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第118話 計画通り

「はぁ…なんかすごいな……国によってここまで違うなんてな。」


 かなり落胆している。こんなのが国のトップとしているようではこの国は成長できないだろう。いや、無能なら無能なりにやれることもあるのかな?まあ俺はその辺のことは詳しくないから考えても仕方ないか。しかしここにいる連中と見比べるとブラント国の国王は本当にすごい人だな。

 ここまで予見していたなんて。


 俺は懐から使い魔を取り出す。その使い魔から空中へ画像が投影される。そこに現れたのはブラント国の国王だ。それを見た評議員たちは先ほどまでの罵声が嘘のように静まりかえった。


『この状況は一体どういうことかね?我が国の恩人であるミチナガくんに対してこの仕打ちは何かね?』


「これは一体ブラント国王……まさか映像通信だと…そんな魔道具がどこに…」


『そんなことはどうでも良い。私は説明を求めている。』


 なんとも上手くハマってくれたな。これがブラント国王の策の1つ目だ。俺が呼び出しを受けた時点でブラント国にいる俺の使い魔をブラント国王の元へ行かせていた。そしてカントクによって手に入れた映像通信を繋いでおいたのだ。だから今ここに写っているブラント国王は本物だし、今まさに本人が話している。


 評議員の人々もこれにはうろたえたが、直ぐに落ち着きを取り戻した。今はこちらが有利だと思っているのでまだまだ強気に出られるのだ。


「ブラント国の国王よ。これはれっきとした国家法違反だ!わかっているのか!そちらの騎士爵がこちらの国の衛兵に手を出したのだぞ!」


『騎士爵?そこにいるミチナガくんのことかね?彼は騎士ではないぞ。』


「は?……ック…ックククク…見捨てられたか。しかしそういうわけにも行くまい。彼はこの国に入った時点で騎士爵と確認が取れている。情報収集に時間はかかったがね。しかしそちらに書類があるのならまあ多少は大目に見よう。書類はあるのかな?」


『書類ならある。すでにミチナガくんの方にも渡っている。』


 俺はスマホから書類を取り出し全員に見えるように広げてみせる。ブラント国王の方でも同じように控えの書類を広げてやる。それを見た評議員の連中は全員動きを止めた。まあそれもそうだろうな。


「始めのご挨拶が遮られてしまったので改めてご挨拶を。ブラント国の男爵、関谷道長です。まあ商人もやっています。それで?他国の男爵にこれだけの行為…どう責任を取りますか?」


「ば…バカな!そんなことあるはずがない!彼は確かに騎士で…」


『確かに騎士爵であったがこのように書類のやり取りでちゃんと男爵として認めている。そちらが勝手に勘違いしてこのような仕打ちをするとは。これはれっきとした国家法違反だ。さて…どう責任を取るかね?』


 まるで金魚、いや池の鯉かな?まあどっちでも同じようなものか。そんな金魚や鯉のように口をパクパクとさせるだけで何も言えない。これがブラント国王の第2の策、俺に男爵位を与えるというものだ。実はこの俺を男爵にするという話は前々から上がっていたらしい。


 俺の活躍によりブラント国はかつてないほど好景気のようだ。街の発展が著しく、この功績を是非とも俺に形にして与えたかったとのことだ。しかし商人である俺に男爵を与えても喜ばないだろうし、かえって足かせになると思い言い出せなかったそうだ。だから今回の件は実に都合が良かった。


 俺にはブラント国の現在の状況はイマイチわかっていないが、まあ売り上げだけで見れば確かに好景気そうなことがわかる。つまり俺がいなくなるとその好景気も終わってしまうため、俺に一定以上の地位を与え、ブラント国の要人として扱っているのだ。


 そしてそんな要人に対し、衛兵が襲いかかりさらに謝罪もなく勝手な憶測だけで俺を攻め立てた。さて、この状況は一体どうしたものやら。先ほどまでとは打って変わり評議員たちは青ざめた表情で震えている。まあこれだけの問題なら何人かはその地位を追われるだろうな。


「も、申し訳ありません。そのような方とは存じませんでした。」


『存じていたかどうかなどどうでも良い。今起きている結果が重要なのだ。まあしかしだ。これだけの問題となれば解決までにかなりの時間を要することになるだろう。こちらとしても面倒なので…わかるな?』


「わ、わかりました。賠償金と物品を送らせてもらいます。」


『残念だがうちは今好景気でね。そんなものは必要ない。しかしそう言ってしまうと解決策がなくなってしまうのも確かだ。そうだな…そういえば貴国は様々な技術が発展しているな。その技術を是非とも分けてほしいものだ。』


「…わかりました。では技術員を数名派遣いたしましょう。」


 おお、技術員か。技術力っていうのは何よりも価値があるからな。この国には自動車…じゃなくて魔動車がある。その技術を知ることができたらかなりの価値になるだろう。下手に金をもらうよりも何倍も価値のあるものだ。しかし技術員の派遣という言葉を聞いてブラント国王は首を横に振った。


『貴国は人民の国だ。そんな国から技術員を派遣するなど。数年では帰れないような派遣を勝手に決めるのは良くない。無理やり連れてこられるなんて事をこちらとして望まない。どうだろうか。実物と設計図を渡してくれるだけで良いのだよ。魔動車などの本物の設計図とかね。』


「そ!それはダメだ!それは国家機密の情報だ。それを他国に売り渡すなど…」


『これは国家レベルの大問題だが…それはいいのかな?こちらはあえて譲歩して話しているのだ。この件が公になればそれこそ全ての機密情報を持っていかれるかもしれないぞ。』


「だが…だがそれは…」


 何かブツブツ言い出したがどうやら何も反論ができないらしい。その後、いくつかのやり取りをして複数の設計図と実物を取引して行った。その中に魔導列車なんていうものまであった。英雄の国付近で実際に使われているものらしい。その設計図も交渉に入ってきたときはさらに揉めたが結果的にブラント国のものとなった。やっぱブラント国王優秀だな。


『さて、これでブラント国としての解決は成った。しかしミチナガくんに対しての解決はできていない。それはそっちで話し合ってくれ。私はここで聞いていよう。証人としてな。』


「では、ミチナガ男爵。此度は本当に申し訳なかった…」


「い、いえ……あ、しかしこちらとしても十分なものを賠償していただかないといけないですね。」


 あっぶね。いえ、そんな大丈夫ですよ、なんて言いそうになったわ。そんなことを言ったらもうそこでお終いになっちゃうよ。謙虚は美徳っていうけど、こういう相手をした時には謙虚はただのバカになるからな。ここはちゃんと考えないと。


「しかしどうでしょうか。今回の件をもしも誰かに知られた時に脅されてしまうかもしれませんね。そうなってしまったらこの国の衰退にもつながる。ここはどうでしょうか。ある程度うやむやにするために私が買って道路にしている部分の所有権を国にしましょう。その代わり私が現在道路工事に使った全費用をそちらで負担してもらいましょうか。そうすれば脅されにくいと思うんです。」


「それは…確かにそうですね。ではそうさせてもらいます。」


「それから私への賠償はその道路の左右の建物の所有権を全て私名義にすること。そんなところですかね…ああ、でも今回のような裏組織に襲われるというのは困ります。どうでしょうか?その裏組織と戦うことのできる許可証ももらえませんか?いざという時に武力行使する権限があれば今回のような悲劇も起こらないでしょう。」


「……確かにそうですね。では書類を作成します。」


 げっそりとした表情で書類を作成していく。かなりの旨味が出たな。今まで使った金も全て帰ってくる。今後の道路工事の費用も全て評議会持ちだ。さらに道路の左右の建物は全てうちの名義だ。どこまでもらえるかもちゃんと書いてもらった。


 これで全ての取引は完了した。ユグドラシル国側は今回の俺に対する衛兵の凶行と俺を呼びつけて吐き捨てた暴言の数々の隠蔽。ブラント国側はユグドラシル国の保有する設計図と実物各6点の受け渡し。俺に対しては現在も進めている道路工事の全費用の負担、道路左右のある土地の所有権を俺にする。それから裏組織に対する俺からの攻撃を許可するものだ。


「それではこれで全ての取引は完了しました。今後この件でお互いに干渉することは無しです。これで決定されたことに異議を唱えることも無しですよ。」


「ええ、もうそれで構いません…はぁ…」


 随分とお疲れだな。しかし今日はもう遅くなってしまったので俺はこの辺りのホテルに泊まることにした。もちろんその費用は評議会持ちだ。呼び出したのだから最低限の保証はしてもらわないとね。


 案内されたホテルは街が見渡せるほどの高層ビルだ。俺の泊まる部屋は最上階の35階最高の景色が堪能できる部屋だ。地上からおよそ100m。こんなにも高いビルはこの世界では初めてだ。


 ポツポツとこのくらいの大きさのビルが建っているが、まだこの大きさのビルはこの世界では難しいようだ。ちなみにそのビルを建てる方法も賠償として受け取っていたのでブラント国でもそのうち高層ビルが建設されるかもしれない。


 まあそういう難しいことを考えるのは後にしよう。俺はバスローブを着て最上階の部屋から街を見渡す。この通称貴族街と呼ばれる中央国は夜でもかなり明るい。そこ以外は多少暗いが他の国と比べるとそこそこ明るい。やはりこの国は発展しているな。


 優雅にそんな景色を堪能していると使い魔から連絡が入った。どうせなので映像通信にしようか。


「ようマック。こっちはバッチリ終わったぞ。今は地上100mの建物の部屋に泊まってる。ナラームとウィッシは俺の下の階でゆっくりしているぞ。」


『なんだよそれ。こっちは大変だったって言うのによ。』


「悪い悪い。まあその分何かで埋め合わせするよ。それよりもそっちはどうだったんだ?」


『ああ、完璧だぜ。冒険者だけじゃなくて衛兵も仲間として頑張ってくれたからな。予想を上回る大戦果だ。書類やなんかはすでにこいつに渡しておいたぞ。』


「サンキュー。全部確認しておくよ。じゃあ今日はゆっくり休んでくれ。なんならみんなでパーティでもしときな。その費用は俺持ちで良いから。」


『お!聞いたかみんな!今日は飲み放題の食い放題だ!じゃあ楽しんでくるわ!』


 そう言うとマックは通信を切った。よっぽどタダ酒が嬉しいんだろうな。まあそのくらいはご褒美としてあげないと。マックが集めた書類は使い魔たちによってどんどん確認されている。その中から使えるものを抜粋してマザーから教えてもらう。まあ明日も忙しそうだ。


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