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俺ゼウスの生まれ変わりなんだけど、無双してたらボッチになった件について  作者: 紅羽 慧(お神)
すねはかじれるだけかじるのが当たり前じゃね?編
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第四十二話 目くそ鼻くそを笑う②



「ほぉ~これがかの有名な天空神様のお部屋でございますか~。なんや狭いなぁ? 落ちぶれたなゼウス」



 ヘパイストスは部屋に入るやいなや、ゼウスの部屋にケチをつけた。



「あ? お前この部屋の良さが分からないとか~これだから田舎もんは困りますね」


「な、なんやとっ!」


「あのねぇ、広ければ良いみたいな考え方間違ってることにそろそろ気づこうよ」


「いや、デカイほうが良いって前に言ってたのゼウスやけどな。ふーむ、よー分からんけど……言われてみればコンパクトやしな。それに意外と片付いてるなぁ」



 ヘパイストスはその場で再度部屋を見渡すと、顎髭を触りながら頷いた。



「だろ! まぁ、この前アテナが来たからなw」


「何やて!? あのべっぴんさんがこんなオタク臭い部屋に!?」


「はっとばすぞてめぇwww」


「なんややるんかゼウス?」


「や――やらない。だって疲れるもん」


「……せやな。とりあえずさ、ほんま喉渇いたから茶でも出せや髭! この家は客人に対して茶も出せんのかほんまつっかえ!!!」


「なんか人の家に上がり込んどいてめちゃくそでかい態度でワロタwww。その辺に適当に座って待っとけハゲ」



 ゼウスは渋い顔をすると、台所へと向かった。



(あ、一応茶は出してくれるんか)



 ヘパイストスはその場の畳に座ると、部屋をもう一度見渡した。



(ハーデスさんが言うてたけど、ほんまにハマっとるみたいやな。なんやよーわからんキャラクターがごちゃごちゃしとんなぁ? ――ん? このフィギュアなかなか可愛いやん?)



 ヘパイストスは、机の上に置いてあった魔法少女もえみちゃんのフィギュアを手に取った。



「ほらよ~ハゲ太郎君、お茶じゃなくてコーラを持って――――っておいぃぃぃ!!!! 俺のもえみに気安く触れるんじゃねぇ!!!」


「うぉっお前でかい声だすなや! 心臓飛び出るかと思ったわ」



 ゼウスは持っていたコーラを放り出すと、ヘパイストスの手からフィギュアを取り上げた。



「はぁ~まじなえぽよなんだが、、、俺のもえみが腐れ畜生ハゲに汚された!!!」


「ひどい言われようやなwww何もしてへんわ!」


「いや絶対したわ! こんのやろぉ~貴様は俺の(ソウル)に傷をつけた!」


「大げさやろwww」


「次、もえみのフィギュアに手ぇだしてみろ? 俺は何するかわかんねぇぞ???」


「なにそれ超こわいんやがwww」


「ったく、俺様のメガネが壊れて見えないのをいいことに……あっ!」


「ん?」


「お前さ、そういえば修復魔法使えるだろ? 俺のメガネ直せよバカ!」



 ゼウスは目元を指さしながらヘパイストスに詰め寄った。



「ん~? 使えるけど、なんやそれくらい自分で直せるやろ?」


「さっきも言ったけど今、力使えねぇんだよ分かれよごみ!!!」


「お前、ほんまに落ちぶれたな」


「何度も言わんでいいw」


「分かったが、とりあえず~喉渇いたからお茶」


「しょうがねぇなぁ、ほれ!」



 ゼウスは放り出したコーラを拾うと、ヘパイストスに渡した。



「何やこの黒い液体?」


「コーラだよコーラ。バリ上手いから」


「そうなんか、へー。じゃあ失礼して――――ぶっふぉっっ!!!!!」


「あっwww」



 勢いよくキャップをひねったヘパイストスの顔面に、コーラが直撃する。



「ぶぅおっほぉっぉっっほぃいいっんあぁっ! 鼻に入ったなんやこれ悪魔の飲みもんか!」


「クソワロタwww。お前さぁ、炭酸開けるときはゆっくりって常識だよこれ?」


「知らんがな! はぁ、死ぬかと思った」


「いやいっそもう死んだほうがいいんじゃないっすかね?w」


「はぁ? お前こそ死ねや!」


「生きる!」


「死ねや」


「生きる!」


「生きないでくださいお願いします!」


「死にません~残念でした~www」



………………



「お前と話してると、いつも不毛な戦いに導かれていくんやがなんなんやほんま!」


「お前がアホなだけだろ」


「はぁ、もうええわ。じゃあなアホンダラ!!!」



 ヘパイストスは捨て台詞を吐き立ち上がったが、数歩歩くと腹の音が部屋に鳴り響いた。



「あっ」


「何だお前、腹減ってんのか」


「しばらく何も食っとらんからな……はぁ」


「そういえば、お前ちょっと痩せたか? 餓えたガキに見えるぞ」



 ゼウスはヘパイストスの体に目をやると、眉をひそめた。



「いやー、最近不況やんか? あんま食べんようにって節約しとんのや。鍛冶屋とかぶっちゃけ儲からんからな」


「はーん。まぁ鍛冶屋とかそりゃあそうだろうな普通に考えればw」


「はぁ~~デカい戦争でもありゃあ馬鹿売れ大もうけなんやがなwwwぶっふぉっふぉっふぉwww」


「お前、、、ガチ屑だよその発言。許せないなぁ、平和主義者のこの俺様の前でのその発言はな!」


「あえて何も突っ込まんでおくでw。しゃーないやろ、鍛冶屋も大変なんや! だからな、今は金物をつくっとるで!」


「お前、まがいなりにもオリュンポス十二神の一人だというのに」


「おい、金物屋をバカにすんな! 職人やぞ職人! 職に貴賤(きせん)なんぞあらへんがな」


「いや、働かないという選択肢もあるじゃん」


「はぁ、これだからスネかじり糞ニートはなぁ、ほんまに。お前もバイトでもなんなりして、少しはヘラさんに贈り物の一つでもしろ!」


「えぇ~だってさーあいつ、俺の年収の100倍以上を一瞬で稼ぐんだもんw。それ見た時から、もー働く気0だわ」


「ぶふぉwwwヘラさん凄すぎワロタwww」


「インサイダー取引みてぇな違法行為ばっかしてそうだもんなあいつwww。しかも、ぜってー納税してねぇぞ。俺には分かる!!!」


「脱税ワロスwww」


「ま、ぶっちゃけ税金なんかどうでもいいわ。俺にさえ金が入ればなw! それにヘラから貰わなくても、ハーデスニキも小遣いくれるしな! わっはっは、働くとかいう概念がないわ」


「すがすがしいほどのくずやなお前www」


「いやぁそれほどでも」


「褒めとらんわクソ! 働けクズニート!」


「え~。正直、働いたら負けかなと思ってる」


「お前は何と戦ってんだよwww」


「まーまー。とりあえず腹減ったから飯でも食おうぜ」



 ゼウスはヘパイストスを落ち着かせようと話題を変えた。



「おっ、奢ってくれるんか!!!」


「しょうがねぇな~www飢えたガキみてえな(つら)しやがってwww。そしたら貧乏人のお前にこのゼウス様が施しを与えてやんよ」


「さぁっすがゼウス~」



 ゼウスは立ち上がると、出前の雑誌を取った。



「んーー何にしよっかな。とりあえずそうだなぁ、"朕の皿"の出前寿司二十人前いっとくか」


「朕の皿……偉そうな名前やなw。ってか二十人前とか多くねっ!? しかも寿司!???」


「んーこれだけじゃなんか足んねぇよなぁ? よしピザも頼むか!」


「ピ、ピザぁ!? お――おい、そんなに頼んで大丈夫なんか?」


「か~~あいかわらず貧乏根性が骨の髄まで染みこんでやがるなてめぇは! いけるいけるぅ~お前も腹減ってんだろ?」


「せ、せやかてゼウス! 量もそうやが、寿司とかピザゆーたらめっちゃ高いやろ? そんなん払えるんか?」



 ヘパイストスはビクビクとおどけながら、不安げにゼウスに問う。



「まーまーwww遠慮すんなって! お金はあれば使う! なくても使う! 根こそぎ使う! そうやって経済は回っているんだぞ~」


「はぇ~すごいなお前」


「よおーし、じゃぁ出前とるぞい!」



 ゼウスは電話の子機をとると、雑誌に書いてある番号のダイヤルを押してヘパイストスに放り投げた。



「ほれっ、頼んだぞ」


「へ? あっ、ちょっおい投げるな、なんでワイが?? えっこれ、出ればいいの??」



 ヘパイストスはゼウスのむちゃぶりに動揺していた。



「えっ、、あっ、はいはいすみませんはい。はいはい私鍛冶ヘパイともうしますです、はい」


「口調変わっててわろたwww」


「うるせぇぞ!! あっすみません、バカがうるさいもんで。えぇっとですねぇ、このファイナルアルティメットスーパー特上寿司極みの20人前お願いします」



 ヘパイストスはゼウスがどや顔で指さす品を見ながら注文をする。



「はい、はい。……おいゼウス、12万くらいするらしいけど、支払いはどうするかって?」


「あー支払いはカードで」


「カード? そんなんあるんか。あ、はいそのカードで。……何回払いかって聞いとるで」


「は? メガネ屋のメスガキの時もそうだけど分割するって発想どうなの?」


「いや知らんしw。まぁ、ワイなんかはカード?は持っとらんけど、ヘルメスへの支払いは1024分割払いにしてもらっとるで」


「分割しすぎわろちwwwわかった! 今日からお前のあだ名を極貧分割ハゲニート鍛冶屋という名前にしよう」


「ぶふぉwwwもはや意味不明過ぎてワロタwww。――あ、すみません一括でお願いします。はい、はい、お願いします~。ふぅ、頼んだで」


「よくやったハゲ」


「いやぁなんか緊張で変な汗かいたわ~。お前、いつのまにこんな人間界に適応しとったんや?」


「へっへっへ、まぁな! 金使い放題だし、楽しまなくちゃな! ちな俺の金じゃないけどwww」


「俺の金じゃないって……誰のや?」


「ハーデスニキ」


「偉そうなことペラペラほざいていやがったけど、結局ヒモかよっ!」


「は? ヒモ?? は? あーそーゆーこというんだーへぇ~。分かったもういいや! 寿司もピザもこれからおれっち一人で食うからっ! お前もういらないっ!!!」


「う――うそうそっ! 嘘やってほんまに! 俺ら友達やろっ? ――なっ? なっ!」


「はぁ?? お前なんかダチじゃねぇよ!」


「ゼウス……ぐすっん」


「だってよー。俺らは――」



 ゼウスは小さく呼吸した後、落ち込むヘパイストスの方に手を回し


「『マブダチ』なんだからよw?」


と微笑んだ。



「ゼウス君……お前のそういうところ大好きwww!」


「はっはっはwww宴じゃうたげじゃぁああ! ――今日は飲むぞぉおおおおおおおらぁああああっ!!!」


「上等やぁおらあああぁあぁぁぁぁあっ!!!!!」


「よし、じゃあピザも頼めハゲ」


「は? 次はお前が頼めやヒゲ」


「あっ、わかったもうお前には何もたべさせてやんない!」


「や"らせていただきますぅううううううんっ!!!!!!」



………………



「ふぅ。ピザも特大の頼んだで。アホみたいな量やったんかむこうも相当ビビッとったでw」


「よくやったハゲ。よし! 今日は盛大な宴を催すと共に我らの女神もえみに祈りを捧げるぞ」


「は? もえみってそのフィギュアの女か?」


「そうだ。俺様の彼女にして愛を互いに誓いあった女神よ」


「お前、ヘラさんというものがありながら!」


「あんなババア欲しけりゃくれてやるぜwww」


「最低過ぎるやろwww。この女のどこが魅力なんや?」


「よくぞ聞いてくれました! よーし、今日はこの俺様が迷える子羊のお前にもえみの偉大さを教えてやろう。そこに座して待て!」



 ゼウスは立ち上がると、押入れから大量のDVDを抱えて戻ってきた。



「今日は記念にオールで観るぞ!」


「いやいやwww多すぎやろ! なんそれ?」


「もえみのBLU-RAY」


「ぶるぅれい? あー、DVDとかいうやつか!」


「まっ、そーだな。お前もハマるぞ」


「ほーん。どーだかな? まぁ、出前が届くまでの暇つぶしに観てもええで。何話くらいあるんや?」


「えーっと今のところ、ファイナルシーズンパート58まであるから」


「長すぎやろwww。えっ、全部でそんなにあるんか?」


「まぁ、落ち着けよ。整理するとな。まず"魔法少女もえみちゃん"。これが第一期だろ。元祖中の元祖、原点にして頂点! 計13話」


「ふむ」


「次に2期。"魔法少女もえみちゃん Next"。26話」


「お、おう。へー」


「3期、"魔法少女もえみちゃん FinalAnswer"。24話」


「長いねんwww長すぎやろ!」 


「その後は3年くらい間が空いて、"映画魔法少女もえちゃん 逆襲のもえみ〜ラストオブアース"4時間半超の超大作が来て、今放映してるのが"もえみ The Final of Final ファイナルシーズンパート58前編"」


「地球最後になっちゃったwww。つか、早く終われやwww。ファイナル多すぎだろ。何回ファイナルすんねん。ファイナル詐欺やん」


「は? もえみは永遠に終わらねぇのよ!」


「FinalAnswerで答え出たんちゃうんか!」


「お前、それは自分の目で確かめろ!」


「答え出なかったら殴るぞ!!!」


「なんで俺が殴られなきゃいけねぇんだよwww。とりあえず観てみろよ!」


「そこまで言うなら観たるわ!」



 ゼウスはブルーレイディスクをセットし、神妙な面持ちで正座した。



「あ? ゼウスお前何しとん?」


「おい! てめぇも正座しろ!」


「は? なんでやねん。意味分からんわ」


「馬鹿野郎! もえみの御前であるぞ! 最初にopを観る時は正座で背筋を伸ばして、テレビから離れて拝見するんだよ」


「大袈裟やなw。そ〜言えば、俺正座したことないねん」


「は? お前それはもう死んだほうがいいよ」


「言いすぎだろwww。だいたいさ、こういうの萌えアニメっていうんよな? 血とか全く出なさそうなほのぼのしたやつやろ? なんかの雑誌で読んだけど可愛い絵でヒロインをツンデレとかにしとけばなんでも売れるんやろ?」


「おめぇ、考えがあめぇよ」


「なんだと?」


「あのなぁ、どこぞの凡作ならそれも分かるが、歴史に残る作品てのは違うんだぜ」


「そんなに凄いのか?」


「もえみちゃんは空前絶後の歴史的怪作だぞ! 絵柄にらしからぬ残虐非道なギャップ。悪は絶対に許さない姿勢を貫き通す究極的正義! まさに悪即斬を体現するヒーローの中のヒーロー。それがもえみだ」


「へ、へぇ〜。そこまで言うなら観たるか」



 ゼウスが再生ボタンを押すとOPが大音量で流れた。


「うぉおおおおもえみぃいいいいくぞぉおおお」


「えぇっ………」



 ヘパイストスは隣ではしゃぐゼウスの盛り上がり様にドン引きしていた。


「おいヘパイストス! 今もえみが俺にウインクしていたぞ!観たか!?」


「いや、実はワイにウィンクしてたんかもw?」


「は? んなわけねぇーだろ!俺にウインクしたに決まってんだろ殺すぞ!」


「目がガンギマリしてんのこえーよwww」



 ヘパイストスは身の危険を感じるもゼウスをからかった。



「あー、そう言えば!」


「あ? なんだよヘパイストス」


「もえみはたぶんお前のこと好きじゃないで」


「は? なんだとてめぇ!」


「もえみやけどな、実は彼氏いるらしいでw」


「は? えっ、あっ? はぁ? ちょ、おま、ソースは?」


「ぶふぉwwwwww冗談やーwww」


「お前、、、次にその冗談ついてみろ。二度とはい上がってこれない落とし穴に叩き落してやる!」


「くそこぇえwww」


………………



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