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第234話 国としての活動

「それでここには人の集落と…こちらにはドワーフの集落もございます。ここには小国も。」


「なるほど…この辺りはどうですか?」


「ああ、そこには人の大きな領地がございます。傭兵業が盛んな領地で火の国の戦争にも参加していると。基本的には戦いで疲れた体を休めるために傭兵が集まるようです。」


 ミチナガはエルフ達からセキヤ国周辺の情報収集を行なっていた。基本的にこの西のエルフの国と同じ規模の国は1つしか存在せず、人口1万人を超える街は他に3つほどしかないらしい。人口数百人程度の村はいくつも点在しているようだ。


 小さな村のほとんどは火の国からの避難民が作り上げた村らしく、周辺国は頭をかかえる厄介なタネになっているようだ。小さな村ではあるのだが、基本的にその辺りの領主が受け入れを拒否したために仕方なく作った村だ。そのため村からの税収などはない。


 下手に徴税などをすればそれは領主がその避難民を受け入れたと捉えられかねない。そうなれば避難民はあそこの領主は受け入れてくれるとこぞって集まってくるだろう。避難民の数は数万単位だ。そんなのが一度にやってきたら食糧難が起こり、自国が滅びかねない。


 ミチナガとしてはそういった人々全てを受け入れてしまうつもりであるが、現状では居住区が用意できていないため厳しい。そのためしばらくは避難民の積極的な受け入れをせず、避難民による被害を被っている周辺国と取引を行う。


 取引内容は簡単に言うと避難民をうちで受け入れてやるから、何か頂戴というやつだ。どうせ避難民を受け入れるのならば少しでも得になるものが欲しい。今のところ考えているのは周辺国でのミチナガ商会の展開、及びセキヤ国との貿易。


 それから避難民がいなくなったことによる治安向上によって浮いた治安活動費用を支援金としてもらおうとも考えている。まあ直接的に支援金として払うのは嫌がるだろう。そこで避難民をセキヤ国周辺まで運ぶ移送費などを請求するつもりだ。それならば払ってくれるだろう。


 それから土地も必要だ。現在の猫森だけでは土地面積が足りない。さらに増える人々のことも考慮すればセキヤ国の国土面積の増加は必須だろう。この辺りの取引材料も色々と使い魔達と相談して考えてある。


「それじゃあ真っ先に向かうべきなのはこのヂュリーム国ですね。この国と話をつけられたら周辺の3つの国も同意しやすいでしょうし。」


「それがよろしいかと思われます。それから…これは我らからのヂュリーム国王への紹介状です。かの国とこの国は多少の関係はございます。我らが便宜を図ったと知ればすぐにでもお会いになることができるでしょう。」


「何から何までありがとうございます。おかげで話が早く済みそうです。本当に助かります。」


「何をおっしゃいますか。ミチナガ様のためならばどんなお力添えでもいたしましょう。また何か困りごとがございましたらいつでもお申し付けください。」


 エルフ達の助力に感謝の表しようがない。しかしそれはお互い様だ。ミチナガがいなければこの国の重鎮達は皆命を落とし、国の運営もままならなかっただろう。下手をすれば次期族長の座を巡って内乱が起きた可能性さえある。


 正直ミチナガがエルフ達に感謝する気持ちより、エルフ達がミチナガに感謝する気持ちの方が大きい。きっとエルフ達はミチナガのためならどんな無茶も聞くだろう。エルフ達はミチナガに対し忠誠を誓っていると言えるほどだ。



 それから数日後、ミチナガはヂュリーム国へ向かい出発した。同行者はセキヤ国から連れてきた護衛3名だけだ。シェリクや他のエルフ達も同行したいと申し出てくれたが、ここから先はセキヤ国としての外交だ。エルフ達の力を借りすぎてしまえばセキヤ国そのものが舐められる。


 ヂュリーム国までの道のりは魔導装甲車を用いれば2日もあれば着くとのことだった。そのためとっとと向かってしまおうと思ったのだが、そう言うわけにも行かなくなった。道中での火の国からの避難民との遭遇だ。


「と、止まれ!い、命が惜しかったら…か、金と食い物をよこせ!は、早くしろ!」


「太守…どうされますか?」


「あ〜…いざという時は頼む。とりあえず少し話するから。」


 どうやら火の国からの避難民が野盗と化したようだ。全員やせ細っていて異臭もする。よほど食料に飢えているのだろう。どうやら避難民の問題というのは意外と大きそうだ。


「飯が欲しけりゃくれてやってもいいぞ。ただ武器なんぞしまえ。お前らは知らないのかも知れないが避難民の避難所ができているぞ。こんな野盗まがいのことをして…どっかの冒険者やら護衛やらに殺されるぞ。」


「ひ、避難所!そ、そんなの嘘だ!俺たちのことなんか誰も気にしちゃいない!そ、そんな嘘で騙そうたってそうは行かないぞ!いいから食い物をよこせ!」


 どうやら今までの境遇から避難所があるということを言われても信じられないようだ。とりあえずミチナガが大量の食事を用意すると武器など放り投げて食事にかぶりついた。しかもどこからともなくやってくる。全部で三十人ちょっとの集団のようだ。


 女子供どころか乳飲児までいる。かなり危険な状態だったであろう。食事をしている最中は話をすることも難しそうなので、食べ終わってから同じ種族の獣人のダルーに説得を任せる。こういうことなら説得役として話の上手いやつでも連れてくればよかったかと思ったが、ダルーは意外と話し上手そうだ。


 しばらくは他愛もないどこの国出身だとかそんな話で徐々に打ち解け、徐々に避難民としての生活や境遇の話をした。どうやらこのあたりの周辺国はどこも避難民に対しては一切援助しないというのが決まりらしい。


「それで俺たちはいくあてもなく…同じ避難民の村にも食料がないと追い出されて……それで…」


「だったらうちに来い。うちは避難民のためにできた国だ。ここにいるミチナガ様が避難民に対する援助の全てをやってくれる。家にだって住めるし仕事もある。家族みんなで生きていけるんだ。」


「ほ、本当に…本当にそんな夢のような話があるのか?」


「ある!俺たちも元々は避難民だ。今は腕を買われて護衛をしている。これから周辺国にこのセキヤ国での外交を行う。そうすれば俺たちは自分たちの国が持てるぞ。戦争で追い出されることもない。」


「ほ、本当に……本当にそんな…夢のような話が……う、うぅ…すまねぇ…そんなお人だとは知らず…俺たちも…もうギリギリで…もう何日も前から死人が出ていたんだ。このままじゃみんな死ぬと思ってすまねぇ…すまねぇ…」


「まあ気にすんな。それよりも俺たちはこれから外交に向かう。だからお前たちをうちの国まで連れていくことができない。この周辺に避難民の村はないか?そこと話をつけてお前らを一時保護してもらう。3〜4日もあればうちの国から救援隊が来るだろう。それまで待ってくれ。」


 すでに使い魔同士で情報の共有をして、ここにいる避難民の保護部隊の編成を行なっている。セキヤ国の周辺での避難民の保護は行っていたが、ここまで離れたところにくるのは初めてのようだ。


 周辺を探索すると少し離れたところにダークエルフの村があった。40人ほどの規模だが誰も彼も痩せ細っている。そんな彼らに今保護した獣人たちを一時保護する代わりにセキヤ国への受け入れとしばらくの間の食糧援助を申し出たところ大喜びで快諾してくれた。


 同じダークエルフのダリアのおかげで話がしやすかったのもあるが、ミチナガ自身がエルフたちに特別待遇されているという事実もダークエルフの避難民の警戒心を解くきっかけになったと言える。


 さらにそこのダークエルフたちから他の避難民の話を集めると今でもギリギリな避難民の集落が10以上点在しているという。総勢500人以上の避難民がすぐにでも集められそうだ。急にそんなことになっても保護が難しいかと思ったのだが、使い魔たち曰くなんとかなるとのことだ。


『ポチ・エンジン付きの運搬車がそれなりの数あるからそれで運べるかも。ただ速度は出ないから日数はかかるよ。』


「よくそんなのがあったな。というかまた無駄遣いか?まあ役に立っているけど。」


『ポチ・元々セキヤ国での農作業用の運搬車だよ。速度はないけど馬力があるから1台で20人は運べると思う。ただ人が乗れるように荷台を改造する時間もあるし…ここまでくるのに1週間はかかると思う。』


「その間は食糧援助で乗り切ってもらおう。じゃあすぐに動いてくれ。1日でも早くな。それから避難民の数が増えることも考えて多めに呼んで来てくれ。それからこの村の人たちも体力が回復したら周辺の村々に話をしに行ってもらおう。」


 その日は結局この村で一晩を明かし、翌日は翌日で別の避難民の援助を行い…結局当初の予定の倍の4日間をかけてヂュリーム国へたどり着いた。



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