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第222話 セキヤ・ミチナガの簡単国造り

 国を作るのにおいて最も難しいことは何か。それは人集めだ。人がいなくちゃ国はできない。…まあ地球でも人口10人未満の国はあることにはあるのだが、そういったことは放っておこう。とにかく人がいなくては国は成り立たない。


 しかし人がいるだけではダメだ。国民全員が満足できる食事も提供しなくちゃいけない。そして仕事だ。仕事がなくては金を稼ぐ方法がなくて、暮らしてはいけない。国民全員にタダメシ食わせ続けることなど不可能だ。


 そして何より土地だ。国が作れるだけの広大な土地が必要だ。しかも土地選びは難しい。下手な土地では他国に侵略されやすい可能性がある。それに水源の確保や、農耕のできる土壌、漁業のできる河川なども必要になるだろう。


 なんだか一番大事なものが色々上がったが、とにかく人、食料、仕事、土地の4つがあればとりあえず形にはなる。そこから法律やなんやらと色々必要になるものを足していけばなんとか良い国にはなるだろう。


 なんせミチナガも使い魔も国を作ったことなどない。色々と試行錯誤が必要なのだ。とりあえず今用意できるものを考えよう。


 まずは人だが、これは避難民の獣人たちが山ほどいる。これは問題ない。次に食料だ。避難民全員を自給自足できるまで、まともに食わせる大量の食料が必要だ。しかしこれも問題ない。スマホでは今でも大量の食料が絶えず生産され続けている。なんなら10年単位で養うことも可能だ。


 次に仕事だ。これはとりあえず食料生産のために農耕をさせたり、建築をさせたりする。その手の技術者は使い魔たちが十二分になんとかできる。しかし他にも仕事は必要だ。農耕には農作業の道具が必要だ。つまり鍛治師が必要となる。しかしこれも使い魔のスミスがいるので問題ない。


 他にも衣服の生産や薬、趣向品である酒などもあると良いだろう。これも全てミチナガ商会で取り扱っているものだ。技術力もあるので問題ない。生きていくための道具や物は全てミチナガ商会で培ったノウハウがあるので問題ない。つまり仕事もなんとかなりそうだ。むしろ大量生産できたらミチナガ商会の流通に乗せられるので外貨獲得も可能。


「あれ?必要なのって土地だけ?」


『ポチ・えっとあれにそれにこれに……まあそうだね。法律関係もブラント国王とか色々いるからなんとかなるよ。』


「じゃあ本当に土地だけじゃん。だけど土地が一番難しいかぁ……イッシン様に聞いてみるか。あの人この国の魔神だし、あの人から許可でればなんとかなるでしょ。」




『土地ならなんでも良いっていうならいくつかありますよ。ただ危険度の低い土地という風に考えるなら……一箇所ありますね。誰の土地でもないですし…平気だと思いますよ?』


「マジで?あ、じゃなくて本当ですか?あの…正式に国家として樹立することを認めてもらえたりなんて……」


『ちょっと私だと弱いので……妻に相談してみます。……あ、避難民の受け入れ国ということなら問題ないそうです。近年避難民の問題酷かったらしいですから。ちゃんとしたのを作れば認めるし、貿易国にも認定してくれるそうです。』


「え〜〜…ありがとうございますぅ。あ、それじゃあ場所へ案内とかお願いします。それじゃあまた今度。………予想以上に軽かったぞ。やばい、本当に国できちゃう。」


『ポチ・ユウがアレクリアル様にも話つけてくれたって。なんでも英雄の国の飛び地として認めてくれるみたいだよ。神剣と勇者神の同盟の証として話つけられるか協議してくれるって。だから計画進めちゃって良いって。』


「う、うわぁ〜〜……予想以上に話進んじゃった。マジで?マジで俺国作っちゃうの?」


 あまりにも軽い感じで国が出来上がりそうなのでミチナガは途端に不安になっている。内心、色々やってみてやっぱり無理だから誰かに避難民頼んでみようとか考えていたのだ。しかしまさかここまでトントン拍子に行くとは思いもしておらず、動揺が止まらない。


「だ、だけど避難民の人たちだって俺の言葉を信じてくれる可能性は低いよな。いきなり国つくるからそこに住めだなんてそんな都合の良い話を信じるわけないだろ?課題は盛り沢山なんだよ、国を作るなんてそんな簡単にできるわけ……」



「私たちはあなたを信じます。もう私たちにはどこにも行くあてなどない。ここにいてもまともに暮らすのは不可能です。今、仲間たちに声をかけて集まっています。どうか…どうか私たちを導いてください!」


「あ〜〜……う、うん。任しておいてください。皆さんは他にも避難している人々に声をかけて集めてください。」


 予想以上に簡単に説得が完了していた。むしろミチナガが救ってくれると信じて大勢が集まりつつあるという。その数はすでに500人を超えている。もうこれだけの人数がいれば簡単に国が作れそうな勢いだ。


 しかし何故こんなにも簡単に人が集まったかといえば、避難民の大半が女子供だという点だろう。女たちは子供を育てるために藁をも掴む、藁にすがる勢いなのだ。ここでミチナガに見捨てられたらおそらく、8割方は飢えや病気、なんらかの犯罪に巻き込まれて命を落とすだろう。ならば少しでも生き残る可能性のあるミチナガを頼るのはある種の必然である。


 そして翌日、イッシンがミチナガを迎えに来た時には周辺にいる獣人の避難民総勢800数十名が一堂に会していた。これにはイッシンもミチナガの人心掌握術に恐れ入ったのだが、当の本人はこんなに集まって、責任の重大さを感じ取り胃に穴が開く思いをしている。


「さすがですねミチナガさん。全員で行軍して行くのは難しいでしょう。案内する土地まで空間を切り繋げます。ミチナガさんは先に行って土地神と話をつけてください。」


「……ええ、わかりました。」


 ミチナガは今後の不安などを色々考えながらイッシンの作った空間の裂け目に入って行く。するとそんな時、先ほどのイッシンの言葉を何度か思い返して急に我に返った。


「ちょ、ちょっと待って!い、今なんて!?土地神って!」


 しかし無情にもミチナガはミチナガの後ろから続々と続く避難民に押されて、その答えを聞くことはできなくなっていた。だがミチナガはイッシンの言葉の意味をすぐに理解することになる。何故なら空間の裂け目を超えたその先の巨大な古木の上にそれはまた巨大な九つの尻尾を持った猫がいた。


『やれやれニャ。イッシンの小僧が言っていた男はお前かニャ。イッシンに免じて話だけは聞いてやるニャ。』


「え、えっと……土地神様…ですか?」


『いかにもニャ。猫森の守護猫、猫神のミャー様ニャ。』


 突如現れた巨大な猫がこの森の守護者だという。しかしすぐに理解も納得もできた。何故ならこの猫からは森の大精霊のような巨大な力を感じたからだ。おそらく本質的なものは同じであろう。ミチナガがその場で跪くと移動してきた獣人たちもぞろぞろと頭を下げ始める。


『随分と来るニャ。お前の願いはなんニャ?』


「どこでも構いません、ここに彼女たちが住める国を作りたいのです。私たちに住む土地を与えてください。」


『土地神たるミャー様に土地をくれとはなかなか面白いことを言うニャ。そんな話聞く耳持つ気もないニャ。……だけどイッシンの頼みでもあるからミャー様の課題を3つクリアしたら、願いを聞き届けるニャ。』


 どうやらイッシンが随分と口利きしてくれたらしい。おかげでなんとか話をすることができるようだ。しかし課題をクリアするとは、かなりの難題を吹っ掛けられるのだろう。ミチナガは思わず唾を飲み込んだ。


『まずは一つ目ニャ。ミャー様に献上する酒を持って来るニャ。ただしただの酒ではダメニャ。猫神たるミャー様にふさわしいマタタビ酒、中でも猫騙しを持って来るニャ。しかも樽で10個ニャ。』


 銘酒猫騙し。人間が飲むのには向いていないが、猫の獣人だったり猫神が飲むのには最高のマタタビ酒だ。かつて猫騙しによって酔った猫が、人間に金銀財宝を騙し取られたのが由来とされる幻中の幻の酒だ。


 なんせ飲む人間がいないため、わざわざ作ろうと考える人間はいない。作り手がもともと酷く少ないため、歴史上でもどんなに文献を探しても1トンも作られていない本当の幻の銘酒だ。


『じゃあこの課題をクリアするまでこの土地から出て…』


「えっと…10樽だけでいいんでしたっけ?どうせなので…少し多めに持ってきました。」


『ニャニャ!!嘘ニャ!猫騙しを持ってこられるわけ……本物ニャ…本物の猫騙しニャ…その中でも最高の出来ニャ。』


 まあどんなに幻の酒でもミチナガには酒造りの天才、いや神と言えるソーマがいる。ソーマに言えばどんな幻の酒でもすぐに数十樽と用意してくれるだろう。はっきり言ってこの課題はミチナガにとっては楽勝だ。


 だがこれは本来、無理難題中の無理難題である。なんせこの世界でこの酒を作れるのはソーマただ一人。ソーマと知り合っていなければこの酒の存在を知ることも、入手することも不可能だ。そんなミチナガに猫神は次なる難題を思いつく。


『まずはこの難題をクリアしたことを褒めてやるニャ。だがニャ…本番はここからニャ。次の難題は精霊鈴成草ニャ。なんとも美しい花で綺麗な鈴の音がするニャ。これを花が20輪以上ついた状態で生きたまま持って来るニャ。』


「せ、精霊鈴成草…そ、それは一体どこに……」


『優しいミャー様はそのくらいは教えてやるニャ。ここからずっと離れた花の大精霊が治める花の国にあるニャ。そこから頑張って持って来るニャ。まあそんなことは不可能ニャ。さっさと諦めて…』


『フラワー・お待たせ〜〜持ってきたよ〜〜』


『ニャニャニャ!!それは精霊鈴成草ニャ!しかも100輪以上付いている特上品ニャ!ど、どうやったニャ!』


「ま、まあうちの使い魔、花の大精霊様に弟子入りしていますから…」


 実はミチナガが軽く時間を引き延ばしている間にフラワーが花の大精霊に咲かせてもらっていた。あまりにも瞬時に完了する課題がたて続くことにミチナガ自身驚いている。まあこれもある意味ミチナガでなければ不可能な課題だ。


 猫神はかなりの無理難題をいともたやすくこなしてしまうミチナガに憤りを感じている。なんとかして一泡吹かせてやりたいところだが、良い案が思いつかない。そう簡単に手に入らないものを言ったところで今までと同じようにいともたやすくクリアされる可能性がある。


 しかしそこで猫神は思いついた。今までのものはどれも戦闘力がなくても手に入るものだ。では強敵からしか手に入らないものならミチナガでも用意できないだろう。猫神は少し考えると、とびっきりの良い案を思いついた。


『ここまで本当によくやったニャ。これが最後の試練ニャ。ミャー様のおもちゃを作るニャ。しかし、ただのおもちゃじゃだめニャ。白鯨のヒゲに原初グリフォンの羽をつけた特製のおもちゃニャ。原初グリフォンの餌にされることもある白鯨のヒゲに、原初グリフォンの羽をつけると言う奇抜なおもちゃニャ。さあ、最後の試練をクリアできるか……』


『エン・ボスおっひさ〜。羽とヒゲ持ってきたから作るのはよろしくね。あ、お母さん心配するといけないからすぐに帰るね。』


「あ、サンキュー。白鯨のヒゲの先に原初グリフォンの羽を結びつければいいんだよな。ここをこうしてやれば……これでいいですか?」


『……結び目を綺麗にするニャ。…そう、それで良いニャ。ミャー様の課題をクリアしたニャ。もうなんの文句もないニャ……』


 どうやらミチナガは猫神のすべての課題をいともたやすくクリアし、願いを叶えることに成功したようだ。しかし願いを叶えたミチナガ本人は、こんな簡単にことが運んで本当に良いのかと、ずっと不審に思っている。


 こうしてミチナガの国造りの準備段階はものの3日もかからずに完了してしまった。




 他の有名作品の感想欄で読者の方による宣伝が行われました。これは勘弁してください…

 現状、全くアクセス数も増えない無意味なことです。しかも下手をしたら炎上案件ですし……普段も何がきっかけで炎上するかわからないので、感想などの返信をしていないくらいなので本当に勘弁してください。


 幸いその作者の方も気にしていないので今のところ問題はないと思います。報告をくださった方には感謝しています。


 本当に宣伝したいと思うなら小説紹介系のサイトに書き込んだり、レビューを書いてください。そうすれば私は大喜びです。本当に他の方に迷惑をかけることはやめてください。お願いしますね。


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