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第227話 死の湖の秘密

『オイル・え〜ではみなさん準備はいいですか?…それでは第42次死の湖、湖底探索を行います。今回はさらに強化された汲み上げ機を4門増設しました。壊れない程度に全開で汲みあげるように。それからクロールはまた底まで沈んで回収作業よろしく。湖底の深さが具体的に判明次第、クレーンで回収作業もする予定ですが、湖面が一定以上まで湖底と近づかなくてはできないので期待しないように。それでは配置について。』


 最終確認をしたところでオイルの眷属とクロール、さらに数人の名無しの使い魔が所定の配置につく。そして設備の最終確認をしたところで作戦が開始された。これまでは何度も死の湖の石油組み上げに失敗して来た。


 しかし今日こそはと、社畜とアルケは今までの失敗を踏まえた上で、共同開発した最新型の石油汲み上げ機を6門用意した。これなら絶対にいけるという自信に満ち溢れた作戦である。とはいえ第38次の作戦くらいから同じことを聞いているので、あまりあてにはならない。


 しかしどうやら今回ばかりは今までとは違いそうだ。設置された6門の石油汲み上げ機はみるみると死の湖の湖面の水位を下げて行く。これには使い魔たちも期待に満ち溢れている。だが、10m、20mと低くなる水位であるが、まるで底が見えない。


 そしてついに石油組み上げ機のポンプの長さの方が足りなくなってしまった。ポンプも200mは用意したのだが、今からの増設は汲み上げ機自体の改良も必要となるので不可能だ。しかしここまで頑張れたのだからとクロールは以前と同じように石油の湖に沈んで行く。


『オイル#2・だけどこんなに深いなんて…前回クロールが潜った時の記録だと200mで足りたはずだろ?』


『オイル#4・おそらくあれだよ。湖の側面、そこの出っ張った部分にあった芸術品やら何やらを回収したんだ。今もオイルまみれでわかりにくいけど、多少は回収できそうだね。他の使い魔に頼んで回収作業に当たらせよう。』


 すぐに死の湖の側面に石油とともにへばりついているアイテムを回収して行く。1時間ほどで流通禁止金貨が数万枚回収できた。それ以外にも壊れた骨董品がいくつも回収できたが、修復は難しく、価値は低いだろう。


 回収作業をしていると死の湖の底へ潜っているクロールから連絡が入った。どうやら底に辿りついたという連絡かと思いきや、緊急事態の連絡だ。どうやらこの死の湖の全貌はそう簡単なものではないようだ。


『オイル・それじゃあ…底にたどり着いたと思ったらさらに奥があったっていうこと?』


『クロール・そういうこと。詳しくはわからないけど、死の湖の底と思われる部分に穴が空いていてそこからさらに奥へ潜れた。感覚でいうと…砂時計みたいな感じかな?穴を抜けた先にはさらに広い空間があった。今も落下中だけど底が知れないね。息が持つかわからないけど限界までやってみるよ。そっちはマップで確認よろしくね。』


 オイルは自身の意識の一部をマップアプリと連動させる。するとバラバラに落下していくクロールとその眷属によって死の湖の全貌がだいぶわかってきた。


 まずは地上にせり出している死の湖の上層部分は深さ350m。その上層部分の底に直径3m、長さ5mほどの穴が空いている。そこを通過すると死の湖の下層部分にたどり着く。そしてその下層部分の広さは地上の3倍はある。さらに深さはまだまだ判明していない。すでに下層部分だけでも200mは沈んでいるというのにまだまだ底にたどり着かない。


 しかしそれから数分後、突如クロールの眷属の一人が死んだ。あまりにも突然のことだったので何が起きたのか理解できていない。息もまだ保っていたので眷属自身の理由ではない。この死の湖の下層部分になんらかの問題があるのだ。


 するとさらに眷属がまた一人と死んでいく。しかし今度は身構えていたため、何が起きたのか判明した。それはモンスターや何かのダメージとうことではなく、突如凍結したということである。


『オイル・凍ったって…一体凍る要素がどこにあるの?やっぱりモンスターの仕業?』


『クロール・そういうんじゃなくて…冷たい何かに触れたらそこから一気に凍ったって感じ。多分だけど、底一面にあるみたい。ちょっとどうしようもないからこっちも潜って死に戻りするね。』


『オイル・了解。…だけど凍る要素なんて一体どこにあるんだろ?』


『オイル#1・超低温の液体とか個体?それに触れて凍ったみたいな感じかな?』


『オイル#2・こんな石油の海にそんなものないでしょ。第一ここってそんな寒い地域じゃないし。』


『オイル#3・超低温の液体…石油に関連する……湖の底……』


『オイル#4・も、もしかして…天然ガス?液化するのはマイナス160度ちょっとだったと思うよ。』


『オイル#5・それなら…凍る可能性はあるね。超高密度に圧縮された天然ガスが液化した。間違いないよ。』


 天然ガス。プロパンガスとして家庭で使用されている天然ガスは非常に生活に密着した存在である。もっと言えば日本のタクシーはこの天然ガス、LPガスを燃料として使用している。燃料代も安く、排気ガスもクリーンだと高い人気がある。


 そしてこの天然ガスであるが元は石油と同じだ。簡単に言えば石油が気化したものが天然ガスだと考えれば良い。そして天然ガスはマイナス162度で液化し、体積は600分の1まで小さくなる。


『オイル・普通ならそんな簡単に液化しない。なんらかの魔法的要因…おそらく結界かなんかだろうね。地上部分に漏れないように地下に封印しておいたっていうのが理由でしょ。結界の中に封印されていた天然ガスが年月とともに密度が高くなり液化した。っていう見解だね。』


『オイル#1・まあそんな見解はともかく、どうするかって話でしょ。液化天然ガスの底にお宝が眠っていると考えると、入手方法ないよ。』


『オイル#2・それこそ宇宙服が必要になるレベルだよね。だけど収納をどうしようか。触れただけで凍るんじゃ口から収納できないよ。』


『オイル#3・元の気体に戻してから収納する…のは体積の問題で大変なことになるね。下手したら死の湖吹っ飛んじゃうよ。そうなると…逆にいく?』


『オイル#4・凍らせるってこと?それの方がもっと現実的じゃないよ。固体になったらさらに冷たくなるんだよ?収納がさらに難しいよ。かなり凍らせることに詳しい人が必要になるよ。……っているね。詳しい人。』


『オイル#5・ヒョウに頼んで氷神か氷帝の知恵か力を借りよう。もうヒョウに連絡したけど…明日までお預けかな?』


 そして翌日…どころか3日後。ようやくまともな返答がきた。まあ相手は一国の女王だ。そんな簡単に話をつけられるはずがない。しかし待った甲斐のある返答がきた。それは氷国の国宝の一つを貸し与えてくれるというものであった。


 本来持ち出し厳禁なのだが、ミチナガ商会による3人の魔神同盟の結成に対する報酬のようなものだということだ。それは氷国が管理する9大ダンジョンの一つ、極寒のニヴルヘイムから出土したアイテム。


 それは単純な宝箱のような形をしており、基本的には収納袋のような小さい箱の中に考えられないほど大量の物品が入るものなのだ。しかしこのアイテム、冷徹なる女王の棺は収納したものを全て凍りつかせるというなんともユニークな収納袋だ。


 しかしこのアイテム、なんとも恐ろしい特性を持っており箱が開いている限り周囲のものを収納し続けるのだ。それのどこが恐ろしいのかというと収納するものは物だけではない、大気ですら収納してしまうのだ。そしてその容量はほぼ無制限。というより限界を調べたことがないので詳しくはわからない。


 しかしもしもこの冷徹なる女王の棺が開いたまま放置されれば、この世界中の大気が収納されてしまう。いともたやすく世界を破壊することのできてしまうアイテムの一つなのだ。


 そしてこのアイテムはかつて風神と呼ばれた風を操る魔神討伐に利用され、風神の風魔法の全てを収納してしまい風神に何もさせることなく殺したという逸話も残っている。


 そんな風神を、彼女を冷徹に殺したアイテムということで今の名前がついたという話だ。なんとも恐ろしいアイテムだが、今のこの状況ではもっともふさわしいアイテムかもしれない。オイルたち使い魔は新たに作戦を考え、それを実行することにした。


 作戦は簡単。まずは死の湖の上層部に小舟を浮かべる。そこから釣竿を使って冷徹なる女王の棺を沈めていく。沈める際にはクロールたちが同行する。そして液化した天然ガスの層ギリギリまで釣り糸を伸ばす。そして近づいたところで冷徹なる女王の棺の蓋を開く。


 注意しなくてはいけない点は冷徹なる女王の棺を沈めすぎないこと。もし沈めすぎて液化天然ガスの中に完全に入ってしまうと釣り糸が凍りつき、もしかしたら糸が切れてしまうかもしれない。そうなってしまっては目も当てられない。冷徹なる女王の棺の回収が困難になる。


 早速作戦を決行する。スルスルと釣り糸を伸ばしギリギリのラインまで攻める。同行しているクロールは眷属を使ってギリギリのラインを確認していく。そしてちょうど良いと思ったタイミングで箱を開いた。


 しかしそこで問題が起きた。冷徹なる女王の棺が想像以上に収納能力が高いのだ。周囲のものを収納するときの反動で釣竿が強く引っ張られる。念のために数本の釣竿を使用してしっかりと固定しているのだが、それでも糸が切れてしまいそうだ。


 ある程度収納できたところで箱を閉めようと待機していたクロールはあまりの勢いに飲み込まれて収納され、死んでしまった。もうこれではどうしようもないと思ったその時、ついに糸が切れて冷徹なる女王の棺は沈んでいった。


『オイル・ど、どうしよ…』


『オイル#1・どうするこうするも…回収しなくちゃダメでしょ。クロール復活したらもう一度潜ってもらおう。』


『オイル#2・蓋が開きっぱなしの時は…ルシュール様になんとか言って助けてもらおう。』


 それからクロールの復活を持って再び死の湖の探索を再開する。クロールが湖に勢いよく沈んで行く。そして数分後、再び液化天然ガスの層にたどり着くとそこには液化した天然ガスは存在しておらず、ただの天然ガスがあった。


 そして天然ガスの中を真っ逆さまに落ちて行く。液体などはないので単純に空から落ちる感覚だ。そのまま落下死になるかと思いきや、すぐに何かにぶつかった。確認するとどうやら死の湖に投棄された流通禁止金貨や様々な芸術品の類だ。


 しかしそんなものには目もくれず周囲を見回すと下の方に冷徹なる女王の棺桶が半開きの状態で転がっていた。すぐにクロールは蓋を閉じ、回収してしまう。


『クロール・任務達成。戻る前に周辺の探索をするよ。』


『クロール#1・了解、各自散開して息の続く限り探索します。』


 すぐに探索を開始したクロールであったが、積み重なった流通禁止金貨のせいで何がなんだかわからない。なので周囲のものを回収しながら探索を開始していくと怪しげな機械が目に入った。しかも地面に固定されているようだ。


『クロール・ここは…何かの施設?そんな情報聞いてなかったけど……見た感じかなり力の入った施設みたいだね。』


『クロール#3・書物を発見しました。日記…だと思います。しかも……使われている文字は日本語です…』


 クロールの眷属は時間もないのでざっと目を通してく。するとそこにはここの研究所でのことが書かれていた。そして読んでいってわかった。これは日記というよりも遺書であると。


『本国との転移装置の接続が切れた。本国に何かあったのだろう。確認したいが、ここから出る手段がない。超極秘機密を扱うため出入り口を一つにしたのが裏目に出た。しかしそれで構わない。我々は研究を進める。』


『食料が無くなった。もう長く生きることはできないだろう。だが私たちの研究を、我々の意思をここに残す。緊急時の爆破システムを応用してここに天然ガスのみを注入する。そうすれば天然ガスを用いた凍結保存が可能なはずだ。いつの日か、誰かが我々の意思に気がつくことができるかが心配だ。だが信じている。我々の全てをあなたに託そう。』


『クロール#3・……い、一体…ここはなんなの?』


『クロール#5・集まって。白獣がここに僕たちを来させたがったわけがわかったよ。』


 クロールたちは残り少ない息をなんとか保たせながら集まる。そしてクロールの眷属が呼んだ場所に集まるとここの正体の全てを理解した。必要な情報を得たクロールたちは息の限界がきてしまいその場で酸欠を起こし、スマホへ死に戻りをした。


 クロールたちが消えたその場所には一つの石碑が置かれている。そこにはここの施設の名称、オリンポス国第0特殊魔導科学研究所と書かれていた。




 久しぶりに1話を読み返したら、文章酷い…と思い1〜3話までガラリと改稿しました。

 ストーリーそのものに変更はございません。改稿した時に伏線を入れた…なんてこともないです。隔日投稿が続けられる範囲で今後も改稿していくかもしれません。

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