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第180話 預言の力


 令和元年始まりましたね。

 せっかくのゴールデンウィークを満喫していたら投稿が遅くなりました。

 俺が部屋の外に出ると数人の白獣たちが待っていた。彼らは皆一様に頭を下げている。この預言書の著者である深山の願いを叶えて欲しいと言うことなのだろう。しかし俺はそんな彼らにどうしても聞きたいことがある。


「あなたがたはどうしてここまで待っていたんですか?私がくる確証はなかった。それにもう何百年も前のことじゃないですか。一体何があなた達をそこまで…」


「恩を受けました…我らの女王陛下は我々をお守りするためにその人生を捧げ、愛すら捨て去りました。女王陛下は我らを救うために何もかも捨て去ったのです。旦那様はそんな女王陛下に愛を取り戻してくれた。笑顔を取り戻してくれた。その恩を返すためならばたとえ100年、1000年だろうとその恩を返すために待ちましょう。ただそれだけのことです。」


 この村の村長はそう言った。彼らの言う女王陛下というのは神獣と呼ばれた魔神のことだ。確かに神獣がいなければこうして白獣の村はなかっただろう。もしかしたら今でも奴隷として扱われるか、迫害を受けていたかもしれない。


 しかしそんな神獣に愛を取り戻してくれた、笑顔を取り戻してくれたと言って数十世代にも渡ってその恩を返し続けるのは俺には考えられない。そんな恩など2〜3世代で十分返したと思っていいはずだ。


 しかし彼らはそうは思わなかった。こうして俺がくるまで待ち続けていたのだ。その日が来るのを何日も何日も待ち続けていたんだ。


「この預言書はいただいていきます。そして出来うる限りの事はしてみます。ただ全てが思い通りになるとは限らない。私一人ではできることも限られて来ますから。」


「ならば我々もお供いたします。とはいえこんなババアでは役にも立ちませぬ。この村の腕利き5人をお連れください。この日のために鍛錬を積んでおります。お役に立つことでしょう。」


「よろしいのですか?そんなことをしたらこの村の防衛は…」


「この村にはまだ手練れはいます。身を守ることくらいはできましょう。」


 まあ確かに手練れが多いという情報は聞いているが、それでも数少ない村人の中から手練れを連れ出すというのはさすがに不安も残るだろう。それにこの村でもやりたいことはある。そして色々考えた結果俺は一つの結論を出した。


「この預言の書にはこの村でやっておくべきことが書かれていました。だからこの村に必要な設備を建てたいと思うのですが、許可を願えますか?かなり大掛かりなものになると思います。それに人手も欲しいです。」


「ならばその望むままにいたしましょう。それが我らの使命でもありますから。」


 とりあえず補給部隊の面々にもある程度は報告しなければならないため、歩きながら話を詰めていく。しかしなんというかやりやすくてやりにくい。俺がこうしたいというとじゃあそうしようと言って話が終わってしまう。


 どんな意見でも通ってしまうというのはやりやすいのだが、本当にこれで良いのかわからなくなって来る。正直この人たちは思考を放棄しているようにも思える。そう不安に思うとそんな俺の表情から察したのか村長は話しかけた。


「今までの話に問題点はございません。それに我々も馬鹿ではございません。もしもあなた様が道を間違えようとした時はどうとでもできます。それがわかっているからこそ今は従っておるのですよ。」


「そ、それを聞くとさらに不安になるんですけど…」


「ヒッヒッヒ…くれぐれも道を間違わぬように。」


 いざという時は武力行使かよ。別の意味で不安になるのだが、そんな俺の脳裏にふと一つのことが思い浮かんだ。


「もしかして…あの預言書とは別にあなた方の預言書もあって、俺の今の行動はその預言通りだったりして……」


「さあ?どうでしょうかね…」


 村長はニヤリと笑う。うわぁ…絶対予知されていたよ。深山の予知能力恐ろしいな。ここまでの流れ全て予測通りかよ。俺は地上に出て補給部隊の面々の元に行く。随分と心配していたようだが、なんともなかったようで安心してくれた。


「つまり…ミチナガ伯爵が白獣たちの待ち人だったと?」


「なんだかそういうことみたいです。それで…ここで色々とやることがあるのでみなさんは先に帰ってもらっていいですか?陛下にはしばらくかかるとご報告ください。」


 俺は預言書のことは伏せて、あくまで俺が彼らの待ち人であったことだけを伝えた。それからもっと大切なことも言わないとな。


「それから陛下にこの砂漠一帯を我が領地としていただけないか打診してもらえますか?おそらく…大丈夫だとは思うんです。一度出向く必要があるのなら…使い魔を預けておきますのでこいつに伝えれば俺にも伝わりますので。」


『名無し・よろしくお願いします!』


「わかりました…ですが大丈夫なんですね?過酷な環境ですし…食料も」


「その辺りをどうにかするためにも残るんです。まあ任しておいてください。」


 そう伝えると補給部隊の面々は食料や物資を全て置いて帰って行った。泊まれば良いのにと思ったが、白獣たちは泊めてくれることはないとのことだ。その場で別れを告げると魔動車は連なって帰って行く。


 俺はそんな彼らを見送った後にとりあえずこの村にいる白獣たちを全員集めて今後について話し合うことにした。この村に住むのは総勢78人。そのうち子供と老人を除くと52人だ。


「さて、皆さん初めまして関谷道長と言います。あなた方の信じている預言書を書いた深山賢人と同じ世界から、つまり異世界から来た人間です。そしてその預言にあった人間です。」


 全員が頭を深々と下げる。ちょっとドギマギするがそこは気にしないでおこう。とりあえず誰も警戒していないようで良かったのは確かだ。俺は自己紹介もソコソコに早速これから取りかかることを説明する。


「まずはこの砂漠に眠る希少鉱物を取り出します。ですがその方法は明らかになっていません。ですから…」


「採取方法はこのようになっています。大掛かりな設備が必要です。すでに下地はできているので明日から早速取り掛かりましょう。」


「え?」


 村長が取り出した紙にはその希少鉱物の採取方法と精錬方法が書かれていた。必要な設備の設計図まで書かれている。ここに書かれた通りに作れば完成だ。


「もしかして…これも預言で?」


「もうこの図面は100年以上前に完成させております。幾人もの鍛治師とコンタクトを取り完成させたものです。」


 なんかもう話すのが嫌になってくる。俺が何をしようか、何を成そうかと思いついて話したとしても全て深山の予言で知られているのだ。すでに過去に確定された未来を俺はなぞっていくだけだ。そう思うとなんとも気持ち悪い。


「その図面を一度確認させてください。それから明日のために今日は思う存分食事を摂ってください。」


 俺は図面を預かると大量の食事を用意した。明日からのためにもたくさん食べて体力をつけてもらう。俺も食事をしながら図面を確認しているとスマホから数体の使い魔が飛び出してきた。その手には様々な楽器が握られている。そして皆の前に並ぶと演奏を始めた。


 こいつらは、というかこの筆頭は新しい使い魔だ。勇者神の神剣との接触により、遺産の力を回収できた俺は新しい使い魔を入手していた。しかも3体もだ。一つの遺産から複数の使い魔が発生するのは初めてのことである。強力な遺産ならではのことだろう。


『オペラ・曲は〜こんな〜感じで〜い〜い〜〜?』


『ダン・いいねぇ!ノってくるヨォ!』


 この二人、オペラとダンは神剣から入手した使い魔である。オペラは音楽家、ダンはダンサーだ。一体なんで神剣から音楽家とダンサーが現れたのかは全くわからない。関係ないだろ。


『ジャズ・もうちょっとベース抑えないと…』


『アコース・ああ…また曲調変わった。自由すぎるでしょ。』


 ジャズとアコースはオペラとダンの踊りと歌に共感し、ベースとアコースティックギターを始めた使い魔である。ただ一人では弦を押さえて弾くというのが難しいので眷属と共同で楽器を演奏している。


 かなり自由でめちゃくちゃだった曲も徐々に落ち着いてきた。俺はゆっくりと聞いているとダンのダンスに惹かれたのか白獣の人々も踊り出した。なんともお祭り騒ぎで楽しくなってきた。


『ダン・ヘイヨー!もうちょっとリズムあげたいヨー!ボス頼むヨー!』


「え〜…全く仕方ないなぁ。飯食っているから簡単なやつだけだぞ。」


 俺はスマホを取り出すとアプリを起動する。このアプリはオペラとダンを入手した時に手に入ったアプリだ。その名もミュージックマイライフ。どんなアプリかというとただの音ゲーだ。


 音楽に合わせて光のバーが落ちてくるからそれに合わせてタップする。ただそれだけのゲームではあるのだが、これがなかなかに楽しい。なんせ俺のスマホで初めてまともに遊ぶだけのアプリが来たのだ。


 まあこのアプリに連動して使い魔達の演奏が始まり、俺のタップによって良し悪しが決まる。だからただ遊ぶだけとは少し違うのだが、まああまり変わらないだろう。ちなみにゲームの難易度はいくつかあるので結構楽しめる。


「ほら、じゃあいくから準備しろよ。」


『『『使い魔一同・イエーイ!』』』


 俺は飯を食べながらスマホをタップする。この程度の難易度ならば食べながらでもなんとかなる。使い魔達の演奏は俺がアプリを始めてから急激に良くなった。白獣達もこれにはノリノリで踊り出した。


 本当ならもっと楽器が多いと楽しいのだが、使い魔の数も足りないので演奏者を増やすのは難しいだろう。まあそうでなくても手の空いている使い魔はもういなくなってしまった。俺の知らないうちに手の空いていた使い魔も仕事を始めている。


 いい加減使い魔を増やした方が良いだろう。まだエルフ達からもらった白金貨が25枚も残っている。特に他に使う予定もないので使ってしまおう。そう思っているとミラルが近づいて来た。


「ミチナガ様。その手は…大丈夫ですか?何かその…ウヨウヨとしていて…」


「え?ああ、いま操作しているだけなんで大丈夫ですよ?」


 なんだか苦笑いしながらミラルは去っていった。一体どうしたというのだろう。俺の手はいまスマホを操作しているだけだぞ。それも曲に合わせてタップしているだけだ。しかもそんなにタップはしていない。1秒間に40タップくらいだ。何か変なのか?



 ストックが切れたので今後は不定期になりそうです。ただなるべく間隔を空けないようにはしたいと思います。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 勇者王の過去を見てから読み返してますが、至る所に伏線が…すごい… > この二人、オペラとダンは神剣から入手した使い魔である。オペラは音楽家、ダンはダンサーだ。一体なんで神剣から音楽家とダ…
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