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俺ゼウスの生まれ変わりなんだけど、無双してたらボッチになった件について  作者: 紅羽 慧(お神)
すねはかじれるだけかじるのが当たり前じゃね?編
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第四十話 永遠のライバル後編


「な、なんだよルールって??」



 宙に浮いていたヘパイストスは、一旦地面に降り立つと彼の話に耳を傾けた。



「はぁ、あぁっはぁ……ふぅ。いいか、よく聞け」



 息も絶え絶えだったゼウスだが、彼は何回か深呼吸をして息を整えると静かに語りだした。



「あのねー、はぁはぁ、人間界で戦う時はね、はぁはぁ、ターン制なんだぞ?」


「なんやと? ターン制やと?」



 ヘパイストスはゼウスの説明が理解出来ずに聞き返す。



「あのな、よく聞けよヘパイストス! よいか! 地球での戦いはな、先攻と後攻に分かれてんの! わかるかい??? つまり先攻が攻撃したら次は後攻が攻撃をする番なの!」


「せ、先攻、後攻とな?? そ――そうなんか。そんな作法があったとは。でもワイが先攻で攻撃しとったって感じやろ? 何がアカンねん?」


「あのね、お前の先攻バトルフェイズ長すぎなのwww端的に言うと調子こきすぎなわけ、分かるかい? お前ばっかボカスカ攻撃しまくってて、もうこれ戦いのバランスが崩壊してるでしょ??」


「ほ、ほう。戦いのバランスとな??」


「そうだよ。すっげぇ攻撃してたんだから、もうターンエンドしないとじゃね? そーゆーのよくないと思うな~攻撃の機会はお互いに平等に与えられないと不公平だろ?」


「ほ、ほう。確かにな」


「いいかい! このルールはケツの青いガキでも知ってる暗黙のルールであり、(おきて)であり、義務なの! 社会のルールを守れよ! 一般常識だよこれ? ……言ってること分かる? 日本語理解出来る??」


「そんなん言ったかて、ワシら神やしなぁ?」


「あのさぁ。現代社会で生きる我々はルールを守ることで、日々の生活を営んでいるんだぞ? 昔の俺らみたいに、先手必勝で一気に技を撃ちまくって相手をねじ伏せるみたいな戦い方は、もう時代遅れのごみルールなの? わかるかなぁ~?」


「じ、時代遅れ。た、確かにな」



 ヘパイストスはゼウスのあまりの熱弁に少しずつ乗せられていた。



「だろう? これくらいのルールは理解出来るよね? だって君、まがいなりにもあの『オリュンポス神の一角のヘパイストス』君だもんね~? 流石にあの『スーパースター鍛冶屋』の君が分からないわけないと思うんだけど……どうかな?」


「す、すーぱーすたー。このワイが。ワイが、スーパースター……はっ、ははは! あ、あったりまえやろwww知っとるわそんなん! あ、あれや! ボケかまさんかったら浪速なにわの男として恥ってゆーやんか!」


(な~にがナニワだよこのエセ関西ウンコハゲ野郎がwww。でも、とりあえずこれでなんとか追撃は食い止められたな)



 ヘパイストスは少しばかり顎に手を触れて考えると、静かに口を開いた。



「ふむ、いいだろうゼウス。そしたら次はお前の攻撃ターンだ」


「ふっ、これでやっとてめぇをぼっこぼこに殴れんぜw!!! いくぞはげやろぉぉおおお!!!!」



 ゼウスはがむしゃらに突進して殴りかかる――が、簡単に避けられ攻撃を当てられない。



「おやおや? どうしたどうしたぁ~そんなもんかw?」


「ま、まだまだ俺のターンは終わってねぇ!」




………………




「はぁっ、くそぉぉ! 当たんねぇ」



 ゼウスは幾度も攻撃をしかけたが、全て避けられヘパイストスに触れることすら出来ずにいた。 



「無様だなゼウスよ。お前の攻撃、何一つ当たらんではないか?」


「うるせぇ! ぶん殴ってやるかんな!」


「一時は天空神にまで上り詰めた男が、、、落ちたなぁ。もういい、お前は大人しくしていろ!!!」



 ヘパイストスはゼウスにそう言うと、全身に先ほどよりもより堅牢な炎の鎧を纏った。



(ヤバイっ――あの目は本気だ。次にあのタックルを食らったら死ぬ……どうするっ!!)


「いくぞ、次は骨一本じゃ済まない!」


(くそっ今の俺じゃ力が足りなすぎる! ましてやメガネも壊れて視界がこうも悪いとなると、こいつを退けるにはどうすれば……視界? いや、待てよ――)


「恨むんなら自分の愚かさを恨むんやなぁ! はぁああああっ!!!」


(どうする、ヤバイヤバイ。あの技は――こうなったらあれにかけるしかない!)



 意を決したゼウスは、突撃してくるヘパイストスに対峙しながら、(おもむろ)にズボンを勢いよく下ろした。



「終わりだゼウスぅぅぅ!!!!」


『『『必殺――――御珍光ライト・オブ・ぺニス!!!』』』


「な、何だその技は見たこと――ぐわぁあああああっっぁあっ目がぁあぁああっぁあっ!!!」



 ヘパイストスはゼウスの股の輝きを見ると、目を押さえて膝を折った。



「目が、、、全く見えん。ゼウスお前、何をした!」


「おれっちの『光輝くイチモツ』を見たお前の運の尽きだ」


「い、イチモツ!?? て、てめぇっ、二重の意味で汚ねぇぞっ! いっつもいっつも卑怯な技ばかり使いやがって! 大体さっきのお前の説明で言ったら、今はワイの攻撃のターンやったろうがぁっ!」


「はっ、カウンターってのがあるのよ」


「か、カウンター!? ふーむ、人間界の戦いは複雑なんやなぁ? それにしても、そもそもの技がちょっと卑怯すぎひん?」


「ふん、俺が弱体化したところを狙って襲撃してきたお前が、卑怯とか言えた話かな?」


「確かに。ま、そこはお互い様って感じで」


「言い訳を並べるとは、見苦しいぞヘパイストスよw。オリュンポス108の秘密の一つ、俺様の光る逸物イチモツを目にした時点で、お前の負けはもう確定したんだよ!」


「ぶふぉwww秘密多過ぎワロタwww。ふざけんなよくそっ!!! いっつもい~っつもふざけた卑怯な技ばかり考案しやがって! なんなんやこれは! マジで何も見えんのやがっ!」


「俺様の光輝くおティンティンを見たものは、一定時間の間失明状態となる」


「強すぎってか、恐すぎワロタwwwチート過ぎやろwww。――いや、笑っとる場合やないわ! マジでほんま何も見えんのやが!」


「ふははは。これで終わらせる。古より伝わりし幻の秘技でなぁ!」


「ま、まさかっ!? ゼウスお前っ、あの技――ケラウノス――を使う気か?」


「バーカ! あれを使ったらヘラに殺されるわw」


「だ、だよなぁ。マジでビビったわ。な――なら、一体何を使うつもりや!??」


「ふっ、俺が使うのはそう、俺様の怒りが強まれば強まるほどに威力を増す、必殺の拳――トルネードマキシマムファイアーナックル!」


「なんやと!? あの幻のファイアーナックルだと……そんなんあったっけ??? き――聞いてないぞ!」


「ふん、お前にはオリュンポスの神髄というものを見せてやろう。いくぞぉっ――こうなればおれっちの勝ちだ。俺の怒りの拳『ハイパーマキシマムトルネードファイヤーナックルバースト』を食らわしてやる!」


「何だとっ!? ハイパーうんたらかんたらなんて――き、聞いてないぞ! お前、オナニーパンチ以外に新技を編み出してはいたというのかっ!?」


「はああぁっ! うぉおおおおぉ覚悟しろよくそ鍛冶屋ぁああああああうおぉおおおおおお俺の拳よ!!」


(くっ――まずい。いくら力が弱まっているとはいえ、あいつの必殺パンチをまともに食らうのはかなりヤバイで)



 ゼウスの新技に最大限の警戒をしたヘパイストスが、両腕を前に出し


「プロテクトアームシールド!」


と唱えると、彼の腕は強固な金属で硬質化された。



(持ってくれよ、ワイの腕よ!)



 目の見えないヘパイストスは、来るであろう拳にそなえて両腕の全神経を防御に集中させた。



「はははっ馬鹿めがぁ――隙ありぃっ!! スーパー金的きんてきボムッ!!」

「えっ――」



 ゼウスは助走をつけた状態で殴りかかるモーションをしつつも、ヘパイストスの腕ではなく股間に思い切り膝蹴りをいれた。



「――――――――ふぉおぉおおおおおおおおあぁ~んっっ!!!」


「はっはっは、見たか! これがオリュンポスの神髄だぁ!」


「ふぉおぉおぉおおおおぉおおっぉっおっおっおっぉっ!!」



 ヘパイストスは膝から崩れ落ちると同時に、張られていた結界ディアスティマは音もなくスーッと消えていった。



「ふぅ……また汚いものを蹴りあげてしまった。ヘパイストスよ、お前も甘くなったな。二度までもこの技にかかるとは」


「て――てめっ、あ、あぁぁあっっくそっ、ふざけんなよその技封印したんじゃ――っ」


「はっはっはっはーっ! 今でもバリバリ現役な技だぞ~~? 目には目を、歯には歯を、卑怯もんには必殺技を!」


「ぁぁあっくっ、う、ふざけっ――その技まだ使ってやがったのか!」



 ヘパイストスは苦悶の表情を浮かべながらゼウスのもとに這いより、彼の足に必死にしがみつく。



「無駄な抵抗はよせヘパイストス。古今東西、この攻撃をくらってなお立っていられたやつは、ハーデスニキくらいしかいない」


「ふっ、ざけんな、よぉヒゲェ! あいかわらず――ぐっ、きたねぇ攻撃しやがって!」



 余裕がなくなったヘパイストスは、関西弁ではなくなっていた。



「力こそ正義っ! この世は弱肉強食であり、勝った者が正義なのだよヘパイストス君? 私が今勇ましく立っていて、君がそのように無様に地に伏している。つまりはそういうことだ――分かるかい??」


「くそっふざけんなやぁああっひきょうもんがあぁああぁっ!」


「はっはっは! 確か君、さっき言ってたよねぇ……『勝てば官軍、負ければ逆賊」ってねw。それが世のつねなのだよ、ヘパイストス君www」


「ゆるっさんぞぉぉぉおおゼウスぅううう!!!!」


「ほんとにしつけぇ野郎だ――あっ! えっ、ちょっと待って! そろそろ新番組『つけ麺ライダーDX』と『ギリシャマン次郎』の時間じゃねっ!? 一応録画してるけど、リアルタイムで観ないとじゃね常識的に考えて?? じゃ、そゆことで!」


「うっ!!!」



 ゼウスは公園にある古ぼけた時計台で時刻を確認すると、しがみつくヘパイストスを乱暴に振り払いそそくさと公園から出ていく。



「お、おい――待って、やぁ、ふざけんなぁかすごみうんこちんこ!」


「無様だなヘパイストスよふははははは! ハーハッハッハ笑いが止まらん! 実に愉快愉快~じゃあなエセ関西ウンコハゲニート貧乏太郎君www」


「くそっ、ま、待てゼウ――あ、あっ、あっ、あぁんっ!!!」



 ヘパイストスは高らかに笑うゼウスを追いかけようとするも、股間に周期的に押し寄せる痛みに何度か悶絶すると、白目をいて意識を失ってしまった。




………………



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