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第20話 安請け合い

 翌日も俺は早起きをして料理長の元へと向かう。

 魚料理を色々と試してみるとのことなのでその料理レシピを入手させてもらおう。

 もう料理長も俺が来ることには慣れたようで何も言わずに作業工程を見せてもらえた。


 今日は朝食から結構ガッツリとした料理が多い。

 なぜかと聞いてみるとファルードン伯爵が今日は朝からパーティのために友人たちの元へ会いにいくのでたっぷり作ってくれと昨晩のうちに注文されていたらしい。


「ミチナガ様がもっとあっさりとしたものが良いのならば別でお作りしますがいかがいたしましょう?」


「いえ、全く問題ないですよ。朝から豪華なのは逆に嬉しいです。」


 別に俺は朝からカツ丼を食べても問題ない。むしろ朝からガッツリいきたい派である。

 それにレシピがたくさん手に入るのでいいことづくめだ。

 その後も料理長は様々な作業をこなしていったがしばらくするとなぜか俺の方をチラチラとみ始めた。


 何かまずいことでもやってしまったかと思っていると周囲の料理人たちも俺の方を見ている。

 周囲を見てみるが何か問題があるようには思えない。いつもと同じようにしているはずなのだが、なぜか注目が集まっている。


「あの…俺何かまずいことしちゃいましたか?」


「あ、いえ…その頭の上のものは何かと思いまして。聞いても良いものかわからなかったもので。」


「頭の上?」


 特に何か感じているわけでもないのだが頭の上に手を伸ばしてみる。すると何かフニフニしたものに手が当たる。

 掴んで目の前に持って来てみるとそれは間違いなく俺の使い魔だった。

 勝手に出て来ることなど今までなかったというのに一体全体どういうことなのだろうか。


「いや…お前新入りの方か。軽くてよくわからなかったぞ。というかなにしているんだ?」


 俺の言葉に対して喋ることのできない使い魔はジェスチャーで必死に俺に訴えかけて来る。

 料理の方を指差してブンブンしているのだけなので何が何だかよくわからないが何かわかった気がする。


「料理に興味があるのか。まあ見ていても邪魔しないんだったらいいぞ。俺の頭の上でじっとしておいてくれよ。」


 そういうと嬉しそうに手をブンブン振るっている。なんというか元気いっぱいで自由なやつだな。

 ポチとはまるで違う。個性豊かな使い魔達だな。


「というわけですみませんが料理長。気にせずに続けてください。」


「は、はぁ。」


 その後も気になって仕方のないようだったが料理の方に悪影響を及ぼすことはなく無事完成した。

 ただ料理完成後も使い魔はスマホに戻ることなく居続けた。どうやら自分もその料理を食べたいようだ。

 ファルードン伯爵にもアンドリュー子爵にも、というか誰にも使い魔は見せたことがないので正直見せて良いものかと思ったが、まあ見せたところで特に問題が起こりそうでもないので許してやることにした。

 するとその状況をスマホの中から見ていたポチがそいつだけずるいと言わんばかりに飛び出して来た。


「ポチも食べたいのか。まあ1匹も2匹も大して変わりはないか。その代わりお行儀よくしておくんだぞ。」


 シュピっと2匹とも敬礼をする。敬礼の使い方間違っているような気がするがまあそんな細かいこと言っても意味はないので放っておく。


 いつものように朝食を食べるために移動しているだけだというのに周りのメイドたちが黄色い声をあげる。

 その声を上げる対象は俺の方ではあるが決して俺ではない。というか今の今までそんな扱いされたことなんてない。

 明らかにその対象は俺の使い魔である。


 新入りの方は俺の頭の上が気に入ったらしくいつまでも頭の上に居続けている。

 ポチはというと肩の上にちょこんと乗っかっている。その状態は確かに男の俺が見ても可愛いと思ってしまう。

 朝食会場に移動するとすでにファルードン伯爵とアンドリュー子爵は席について居た。

 そんな二人も俺の様子を見てすぐに使い魔に気がついた。


「ほう?随分と可愛らしいのが乗っておるな。それはなんだ?」


「使い魔です。いつもは出てこないんですが今日は出て来たがってしまったのでつい連れて来てしまいました。問題があるようでしたらすぐにでも下がらせます。」


「先生の使い魔ですか!先生がそんな使い魔を使役しているというのは初めて知りましたよ。問題なんてありませんよ。さあさあ食事にしましょう。」


 どうやらなんの問題もないようだ。席について食事を始めようとすると使い魔たちが降りて来てテーブルの上にちょこんと座る。

 新入りの方は早く食べさせろと言わんばかりにそわそわしている。


 まあ今日はたっぷりと食事があるので俺の食べるぶんがなくなるということはないので心配はいらないだろう。

 そのままでは大きすぎるので小さく切り分けてやるとそれを手づかみでどんどん食べていく。

 表情もいまいちわからないが幸せそうな雰囲気だけは伝わって来る。


「そんなにがっつくな。ああもうそんなに汚して。ほら、キレイキレイするぞ。」


「はっはっは。まるで親子のようですな先生。それにしてもそのような使い魔は初めて見ました。どこで使役なさったのですか?」


「いやぁ…俺にもよくわからなくて。なんというか召喚?みたいな感じでしょうか。正直使い魔のこともよくわかっていないのです。」


「使い魔を使役するが使い魔のことは知らんか。全くお主というやつはどこまでもヘンテコなやつだな。」


「使い魔の召喚ですか。その使い魔は見た感じでは力は強くないので簡単に召喚できそうですな。簡単に説明しますと使い魔は精霊や妖精といった自然的な魔力生命と、魔法による召喚された存在の二通りがあります。召喚された使い魔は力は強くありませんが主人に忠誠を誓ってくれます。召喚ではなく森などで見つけたものの場合は契約が必要なのですがこの契約ができるのは国にもなかなかいません。よっぽどの相性が必要なのですが契約した精霊などによっては絶大な力を得ることができます。勇者や英雄の類は大抵精霊と契約しておりますな。」


「なるほど。さすがはアンドリュー子爵。お詳しいですね。」


「なに、子供の頃は英雄にあこがれて精霊を探して回ったものです。まあ私には才能はなかったので諦めましたが…」


「まあそうそうなれるものでもないみたいですしそんなに落ち込まなくても…」


「いや、そいつが落ちこぼれと言われるようになったのもそれが原因じゃからな。普通貴族は妖精くらいなら契約できて当然なのだ。こやつの祖父も精霊と契約しておった。わしも契約しておる。とはいっても小精霊じゃからそこまでの力はない。」


「小精霊でも精霊は精霊です!それがどれだけすごいことか…精霊の契約は10万人に1人いるかどうかと言われるレベルなのですよ。妖精クラスの契約でも大変だというのに…」


「へぇ〜…じゃあもしかして使い魔持ってる俺って意外とすごかったり?」


「あ、いえ。召喚する使い魔は召喚するたびに自動で契約されますから。それに召喚されたものは精霊や妖精などと違い、召喚者自身の魔力が形づけられたものという認識が強いので召喚さえできれば誰でも使えます。」


 なんだよ、ぬか喜びかよ。まあ俺にとっては頼りになる相棒だからな、力が弱くったってに問題はない。

 むしろ誰かに見られても問題ないということは今後は別に隠し立てておく必要がないってことだ。

 誰かに見られて騒ぎになる問題がなくなった分気楽に扱えるようになった。


「そうでした。話は変わりますが私とファルードン伯爵はパーティのためにまたしばらく忙しくなりそうなのです。その間もしよろしければ先生にお願いがあるんです。」


「なんでしょうか?アンドリュー様のためでしたらなんでもいたしますよ。」


「実は先生に何か変わった料理と何か余興と言いましょうか、何か面白いものを見せていただきたいと思いまして。先生は以前鰻とかいうあの変な魚を調理法もご存知でしたので他にも変わった料理や何か我々の知らないことを知っているのではないかと思いまして。どうでしょう?」


 どうでしょうと言われてもどうしようもないんですけど。変わった料理くらいならなんとかなりそうな気もするが余興と言われても何も思いつかない。

 しかしアンドリュー子爵の願いを断るというのも難しい。

 それにこれは多くの貴族達にアピールする絶好のチャンスだ。うまくいけばでかい儲け話になることは間違いない。


「私でよければなんとか致します。任せておいてください。」


「おお!それは良かった。ではよろしくお願いいたします。」


 さーて安請け合いしちゃったけどどうしようかなぁ。



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