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第259話 戦勝パレード

 あれから3日後、怪我人の治療と町の復興がある程度落ち着いた今日、ついに今回の戦争の戦勝パレードが行われた。大々的に行われるパレードではあるが、この国の現状などもあり、装飾などはそこまで派手なものにはならなかった。


 その代わり酒や食事を大量に国民に配給した。そのおかげでパレードは大盛り上がりだ。皆タダ酒を飲んで顔を赤くしながら喝采を送っている。


 パレードに参加したのはシェイクス国国軍、セキヤ国国軍、それに傭兵団の面々だ。傭兵団の中にはこういったものは好きじゃないと言って先に会場付近で酒を飲んでいるものもいる。


 中にはすでにこの国を出たものたちもいる。今後の戦いに関わりたくない、十分な報酬をもらえたので国に帰る、理由はいくつかあるだろう。


 傭兵団が帰る際にセキヤ国国軍も1万人を残して帰国した。今回の戦争ではミチナガを助けるためにセキヤ国の戦力のほぼ全てが集まった。つまりセキヤ国の方は手薄になっている。いつまでも勝利に浸っている場合ではないのだ。


 火の国の情勢が落ち着くその時までシェイクス国もセキヤ国も安心はできない。しかし今だけは勝利の余韻に浸り楽しく騒ごう。今後、シェイクス国もセキヤ国も大きく動かなければならないのだから。


 大々的にパレードを行なった後に城内に入り、玉座の間へと入る。玉座の間にはかなり痩せ細ったシェイクス国王、つまりマクベスの父親がいる。戦争が終わり、医師にしっかりと診察をさせたのだが、今回の戦争で受けた心労のせいでかなり体は悪いらしい。


 今回の謁見もやめておくべきという声もあったのだが、国王の、父親としての最後の務めを果たすと言い、かなり無理をして今ここにいる。マクベスもミチナガもそれを十分にわかった上で今ここにいる。


 シェイクス国王の前でミチナガ以外の全ての者たちが膝をつけ、王への敬意を表す。ミチナガはセキヤ国の国王であるため、対等な立場にあるシェイクス国王には膝をつけずに挨拶を行う。するとシェイクス国王は側近の腕にもたれながらミチナガの前まで降りて来た。


「第6代…シェイクス国国王…ダンカ・シェイクスである……」


「セキヤ国国王、セキヤミチナガだ。」


「セキヤ王…此度は……いや…我が息子、マクベスが…長く…長く…世話になった…さらにはこの国の窮地を救ってもらった……感謝のしようがない…ただ…それでも言わせてくれ……情けない王ではあるが…シェイクス国の代表として……感謝する………ありがとう…」


「…マクベスは俺の友人だ。俺が王と呼ばれる以前からの友人だ。俺は決して友は見捨てない。…いや、見捨てられない性分なのだ。だから我が友が再び窮地に至れば俺は何度でも助けに来よう。」


「そうか…ありがとう……その言葉が聞けただけで…私の肩の荷は降りた。」


 シェイクス国王は本当に安心しきった表情を浮かべる。そんな中、膝をついていた男、ナイトが立ち上がった。急に立ち上がったナイトにその場にいる全員が注目する。


「俺はここにいるミチナガの友だ。そしてその友の友であるマクベスは俺の友でもある。マクベスが窮地に陥った時には…俺も手を貸そう。」


「は…はは…ハハハハハ!…ああ……すまない…ナイト殿を笑ったわけではない。…ただ……この国を救った英雄まで…我が息子のことを助ける…これほど嬉しいことはない……セキヤ王…ナイト殿……見届け人になってもらえるか?」


「もちろんだシェイクス王。」


「…ああ。」


 ミチナガは周囲に視線を送る。そこにはこの様子を中継している使い魔たちがいた。この一大イベントをこの国の全てに届けるために国中に散開した使い魔たちがこれから行われる模様を最高の画で中継しようとベストポジションに移動した。


 ミチナガとナイトはシェイクス国王の横に立ち、今も膝をついているマクベスを立ち上がらせ、呼び寄せる。


「私は今ここに宣言する!ここにいる我が息子、マクベスを第7代シェイクス国国王として全権を受け渡そう!この宣言はここにいる者たち、そしてこの2人の英雄によって確約されるものとする!異論あるものは前にでよ!」


 シェイクス国王は先ほどまでの弱々しい声が嘘のように大声で宣誓した。これがいかに重要であるか分かっているから、全ての力を振り絞って声をあげた。よろめきながらもなんとか今尚立ち続けているシェイクス国王から差し出された王冠とマントをマクベスはしっかりと受け取った。



 この瞬間、シェイクス国第7代国王、マクベス王が誕生した。立ち上がり、マントを羽織り、王冠を頭に乗せたマクベス王は前国王の横に立つ。小さくはあるが、それでもなんとも頼もしい新しき王に続きミチナガもナイトも言葉を発した。


「セキヤ国国王。商王の魔帝セキヤミチナガ!新しき王の誕生を確かに見届けた!」


「孤高の狩人の魔帝ナイト。確かに見届けた。」


 それと同時に沸き起こる拍手喝采の嵐。それは城の外からも聞こえてきた。この国全ての民がマクベスを王として認めた。もうマクベスは妾の子などとバカにされることはない。マクベスを嘲笑うようなものはいないだろう。


 マクベスの実力はこの戦争で十分に示した。この国の軍部も国民も全てが認めた。そして拍手喝采が落ち着いてきた頃、マクベスから初めて王としての言葉が発せられた。


「第7代シェイクス国国王!マクベスである!若輩な王ではあります!ですが!ですがこの国のため、そしてこの火の国ために!私はこれからも戦い続けなければなりません!今回の戦争はこれで終わりました。しかしこれからもまだ火の国の戦争は続きます!その戦争の中でも生き残るためにはシェイクス国は強くならなければなりません!まずはこの国の救世主でもあるセキヤ国を友好国として同盟を締結します!私たちはこれから大きく変わっていきます!」


 それから20分ほど演説が続き、他の細々とした催しをこなし、傭兵団への勲章も受け渡したところでようやくこの式典を終えた。この後はただひたすら飲んで騒ぐだけだ。新たな王の誕生と同盟国の誕生に国中が大盛り上がりであった。





「だぁぁぁ…疲れた…超緊張した……」


「ミチナガさん!本当にありがとうございました。ナイトさんも本当にありがとうございます!」


「…ああ。気にするな。それと…部屋に戻って良いか?人に酔った。」


「ごめんなナイト。人多くて騒がしくて辛かっただろ。部屋でゆっくり休んでくれ。マクベスもある程度のところで休めよ。明日から忙しいんだから。」


「はい。もう少し挨拶回りしたら休む予定です。あ、それじゃあそろそろ行ってきますね。」


 マクベスは人ごみの中へ消えて行った。新しい国王として即位してから普通に忙しいはずなのに、さらに忙しくなることが決まっているマクベスを見て同情するミチナガ。


 現在、この国の運営に必要な重鎮はほぼいない。優秀な人材もほとんどいないだろう。全て以前の王子王女の反乱の際に死んでいる。はっきり言ってこの国の運営はもう破綻している。戦争には勝ったが、着々と破滅に近づいている。


 しかしミチナガが、使い魔たちがそうはさせない。使い魔たちはすでにセキヤ国で国の運営の全てを学んでいる。つまり使い魔たちは優秀な国家運営の要員なのだ。さらにセキヤ国国軍の中にはイシュディーンのように元将軍のような役に立ちそうな重鎮がいる。


 そういった人材も惜しげも無くシェイクス国運営のために貸し出している。とにかく人材が育つまではミチナガのもつ使い魔、人材の全てを持って手助けする。おかげで国の運営は問題ない。ただ人手不足ではあるので、毎日働き詰めである。


 それから法国の侵攻もヴァルドールのおかげでしばらくは安心だ。しかし今回侵攻してきた周囲の国々が力をつける前になんとかして侵掠しなければならない。つまり1年、いや半年のうちにやらなければならないことが山ほどある。


 しばらくは休む暇もないマクベスのことを不憫に思うミチナガであったが、ミチナガ自身も使い魔たちから働くように促されている。


『ポチ・ボスもいろいろ頑張らないと!とりあえず魔帝クラスに居座れるようにもっとやらないといけないよ!』


「別に魔帝クラスじゃなくたっていいよぉ…俺そんなのにならなくたって気にしないよぉ…」


『ポチ・ダメ!一国の国王が簡単に魔王クラスと魔帝クラスをフラフラしていたらナメられるよ!』


 今回の戦争で魔帝クラスに成り上がったミチナガであるが、その二つ名は商王。本来魔王クラスに用いられる王の文字であるがこれには意味がある。


 ミチナガのように一時だけ名をあげて魔王クラスや魔帝クラスに上がるものが時折いる。しかしそれは一時だけであるため、時間が経過すれば再び下のクラスに落ちる。つまり本来はそんな実力じゃないのに頑張って上のクラスに見せかけましたということだ。


 そういった見栄を張るものは一定数いる。特に魔王クラスに多いのだが、そういったものたちは影で笑われることもある。そんな状態にいるミチナガは国王であるのだから周囲にバカにされてはいけないと、使い魔たちはなんとかして魔帝クラスに落ち着かせようと必死である。


 しかし本来ミチナガの現状を見る限り魔帝クラスでも十分おかしくはない。むしろ魔王クラスである方がおかしいのだ。そんな実情がなぜ起きているのか調べていった使い魔たちは一つの答えを導き出した。


 それは潜在的な影響力である。神剣や神魔のように本来めちゃくちゃ強いけど、特にこれといった行動をしていないため、魔神としての地位が低いというものである。こういった潜在的魔王クラスや魔帝クラスは一定数いる。


 そして使い魔たちは、ミチナガはそれが逆に働いているのではないかという結論に至った。つまり表面的な影響力はものすごいが、もしも戦闘になればちょっとした流れ弾一つで死ぬほど弱いミチナガは潜在的な影響力がマイナス評価を受けているのではないかという考えだ。


 つまりミチナガの戦力としての実力がマイナスで、商人として、王としての評価がプラスの評価で合わせるとちょうど魔王クラス、今だけは影響力強いから魔帝クラスということだ。


 人一倍頑張らないと評価が低いミチナガの不憫さを哀れに思いながらも、まあ頑張れば良いだけという結論に至った使い魔たちはこれまで以上にミチナガを働かせるつもりだ。


「まあセキヤ国に帰国したらゆっくりやるよ。何事も焦らない焦らない。」


『ポチ・そうは言っても勇者神から英雄の国に来いって言われているよ。もう英雄の国で初めての爵位任命受けてから1年以上経つのにこないから。あんまりゆっくりしている暇ないからね。』


「マジかよ…俺もそこそこ多忙じゃん……」



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