表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
187/573

第182話 報酬の遺産

「あ〜…今日も作業は休みですかね。」


「そのようです。この砂嵐では作業もまともにできないですから。」


 二日連続で砂嵐が起きてしまい、作業は全て中断された。砂嵐の時は一体獣人達は何をしているのかというと何もしないことが多い。そもそも食料が限られていたので、下手に動いて腹を空かせると食糧不足に陥ってしまう。


 しかし今は俺がいるので、食糧不足に陥ることはない。それでも室内ではどうしても広さに限界があるので、動かないことの方が多い。


 それから白獣達は全員強いのかと思っていたのだが、魔王クラスは7人ほどしかいない。それでも人口から考えてみると多い方だ。


「それにしてもこの砂漠はどうにかできないんですか?例えば預言とかでこうすればこうなる…みたいな。」


「そのことも預言されていたようです。ただ、この地の荒れた魔力が時間とともに回復して自然と植物が生えて来たようです。その際にこの地を新たに開拓しようとした住人がこの地で特殊な鉱石を発見したようです。」


 つまり時間に任せないといけないっていうことか。今俺が話しているミラルはこの村の村長の孫で実力は魔王クラス、さらに次期村長として預言の内容をほぼ覚えているらしい。いわばこの村の重鎮だ。


ミチナガ『“なあドルイド、この地の魔力を安定させることはできないか?世界樹とか大精霊の力を使ってさ。”』


ドルイド『“不可能……この荒れ方…酷い……”』


 ドルイドでもどうしようもないのならもう何もできない。ドルイド曰く、この地の魔力を正すためには時間で解決するか、膨大な魔力を用いてこの地の魔力を押し出すでもしない限り不可能だという。


 さらに押し出す為の魔力もちゃんと安定させないと、この地の魔力と混ざり合い、さらなる魔力災害が起きるという。そうなってしまうと今度はモンスターの跋扈する土地になるか、砂漠が腐り果てて瘴気を撒き散らすことになるという。


「どうにかするのは無理難題ってことか…嫌になるな。」


 解決できない問題を考えていても仕方ないので、俺はスマホをいじることに脳を切り替える。この数日で新入りの使い魔達もずいぶん馴染んだようだ。人手不足ならぬ使い魔不足もある程度緩和された。


 しかし現状でもまだまだ使い魔は足りていない。スマホの中で働く使い魔もスマホの外で働く使い魔もいる為、さらなる使い魔を求めている。しかしその為の白金貨がないのでどうしようもないのだ。


 それから一つだけ変わったことがある。それは世界樹の国を増やしたことだ。以前は聖国だけだったが、勇者神の神剣と接触した為、大量のスマホのエネルギーを得ることができた。そのエネルギーを用いて熱国を追加したのだ。


 熱国はその文字の通り暑い国だ。その為南国系の野菜などを育てることができる。しかしかなりの熱量を持った場所もあるのだが、そこは利用方法が思い浮かばない。そこだけ気温70度はおかしいだろ。


 それからドルイド曰く世界樹はかなり成長したので特定条件を満たせばさらにもう一つ国を増やすことができるらしい。しかしまだ特定条件とやらがなんなのかもわからない為、国を増やすことはできないようだ。


 すると使い魔から連絡が入った。連絡してきた使い魔は俺と一緒にこの白獣の村に来た護衛の人々と共に英雄の国に戻ったやつだ。どうやら無事帰ることができたらしい。どうやら今は勇者神のところにいるらしく、俺へテレビ電話が繋げたいらしい。俺は失礼のないようにある程度身だしなみを整えてから電話に出た。


『やあミチナガ伯爵。ちょうど今報告を受けた。この報告には驚いたよ。まさか白獣達の待ち人が君だったとはね。』


「私も驚いています。それで…この地を私の領地にするという話は通してもらっても構いませんか?」


『もちろんだ。白獣の村長からの許可証も出ているからね。ああ、それから村の運営資金と約束していたものを諸々渡そう。この使い魔くんに任せれば良いのかな?』


「はい、そうしてもらえるとお互いに無駄な時間を取られずに済むと思います。」


『わかった。それでは…受け渡しに何かして欲しいことはあるかな?金貨が良いとか銀貨が良いとか。』


「…できれば白金貨が良いな〜…なんて。」


『良いだろう。では…白金貨を200枚、金貨を50億枚で良いかな?ただし金貨は流通制限金貨が20億、流通禁止金貨が20億、普通の金貨が10億枚だ。公式発表には流通禁止金貨のことは載せないから黙っておくように…良いね?』


 なんかもう桁が違うとかそんなレベルじゃない。ここまでやってくれちゃうのかよ。あのゴブリンエンプレスの時に物資を提供したからとか情報を送ったからとかそんなレベルじゃない。ここまでもらってしまうとさすがにまずい気がする。


 しかしなぜここまで多いのかはすぐに判明した。それはナイトの功績だ。ナイトの今回の働きは金貨10億枚分ほどの価値がある。しかしナイトは金貨などに興味がない為、その全てを俺への報酬としたのだ。


 それから伯爵の地位を与えたというのに、辺境の砂漠を領地として授けたと他国に知られたら色々と問題が起きる。英雄の国で伯爵になっても辺境の地に追いやられてお終いだ、なんて噂がたとうものならそれは大きく国の信用を失う。


 つまり内訳でいうと白金貨200枚は今回のゴブリン騒動に対する俺への報酬。さらに金貨20億枚は俺の伯爵として領地経営分の支援金。残りの金貨10億枚はナイトへの報酬ということだ。ちなみに流通禁止金貨分に関しては秘密裏という扱いなので内訳には含まれない。


 それでも俺にとっては破格のようにも思えるのだが、英雄の国で伯爵になれば初年度の支援金はこの程度が当たり前だという。英雄の国すげぇな。


『それから神器も全て渡しておこう。我が国で保有する神器5点、全て君に預けるぞ。』


「ありがとうございます。大切に扱わせていただきます。」


 神器、つまり俺でいうところの遺産を5点も手に入れることができる。これは最高だ。正直今回の報酬で一番嬉しいかもしれない。遺産一つ入手するだけでも俺のスマホは大きく進化する。それが5点となると一体どこまで成長するのか…


『ミチナガ伯爵、君には期待している。神器を持つ君がこの国にどれほどの恩恵をもたらすか……。その時を待っているよ。』


「き、期待に添えるように努力します。」


 そこで通信は終わった。ものすごく期待されているけど、俺はその期待に応えられそうな気がしない。こんな大金をもらっても自分の身の回りのことくらいしかできない。俺がミチナガ商会を増やしたところでこの国には大した影響にはならないだろう。


 とりあえずこの村で鉱石の採集と村の発展をなんとかしたら、また旅に出よう。早いうちに北の方へ行かないといけないらしいし、あまり悠長にしている時間はないのかもしれない。


 また近いうちに忙しくなりそうだ。それまではこの村で束の間の平穏を楽しもう。





「ハロルド。この報告書は本当か?」


「はい、ぼっちゃま。ミチナガは伯爵として白獣の村を含む砂漠一帯を賜ったようです。それと少し多めの資金も貰ったようですな。」


「なるほどな…あの村を発展させたところで功績は高が知れている。発展させるのにも莫大な労力と時間がかかるだろう。これはチャンスだ。ここで一気に功績をあげるぞ。ハロルド、下準備は整っているな?」


「もちろんでございます。旦那様にお願いをして全て準備は万端でございます。」


「よし、ではいくつかの国をこの英雄の国の属国にするぞ。私はもっと上の地位までのし上がってやる。」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ラルド氏···まだ先は読んでませんがなんか破滅しそうな予感。 昔のオカン達みたく「余所は余所、ウチはウチ!」精神で行けば良いのに···。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ