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第143話 いろんな成長

 もう年が明けてから10日ほどがたった。俺の溜まっていた仕事もひと段落してようやく時間が取れそうだ。仕事を簡略化し、使い魔たちに任せられるようにしたため毎日の仕事量はこれから格段に減るだろう。


『ポチ・ボス〜、なんか社畜が見て欲しいものがあるんだって。』


「ん、なんだ?」


『社畜・我が主人殿。まずはこれを見て欲しいのである。』


 そう言って社畜が取り出したのは複数の設計図の資料だ。どれも同じものを作るための設計図なのだが、細かい部分までしっかりと書き込まれている。しかし俺はそれを見て愕然とした。この設計図は俺のところにあってはいけない設計図だからだ。


「お、おい…これ魔動車の設計図じゃん。どうしてここに…」


『ポチ・リカルドさんから前にブラント国王に送ってくれって言われた時にこっそり複製しちゃった。てへ!』


『社畜・我輩も頑張っちゃったのである。てへである!』


「いや、何がてへだよ。ちょっと可愛いけど。」


 これ国家機密級なのにそんな簡単に複製しちゃったらダメでしょ。本音はよくやったと言いたいけど、これバレたらまじでやばいと思うんだよな。俺が冷や汗を流していると社畜はそんなことよりここを見て欲しいと示し出した。


「俺こういうの見たことないから詳しいことわからんぞ。…なんだこれ?」


『社畜・ここは動力部なのである。しかし構造が自動車とは全く違うのである。これは単に車軸を回しているだけなのである。改良する必要があるのである。』


 社畜によって教えられた魔動車の動力部はなんとも面白いことになっていた。これは魔法のあるこの世界ならではの動力なのだが、魔法で車軸を直接回しているのだ。地球と同じようにエンジンを始動させてギアを回転させて動かすのではなく、魔力を流して直接タイヤを回しているのだ。


 なんとも非効率のように思えるが、これでも全く問題なく動いてしまう。俺も何度も魔動車に乗ったからわかる。普通に自動車と変わらないスピードも出るし、乗り心地も問題ない。むしろ快適さを感じた。魔力供給もそこまで問題はない。


「お前がやりたいのはこの動力部を改良して地球と同じような自動車の動力に変更するってことだな?だけど…俺も構造詳しくないし、それにこの感じだと馬力ありすぎるんじゃないか?」


『社畜・我輩もそこを懸念しているのである。そこでしばらくの間、ウィルシ侯爵の知り合いの研究者の元で学んできたいのである。拠点を完成させるまでの間留守にするのである。』


 確かにウィルシ侯爵の知り合いの研究者、技術者の元で学べば大きな成長につながるだろう。前の短期間の間だけでも社畜の成長は凄まじかった。それに今はウィルシ侯爵のところには使い魔を送り込んである。ワープの能力を使えばすぐに転移させることは可能だ。


「まあ紹介してくれるかはウィルシ侯爵次第だけど…まあいいぞ。行ってきな。ウィルシ侯爵に何か手土産渡さないとな。それに紹介してもらった研究者にも何か渡さないと…まあその辺はなんとかしておくよ。」


『社畜・ありがたいのである!では早速準備して行ってくるのである!』


 社畜は嬉しそうにスマホに戻って準備を始めた。しかしいつまでもこの社畜って名前じゃ格好つかないな。そのうち何かすごい発明をしたら名前変えてやるか。


 しかし社畜のおかげもあって今では随分と俺の技術力も高まっている。すでにルシュール領近くの石油が採れる死の湖には使い魔を派遣して、拠点を作り石油の安定した採取が可能となった。しかもそこの死の湖では石油の埋蔵量がかなり豊富なため、採っても採っても無くなることはなさそうだ。


 そして採取した石油を精製するための魔道具に必要なクズ魔石は冒険者ギルドで大量購入している。クズ魔石はゴブリンなどの小型の弱いモンスターから採れるクズのような魔石で、価値は低く、冒険者ギルドでもどうやって消費するか悩んでいたようだ。


 だから俺の大量購入によって、駆け出し冒険者への報酬が少しだけ上がった。正直冒険者ギルドでの俺の影響力はかなり高い。特にミチナガ使い魔輸送はかなり好評で、毎日のように利用されている。すでにルシュール領、ブラント国、ユグドラシル国では上位冒険者にとってなくてはならないものにまでなっている。


 ミチナガ使い魔輸送が好評なおかげもあって、俺が経営している全ての業務の月の売り上げの合計が金貨1万枚を安定して超えるようになった。ブラント国の復興がかなり進んできたため、売り上げは最盛期から比べるとだいぶ下がってしまったが、そのぶん手広く色々と始めたので売り上げは悪くない。


 それからブラント国の牧場までの道路工事はすでに8割以上完了してしまい、残りは雪溶けしてからということになった。牧場建設も同じようなものでかなり完成しているので雪溶けしてからの作業だ。そうなるとブラント国での仕事がかなり無くなってしまい、仕事にあぶれる人が出てくるのではないかと思ったら意外とそうでもない。


 実はブラント国では国内で大きな開発計画が始まっており、道路から建物までどんどん建て替わっている。一度は国力が大きく下がったが、その分の反動として今は大きく成長している。その好景気にいち早く乗って、ブラント国ではいくつかのミチナガ商会の新店舗の開発が進んでいるらしい。


 その辺のことはブラント国の使い魔達に任せてあるので俺はノータッチだ。仕事が上手くいかなさそうなら口を出すが、まあきっと平気だ。俺が口出ししても、正直俺も詳しくないのでよくわからないだろうし。


 それからルシュール領では使い魔を新しく2体送っておいたが、どうなっているのか全くよくわかっていない。ルシュール領は別に好景気とかはないし、俺としても木材の買い付けとしか考えていない。ただいくつか店舗は増やしているようだ。売り上げはそこまで伸びていないようだが、なんか売上表を改竄してあるように思える。


 一体何を企んでいるのか知らないが、まあそこまで気にするほどのことでもないだろう。下手につついて面倒ごとになったら嫌だし。それに使い魔達は悪いことはしないだろう。俺はそう信じている。


 それから南国の村と呼ばれるアラマード村にいるサラマンからもうじき南国フルーツの収穫期がくるという連絡も入った。あそこは冬とか関係ないらしいな。サラマンからは冬でも雪見風呂ができないのが唯一の悔やむ所だと言う。雪見風呂はいいもんなぁ。


『シェフ・ちょっといいですか?』


「ん?どうしたんだ。…その手に持っているのは酒か?」


『シェフ・いや、違うんです。まあちょっと舐めてみてください。』


 突如現れたシェフに手渡された器には黄色味がかったとろりとした液体が入っていた。それを舐めてみると甘い。ちょっと酸味もあるが、これはなんか知っている味だ。だけどなんか言葉が出てこない。


『シェフ・実はソーマのところで酒の勉強をして、ちょっと違うものを作ってみようと思ったら…それができちゃいました。あ、それ味醂です。』


「あ、これ味醂なのか…味醂!まじでか!スゲェ!」


 味醂と言ったら日本料理の定番とも言える調味料だろ。うなぎの蒲焼にも使うし、照り焼きなんかにもいいよな。一部の地域ではそのまま飲んだり、紅茶に砂糖代わりにも入れたりするらしい。まあちょっと酸味のある甘い液体だからな。偶然の産物のようだが、すでに量産体制は整えられている。


『シェフ・それからソーマは麹にも詳しいので…醤油や味噌も複数の種類ができました。八丁味噌とか赤味噌もあるんで今夜は色々作ってみますね。』


「ソーマすげぇな。あの人には何かお礼しないといけないけど…なんか良いのないか?」


『シェフ・それならすでに甘いものが好きだと言うことがわかったんで、色々お菓子を渡しています。ちゃんとお礼はしていますから大丈夫ですよ。』


 シェフは細かいところまで手が届いているよな。本当はもっと色々やってもらいたいけど、料理人という立場から、朝昼晩は食事を作るので忙しくて、下手に仕事を任せられない。本人も料理以外の仕事はあまりやりたくないようなので現状のままにしている。


『シェフ・それから実は秘密にしていたんですけど、ようやく満足いくものができたのでお知らせします。実はルシュール領に巨大な工場を建てていまして、それが完成して、ものがようやく完成したんです。』


「ものって…キノコ?もしかしてキノコ工場作ったの?」


『シェフ・ええ、ソーマの菌の知識とルシュール辺境伯の栽培の知識、それから森の大精霊の品種の知識を合わせて完成させました。スマホ内でも作れるようにこれから作業を進めていきます。もうしばらくしたら大量生産と安定供給ができると思うので、その時は物流に乗せてください。』


 まじかよ。キノコとか昔は苦手意識あったけど今では超大好き。今夜はキノコ汁にしてくれるらしい。品種はとりあえず10種類栽培しているのだが、今後もっと増やすらしい。シェフは食に対してはとことん追求するよな。


 それから使い魔の1人がそのキノコ工場の責任者をしている。シェフはもうここまで形にしたらあとは他の使い魔に丸投げのようだ。任せられた使い魔の方も喜んでいるので問題はない。よし、そいつの名前マッシュな。


 そういや新入りの使い魔の名前なのだが、まだ決まっていないやつがいる。他にも何体かは決まっているのだが、まずは死の湖で石油採掘を任せているオイル。ウィルシ侯爵について行って、そのうちウィルシ侯爵の領地で店を開く予定のウィル。


 それからウィルシ侯爵の知り合いの研究者達がひっそりと集って立ち上げた研究所に付いて行ったフェッサー。アンドリュー子爵専属のカメラマンとなったリューがいる。


 あと名前をつけていない使い魔が3体ほどいるのだが、彼らにはこのユグドラシル国でのミチナガ商会の仕事と子供達を任せるつもりだ。だから名前をつける時はその時だ。しかし使い魔が37体にも増えたので、誰かは仕事がない状態になると思ったのだが、現状まだまだ使い魔が足りていないくらいだ。


 どうにかして白金貨を集めたいところだが、一般流通することのない白金貨を集めるのはとんでもなく大変だ。今度リカルドにでも相談してみようかな。



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