表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
260/573

第251話 魔導科学兵器

ポチ『“敵全軍追い出したね!それじゃあ予定通りグループごとに分かれて城門を死守するよ!”』


黒之壱『“こちら城壁上!ボスが所定の位置についたのでこれより始めます。完了までの間辛抱してください!それから攻城兵器の勢いが強すぎます!黒之部隊を動かしてもいいですか?”』


ポチ『“オッケー!派手にやっちゃって!!”』


 黒之壱の指示を受け使い魔のカラーズ隊、黒之部隊が動き出す。その形は2種類に分かれている。完全2足歩行型の形態ヒューマン、4足歩行型の形態ビースト。ビーストの方は主に速度を重視して作られた機体だ。ヒューマンの方は万能型である。


 速力重視のビースト形態は今の所戦闘向きに改造を施されておらず、全体の生産数も少ない。しかし素早い行動を求められる今の状況ではなかなかうってつけの人材だ。


 対してヒューマン形態は武器を所持し戦うことができる。しかしまだ体幹制御が難しく、素早い移動は困難だ。しかし様々な作業が行える分、使い勝手は良い。全体の8割方を占めている。


 現在、使い魔たちは城門を守りながら城門の修復も同時に行なっている。いくつもの重機によって倒れた城門を引き起こしているが、そこには5mを越す巨大な人型の兵器もある。2足歩行型巨大兵器、形態タイタン。この3つが、使い魔たちが完成させた魔導科学兵器である。


 その戦い方は実に地味なものだ。基本的に人間と同じように武器を持って戦うだけである。特殊な武器をつければつけたぶんだけ魔力の消耗も増すし不具合が起きるとのことで現在は一つしか使用していない。


 しかしそんな使い魔たちが城壁の中まで侵入した敵を追い返せたのは一つだけ内蔵した、とっておきの兵器があったからだ。そして黒之部隊はその兵器を生かすため、全速力で走り、敵の攻城兵器に飛びかかる。


「それじゃあお先に!」


「おう!こっちもすぐに追いつく!」


 敵の攻城兵器に飛び移った使い魔の兵器から急速な魔力膨張反応が検知される。それは奇しくも先に敵にやられたこの国の王子たちを使った人間爆弾と同じ魔力の膨張反応だ。使い魔たちは元々備え付けられていたその装置を敵の魔道具を解析してさらに強化した。


 使い魔たちが行う攻撃、それは自爆特攻。一人一人が敵十数人を吹っ飛ばせるほどの魔力爆弾となり特攻するのだ。敵としてはなんと恐ろしいことだろうか。倒したと思っても次の瞬間に自爆するのだから。


 元々はこの兵器の機密保持のために装着されていたものだったが、兵器として使えるということで改良に改良を加えた。さらにこれは予想していなかったが、敵の火払いの鎮火旗によって燃えることできないこの状況でも、急激な魔力膨張という火を伴わない爆発であるためその効果の対象にならない。


 次々と自爆していく使い魔たちによって攻城兵器は見るも無残な姿に変わっていく。使い魔たちも攻城兵器を破壊するために一瞬のうちに1000ほどの機体を破壊することとなったが、戦果としては大きい。


 やがて城壁の上で行われていた演奏が終わり、そのバフ効果が発生する。ここからさらに使い魔たちはその勢いを増していく。


 使い魔たちは常にその思考がマザーによって繋がっている。そのためその連携力は凄まじい。1対1では勝つことが難しいかもしれないが、常に1対3で戦うため負け知らずに戦える。仮に敵に取り囲まれたとしても自爆すればかなりの戦果が見込まれる。


 しかし常に数体の使い魔が自爆を繰り返しているため、すでに使い魔たちの軍は半数近くまでその数を減らしている。だがそのいつでも自爆できるという覚悟が敵兵士の進行を遅くさせている。


 誰だって死にたくはない。近づけばまず間違いなく死ぬというのに率先して近づきたい兵士はいない。仮にいたとしてもすでにそういった兵士はすでに特攻して死んでいる。


 しかし使い魔たちの中には自爆をしなくてもかなりの戦果をもたらしている者もいる。今も敵兵士が木々に押しつぶされ死んでいる。そこにいるのはミチナガ保有の使い魔の中で一番強力な使い魔、ドルイドだ。


「…魔力が切れる……一旦引け…」


「了解しましたぁ!おい!みんなでドルイドさん運ぶぞ!」


「「「おお!」」」


 ドルイドの使用する精霊魔法は強力な反面魔力を大量に消費する。そのため長時間戦うことはできないが、休憩を少し挟みつつなんとか戦い続けている。さらにそんなドルイドの近くではなぜか敵兵が味方同士で殺し合っている。


「…フラワーさんえげつないっすね……」


「そう〜〜?まあ〜〜〜戦争〜〜だしね〜〜」


 フラワーの周囲には毒々しい色の花々が咲き乱れている。この花は幻殺華。華から溢れる匂いを嗅いだものに幻覚を見せて周囲の他生物と殺し合わせる危険な華だ。その殺し合った際の血液を啜り、さらに増殖する冒険者が恐れる第1級危険植物である。


 さらにその横では敵兵を蔦で絡めて、幻殺華の匂いを無理やり嗅がせているファーマーがいる。共同作業で戦うフラワーとファーマーのコンビはある意味一番恐ろしいコンビである。


 そんな中、ついに意を決した敵兵がこちらの防備の薄い箇所から攻め込んできた。もうこちらの自爆攻撃も御構い無しだ。敵兵はまっすぐ修復中の城門めがけて突き進んでくる。この突進力の前には使い魔たちも手を出せなかった。


「やばいやばい!誰か止めて!!」


「うっす!自分に任せて欲しいっす!」


 敵の突進する先に立ちはだかったのはタイタンに乗るパワーだ。実は本来、このタイタンという機体は動かない。このタイタンは第4世代型を構想して開発された機体だ。今の技術力では頑張ってもこの大きさにまでしか小さくできなかった。


 しかし大きくなればなるだけ機体は重くなり、動力源のパワーアップが必要になる。しかしそこまでできる技術力はなかった。そのため本来このタイタンはパワー不足で決して動かない機体なのだ。


 しかしその足りない部分をパワーの能力、力10倍でなんとか補った。さらにミチナガによってオールパーフェクトで演奏された楽曲、戦場のワルキューレによってその力はさらに増している。つまり今このタイタンは使い魔たちが目指すべき第4世代としてのその実力を発揮できる。


「ここは通さないっすよぉぉ!!」


 パワーによって振り下ろされたその両腕は敵を押しつぶし、大地を揺らした。あまりの破壊力に敵兵は一瞬足を止めてしまった。使い魔たちはそこを見逃さず、すかさず敵に飛びかかり自爆攻撃を行い突撃してきた敵兵を壊滅状態に追い込んだ。


 そんな中、なんとか逃れてきた敵兵が城門にたどり着いたのだが、そこに待ち構える他のタイタン機体によって投げ飛ばされた。よくやったと褒める場面でありながら、なぜかその様子を見ていた使い魔たちはなぜか思わず冷や汗を流した。


 タイタン機体は強化系の能力を保有する使い魔でなければ動かすことはできない。そのためタイタン機体は4機しか用意していない。そしてその4機のうち3機はパワーとその眷属で動かしている。ではもう1機は誰が動かしているのか。


 それはかつてバーサークとして恐れられていた異世界人、岡上の能力を入手した際に得られた2人の使い魔のうちの一人。使い魔の中で岡上の溢れる狂気性を受け継いだサイコの兄弟。それは岡上の能力をそのまま受け継いだ使い魔。その名は…


「みんな離れて!バーサーカーが戦っちゃった!!バーサーカーモードに入っちゃったよ!!」


 狂戦士バーサーカー。その能力は戦えば戦うほどその力が増していき、その狂気も増していくバーサーカーモードだ。一度暴れ出したら最後、もう誰にも止めることのできない狂戦士となる。


 平常時でもパワーほどまではいかないが強化することが可能なので、戦闘には参加させずに城門の修復の手伝いをさせる予定であった。しかしこうなってしまってはもうどうしようもない。使い魔たちはとにかくバーサーカーに近づかないようにして、バーサーカーを敵の方へ誘導する。


 一度暴れ出したバーサーカーはパワーを超えるほどの力を発揮する。敵の集団へ一人突っ込み暴れまわっている。しかし多勢に無勢。しばらく暴れまわったところで膝から崩れ落ちた。そしてそこを見計らったように急激な魔力収縮を起こし、敵もろとも盛大に吹っ飛んだ。


 なかなかの戦果を出してくれたバーサーカーに使い魔たちは敬礼を送り、そのまますぐに戦闘に戻っていった。そんな中、城壁を魔法で飛び越えて行こうとしていた敵兵が突如見えない壁にぶつかり強力な魔法迎撃を受けて地上へ落ちていった。


「みんなぁ〜〜!!城門の修復完了したっす!!」


 わずか15分ほどで使い魔たちは破壊された城門を修復してみせた。元々外れただけのような破壊のされ方だったので修復も簡単だったのだ。城門が修復されたことにより対空迎撃魔法も復活した。これでこの戦争はまた元に戻った。


 そして城門が修復された今、使い魔たちはもう城門周辺で戦う必要はない。城門を守ることでかなり消耗した使い魔たちであったが、もう我慢する必要はないのだ。


「今の話みんな聞こえたね!それじゃあみんな!全軍…」


 そしてここから新しい戦いがはじま…


「撤退。」


 らなかった。






「うおぉぉぉぉ逃げろぉ!もう活動限界まで1分切ったぞ!」


「ちょ!待ってぇぇ!もう魔力きれっちゃって歩けないよぉ!!」


「うるせぇ!こっちも限界なんだ…あ……足のパーツのどっかイかれた…あ、歩けない…ちょ!だ、誰かぁ!」


「お前らは全員自爆して死に戻りしろ!まともなまま戻れる機体は一体何機あるだろうなぁ…」


 その後行われた使い魔たちの撤退戦はあまりにも無残なものであった。逃げる使い魔たちの背を追いかける敵兵も大勢いたが、見捨てられた使い魔たちによる自爆攻撃でその追撃を食い止めることができた。


 結果として無事に戻れたのは城壁の上で演奏していた200機、それから城門修復に当たっていた200機、そして命からがら逃げ延びた100機だけになった。


 結果として使い魔たちは城門内に攻め込んできた敵兵を追い出すのに5分、さらに城門修復に15分と計20分の戦いでその数を10分の1にまで減らした。


 ミチナガと使い魔たちの戦いは被害もすごいものだが、戦果としては誰もが認めるだけの大戦果になったと言えるだろう。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ