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俺ゼウスの生まれ変わりなんだけど、無双してたらボッチになった件について  作者: 紅羽 慧(お神)
この歳で初体験とか……これもう分かんねえな編
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第五話 マジのガチで面倒な奴


「あっれ~マジでおかしいなぁ??」


「……ねぇ、まだぁ? 何チンタラしてんだよ!」



 ゼウスはもう我慢の限界に来ていた。彼は一刻も早く天界に戻れるようにハーデスに強く抗議する。



「いや、ちょっと待ってって!」


「遅すぎうざすぎきもすぎぃぃいいいっ! はやくしてっ!!!」 


「おいっ――おまえそう(ろう)かよっ! ちょっとは兄貴をいたわれよぉっ!! あぁん!? たまには俺にも調子に乗らせてくれよぉおおおおおっ!!! いっつもお前ばっかりもてもてで……うっ、くそがぁあああっ!!!」



 ハーデスはやけくそがちにあちこち探してみた。しかし書類は見つからない。



「おい、どうしたんだよ……まさか失くしたのか?」


「いや、そんなはずはないんだがなぁ? ふーむ……」



 ハーデスは腕を組むと、握り拳の上に顎を乗せて考え込んでしまった。

 


(ずいぶん頑張って探してるみたいだが、この散らかりようだもんな……ほんと使えねーやつだわ)



 空間の割れ目をのぞき込んだゼウスは、乱雑な様子の部屋に呆れていた。そんなゼウスには目もくれずひたすらに考え込んでいたハーデスだったが、彼は突然ハッと何かに気づくと硬直した。――何かに気づいたようだ。



「あっ、やべっ。すっかり忘れてたぜ」



 そう呟くと彼の顔は、みるみると青ざめていく。



「ん? おい、どうしたんだよ? ただでさえ白い顔が、もうそれ以上白くならねえってくらい白くなってんぞ?」


「……まずいぞブラザー。大変なことに気づいたぞ」


「大変なこと? なんだよそれ!」



 普段は冷静沈着なハーデスの動揺ぶりに、ゼウスは内心驚きを隠せないでいた。



(ハーデスニキどうしたんだ? こんなきもい顔は初めて見たぞ……これは、ただごとじゃない予感がするぞ?)



「はぁ、はぁっ、ふぉぉおおおおおおおっっ!!!!!!!」



 余りに衝撃的な事実に気づいたハーデスが雄叫びをあげると、彼の体はもはや白くなるのを超えて消えかかっていた。



「クソワロタwwwwwおい、薄くなってんぞwww――いやいや笑ってる場合じゃねぇな! 一体なんなんだよ! やっぱなくしたんじゃないのか?」


「いや……違う。違うんだブラザーよ。俺は『物を失くさないことには定評のある』ハーデス様だぞ?」


「んーと、初耳なんですがw?」


「いいか、落ち着いて聞けよブラザー。冥界こっちから人間界に誰かを送る権限は、俺に一任されてるのは知っているな?」


「んー……まぁ、転生とかそっち系は兄貴の仕事ってのは知ってるけどよ。逆もそうなんじゃないのか?」



 ゼウスは神妙な面持ちのハーデスを見ると、とんでもないことを兄が口にするのではないかと焦りを感じていた。



「はぁ、はぁはぁ……ゴクリッ。はぁ、はぁ……いいか……落ち着いて聞けよ?」


「いいから、早く言えやカス!」


「……あのなぁゼウス。人間界そっちからこっちに送る権限を持つのはなぁ……『ポセイドンニキ』なんだよ」


「なん、だと……?」




 ゼウスは目の前が真っ暗になっていくのを感じていた。彼はよりにもよって、『最悪なやつ』が権限を持っていることに愕然とする。



「は、ははは……じ、じゃぁ俺はそういうことなんで、急用を思い出したのでこれにて一件落着っていうか? まじ、ち~ん(笑)て感じなんで帰るわっ! 達者でなっブラザー! あとはよろしく~チャオっ☆彡」


「――あっ、てめえっ! きたねえぞ、このホモ野郎がぁあぁあああああ!!! ふざけんなぁああっ!!!」


「許してちょんまげ!」



 ハーデスは必死の形相ぎょうそうで割れ目に飛びかかるゼウスを尻目に、急いでゲートを閉じて逃げてしまった。



「あのやろぉぉおおおちくしょおおおぉおおおおっ!!!!!」



 ハーデスに逃げられてしまったゼウスは、屈辱と悔しさのあまり砂漠の中心で思いっきり叫んだ。その声は砂漠全体まで響き渡るほど大きく、辺りに真空波と巨大な竜巻を生じさせた。



「うぉおおおおおおおくそがいこつがぁああああああああっ!!!!!!!!」



――――ゼウスを中心に砂の渦が激しく巻き起こる。大気は荒れ狂い、雷鳴と暴風が大地を埋めつくす。……しかし強烈な嵐も半時とは続かず、次第に雨風は弱まっていき、また先程の強い日差しと晴天が空に戻りだした。



「あぁあああぁっ……はぁ、はぁ……くそがぁっ! 力を使うのがっ、はぁ……こんなにも疲れるなんてっ」



 ひとしきり力を使うとゼウスはその場に座り込んでしまった。力は使えるものの人間の体では負荷が大きすぎるため、体が一時的に麻痺してしまったのだ。



(嘘だろぉ~おい、こんな体じゃなんもできねぇぞっ! まさか――ずっとこのままかよっ!? は? いったいどうすりゃあいいんだよこんなの……)



 広大な砂漠に一人ポツンと残されたゼウスは、その乾いた大地の果てを呆然と眺める他なかった……。




………………




「――――ああぁああくそったれがっ! なんでこんなめんどくさいことになってんだぁ? あんのクソBL野郎――絶対俺を置いてったことを後悔させてやるっ!」



 呆然としていたゼウスもしばしの時が流れると、再び心の底から湧き上がる怒りを表に出す。これほどまで追い詰められたのは、彼の長い人生において初めてのことだった。

 だが、ゼウスは冷静にならざるを得なかった。なぜなら自分が天界に戻るためには、嫌いな兄『ポセイドン』の力を借りる以外他にないと理解していたからだ。



(落ち着け俺……こういうピンチのときこそ余裕を見せなくてどうするというのだ。ゼウス家の家訓たる『常に傲慢であれ』の精神を忘れてはならんぞ)



 どうやってポセイドンを説得すればよいのか。ゼウスはしばらくあれやこれやと真面目に考えたが、良い案は全く浮かんでいなかった。



(う~~ん。よりにもよってあの『ポセイドンニキ』が担当とはなぁ……ほんとたまげたわ。あいつ、人の話マジで聞かないからさぁw。つーか、ハーデスニキが行きも帰りも担当じゃねぇのかよっくそ! ったくあのゴミはほんと使えねえなぁ? 冥界に戻ったら真っ先にあのガイコツボコるわwww)



 カンカンに怒っていたゼウスだったが、そんな彼も少しずつ笑う余裕が出てき始めていた。――彼の特殊スキル『エンバイロメンタル』が発動したのだ。


『エンバイロメンタル』とは、困難な状況に陥った時に自動で発動するゼウス固有のスキルで、身体と心を環境に高いレベルで適応させることができる。彼は砂漠の暑さも全く気にならなくなっており、いつもの調子を取り戻していた。

 しかし、そうはいっても根本的な解決にはなっていない。ゼウスが天界に戻るためには、ポセイドンの許可と力がどうしても必要なのだ。



「ポセイドンニキかぁ、はぁ……」



 ゼウスは大きな溜め息を一つ吐くと、ポセイドンとの思い出を振り返った。




 俺が唯一苦手な相手、それがポセイドンニキだ。奴の特徴を端的に言うと、デブで、臭くて、面倒臭い――といったところだ。


 ポセイドンニキの良いところ? ないに決まってんだろバカかwww。――あっ、ごめん一つあったわ! 俺さぁ、ガチのイケメンだからマジでモテるのね? だからよく女がしつこく言い寄って来るんだけど、そんときはあのデブを呼ぶじゃん? そうすっと、みんな逃げてくからマジ便利なんだよね~w。 


 ポセイドンニキってさぁ……おれっちがたまに同情しちゃうくらい、本気でみんなに嫌われてるんだよね……。そろそろ貰い手を探してやらないと、流石にこのままずっと独身はかわいそうかもなぁ。……はぁ~ぁ! あんなクソデブのことまで考えちゃう優しいおれっちって、マジで菩薩なんだよなぁ?




「んまぁ、あいつは単純だから、言いくるめるのはたぶんいける! でもあいつにお願いすんの嫌なんだよなぁ。ポセイドンニキ冗談通じねえからさぁ~、マジで厄介なんだよね……ほんとハーデスニキの3倍くらいめんどくせえわ」



 ゼウスはウンウンと唸りながら、頭を抱えた。




 ポセイドンニキとは何回もケンカしてるんだけどよぉ。あいつとやりあうと、必ずと言っていいほど長期戦になるんだよね。とりあえず寝技に持ち込んでくるみたいな? 格闘技とかでたまに見かけるじゃん、そういうめんどくさい奴ってw。こちらがギブアップするまで、ねちねちとひたすら固め技で粘るって感じのくっそ卑怯な戦い方するからなぁ……。


 しかも固め技した後は、なんか無意味に揺らしてくんのw! まじウケるwww。とりあえず揺らしとけば相手が言うこと聞いてくれると思ってる『勘違いハナクソ脳筋野郎』だから、ほんとウザすぎて手に負えない~www。

 

 それだけじゃないの! 存在自体がただでさえ死ぬほどめんどくせえのに、揺らされっと――まぁ、おれっちは全知全能で最強だからいいんだが――いろんな星とか銀河とか宇宙の秩序を破壊しだすから、まじもんの害☆悪!!


 しかもその上、好き勝手に破壊しては修復せず帰っていくから、いっつもその後始末で全知全能の俺がいろいろ直さなきゃいけなくて、ほんと迷☆惑!!


 全知全能の俺様じゃなかったら今頃ポセイドンニキのせいで、宇宙の大半が終わってるとこなんだよなぁ……はぁ~っ、俺ってマジ全知全能の苦労人だわ。




 ポセイドンとの苦い思い出ばかりが出てくるゼウス。重苦しい気持ちで説得する方法を考え直そうとした――矢先のことだった。



「ふぅ~む……ん??」



――――何やら大地が、ゴゴゴ……と小刻みに揺れ始める。



「うわっ――何だこの揺れ……まさか!!!?」


「――――話はハーデス兄者から聞かせてもらったぞっ!」


「そ、その声は!? まさかっ――――」



 ゼウスは聞き覚えのある低い声を耳にすると、心底驚いた。あまりに早すぎる例の男の登場は、彼にとってあまりにも想定外の出来事だったのだ。



(うそだろぉ~おぃおぃ! うっわぁ~ありえないレベルのキチガイが、もうきちゃったのかよwwwマジで空気読めないってレベルじゃねーぞコレ!)


 

――――揺れは次第に大きくなっていく。もはや常人なら立っているのもやっとなほどの大地震がしばらく続き、やがて砂漠の大地が真っ二つに割れた。そして激しい地鳴りと共に割れた大地から、ゼウスの兄――――ポセイドン――――が姿を現した。



「我こそは、全ての海洋と大地を支配する者……ポセイドンであるっ!!!!!」




………………


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