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俺ゼウスの生まれ変わりなんだけど、無双してたらボッチになった件について  作者: 紅羽 慧(お神)
すねはかじれるだけかじるのが当たり前じゃね?編
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第三十六話 メガネウス 前編

好きな話です笑


「ふ~ん。ふ~ん。も、も、もえみちゃ~ん~殴れ! 殺せ! バイオレンス~♪」



 ゼウスは鼻歌を歌いながら、なんだかんだと言いつつも結局メガネストアに向かっていた。



「お~ようやくついたか! ふむふむ、ここがメガネストアか! ん~、ややっ! いかにも目の悪そうな(やから)がたくさんいやがるなーおいw」



 ゼウスはガラス越しに店の中を覗くと、客の一人一人に指を指して鼻で笑う。



「ウィイイイィィィッス!」


「いらっしゃいませー」



 ゼウスが店に入ると、肩の位置まであるストレートな黒髪をなびかせた、赤いメガネの女性店員が寄ってくる。



「おうおう、おめぇ何かよさげなメガネしとるやん? なんか、いかにも『メガネに目がねぇ』ってな感じの顔してんなw」


「あ、ありがとうございます。は、はぁ?」



 彼女はゼウスの意図が全く読めず、曖昧な返事と共に首をかしげる。



「いや、うん。『マジで何言ってんのコイツ?』みたいな顔をされるとこっちも結構ダメージ大きいんで、今のは聞かなかったことにしといてw」


「は、はぁ。分かりました。それでは、えー、御客様は今日はどのようなメガネをお探しでしょうか?」


「んーそうねぇ? とりあえず、イカス感じのおれっちに見合った最高級のメガネが欲しいんだよね! パチモンじゃなくて、ちゃんとした国産のマジでオシャンティーなやーつがほすぃーんだよね! 分かるだろ?」



 ゼウスは、彼女に顔をこれでもかと近づけると威圧的に注文する。



「は、はい! で、ではまずは店内にある中からお好きなものをゆっくり御覧になってください!」


「オッケー!」




………………




「おっ! このレインボーなやつとか最高やん? これ超人気商品で品切れ続出だろ?? どう、似合う?」



 ゼウスはネタであっても誰もつけなさそうな、縞縞(しましま)のカラフルなメガネを手に取ると、装着して店員に聞く。



「あ、あーえーっと……そう、ですかね? は、ははははー。に、似合ってますよ!」


「だよねっ! ま、聞くまでもないよね~似合うか似合わないかなんて! いや~、やっぱおれっち見る目あるわぁ~。今度お宝鑑定団にゲスト出演してみよっかな? あの番組パチモンばっかかと思ったら、意外にすげぇもんもたまに出てくるからつい観ちゃうんだよね~。まぁ、もえみちゃんの再放送の録画ミスってあの番組になってたときは、鑑定品もろともスタジオを消し炭にしてやろうかガチで考えたんだけどなっ!」


(何言ってるのか全然分からない、、、どうしよう。それにこのメガネって確か、私が来た三年前からその位置で微動だにしないくらい売れ残ってるやつだった気が)



 彼女が両手を胸の前でにぎり、納得のいってない顔を見たゼウスは


「何だお前、俺様の鑑定に文句でもあんのか??」


と、顔を再び彼女に近づける。



「い、いえっ! 素晴らしい目利きだなぁと感心しておりました!」


「だよねっ! お前なかなか分かってんじゃあん! ひょっとするとお前は、この俺様の御眼鏡(おめがね)にかなうやつかもなぁ、メガネだけになっ、ぷっw」



 ゼウスは自分のダジャレに自ら吹き出すと、再び違うメガネを手に取りあーでもないこーでもないとコメントをつけ始めた。



(何なんだこの人。よく見たらメガネもめちゃくちゃに変形してて不気味だし、もしかしてああいうモデルなのかな? うーん、変わった人だなぁ……苦手だ)



 彼女は自分には荷が重すぎる客ではないかと思いながら、楽しそうにしているゼウスを見ていることしか出来なかった。




………………




「おぉ~、これいつぞやのグラサンハゲがつけてたやつじゃん! 正直結構かっこいいと思うんだよなぁ~。これも買おっかな?」


「か、かっこいいと思いますよ!」


「あー、そんなの改めて言わなくてもいいよー。俺様がかっこいいってのは宇宙の真理なんだから。1+1=2って言ってるのと同じだよそれ?」


(とてつもない自信だ)




………………




「――――あぁっ!!! これっ!」



 ゼウスは、店に入ってから一際大きな声を上げると


「この赤いやつ良い! やはりもえみちゃんのような情熱と深い愛を表すこのクリムゾンレッド。君に決めたっ!」


と、縁が大きくとられた深紅のメガネを手に取る。



「あ、あのーお客さまにはちょっと」


「あんだよ?」


「いえ、『女性用』のメガネなのでお客様には合わないかと思いまして」


「は? 女性用のとか男性用とか関係ないんだが?? 俺が気に入るか気に入らないか、それが最も本質的に大事なことじゃね?」


「は、はぁ」


「そもそも! 顧客のニーズを最大限尊重するのがビジネスマンとしての心得だろーがたわけぇっ! 立場をわきまえるところから学ぼうか? つまり、おれは御客(かみ)! おまえらは店員ゴミ! わかるかな~店員(ゴミ)w?」


「口を挟んでしまい申し訳ございません。しかし、そのタイプですとそこにある商品だけのものになってしまいまして、サイズ的にもお客様に合わないかと。値段が高くなってしまいますがオーダーメイド品も手掛けておりますので、あるいはそちらで……?」



 彼女はゼウスの顔色を伺いながら、控えめに提案した。



「えーそうなの? まじかよ~、すぐ作れないのかよくそっ! じゃあ、これのオーダーメイドでおなしゃす!」


「ほ、本当にこの赤いモデルでよろしいですか?」


「何だよ、お前も赤いやつつけてんじゃん」


「ですが、その」


「お前いちいちいちいち文句を言ってくるな~メガネかち割るぞぉっ!」


「す、すみません」


「そうやってすぐ謝る! 謝れば何でも解決するとか思っ――うっ!!!」



 ゼウスは彼女にさらに暴言を浴びせようとしたが、急に左胸の辺りが苦しくなり膝をついていた。



「お客様! 大丈夫ですか?」


(くそっ、体が少し重くなってやがるな。また例の呪いかぁっ? 今ので確信したわ。力が減っちまったのか、くそぉっ! 何も悪いことしてなくない? ただ、ちょろっと文句言っただけやん! ほんとどうゆう原理だよw)



 ゼウスは基準の分からない呪いに戸惑うと、顔をしかめた。そんな彼の顔を見た彼女は、苦しみに耐えていると感じたのか


「お客様お客様! 本当に大丈夫ですか!?」


と、背中をさすりながら懸命に励ましていた。



「大丈夫! へーきへーき」


「でも、救急車呼んだ方がいいですか?」


「だ、大丈夫だから、話を進めるぞっ! 俺はこのかっちょいいメガネを早くつけたいんだよっ!」


「は、はい! お客様がそこまでおっしゃるのでしたら。で、ではこの赤いモデルのものをオーダーメイドでお作り致します。そうしましたら、えっと、レンズやフレームなどの細かな条件を決めますので、あちらの席にお座りください」



 店員はゼウスの身が心配になったものの、言われた通り話を進めるため彼を受付へと案内した。




………………




「当店では、このモデルのメガネですと基本価格がこのお値段になっております」



 店員はカウンターの向かいに座ると、カタログを指しながら説明した。



「ふーん、34980円かー。もえみちゃんのブルーレイディスクの初回限定版くらいの値段だねー」


「もえみちゃん? は、はぁ」


「じゃあこれ!」


「あっ、すみません。ただですね、女性用のモデルですの、オーダーメイド品となりますと59800円となります。また、今ならオプションでブルーライトカットレンズや熱、衝撃による変形に強い形状記憶の特殊構造素材を使用することも出来ますが、いかが致しますか?」


「んーそーなんだ。いろいろありすぎてよくわかんねぇな? んー、考えんのめんどいから、良さげなやつは全部つけといて! 俺様に相応しい宇宙で最強のメガネにしてくれ」


「ぜ――全部、ですかっ!? ぜ、んぶ……ものすごい値段になりますがよろしいでしょうか? しょ、少々お待ちください」


「んー?」



 ゼウスが不思議そうに店員が何をするのかと見守っていると、彼女は手元の電卓で懸命に値段を見積もり始めた。



「あ、えっと、すみません。全部だからえーっと、全部って、これとこれがセットだから安くなって――」


「あーもういいよ。そんな一生懸命計算しなくても。疲れるしさ」


「すみません、計算が遅くて」


「ふーん、まぁ、誰にでも得意不得意はあるよねー、人間(カス)だものw」


「すみません。えっと、概算で申し訳ありませんが、このモデルタイプでオーダーメイドですと、、、およそ二十万円から三十万円ほどの費用がかかってしまいます。いかが致しましょうか?」



 やや上目遣い気味に、不安な表情で説明をする店員に対しゼウスは


「あーかまわんかまわん! いくらかかってもいいから、おれっちに見合うだけの最高級の品を用意せよ愚民っ!!!」


と、店内中に響き渡るほどの大声で命令した。



「か――――かしこまりましたっ!!! ではお支払いのほうは?」


「あ、カードでおなしゃす!」



 ゼウスはそう言うと、ズボンのポケットから汚れたクレジットカードを取り出して渡した。



「クレジットですね。かしこまりました。このカードですと、最大で36分割払いまで可能ですが、いかが致しますか?」


「はいー? そんなん『男なら一括』だろ、常識的に考えてくれない? その質問意味あるのかなー??」


「か、かしこまりました。では、こちらの内容で注文の手続きを進めさせて頂きますので、レンズ選びのため隣の眼科で視力検査を受けて来てください」


「えぇ~、おれっち両目で視力100なんだけど?」


「えぇーーっ!? し、失礼しました。そうしますとお客様のお求めになられている眼鏡は、伊達(だて)眼鏡でしょうか?」


「なにそれ? なんか武将みたいで強そうw」


「は、はぁ」


「ずっと思ってたけど、お前さっきからはぁはぁばっか言ってやがんな! 口癖なの~それ? 『BL読んでる時のヘラ』かな? ガチで陰キャみたいだから、やめたほうがいいよそれ」


「す、すみません。私、緊張するとどもってしまうので。不快にさせてしまい申し訳ありません」


「なんだお前、緊張してんのか?」


「は、はぃ。少し、してます」


「ふーん。ま、元気出せよ」


「あっ」



 ゼウスはそう言うと、落ち込む彼女の頭を優しく撫でた。



「あ、あのっ?」


「いやなんか、何となく『昔のヘラみてぇ』でこうしたくなっちまった。そいじゃ! なんか面白そうだし、そのガンカとかいうわけのわからんやつに行ってみるよ! またねん!」


「は、はい。あっ、お、お気をつけて~」


「うぃ~っす」



 彼女は店を出て隣の眼科に向かうゼウスを見送ると


(初めて男の人に、頭撫でられちゃった)


と、胸の近くで手をきゅっと握りしめていた。




………………




~二時間後~




「はぁ~やっと終わったよ! マジで疲れたわ~ほんとふざけんなよっ!」



 ゼウスは視力検査のことを思い出すと、怒りの言葉を口にしていた。



――――あのねあのねっ、みんな聞いて聞いて! 


 まずさ~なんか受付で、『保険証』とかいうの提示しろって言われたんだけどそんなのないじゃん? ほんとハーデスニキ無能! 

 そんで、ないと検査の金額が本来『三割負担のところが全部おれっちの負担になる』って言われたんだけどwwwクソワロスwww。どうでもよすぎて『アホなこと聞いてんじゃねぇっ!』ってな感じで、マジでビンタ一発かまそうか本気で悩んだわ~w。つーか俺の金じゃないし、シラネw。


――――ま、それはハナクソみたいにどうでもいいことなんだけどね!


 問題はその後でさ~。まずね、名前呼ばれるまでお待ちくださいとか、この俺様を三十分くらい待たせてやがんのwwwマジウケるwww。俺は神の中でもさらに最上級に位置する『ザ・モーストゴッデスト・ゴッドオブゴッド』のゼウス様だぞ? 不敬過ぎて、ここら辺の一帯を焼け野原にしてやろうかマジで悩んだ~w。

 ま、おれっちは宇宙一の広い心を持つ『スーパーカインド・ゴッドオブオリュンポス』だから、一万歩くらいゆずって許してやったんだけどね!


 でもね、この後のやりとりがほんと意味不明でさぁっ! いざ、呼ばれるやん? そしたらよくわかんねぇ黒い棒渡されて目を隠してさ、なんかCみたいな穴のあいた輪っかの方向を言えとかいう、バカみたいに原始的な検査受けさせられたんだけどwwwガチで誰得だよ! あんなんサルでも出来るわw。


 そんでめんどいから適当に『へい!へい!へ~いっ!』ってな感じで指さして答えてたら、なんか医者(バ カ)が『牛乳瓶の底みてぇなくっそ分厚いレンズ』持ってきてほんと笑ったわwww。

 流石に意味不明過ぎたから『これなんか明らかに違くね?』って言ったら、医者(カ ス)が『もう一回検査やる』とか抜かしよるやん? 二回検査やるとかあほらしすぎるし、くそめんどいからさ。俺が断固たる決意で『さすがにふざけんじゃねぇぞっ――患者をなめとんのか、もうろくジジイッ!』ってキレそうになって文句言ってやったんだけど、そしたら『医者(あいつ)の方がもっとキレてて』ワロタwww。

 あの医者(ジジイ)覇気使いとか聞いてないんだけど。怒ると怖いとか聞いてないんですがねぇ。短気は損気っていうのにあのヤブ医者、ほんと人生損してるよw。


 あーあ、下界こっちってほんといろいろとめんどくせぇよなぁ~。



「はぁ、やだやだっ」



 ゼウスは手続きの間、手持無沙汰だったのか両手の指と指を交わらせいじくりながら、名前を呼ばれるのを待った。



………………

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