第1話 スマホ依存症な俺
初投稿です。
大規模改稿を行いました。とりあえず3話まで行いましたが、ストーリーそのものに変化はありません。
今後も気が向いたら改稿していきます。
携帯電話。それはビジネスマンだけではなく学生から主婦、お年寄りに至るまで多くの人に必要不可欠な携帯端末である。
人々に大きく知られるようになったのは1970年に行われた大阪万博でのことだ。ここで世界初の電話線のいらない電話機が発表された。その当時は自動車に搭載して使うことしかできなかったが、電話線を用いない電話機というのは革新的な存在であった。
それから10数年の後に人々の手に渡るようになった携帯電話は、一部の人間にしか持てないほど高価で、抱えるほど大きなものだった。しかし携帯電話の進化はさらに続き、1989年に簡単に持ち運べる小型の携帯電話が誕生した。
そこから携帯電話は進化を続け、学生でも持てるほど安価で身近な存在になっていった。誰もが携帯電話を持てる時代。各社が新しい機能を搭載し、携帯電話はさらに進化を続けていく。
しかし、そんな携帯電話に革命が起きた。スマートフォンの誕生である。今ではごく一般的なスマートフォンであるが、発表当時はあんなものを買う人間はいないと、あんなのを欲しがるのはバカだと周囲の人々は話していた。
だが販売開始からわずか数年で携帯電話機といえばスマートフォンと言われるほど、知名度と認知度を獲得した。今では当時の携帯電話はガラケーと呼ばれ、スマートフォン、通称スマホとは区別されるようになった。そしてガラケーは姿を消しつつある。
そしてスマホが普及されてから、ガラケー時代から問題視されてきた携帯電話機の平均使用時間が年々増加している。今ではスマホがなければ生きていけない、スマホがないなんてありえないという人間も数多いだろう。
かくいうこの男、関谷道長もそんな部類の人間の一人だ。今では睡眠時間も削り、食事の時間でさえもスマホをいじっている。トイレでも風呂でもどこでもスマホを使う有様だ。最後にスマホ以外で青空や木々といった風景を見たのはいつのことだろうか。
そんな関谷道長は現在、スマホアプリやゲームなどのレビューや攻略法を調べ上げ、自身のブログに掲載することによる広告費などで暮らしている。正直、自身でも驚くほどの人気のため生活に困ることはない。
そんな関谷道長は今日も新しいゲームを探し、それを片っ端から攻略、評価していく作業を淡々とこなしている。
「うーんこのゲームはダメだな。作り込みが甘いせいでバグが多い。このあたりもう少しどうにかなんないかなぁ?おっと、スタミナがそろそろ貯まったから消費しないと。」
今日も日課のゲーム内のスタミナ消費を行う。完全に貯まりきってしまうとせっかくの回復時間が勿体無い。それから完全攻略したゲームでさえもログインを行い、ボーナスを受け取る。今日から始まるイベントもこなさなければならない。今日もやることが盛り沢山で忙しい。
「あとなんか面白そうなゲームのレビューもしないと。もうすぐ水着イベントも近いから課金する資金を稼がないとな。……はぁ…今回は10万以内で収まればいいんだけどなぁ…ガチャ運の神よ、我に力をぉぉ…」
人気アニメの水着ガチャイベント。もう直ぐ始まる予定なのだが、鬼畜外道なほど輩出率が低く、前回に至っては30万円の課金でようやく手に入った。かなりの大金を使ったのだが、道長はあの可愛さならそれだけの価値は十分あったので許せると非常に満足している。
「さてさて…面白そうなゲームはどこにあるかなぁ?俺のガチャのために一儲けさせてくれよ。いいのはないか、いいのは……ん?これは?」
探しているとあなたへのオススメという欄に一つのアプリが出てきた。名前を読もうにもどこの言語かもよく分からない。しかしそんなことよりも重要なことがある。それはこのアプリがまだ誰にも評価されていないという点だ。
さらにリリース日は今日だ。これは良いネタになること間違いなしだ。道長はこれは良いものを見つけたとほくそ笑んでいる。
「早速ダウンロードっと……あっという間だな。これだけ早いってことは容量が少ない…これは期待できないかもな。頼むからちょっとしたネタくらいにはなってくれよ?」
ダウンロード完了まで1秒ちょっとほどだろうか。これには期待できないと思い、とりあえず起動してみる。すると追加のダウンロードが始まり、しばらく読み込み画面が続いた。これならば期待できるかもしれないと少し安堵した。
とりあえず終わるまで他のアプリのレビュー記事を書きながら待っている。そして記事がいくつか書き終わった頃にスマホを確認すると追加ダウンロードが完了して画面が切り替わっている。そこには日本語でスタートと書かれていた。
アプリ名は読めないのにまさかの普通に日本語表記。どうやら日本語対応しているようだが、それならアプリ名も日本語に変えろよとツッコミを入れるが、まあレビューを書くときの良いネタになる。早速スタートボタンを押すと画面に文字が浮かび上がってきた。
『この度はダウンロードいただきありがとうございます。これからいくつかの質問を行います。質問には正確に回答してください。これは今後に関わりますのでしっかりとお答えお願いします。』
「ほぉ〜…なるほど。こういうタイプのアプリなのか。多分俺の回答で今後の物語の展開や主人公の能力とか性格、見た目とか変わるんだろうな。テレビゲームとかなら見たことあったけど、スマホゲームでは珍しいな。これなら期待できるかも。」
『第1問、あなたの年齢と性別を教えてください。』
「この辺は主人公にそのまま反映されそうな部分だな。試しに性別を変えても面白そうだけど…まあまだ初めてだし、ここは正直にいくか。26歳…男っと。」
それから道長の身長や体重、性格診断のような質問も行われた。正直質問に答えていく感じはアプリ製作者が、どんな人間がこのアプリをプレイしているかのアンケート調査のように感じられた。
『第28問、あなたが最も欲しいものを教えてください。答えは非現実的なものでも構いません。』
「お、なんかゲームに関係しそうな質問がきたな。答えは非現実的なものでも構わない…か。小さい頃なら魔法とか超能力、とかどこでもドアとか言っていたかもな。…今でも憧れはするけど。けどこの歳になってくるとなぁ…だけどどうせなら非現実的なものがいいよなぁ……よし、誰も持っていない超高性能のスマホだな。」
一周回ってかなり子供っぽい答えになった気がする。しかし一度決めてしまうとそれ以外の良い答えがなかなか出てこない。しかしなんだかなんでも切れちゃう剣、とかなんでも燃やしちゃう炎とかそんな類の答えになった気がして少し恥ずかしい。
しかしもうこれ以外に思い浮かびそうにない。道長は誰も持っていないほどの超高性能のスマホなら夢があると信じている。……信じちゃっている。
『第29問、あなたは変化を求めますか?』
「変化…変化かぁ……さすがに時代の変化についていけないとかそんな歳でもないし、むしろ時代の変化によってスマホとか面白いものが出てきたわけだからな。まだまだ時代の変化についていけているわけだから…ここはイエスっと。」
『第30問、死よりも恐ろしいことはありますか?』
「死!死より恐ろしいことなんてないでしょ!死ぬのは嫌だよ。だけどそれ以上に嫌なこと、怖いことってなんだろ。ブログが炎上する?…結構怖いけど死ぬほどではないな。さすがに死ぬよりも怖いことなんて………スマホのない世界。あ、これは恐ろしいわ。多分スマホがないと死んじゃう。間違いなく死んじゃう。精神保たないよ。じゃあこれもイエスだね。」
『全30問、回答いただきありがとうございました。ではこれより……』
文字の表示が途中で止まり、まるでフリーズしたかのように動かない。ここまでそれなりに時間がかかっているので、質問をやり直したくはないのだが、なかなか動きそうにない。これはもうダメかと思い、仕方なくアプリを再起動し直そうとしたところで画面が切り替わった。
『あなたに質問です。誰も持っていない超高性能のスマホとはなんですか?』
「え?なにこれ…もしかして作成者が覗いているとか?それってハッキング?いや…作成者に通知とかメールが入ったんだろうな。それで気になったから聞きにきたってことなのかな?なんか恥ずかしいんだけど……だけど超高性能のスマホでしょ?超高性能って言ったら…なんだろ?どこでも電波が入って電池切れがなくて…画面とか本体に傷がつかなくて……あと他にも……」
解答欄にどんどん打ち込んでいく。どこかで文字制限がかかると思ったのだが、どうやら制限はないようなのでどんどん書き込んでいく。大きさを変えられて、細かい操作が可能とか。落としても手元に戻ってきて、どんな温度変化にも耐えられて、耐水性も水深何千メートルでも耐えられ、絶対に壊れない。
そんな小学生みたいな答えを恥ずかしげもなくどんどん書き込んでいく。もうこんなものかと思ったところで本体のことばかり答えていたことに気がついた。本体がどんなに良くても使用しているOSや内蔵されているアプリがクソなら意味はない
そんなことを夢中になって書いているとすでに時刻は夜になっている。どうやら数時間もの間書き続けていたらしく、文字数も半端ないことになっている。しかしこれは会心の出来だ。自身でも知らなかったスマホへの愛を文字に書き起こすことで改めて再確認できたと感じる。
その回答を送信すると画面が切り替わり、再びロードしだした。すぐに完了するものだと思っていたが、どうやらかなり時間がかかりそうだ。とりあえず風呂に入り、夕食を食べて寝る準備まで終わったところでようやく画面が切り替わった。
『長ったらしくて今読み切るのが面倒なので、少しずつ改良していきます。では遅れましたがいってらっしゃい。』
「は?なにが」
その瞬間、地球上から関谷道長という人間は消え去った。