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第19話 アップデートと再び

 屋敷に戻ってすぐに中庭で釣った魚のお披露目が始まった。

 本当は中庭ではなく厨房の方が良いのだがあのでかい魚はここくらいしか置く場所がないだろう。

 周囲に十分な広さを確保してから早速魚を取り出す。


 取り出すとズドンと重い地響きが起きた。こうして取り出すとその大きさがよくわかる。

 体長は10m以上、体高は俺の背丈と同じかそれ以上ある。

 こんなものははっきり言って化け物レベルだ。


 異世界では当たり前のことなのかとも思ったが屋敷にいた全員が驚いていることからこの魚自体が規格外というのは間違いなさそうだ。

 あの湖の生態調査をして見ると面白いかもしれない。


「改めて見ると大きいですな。こんな大物見たこともありませんぞ。お祖父様が見たら血涙を流して羨みそうなものですな。」


「なんてことないわい。奴とは昔ここからはるか南西にある湖でこの倍近いモンスターを釣り上げたこともあるからな。ただあれはモンスターでこっちはモンスターのような魚じゃから違いはあるがな。」


「あ、そんなのもいるんですね…」


 珍しいようだが、これ以上の化け物もいるらしい。

 異世界…なんて恐ろしい。


「それでどうしますか?今日食べるぶんだけでも切り分けておきますか?」


「そんなもったいないことはできませんぞ先生!これをメインにしたパーティを開くべきです!」


「パーティはあまり好かんがこれを見せびらかしたい気分はある。昔の戦友と釣り仲間に連絡を取ろう。それまで腐らぬようにとっておきたいが…できるな?」


「ま、まあ問題ないですけど……」


 なんかものすごく鋭い眼光で睨まれた。

 一瞬にして全身が震え上がったが俺の返事を聞いたファルードン伯爵はすぐに嬉しそうに高笑いをする。何なんだよ一体。


「では日取りが決まるまで保管を頼んだ。1週間から2週間後になるだろうからそれまでは腐らせぬよう頼んだぞ。料理長は今のうちに調理方法を考えて置くように。」


「「わかりました。」」


 俺も災難だけど料理長も大変だな。見ただけの魚の調理方法を考えなくちゃいけないんだから。


 俺は魚を収納し、芝生に残った滑りなどはメイドさんたちが何とかしてくれた。

 その後今日釣った他の魚で夕食を作ってくれるということなのでそれまでの間休憩となった。

 俺は部屋に戻ったがファルードン伯爵とアンドリュー子爵はその場で談笑しているようだった。




「やはりあの男…何やら秘密を隠しているな。あれだけの魚を長期間保管しても問題のない収納袋などそこらの商人が持っているようなものではない。」


「確かにそうですなファルードン殿。しかし手出しは無用にお願いします。彼は私の師であり友人なのですから。それにどんな人間にも隠し事の一つや二つありますぞ。」


「わかっておるわい。特に危険もないしな。お主の数少ない友人に手を出すなんて野暮なことはせん。そんなことをすればあのジジイが地獄の底から這って出てくるわい。」


「あなたも十分ジジイですけどね。まあそのうち話してくれることを祈りましょう。」




 その日の夕飯は様々な工夫を凝らした魚料理の数々が並んだ。

 早速今のうちから予行練習ということなのだろう。

 俺にはどれも格別に思えたが伯爵にはいくつか好みの問題からか色々と口出しをされていた。


 まあ俺としても気になる点がないといえば嘘になる。

 まず調理方法は煮る、蒸す、焼くまでは問題ない。生というのもさすがに川魚なので難しいだろう。

 問題は揚げるだ。油で揚げるというものはこの国にもちゃんとあるのだが揚げ方が悪い。

 低温で揚げているせいでべちょっとした食感になっている。その点はファルードン伯爵も気になっているようだ。


 次に味付けなのだが何というか単調だ。全体的に味付けが洋風なのだがほとんどがただの塩味だ。

 何を言っているんだと思うだろうがただの塩味というのは続くと辛いものがある。

 甘じょっぱいとか甘酸っぱいとか味も他に色々ある。味のバリエーションが物足りない。


 それに旨味が少ないのだ。旨味は基本的に発酵食品などに多く見られるが発酵食品は主に保存食だ。

 貴族のようにいつでも食料が手に入る人間にはあまり縁もゆかりもないのかもしれない。

 やはり醤油や味噌が欲しくなる。麹さえ手にはいれば自分で作るのだがそんな簡単に手に入るものではない。


 あの味が恋しくてたまらない。俺なら醤油を使って照り焼きを作ったり蒲焼を作る。

 味噌を使って西京焼きに味噌汁を作る。何とか麹みつからないかな。

 あれって普通に作ろうと思っても奇跡でも起きない限りそうそうできないからね。


 その日の夜もいつものようにスマホを操作して釣りをしたり何度目かの蜜の実の収穫を行う。

 最近では畑の数も増えてきて合計で20個になった。

 そのうち4つの畑でプルーの木を育てているがそれ以外は蜜の実のようなまだ種を購入できていないものを育てている。


 どの作物も育てて収穫期を過ぎた後もそのまま育てることによって種を取ることができる。

 それによって今までどの作物も種不足にはならなかった。

 代わりに収量が減るがまあそこは致し方ないだろう。

 それと一度育てた作物を同じ畑で連続して栽培することは種を購入していないとできないらしく輪作のように代わる代わる別の種を育てていた。


 そんな苦労も今日でおしまいだ。いくつもの種の育成が完了し値引き額が購入額を上回ったおかげで無料で種を購入できるようになったのだ。


『おめでとう!蜜の実の収穫成功!これまでの総タップ回数4025回。収穫できた蜜の実3524個!ボーナスゲット!レベルアップ!』


 さらに蜜の実は経験値が多くレベルアップも早い。おかげで今日でレベルはとうとう100になった。

 いつものようにレベルアップ画面が終わったと思うと別の画面に切り替わった。


『レベル100達成!ここまで遊んでくれてありがとう!レベルが100になったことで次の段階にアプリが強化されるよ。アップデートをするから少し待ってね。』


「次の段階?アップデートってことだしなんか追加されんのかな?アップデートには追加の料金が必要になりますとか…ないよな?」


 このスマホのアプリなら平然と追加課金を求めるなんてことを平然とやってのけそうだ。

 全くそんなものは痺れも憧れもしない。課金の恐怖で震えがきそうだ。


 アップデートのためしばらく他のアプリで遊んでいるとアップデート完了の通知が来た。

 その流れでファームファクトリーを開こうとするとアイコンも変わっている。今までは野菜や果物だけだったのに今は野菜と果物、それに…動物が写っている。


 アプリを起動させてみると今までより畑が小さく写っている。いや、今までよりも全体が広く写っているのか?


『アップデートが完了したよ。今回のアップデートでレベルは1にリセット、だけど強化値なんかは元に戻ってはないよ。むしろ今までよりも上がっているよ。それから畑の所有数上限も上がったし新しい種も追加されているよ。それと今回から追加された新機能!牧場を持つことができるようになったよ。画面をスライドさせるか右上のアイコンをタッチして牧場に移動してね。』


「牧場!最高じゃん!」


 右上のアイコンをタッチすると画面が建物の中に切り替わる。牧草が敷かれていてまさに牧場感が出ている。


『牧場にようこそ!牧場では家畜を育てることができるよ。最初はボーナスとして家畜舎を1棟あげるよ。どの動物の飼育にも家畜舎は必要だから足りなくなったら別アプリで家畜舎を建設してね。ルールとして家畜舎には1系統の家畜しか入れられないよ。例えば牛と鶏は同じ家畜舎に入れられないけど牛だけだったら別種の牛を入れても大丈夫!それと家畜の育成には毎日必要数の飼料が自動消費されていくよ。餌がなくなると脱走しちゃうから気をつけてね。』


「相変わらずちゃんと作られてるな。餌は多分野菜を大量に在庫として持っているから問題ないけど毎日消費されていくならちゃんと牧草とか育てないとダメだな。それと家畜舎の増設は他のアプリが必要なのか…やっぱ金貯めてどんどんアプリ解放させないとダメか。とりあえず今は家畜の値段だけチェックしておくか…って今回はえげつないほど高いな。」


 牛も乳牛だけで10種類以上いるし鶏も同じくらいいるな。

 羊や鴨、豚もいるけど今回の値段はまたえげつない…


「牛は金貨20枚。しかもこれ一度買えばいいんじゃなくて1頭って表示されてるんだよな。この家畜舎を牛でいっぱいにするのに何頭の牛が必要なんだよ…それに肉牛とかだと一度売ったらまた買わないとダメだし乳牛でも乳が出なくなったら買わないといけないし…これは金かかるわ。」


 これは一度保留にしておこう。なんなら家畜も街で買い集めれば良いだろう。

 そうだそれがいい。前に何度か家畜を売っているところを見たことがある。

 確か値段も手頃だった。今度街に出たら色々と探ってみよう。


「おっと忘れないうちに種も買っておこう。散々育てたから色々買えるようになっているはずだしな。」


 購入欄を見てみると無料で買えるようになったものは別枠で表示されるようになっている。

 買えたのは蜜の実を含む10種類。しかもそのほとんどが主食にできる穀物類のものだった。

 穀物類は収量も多いため種の値段が安くなりやすい。


 今回買ったものの半分以上は穀物、しかし人の食用のものはその半分にも満たなかった。

 大して説明を読まずに育てたのが仇となったが牧場が解放された今となってはありがたい。

 

 例えばこの表示されているゼアとマイスは見た目完全にとうもろこしだが両方とも生色ではなくゼアにいたっては日本ではデントコーンと呼ばれる飼料用のとうもろこしだ。

 街では普通に食用として売っていたが購入欄には飼料用とはっきり明記されている。


 マイスの方はポップコーンである。

 街では売られているところを滅多に見なかったと思ったがそういうことだったのか。

 ポップコーンは他のとうもろこしよりも皮が厚いため熱を加えると弾けるのだ。なのでそこらのとうもろこしを乾燥させてもポップコーンにはならない。


 まあ何が言いたいのかというととうもろこしは生食がゼロなのだ。

 食べる方法はポップコーンにするだけ…いや一応ゼアの方がデントコーンではあるが粉にして食用にすることもできる。街でもそんなのがあった気がする。


 そのほかにも大豆や麦があるが食用はかろうじて1種類ずつある程度だ。

 飼料用ばかりだがこうなったらあの家畜を買うほかないな。値段も安いし数も増やしやすい。


 そして日をまたいだ時に女神ちゃんガチャをいつものように引いた。

 金貨でも出れば良いなと思っていたのだが今日は久しぶりに懐かしいものを見た。

 カプセルの代わりに排出された白いもの。これは2体目の使い魔だ。


 説明は前回されているので今回は普通に排出されただけだ。2体目の使い魔だがすぐにポチと仲良くなったようでスマホの画面内で何やら楽しそうにじゃれている。

 正直どっちがどっちだかわからなくなりそうだ。そのうち目印がわりに服でも着させようかな。


 これで使い魔による魚の自動入手とその他の作業をしてくれることによってさらなる収穫時間の短縮にも繋がるだろう。

 なかなか順調に進んでいるようで何よりだ。


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