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俺ゼウスの生まれ変わりなんだけど、無双してたらボッチになった件について  作者: 紅羽 慧(お神)
すねはかじれるだけかじるのが当たり前じゃね?編
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★BL奪還作戦!前編




「男には、負けられない戦いがあるんだぁっ!!!!」


「急にどうしたっ?」


「は!?」



 ヘラの襲撃から3日が経ち、特に理由も明かされずゼウスの家に呼び出されたアレスとヘルメス。彼らはちゃぶ台を囲みながらゼウスの話に耳を傾けていた。



「俺は悔じい! 何も悪いことをしてないのに許せない! 理不尽だ! おぉおお天よぉ、蒼天よぉおおなぜだぁ!」


「一体何があったんだよ」


「前置きはいいから早く理由を言えよ」



 ゼウスは涙と鼻水を腕で拭うと、精根な顔つきで言葉を発した。



「お前達を呼んだのは他でもない。これより、第180643回緊急事態宣言を発令する!!!」


「多すぎだろwww」


「もはや緊急が日常じゃんwww」



 ゼウスは嘲笑う二人を気にすることもなく、アレスに向き合うと神妙な面持ちで語りかけた。



「アレスよ。先にお前に謝っておきたいことがある。神の遺産が奪われてしまったのだ」


「神の遺産? 何だそれ。あっ、もしかして俺があげたあれか?」


「そうだ。すまない、、、俺はただ無力で、指を加えて見ていることしかできなかったんだ」


「オヤジ、大変だったんだな。いやいいんだ。今オヤジがこうやって無事に生きている。それでいいさ」


「アレスお前……ぬぉおおおおおんっ!!!」


「おっと、抱きつくのはやめろ!」


「ぐにぃっ!」



 アレスはゼウスが飛びつく前にほっぺたを押して阻止した。



「おいおい、バカ親子二人だけで会話されても俺は分からんぞ」



 ヘルメスは二人のやりとりについていけず、腕を組んで眉間に(しわ)を寄せた。



「おっと、すまんなヘルメスよ。詳しい話は後でする。少なくともここではできない。盗聴されているかもしれんのだ」


「盗聴??」


「盗聴……まさかっ!??」


「そうだ」


「何てこった。オヤジの部屋にもか」


「アレス、もしやお前もなのか?」


「そうなんだよ。この前ちょうど俺もエロ本の隠し場所とタイトルバレして、また弱みを握られたんだ。一体どうやって情報を得てるのかマジで謎」


「とち狂ってるだろそれwww」


「えーっ、と」



 事情が分からないヘルメスは困惑していた。だが、ゼウスとアレスの表情から


「まさか、もしやと思うが、名前を呼んではいけないあの方か?」


と、勘を働かせた。



「そうだよ」


「うむ」


「そうか、なるほどな。俺はこの話、聞かなかったことにさせてもらうよ」



 ヘルメスはそう言うと、立ち上がり帰ろうとした。



「まてまてまてぃ!」


「嫌だあああああ死にたくなぁああいっ!!!」


「落ち着けって、とりあえずコーラでも飲んで」


「いや、なんでこのタイミングでジャンキーな飲み物なんだよ。普通ここは暖かいお茶とかだろ」


「頼む!」


「……ま、話くらいは聞いてやりますか」



 ヘルメスは必死に服をつかむゼウスが哀れに思え、ひとまず腰を下ろした。



「なぁオヤジよ。何をするかは知らんが、ここにいる俺ら3人だけで何とかなるのか?」


「あぁ。というより、他にヘパイストスとアテナにも召集をかけたんだが、忙しいとか言って断られたんだよな」


「姉ちゃんは分かるけど、ヘパさんは意外だな」


「あのハゲ野郎、カツラのメンテナンスするとか訳分からんことぬかしてたから、今度ガムテープ頭に巻いて思っくそ引っ張ってやろうと思ってる」


「嫌がらせが過ぎる」


「いじめじゃんそれ」


「この際あいつの話は置いておくとして。とにかくお前らと作戦会議がしたい。俺様の考えだけではどうにもならんのだ。事は一刻を争う国家滅亡の危機だと心得よ馬鹿共!」


「いちいち大袈裟だな」


「そんなことはない! お前はあのクソビッチの恐ろしさを何も、、、おっとイカンイカン! ここだと危険だから、とりあえず場所を移動するぞ」


「あー、盗聴機破壊したらダメなんか?」


「バカ野郎! あいつに感付かれるだろ。下手に刺激するとこのアパートごとこの世から消滅させられるぞ」


「冗談じゃ済まされないレベルで草」


「じゃあどこでするんだよ?」


「うーん」



 3人はそれぞれ腕を組むと宙を見ながら考えた。



「我が愛しの娘アテナに相談してみっか?」


「断られたんだろ?」


「場所だけ貸してもらうのはいけんじゃね?」


「姉ちゃんそんな簡単に動かんぞ」


「とりあえず連絡してみるわ」



 ゼウスは二人が見守る中、スマホを取り出しアテナに電話をかけた。



「あ、もしもし。俺だよ俺俺。オレオレオレオ」


〈お父さん、どうしたの?自首??〉


「娘よ!冗談が過ぎるぞwwwッフェーイ!」


〈今仕事中なんだけど、何?〉



 ゼウスは彼女の凛としてかつ冷たい口調を耳にすると、苦笑いをしつつ


「た、単刀直入に言おう。作戦会議を開きたいんだが、警察署のどっかの部屋を貸してくれよ」


とお願いをした。



〈作戦会議? 何それ、また何か悪巧みしてるの?〉


「いやいや何でだよw。俺ほど品行方正で善良な市民はいないぞ?」


〈善良な市民は婦女暴行容疑で連行されたりしません〉


「あの時は悪かったよ。とにかく今切羽つまってんだ。頼む!この通りだ!」


〈この通りだって言われてもどの通りよ。何があったの?〉


「わりぃ、ここじゃ理由はいえねぇ」


〈なんで?〉


「……すまん」


〈ふーん。事情があるみたいだけど、私的なことのために場所を提供することはできません!〉


「くそー、これだから警察はなぁ? まぁよい、分かった。ただ、1つだけお願いがある」


〈何よ?〉


「俺が戻らなかったら、その時は死んだと思ってくれ」


〈何それ、またいつもの冗談? 忙しいから切るねー〉


「嘘じゃない。ほんとなんだ。俺はただ、大切な物を取り戻したいだけなんだ」


〈お父さん……大丈夫?〉


(一体何をとられたんだろうか?)



 事情を知らないヘルメスは、ゼウスの話を聞きながら考えを巡らせていた。



〈よく分からないけど、仕事終わったらご飯作りに行ったげよっか? その時にでも〉


「いや、大丈夫だ。よく考えたらこんな危険なことにお前を巻き込む訳にはいかない」


〈でも〉


「俺は全知全能! 無敵のゼウスだぞ? それにな、今俺のもとにはアレスとヘルメスがいる。俺の仲間は最強なんだぜ!」


〈そっかー。そうなんだ〉



 ゼウスは目の前で手を握ると、電話越しに自信満々な態度でアテナに話した。



(あれっ? そういえばBL渡した時オヤジ同じことやってたけど、それ死亡フラグじゃね?)



 アレスはゼウスの仕草に嫌な予感がしていた。



「あぁ。おう、いつもありがとな。うん。そいじゃ、また。ふぅ、アテナは無理だ。他をあたろう」


「おいオヤジー。こんな状況で大丈夫かよ。そもそも肝心の作戦とやらもちゃんと立てたのか?」


「大丈夫大丈夫。俺が立てた作戦は最強なんだぜ!」


「それやめろ!www絶対死亡フラグだからそれwwwww」


「ワロタwww」


 

 再三にわたり自信満々のポーズをするゼウスにアレスはつっこまずにはいられなかった。



「それにしても良い場所はないもんかなー」


「あ、ごめん。よく考えたらさ、俺の持つ異空間なら盗聴されずに済むかもしれん」



 ヘルメスは手を挙げると、頭を抱えるゼウスの肩を叩いた。



「ぬわにぃ! 早く言えよタコ!」


「あっ、そんなこと言うんだ! じゃあ僕帰りまーす」


「あっあっあっ、待ってよヘルメス君。今度美味しいスイーツたくさんおごるから!」


「マジ!? よーっし、俄然やる気出てきたぞ。お前らそこから動くなよー……ほれ!」



 ヘルメスは立ち上がると、掛け声と共にマントを広げた。すると三人の周りの空間が歪み始める。



「な、なんだ。これはっ!?」


「あー、ヘルメスにはこれがあったな」


「へへーん。俺の秘密の部屋へようこそ!」



 三人は段ボールが山積みされた縦横高さが20mほどの真っ白な空間にワープしていた。



「なんぞこれぇ?」



 ゼウスは異空間に度肝を抜かれると、口をあんぐりとさせた。



「へへん。ここは俺の持つ所有空間の1つだ」


「ん~意味が分からないですねぇ。つまりどういうことだ?」


「簡単に言うと、ゼウスの部屋の空間の一部を切り取って、俺のこの所有空間へ移動させたのさ。その証拠に、そこのちゃぶ台とかコーラも一緒に来てるだろ」


「あ、あぁ。これか?」



 ゼウスはまず目の前のちゃぶ台を触り、コーラを手にとってみた。



「はぇ~。おめえ神様みてえなことできんのな」


「みてえじゃなくて神様だぞ!」


「便利な能力だな。こんなんかくれんぼしたら最強だろ?」


「まぁね! でもヘラさんの前では無意味だったけど」


「え、なんで?」


「ビンタで空間ねじ曲げてきて、この場所に入ってきた」


「あのババアのビンタ強すぎワラタwww」


「母ちゃんが本気でビンタすると、速すぎて指先で核融合が起きるとか次元に亀裂を発生させられるって噂で聞いたことあるけど、マジのやつだったのか……」



 アレスは青ざめると、頭を抱えた。



「えっ、クソガキよ。それならここに逃げ込んでも見つかるんじゃないか?」


「それなら大丈夫。あの時はこの空間逃げた直後のビンタだったから追い付かれたけど、今はそばにいないしね。話し声も外界と完全に遮断されてるから、ここなら何話しても盗聴の危険はないぞ!」


「クソガキ……いや、ヘルメスよ。お前ってこんな有能なやつだったか!?」


「えっへん!」


「俺ぁ出る杭は即座に打ちたくなるタイプなんだけどなぁ。ま、今回ばかりは特別に見逃してやりますか」


「どんなタイプだよ! 最低すぎるwwwてか、偉そうすぎるwww」


「偉そうじゃなくて偉いんだよ! 俺は宇宙を救った全知全能の大英勇だぞ!!!」


「声がでけぇよwwwお前のオヤジ何とかならん?」



 ヘルメスは呆れた顔をするとアレスのほうを向いた。



「あ、あぁ」



 アレスはヘルメスの方は向かず、高々と積まれた段ボールの量に圧倒されていた。



「ヘルメス。これ、まさか"あれ"か?」


「あぁ、"あれ"だ」


「はぁ……なるほどな。お前も大変だな」


「そうなんよ」


「あれってなんだよ?」



 ゼウスは二人の会話に割り込む形で聞いた。



「母ちゃんに送るBLだよ」


「は? これ全部? 嘘だろ?」


「いや、これ全部」


「ファーwwwwww」



 ゼウスは唖然として、軽めの奇声を発した。



「これ全部とか、何だそれ! あいつBL帝国でも築くつもりかよ」


「いやぁ、さすがに速読の母ちゃんでも、こんだけあったら読みきれんだろと思うけどな」


「あー、それで言うとこれ同じ本が各6冊ずつあるぞ」


「6冊?!!!」



 ゼウスは驚愕の事実に反応せずにはいられなかった。



「あれって特別お気に入りのやつだけじゃなかったっけ?」


「いや、最近頼むやつは基本6冊だぞ」


「あの人やばすぎんだろ……」


「えっ、マジで分からないんだけど、何故にあのババアそんな頼んでんの?」


「俺も最初はよく分からなかったんだけど、ヘラさん曰く読む用、飾る用、布教用、書き込み用、保存用と万が一のための計6冊らしい」


「マジもんのやべぇやつじゃん。あいつマジでイカれてんな~。この量、BL界隈の経済一人で回してんじゃねえの? やばすぎワロ太郎! 金と資源の無駄だ! それよりも俺様のお小遣いをもっと上げろ!」


「オヤジも人のこと言えないくらい好き放題使ってると思うけどなw」


「何言ってんだ! 最近はバイトしねぇとロクに課金も出来んのだぞ! 夫婦間の経済格差やばすぎんだろ……社会問題かよ」


「こっちきた当初の金の使い方が異常だったんだろ」


「だとしてもこの状態は納得がいかねぇ! これはどうやら、分からせてやる必要があるみたいだな!」



 ゼウスは指の骨をパキパキと鳴らすと不敵な笑みを浮かべた。



「分からせるって、どうするんだよ?」



 ヘルメスは自信満々のゼウスに問いを投げた。



「まずは作戦を練るぞ。お前らそこに座れ!」



 ゼウスはちゃぶ台の周縁部を指差した。




………………




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