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第168話 勇者神の王城

「あ〜…くそねみぃ…こいつらイビキうるさすぎ。」


 冒険者ギルドに併設されているホテルで寝泊まりしたのだが、マック達のいびきがうるさくてなかなか眠れなかった。一人部屋がよかったのだが、冒険者限定のホテルなので俺一人というのは無理らしい。


 一応俺も冒険者カード持っていることを伝えたのだが、冒険者としての活動がないので無理とのことだ。さらに言ってしまえばこのホテルはC級冒険者以上でないと泊まれないらしい。うん、最下級のその下に値する俺では無理だな。


 部屋を大部屋にしたのがまず間違いだったな。7人全員で寝たらそりゃこうなるわ。とりあえず今日からは別のホテルに泊まろう。ホテル探しもしないとな。色々とやらないといけないと考えるとなんだか億劫になる。


 マック達は昨日飲んだせいでまだ寝ている。マクベスもさすがにうるさくて起きたようだ。とりあえず連絡用に使い魔を残して俺とマクベスは街を探索することにした。


 街中ではまだ早朝だというのになかなかの賑わいを見せていた。マクベスも興味津々で周囲を見回している。とりあえず朝食を取るために良さげな店に入った。なかなかオシャレな店だが、値段もオシャレだな…まじかよ。


「さて、注文も終わったし今日の予定を決めるか。とりあえず俺は世界貴族への申請の期限を調べる。期限がわかったらそれまでにみんなからもらった紹介状を元に推薦状をもらいに行くつもりだ。そのために商業ギルドに行って情報を集める。まあ今日は商業ギルドで情報を集めるだけだ。マクベス、お前はやりたいことはないか?」


「えっと……何があるかわからないので情報を集めてから決めたいかな…なんて。」


 まあいきなり来た国で何がやりたいとかはないだろう。じゃあとりあえず朝食をとったら商業ギルドに直行だな。場所がわからないので料理を持ってきた人に商業ギルドの場所を聞いておいた。


 商業ギルドはここから遠いらしいので、とりあえず道中を散策しながらまったりと移動する。しかし物価はかなり高いな。景気が良いというかなんというか…正直暮らして行くのは俺にはきつい。田舎の人が少ない場所の方が得意だ。


 そうこうしていると商業ギルドにたどり着いた。しかしでかいな。冒険者ギルドもでかかったが、その倍はあるぞ。部門ごとに階が分かれているのでそれっぽいところに移動するがどうやら違ったようで、別の階に案内された。


 案内された階は最上階だ。そこにはでかいモニターがいくつも設置されている。何やら画像と人名と数字が書かれている。一体なんなんだろうか。


「ようこそ商業ギルドへ。ご用件はなんでしょうか?」


「世界貴族の件なんですが、応募する期限はいつでしょうか?」


「はい、世界貴族の応募ですね。では一口金貨1万となりますがどなたに賭けますか?」


「はい?お金が必要なんですか?」


 どなたに賭けますかとか言っているし話が噛み合っていない。どういうことなのかと話を聞いてみるとどうやら世界貴族に出馬した人物のうち誰が世界貴族になれるかという賭博をここでやっているらしい。


「つまりここは賭博場?」


「普段は別の業務をしていますよ。年に2度、世界貴族の応募の時期だけやっているんですけど…もしかしてあなた自身が世界貴族になる…ということですか?」


「え、ええ…そのための書類の提出なんかをいつまでにやれば良いのかと思いまして…」


 商業ギルドの受付嬢は思わず言葉を失う。そして俺の格好を見て、少し引いた感じで笑った。なんだというんだ。確かに服装はヘンテコだし、貴族っぽくないけど俺だってそれなりなんだぞ。…それなりのはずだ。


「えっと…そちらの応募期限は後1月になります。申請は王城すぐ横の役所がございますのでそちらで…ただ……応募には推薦状が必要ですよ?最低でも3通…」


「わかりました。それでは失礼します。」


 周囲からクスクスと笑い声が聞こえてきた。まあ思っていることはなんとなくわかる。俺みたいな小僧が世界貴族に応募すること自体が間違っていると言いたいのだろう。正直俺もそう思わなくもない。


 まあそれでもリカルドにブラント国王にウィルシ侯爵達にも頼まれているからな。初めから無理だと思ってやる気はない。受かると思って自信を持ってやろう。


「すまんなマクベス。なんか居心地の悪いとこにいさせて。」


「いえ、大丈夫です。ミチナガさんだったらきっと受かります。そしてあそこで笑ったやつらをみんな見返してやるんです。」


 なんだかマクベスの方が俺よりも気合入っている気がする。まあそこまで期待されているんだから俺も頑張ろう。あ、そういえば紹介状に書かれている人がどこにいるか聞くの忘れた。


「まあ城で勤務しているって言っていたからとりあえず城に行ってみるか。歩くのは…厳しいな。車で行くか。」


 すでにこの国では魔動車が走っているので、俺の魔導装甲車が走っても問題はない。ただ人目につかずに出すというのが無理だ。人が多すぎる。なので人目は仕方ないと諦めて、空いている場所にスマホから魔導装甲車を出現させる。


「じゃあポチ、いつも通り運転頼んだ。ほら、マクベス乗っちゃえ。とっとと行くぞ。」


 周囲の人々は驚いている。あまり目立ちたくないのでとっとと行ってしまおう。魔導装甲車を走らせて行ったのだが、何やらあちこちをぐるぐる回っている。あ、ここの店さっきも見た。


「おいポチ、どうしたんだ?早いとこ頼むぞ。」


『ポチ・そうは言っても場所わからないよ。マップ埋めながら行くから時間かかるって……あれ?なんか来た。』


 ポチに言われて後ろを見てみると何やら近づいて来た。服装から察するに…憲兵?

 すると運転席側の窓を叩かれた。


「見たことのない家紋だが、この国の貴族じゃないな?まあそんなことはどうでも良い。使い魔に運転させるのは違反だ。免許はあるのか。」


『ポチ・はいこれです。』


「え?……使い魔なのに免許がある…しかもユグドラシル国か…信用に値する国だ。すまない、何やらあちこちをぐるぐる回っているでかい魔動車があると聞いてな。この国に来たのは初めてか?」


「そうなんです。実は王城に行きたいのですが道がわからなくて…」


 そうだったのかと笑っている。どうやらこの国に初めて来た人はこうやって迷うことがあるらしい。そういう人は事故率が高いのでこうして来たのだということだ。お詫びに王城まで先導してくれるとのことだ。


 それにしても使い魔が運転免許を持っているのは珍しいらしい。時々使い魔に運転させる交通違反者はいるが免許を持っている使い魔というのは初めて出会ったとのことだ。憲兵の先導ということでするすると進んでいった。するとようやく巨大なビル群を抜けた先にこれまたでかい王城が見えた。


 憲兵の先導車両は駐車場まで案内してくれた。かなり親切だから今のうちに聞きたいことを聞いておこう。魔導装甲車から降りた俺は先ほどの憲兵に色々と聞きに行く。


「王城に勤めているものに紹介状を渡したい?この時間は皆忙しいと思うのだが…ふむ、まあ紹介状を渡すだけなら平気か。じゃあついてこい。案内してやろう。ただし離れるなよ?城内での部外者の単独行動は禁止だ。」


 俺としては願ったり叶ったりだ。一人では迷子になるだけなのでマクベスと共に案内されるままついて行く。マクベスはまさか城に入れると思いもしなかったので感激している。


 まあ物語にもなる人々が勤めている城だからな。憧れるのもわかる気がする。とりあえず誰に会いたいのか数名名前を告げるとその部署まで案内してくれた。


「そこの受付で紹介状を渡すといい。まさかこの国の研究者や技術者への紹介状とはな。この先は国家機密の宝庫だから絶対に入ることは許されないぞ。」


 まあウィルシ侯爵は研究者の知り合いばっかりだからな。とりあえず研究者だと思われる人の紹介状を受付に渡すとドンびかれた。


「それからこれとこれと…後はこの辺もそうかな?」


「い、一体何人分の紹介状が……ああ、この人は別の部署…こっちも別の部署です。仕分けしないと…」


 なんかすみません。だってみんなノリノリで書いてくれたものだから。なんとか部署ごとに紹介状を分けてくれた受付のお姉さんに感謝して配り終えるまで待つことにした。暇なのでここまで案内してくれた憲兵の人とおしゃべりをした。


「じゃあカイドルさんは世界貴族の騎士爵を持っているんですか。しかも魔王クラスの実力者とは…すごいですね。」


「まあ騎士になる最低条件が魔王クラスだからな。この国の憲兵隊の部隊には必ず魔王クラスの騎士が一人配属されている。まあ一応部隊長だ。それで?ミチナガは何の用でここに来たんだ?まあ察するに研究者になるためか?」


「いえ、世界貴族になるためですね。そのための推薦状を書いてもらっているんです。たまたま研究者と知り合うことになって…その流れです。」


「え!?じゃあ…もしかして…本当に貴族なのか?俺はてっきり貴族の召しかかえがやって来たとばかり…じゃああの魔動車の家紋は…」


「ああ、うちの家紋です。一応ユグドラシル国で子爵になっています。まあ貴族になったのは最近なので、貴族らしくないんですけどね。」


 なんか思いっきり勘違いされていたらしい。どうやら俺は貴族のお気に入りで研究者になるためにやってきたやつだと思われていた。まあ新興貴族なんてそんなものだ。考えてみれば服装も酷いからな。


「それはなんというか…すみませんでした。」


「あ、今まで通りで大丈夫ですよ。貴族とは言っても俺は本来商人なんで。ミチナガ商会という商会をやっていまして…そのうちこの国でもやらせてもらえればなー…なんて思っています。貴族になったのはまだ半年くらい前なんですよ。新参者なんで貴族としての立ち振る舞いも酷いものでしょ。」


「そうなのか…商会長で、貴族で…意外とすごいんだな。ああ、俺のことも呼び捨てで構わない。」


 なんだかカイドルと打ち解けることに成功した。その後はお茶菓子なども用意して談笑していると紹介状を配り終えた受付嬢が戻ってきた。何も問題なく全員に渡せたとのことだ。じゃあ返事を受け取るためにまた後日伺うと言うと奥の扉が開いた。


「おい、お前がミチナガか。そうだな?ちょっとこっちに来い。」


「え?行って…いいんですか?」


「いやいや、ダメに決まっているだろ。国家機密の宝庫だぞ。入った瞬間に警報がなるぞ。」


 まあそうだよな。しかし関係ないとばかりに俺を連れ込もうとする。だがここで問題を起こしたら酷い目にあうのは俺なんだけど。


「わかった。じゃあ…おい、仮入場許可証を発行してくれ。セクター1までで良い。」


「仮入場許可証は所長2名以上の許可が必要ですよ。前も言いましたよね?」


「お、やはり行動が早いなミド。おい、所長3名の許可証だ。発行してくれ。」


 なんだかゾロゾロと集まってきた。しかも所長の許可証を持ってきている。受付嬢も突然のことで驚いている。しかし許可証があるのなら発行しないわけにはいかない。すぐに仮入場許可証が用意されると俺はカイドルとマクベスを置いて国家機密の宝庫と呼ばれる研究所に入った。




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