第四十四話 目くそ鼻くそを笑う④
「うぅ……もう無理や」
「うぉっふっ……もう寿司もピザも二度と食わねぇわ」
彼らはなんとか20人前をたいらげると、畳の上に倒れた。
「20人前とか頭おかしいだろ」
「頼んだのお前やがwww」
「そうでしたねwww。ふぅ、う。デュオニソスの酒がなかったら絶対食えなかったな。最後のほう無理矢理葡萄酒で流しこんだわwww」
「さすが秘蔵の酒よな~。強烈な味の癖になぜか後を引くんよなぁこれ。んうぃっんんんくぅ~この五臓六腑に染み渡るうまさよなぁ!」
ヘパイストスは寝転びながらだらしなくワインを口に運ぶと、その味に目を輝かせた。
それを見たゼウスも彼の真似をする。
「んく、んく、ぜぇはー! かー、さすがあのぶどう酒馬鹿! まじぱねぇはこれ」
「ほんまそれ!」
「いやー、何だか気分が良くなってきたぞー。おいハゲ、お前踊れや!」
「は? 何でワイが踊らなアカンねん。てめぇが踊れや」
「じゃあ、一緒に踊るwww?」
「任せろゼウスwww」
「「あっひゃっひゃーのひゃひゃいのひゃー!」」
顔を赤らめた二人は陽気な気分で立ち上がると、踊り出した。
「ん~~ワッショイワッショイ!」
「ワッショイワッショイ!」
「ワッショイワッショイィッ!」
「ワッショイワッショイ!!!!!」
彼らは夜遅くに大声でどんちゃん騒ぎをしだした。
「いやぁ~いい気分だ! よしヘパイストス、今日は無礼講だ! 何をしても俺様が許そう!」
「はぁ? 何を今さらwwwお前は365日オールウェイズ無礼講やろ。酔っとんなぁ」
「は? 酔ってねぇし」
「いや、酔っとるやろ。自分に、なw」
「まぁねwww! だって僕、宇宙を救った全知全能の天才で、神々の王のゼウス君だもんwwwwww」
「ふぅ……相変わらず天界で右に出るものはいないほど調子に乗っとんなぁお前! やっぱシバいたるわオラ!!!」
「――ガッ!!! てんめぇ~何しやがる!」
ゼウスの言動にいらついたヘパイストスは、げんこつをゼウスの頭に浴びせた。
「おんめぇーこのやろぉ! 格下の癖に生意気なぁ!!」
「何が格下や! 今の落ちぶれたお前なんぞワイ以下やぞw。それになぁ、今日は、無礼講なんやろぉw?」
「……ほうw。面白いこと言うねぇ君ぃwwww? 僕そういう煽り嫌いじゃないよwww……隙あり! 無礼講チョップ!!!」
「ぐわっ!!!!!!!」
ゼウスは油断していたヘパイストスの頭にお返しとばかりに強烈なチョップをかます。
「やりやがったなぁ~。お返しや! 無礼講エルボー!」
「ぐぉっえっ! くっ、さっき食ったもん全部戻しそうになったわ。ふざんけんなよハゲ野郎! 食らえっ無礼講かかと落としぃ!」
「あぶねっ!」
ヘパイストスは咄嗟に右に避ける。
「からの~無礼講みぞおち突き!」
「――――あまいでぇっ! 無礼講みぞおち返し!」
「くっ、あぶねぇw。――――隙ありっ無礼講!!!」
「ぅおっぶ!」
ゼウスはヘパイストスの拳を受け流すと、ヘパイストスの頭頂部を手のひらで思いっきりはたいた。
「ふぉっふぉっwwwなかなかやるやないの? んーwww? ……食らえ無礼講スネ蹴り!」
「――うぉっ! ひゅ~wwwあぶねっ」
ゼウスはヘパイストスの蹴りをスレスレでかわした。
「――あ、ちょっとたんまやゼウス」
「ん? 何だよ??」
「無礼講金的だけは禁止な? あれほんまアカンやつやで。日に二度も金玉にダメージをおったらさすがに金玉死亡やぞ」
「デスボールワロタwww」
「ほんまあの技禁止な! 無礼講とかいうレベル越えてまうで!」
「使うか使わないかは俺様が決めることだ、ふっ」
「なん、だ、と……?」
「……」
「……」
二人の間に一瞬の静寂が訪れる。その直後に動き出したのは――――ゼウスだった。
「――食らえっ! ファイナル無礼講金的スマッシュ!」
「――やはりきたかっ、無礼講たまきんシールド! ウィーン!!!」
ヘパイストスはゼウスの股蹴りを察すると、即座に手のひらで股間に防壁を作った。
「それで守ったつもりか、食らえ! 無礼講たまきんシールドブレイク」
「くっ――無礼講たまきんシールドブレイクガード!」
「それですむかよ! とどめだっ! ファイナルアルティメット無礼講たまきんフラッシュ!!!!!」
「ぬわーーーーーっっっっっっ!!!!!!!!!!!!!!!」
………………




