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第3話 最近の転移ってヤツは

 今日もオフ。

 見たかった映画をいつもの三人で見て、それからのファミレスという、いつも通りのコースだ。

 禁煙席に案内して貰い、やっぱりドリンクバーを注文する。

 なんだかんだで、駄弁るのにドリンクバー以外は考えられないわけです、はい。

 別に決してケチでも、お金が無いわけでも無い。

 ただ、私たちはお酒を飲まない人たちなので、結局ドリンクバーしか選びようが無いのだ。


「俺っちのところの四天王って、五人中三人が元勇者って前に話したじゃ無いっすか?」


 ドリンクをもってきて席に着いたところで、アナンタが口を開いた。


「言ってたね。あのとき流したけど、どういういきさつだったわけ?」


 リリスが一口飲んだ紅茶を置きながら言う。


「いや、普通にハローワーク経由っす。経験不問で三十五歳以下の若年層対象で募集してたら応募してきたっす」

「で? それがなになの?」

「いや、なんで最近の勇者は転生してきた一般人が凄い能力貰うのかって聞いてみたんすよ。そしたら、それが流行だそうっす」

「流行かぁ」


 流行なら、うん、流行なら、説明のしようがないかもしれない。

 流行に合理的な説明って難しいこと多いし。


「でも、その流行があるのに、なんで、魔王軍の四天王しているわけよ?」

「それっすけど、実は最近の勇者って待遇悪いらしいっす。あんまり、よその待遇がどうことか言いたくないっすけど、結構なブラックっすよ?」

「マジで?」


 リリスが眉をひそめた。

 勇者の待遇とか、昔から同じだと思っていたが、変わってきているのか。


「そもそも、転生してチートって言うぐらいの能力貰って、現代知識でチートすれば、ハーレムになるぐらいモテるって誘われるっす。しかも努力なんて要らないなんて言われるそうっす」

「いや、それは、そんな上手くいくわけ……」


 思わず口ごもる。

 うーん、そこまで行くと騙される方も騙されるほうじゃないかな?

 それに、そんなに上手いこと待遇が良いなんて、ブラック女神の求人募集の常套手段じゃないか。


「いや、実際にそう言われて、結局勇者になるそうっす。そしたらっすよ? 給料ないそうっす」

「え? 何それ? サービス冒険? 全部サービスでしているの? 嘘?」

「うわぁ」


 私とリリスが驚いているところで、さらにアナンタが話を続ける。


「いやー、俺もびっくりしたっす。なんでも、話を聞くと皆は、冒険者ギルドに所属して稼げばいいと思っているっす。自分なら一発でSランクで安泰だろうって」


 冒険者ギルド?

 聞いたことの無い単語だ。

 それは一体、何?


「なくね? 言葉から察するに、冒険者に仕事でも回すっぽいけど、冒険者って要はバックパッカーなわけでしょ?」

「この世界、そういうの無いっすからね。ラノベだとよくあるらしいっすけど、ラノベに出てくるからこっちの世界に実在するわけないっすね。で、今度は農村とかに行って、現代知識でやりくりしようとするそうっす」

「ふむふむ」

「でも、そしたら、できそうな事って大体やり尽くされて、何もすることないそうっす。区画整理されて機械化までされている光景を見て、膝を突いて絶望したそうっす。なんで、ファンタジー世界にそんなことまでやっているって疑問になるそうっすけど、技術進歩してしまったもんはしゃーないっすよね」

「ん? 住み込みの仕事探すとかでなく、ただ指示してお金稼ごうとしているわけ?」


 ちょっとリリスが、さらにあきれ顔をする。


「そうみたいっす。でも、そんな各地で気候も育つ作物も、特産品も違うし、育成方法なら農協が指導しているし、それに急に見ず知らずの人間が横やり入れても……ねぇ?」

「お前誰だよって話になるよね……」

「そうっすね。で、今度は街にまた戻って、色々と出来そうなこと探すそうっすけど、マヨネーズも醤油も味噌も火薬も鉄砲も上下水道もあるから、やっぱり、出来ることないそうっす。転生勇者の最大の敵は金が無いに尽きるみたいっす。で、さらに今度は、国に兵士として雇って貰うわけなんすけど……結局公務員だと、こき使われること多いみたいっす」


 ……。

 何という行き当たりばったりな上に、行き着く先が悪名高い国の兵士とは……。


「女神はアドバイスとかしないわけ?」

「さぁ? 女神って大体はポンコツだからね」

「ただ、面白いこともあったっす。勇者のうち、一人は転生じゃなくて転移だったっす」

「何かちがうわけ?」


 転生は、生まれ直しで、転移は、そのままこっちの世界に来たってことか。

 本質的な意味ではあまり大差ないようにも思うけど、なにか重要なのだろうか。


「うーん? どうっすかね? 女神に能力貰うっていうのは同じっすね。ただ、そいつの場合、クラスごと転移したそうっす。勿論、女神の手違いだそうッす」

「女神ズ、手違い多すぎなわけだけど?」

「なんで女神やっているのだろうね……」


 本当に、女神はいい加減に懲戒解雇されてもおかしくない。

 どうやって誤魔化しているのだろうか?


「いやークラス丸ごと転移だと、なんでも、みんなチートを貰うそうっす。ただ、なんだかんだあって、結局某国の王に騙されていることに気がついて逃げてきたそうっす。なんでも、ここまでは良くある話みたいっす」

「だからさ、女神さ、中途半端なところで投げるなってわけでしょ。チートだかなんだか知らないけど、能力だけあげて出荷とかバカなわけ? 干渉したらそれ相応に面倒見なさいよ」


 女神の意図が相変わらず、わからない。

 一体、何をしているのだろうね。


「とりあえず、そこはどう考えてもわからないんで、置いておくとして。とりあえず、勇者から聞いた話っすけど……死んだら、教会で蘇生して貰うわけっすけど、お布施の費用って全額勇者持ちらしいっす」

「え? なにそれ? 保険に入ってないわけ? 労災なわけでしょ?」

「もしかして、今時、保険に未加入ですか? 魔王軍だと考えられないんですが……」


 今時の魔王軍なら、保険加入なんて当たり前だし、業務時の死亡なら、蘇生も三割負担で済むのにな。

 能力は与えることは出来ないけど、能力習得の補助金と習得後に能力資格手当だって出すし。


「そうっすね。元勇者も、うちだと当たり前の制度にマジ泣きしてたっす」

「女神ってさ、ただ人材を確保するだけじゃ無くて、根本的な組織と体勢を作るのが先なんじゃ無いの? そこまで色々と聞いてみて、勇者が不憫で仕方ないわ」


リリスが、紅茶を飲み干した。

 今の今までの待遇を見る限り、何故、勇者が魔王軍に勝てないのかも分かってきた。

 ブラック体質過ぎて、生産性が低すぎるんだ。

 というか、この世界についての説明とかしなさすぎだ。

 しかも、寝返って、魔王軍に加入する勇者もいるあたり、そこまで待遇が悪いのも問題だ。

 人材って言うのは、畑にいくらでも生えているわけじゃ無い。

 だからこそ、雇うっていうのにはそれなりのコストを払わないといけないのに。


「女神って、いつまでそれをつづけるつもりだろう? もしかして、そんな手法で、ラッキーパンチで魔王を倒せるまでするとか無いよね……」


 思わず口にしてしまう。

 いや、まさか、本当にそんなことするわけ……。

 でも、リリスもアナンタも黙る辺り、肯定せざるえないのだろうか。

 なんでよその人の労働環境とか待遇まで知って、同情しなければならないのかって思うけど、そこまで知ると、こちらとしても戸惑ってしまうのだった。

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