農村が麻薬の栽培農場になっているね。この国の内部にもいくつか農場がある。こことここね。あと個人で育てているものもあるみたいで把握しきれない。』


「うわぁ…麻薬の一大生産場かよ…」


『ポチ・それだけじゃないよ。人身売買もやってる。しかも大勢の子供を使って兵士を作ってる。女は商品、男は兵士にって感じ。もうやりたい放題。』


 ポチは他にもダエーワがこの国で行なっている悪事の一覧表をミチナガに見せたが、ミチナガは途中で見ることをやめた。それほどまで胸糞悪くなる悪行の数々であった。すぐにでも行動に移そうと皆は意気込むが、ポチはそれを止めた。


『ポチ・敵の兵力は2万。しかも全員がなかなかの戦闘訓練を受けている。それから…魔王クラス15人。兵力の差があまりにもありすぎるよ。戦うことになったら…本当に戦争だよ。』


「レジスタンスみたいなのはいないのか?頼れそうな兵力は?」


『ポチ・隠れているものはいるよ。でも戦える人たちじゃない。頼りになれそうな人達なんていないよ。ここに来るのは初めてだよ。』


「いえ…頼れるかもしれない。この先の目的地の国はダエーワの影響を受けていないはずです。そこなら兵力の一部を借りられるかもしれません。これでも私…それなりの商人なんですよ。」


 ハルマーデイムは以前からもこの辺りには来ている。そのためいくつかの人脈はある。その中の人脈を使えば多少の戦力を借りることは可能かもしれない。しかしそれでも相手の戦力を考えると不足だろう。


『ポチ・他にも何かあれば良いんだけど…あ!ちょっと待って!………暗影が情報入手したみたい。…近々兵士の一部を動かすみたいだね。結構な人数が動くみたいだよ。そこで動けばなんとかなるかもしれないね。』


「なんて都合の良い…それじゃあハルマーデイムには一度この国を出てもらって…ってこの国出られるの?」


『ポチ・いくつか方法があると思うけど…一番安全に出る方法は出国金を支払って出ることだね。ただ一人金貨3000枚。持ち出せる金品もほぼないよ。持ち出そうとしても取り上げられる。』


「そうなると魔動装甲車は取り上げられそうで厳しいな。馬車を用意しよう。出国金もこちらでなんとかする。それから使い魔を連れて行ってもらって奴らの監視の目がなくなってから魔動装甲車で移動してもらおう。あとは道中の兵力も欲しいか。何人か俺の護衛の騎士をつけよう。」


 ミチナガの提案に数人の騎士たちから異論が唱えられた。彼ら騎士はミチナガを守るためのものだ。それなのにミチナガを置いていくことはできない。しかしミチナガとしてはハルマーデイムの伝手で援軍を得られる方が利になる。


「我らがいないにもしものことがあったら…我々がいなくなっては陛下の身が…」


「俺は大丈夫だよ。ほら、もしもの時のお守りだ。これを使えば神魔の力を借りることができる。だからいざという時は大丈夫だ。」


 ミチナガは神魔から渡されたお守り、神魔フレンズの証を見せる。それを見た騎士たちはそれを見た瞬間黙った。彼ら騎士たちよりもはるかにこのお守りひとつの方が身を守ることはできる。


 ただミチナガとしてはこれを使いたくはない。おそらくだが、このお守りの力を使えばこの国の問題も片付くことだろう。しかしそれではミチナガは成長しない。ミチナガは今後もこう行った悪と対面することがあるだろう。


 その時もこうして神魔頼るわけにはいかない。ミチナガはふっと息をついた。もしも自身にもっと戦う力があれば…と想わない日はない。しかしどんなに思おうともそんな力を得る日は来ない。使い魔たちは戦えるようになった。


 しかし今回の相手は強すぎる。これほどの巨悪に立ち向かう力はない。しかしそれでもこうして対峙してしまったのならば逃げたくはない。だからなんとかする。なんとかしてみせる。


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