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俺ゼウスの生まれ変わりなんだけど、無双してたらボッチになった件について  作者: 紅羽 慧(お神)
すねはかじれるだけかじるのが当たり前じゃね?編
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★何で見る必用なんかあるんすか?前編





「もえみぃいいぃっ世界一愛してるぞぉおおおっ!!!」



 俺はコーラを片手に、思わずテレビの前で立ち上がり雄叫びをあげていた。



〈くぅー、こうなったら変身よ! もえもえぴゅぅうううん!!!〉


「こ、これは――――まさか!!? パンチラ確定演出キタァアアアアアアっ!!!!!!!」


〈へーんしん☆ミ魔法少女もえみちゃん!〉






挿絵(By みてみん)





「ぁ"あぁあ"ぁあっ浄化されるぅうううんっ!!!」



 俺は年甲斐もなく叫んでいた。端から見ればかなりヤバイやつだろう。だがそんなことは糞ほどどうでもいい。大事なのはそこではないのだ。

 彼女はこの穢れた地上に舞い降りた、たった一筋の光であり、唯一無二の希望なのだ。

 このもえみというキャラ、、、ふっ、どこまでも俺を熱くさせてくれる。この胸の高鳴り、実に心地よい。


 変身したもえみは凶悪な武器で敵の脳天をすぐさまカチ割ると、俺に優しい微笑みで語りかけてくれた。



〈来週もまた観てね☆ もえもえきゅ~ん〉


「うぉおおおおおおおもえみぃいいいいいぃ"ぃっ!!!!! またみるおおぉおおおん!!!」


〈18時になりましたので、ニュースをお伝えいたします〉



 次回予告が終わると感動の余韻をぶち壊すかのように、18時のニュースが始まった。



「はぁ……今週も可愛かったなぁ。さて、飯にするかぁ~カップ麺はどこかなぁ~っと」



 全力でもえみを観た後は必ずと言っていいほど腹が減る。俺はニュースをBGM代わりにしつつ、速やかにドカモリ味噌ラーメンにお湯を注いだ。



「あっ、これ5分待つタイプのかー。なげぇなーめんどくさ」



 仕方なく出来上がるまでの数分の間はさほど興味のないニュースで我慢することにした。



「大抵芸能人のブス共が不倫したとか、議員の汚職とか鼻くそみてぇな内容しか報道してねんだよなー。そんなの報道するくらいなら24時間365日もえみの再放送流してろよ、ぁあぁあ」



 テーブルに肘をついて耳をほじると、自然と欠伸(あくび)が出た。



〈ここで臨時ニュースをお伝えいたします。先週の月曜日から開催されている世界オークションですが、国立情報科学研究機構が出品している旧式スーパーコンピューター"HIDEBU"が、先ほど15億円で落札されました〉



「15億! スーパーコンピューターってそんなすげえのな」



 俺は特に興味もなくキャスターの言葉に反応すると、出来上がったラーメンに調味料を入れる。




〈今回のオークションでは、昨年発足した民間のAI研究所ELISAが落札の大本命と見られていました。しかし、最後まで競り合った後に、先ほど当初の想定額を大きく上回る15億3600万円で個人投資家とみられる人物が落札したとのことです。ここでオークション会場と中継が繋がっています〉



「えっ、個人で買ったのかよ。とんだ金持ちがいたもんだな」



〈えー、AI研究所所長の井上です。今回の結果は大変残念、この一言につきます。我々ELISAとしては今回のオークションの機会を千載一遇のチャンスと捉えておりましたが、このような想定外の結果となり今は見通しが立たないと言うのが正直な話です。最後に、個人投資家の方が落札され、どのような用途に使用されるかは分かりませんが、是非有意義なことに使用して頂ければと願うばかりです〉



 涙目で悲壮感漂う所長のコメントには、全く興味のない俺ですら心にくる悲しさがあった。



「うわっ……所長可哀想。国がこういうところにもっと補助して買ってやればいいのになー。実に嘆かわしい! つか、そもそも個人でスパコン買うやつ何に使う気だよw。この研究所より有意義な使い方を個人が出来るとは思えねーけどな~。どーせくだらないことに使うんだろーまっ、憶測でしかないが、、、あっ、麺が伸びてやがる……」



 俺は可哀想だと思いつつも、自分には関係のない世界の話として伸びたラーメンを恨めしく食べたのだった。





………………



――同日某所。



「はぁっ、やっと諦めたわね! まったくしつこいのよバカチンがぁ! 余計に金かかっちゃったじゃないの! このアタシと勝負しようなんて百億年早いのよ」



 ヘラはオークション画面の"落札"という文字を睨み付けると、椅子の背もたれに寄り掛かった。



……ふぅ。まぁ、いいわ。予定外の出費になっちゃったけど、これでゼウスの"見える化"がより進むわね。ふふふっデュフッ。――あっ、あそこのセンサーとカメラをもう三台ほど買っとかないとかしら。

 スマホを手に取り、いつものように通販サイトMamazonとHagetaRoで所定のものを購入する。



「さて……」



 私は立ち上がると右斜め前の壁に貼られた"浮気許すまじ"の習字の下に猫のシールを1枚貼り付けた。



「はい、浮気ポイント1はいりまーすっ!!!……もうすぐ50ポイントかー、ふーん。なるほどねぇ?」



 壁を見るとアタシお気に入りの猫シールは、40枚を優に越え、あと1枚で50枚に達するところまで来ていた。



「まさか、アンタがアタシの最大のライバルになろうとはね。検索回数100万回の女――もえみぃっ!!!」



 思わず嫉妬の怒りで力を解放しそうになるところだったが、グッとこらえた。

 100万回――ゼウスがインターネットでもえみを検索した回数だ。正確には103万9736回。ちなみにアタシは11万ちょっと……ふふぇっw――じゃなくてっ!!! なんでアタシがポっと出のこのアバズレに遅れをとらなきゃいけないの! アタシは常にゼウスの一番であり、ゼウスの一番はアタシなのにぃっ!!!



「このポイント、ほとんどがもえみなのよね? 最初は何者なのって思ったけど、まさかアニメキャラとはねー。リアルの女じゃないから油断してたけど、ここまでくるともはや浮気よね???」



 アタシは改めて、壁に貼られたポイントの多さに怒りと憤りを覚えた。



「これ、ケジメぇ……つけさせないとよねぇ?」



 アタシは机の上にあったお気に入りのお菓子"ココアシガレット"を咥え、ディスプレイ上のラーメンを美味しそうに食べるゼウスを見た。



「ふぅー、そうねぇ。【ヘラ クソブス】とかこの前検索してやがったしなぁ! ふぅ……とりあえずぅー、そろそろ1回シバきいれとくかぁ? んー、これはなぁ? ヤキいれカチコミにいくしかねえよなぁ!?!!?!」




………………






次回、ゼウス死す。

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