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俺ゼウスの生まれ変わりなんだけど、無双してたらボッチになった件について  作者: 紅羽 慧(お神)
すねはかじれるだけかじるのが当たり前じゃね?編
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第二十九話 朋友 前編

※大幅な修正の必要あり(2022年現在)

修正が完了したら前書きの文言を消します(前書きのないものは基本的に修正の必要なしです)。それまでは隙間時間でちょこちょこ修正するので、修正完了版のみ読みたい方は前書きの有無で判断してください。よろしくお願いします。


「ひどいひどいひどいひどい――おれっちを騙すなんて! 嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき!」


「ご、ごめんなさい……」



 ゼウスはその場で体全体を大きくふるわせると、幼稚で聞き分けのない子供のように地団駄じだんだんで、いきどおりをあらわにしていた。

 そんな暴れる父の様子をみたアレスは


「オ――オヤジ落ち着けって!」


と、少年とゼウスの間に体をいれてかばう。



「すみません……もっと僕が早く言っておけば」


「――あっ、全然気にしないで大丈夫! この人これが通常状態だから、勝手に勘違いしてた俺らが悪いから! こっちこそごめんね」



 興奮する父を抑えつつ後ろを振り返るとアレスは、申し訳なさそうに謝る彼に対し自分達の非を口にした。



「おぉいっ! その言い方だと、まるで俺が常日頃から落ち着きのないヤバイやつみたいじゃねぇかよ!」


「どの角度からみても、ひと目でわかるヤバイやつだろw。オヤジみてぇな危険人物、身内じゃなかったら絶体に関わらねぇわ! いいからしずまれって!」


「――なっ! てめぇのほうがよっぽど危険人物だろぉがっこの極悪人!」


「あーもういいよ極悪人そ れで! とにかく、見苦しいし恥ずかしいから落ち着けって! ドードードー、ほら――深呼吸深呼吸っ」



 アレスは顔が紅潮した父の背中を何回かさすると、深い呼吸を促した。



「――お……おう。そ、そうだなっスーッ……ハーッ。……スーッ……ふぅ~」


「……どうだ、落ち着いたか?」


「あ、あぁ……たぶん」


「はぁ~よかったよかったぁ~」



 アレスはようやく落ち着きを取り戻したゼウスを見ると、ほっと一息をついた。



「……まぁ、確かにオヤジが取り乱しちまうのも分からんでもないわ。こんなに可愛い子が男なんて……なぁ?」


「――だよなぁっ!? わりと正常な反応じゃね? こんな本物の天使みたいな子に、まさかオニンニンがついてるなんて……宇宙始まって以来の衝撃なんだが!」


「だよなぁ……ほんとそれ! 君……ほんとに男なのか? 冗談なら冗談って言ってくれ」


「そうだよ。おいっ――どうなんだよ!!!」



 二人は眉をひそめると、疑いの眼差しを少年に向ける。



「えっ……あのっ――」


「「ん~~?」」


「ちょ、ちょっと――」



 少年は顔の前で手を振って嫌がったが、それでもこの親子は更に圧力を強めてジリジリと詰め寄っていく。

 そして、彼らの圧迫感にとうとう我慢できなくなった少年はついに


「……あ、あの~そんなに顔を近づけて見ないでください~」


と、涙目を見せるとしゃがんでしまった。



((……か、可愛い!))



 二人は高くか弱い声で懇願する少年のその姿に思わずときめき、良からぬ感情を一瞬抱いてしまう。



(……っぶねー! 一瞬越えてはいけない一線を越えそうになっちまったぜ。なんつー破壊力だ。心に決めた『あの人』がいなかったら完璧落ちてたかもしれん。オヤジは大丈夫だったのか――)



 アレスは父の様子が心配になり隣を心配そうに見た。すると、案の定彼は――――


「……結婚しよう。おれっち精一杯働くから! 二人で幸せな家庭を築いていこう!」


と、彼の出せる最高級のキメ顔と共に少年に告白していた。



「――えっ……? それはちょっと……僕男ですので」


「――ちょwww心配したそばから! オヤジ、母ちゃんにバラすぞ?」


「はっ――お前ぇっ! この偉大な父の恋路こいじを邪魔する気かぁっ!」



 ゼウスはアレスの言葉が気に入らず、つばを派手に撒き散らしながら彼を突き飛ばした。



「――うわっ!? きったねっwやめろ――つか、何が恋路だよwww今日ってエイプリルフールだっけ? ……もういい歳なんだからさー、もうちょい自分の身の振り方とか考えてくんねーかなほんと。また母ちゃんの愚痴と白髪が増えちゃうからさ~やめて欲しいんだよなぁ……夫婦喧嘩に子供の俺を巻き込むなよ!」



 アレスは本当に勘弁してほしいという気持ちをこれでもかと込めて、ゼウスをたしなめた。



「良いじゃねぇかよそんくらい! テメェがガキの時におしめを何回か変えたんだぞ俺は! その恩を今返すときなんじゃないですかね~?」


「どんだけ前のことほじくりかえしてくるの~こ・の・ひ・と・は! はぁ……もういいや、俺しーらねwww」


「――な! 父ちゃんの恋を陰から応援しようっていう気概が、お前には1ミリもないのか!? ないわ~マヂでないわ~そんな親不孝者の男に育てた覚えはな!」


「なんで俺がオヤジの不倫の手伝いをしなきゃならないんだよ、どんな物語だよwww聞いたことねーわ! そもそもこの子は男の子だし……なぁ君?」



 アレスは、傍らで親子の会話の行く末を心配そうに聞いていた少年にそう問いかける。



「――えっ!? あ……そ、そうですよ僕男ですもん」



 少年は胸の前で両手を弱々しく握ると、うつむきながら控えめに言う。そんな彼の愛らしい様子に二人は――


((……守りてぇ))


と、思ってしまうのだった。



「あ~もったいねぇなぁ! こんな可愛いのに男なんて……可愛さ換算で言うと『0.8アテナ』の~~『1000ヘラ』くらいかな?」



 ゼウスは縮こまる少年をうらめしそうに見つめながら、そうつぶやいた。しかしアレスは、ゼウスの言葉に納得がいかなかったのかすぐに


「えー姉ちゃんやたら評価高いなー、この子の方が可愛いと思うんだが? 『1.2姉ちゃん』くらいかなー俺からすれば。……いやいやオヤジ――『母ちゃんの換算』に関しては素直に首を縦に振ることは出来ないぞ?」


と意見していた。



「そうかぁ? ……まぁ確かにそうかもなぁ? おれっちもつい情に流されちまうところがあるからなーw……優しすぎるのも問題だね! そーすっと……『5000ヘラ』くらいか?」



 ゼウスはそろばんを弾くジェスチャーをすると、彼の頭の中で弾き出された答えをアレスにそう言った。



「いやそうではなくてねオヤジさん、前提条件が間違ってると思うんですよー」


「前提条件、だと??」


「そうそう! あのおばはんはそもそも『マイナス』だからさー、それに正の数かけたら『大きなマイナスになっちゃう』よ?」


「んんんwww神をも恐れぬ過激な発言ですなwww。おぅおぅ――おめぇもなかなか言うようになったじゃねぇかよ~アレス! 言われてみればあのクソババアは確かにマイナスだったな! この俺様としたことが、危うく計算間違いを犯すところだったぜ……そこに気がつくとはさすがおれっちの息子!」


「――ふふん、だろぉ~w? もっと褒めて良いんだぜ?」



 アレスは拳を握ると得意げに左胸を軽くトントンと押し当ててみせた。



「……でもさ。うろ覚えだけど確か『マイナスにマイナス掛けたらプラスになる』とかいう謎の演算があったと思うんだけどさ? あのウンコババアにウンコババアかけたらプラスになるどころかむしろ――宇宙が終わりを迎える件についてwww?」


「……それなんだよなぁ~。そこに気がついてしまうとは、さすが全知全能は名ばかりじゃないなオヤジ! あの人の場合はねー、足し算以外しちゃダメw!」


「ワロタwww。だよな!」


「間違いなく断言できるわwww」


 そんな二人のヘラの悪口で盛り上がっている様をすぐそばで見ていた少年は、その可笑しさに


「……ふふっ」


と、思わず笑ってしまう。



「……おいちょっと待て、何お前笑ってんだよ!」


「あ――ごめんなさいっ! ただ二人の会話を聞いていると本当に楽しそうで、それがとても面白くて……二人共凄く仲良いんですね!」


「は? どこがだよwwwなぁアレス?」


「まぁな、単なる社交辞令だろw」


「だよなぁw。――おいっ! そんな可愛い顔でおれっちをたぶらかそうとしても無駄だぞ! 俺は3歳から29歳までの若くて可愛い女以外は全て敵だと思ってんだからな!」


「……すみません」


「おいオヤジ、そう何でもかんでも食ってかかるからオヤジは敵を作るし友達出来ねぇんだよwwwもっとほらスマイルスマイル~」


「あっ――おぃっ!」



 アレスは少年に詰め寄るゼウスの背後から頬をつまむと、横に引っ張って無理やり笑顔を作らせようとした。



「てめっwwwアレス!」


「ははっ! 笑えよオヤジほらほら~」


「くすぐったいからやめれwww」



 ゼウスは嫌がる素振りを見せつつも、内心は息子とのじゃれあいを楽しんでいた。彼の歪められた楽しそうで滑稽な顔を見た少年は


「――ははははっ!」


と涙が出るほど大きな声で笑い、指でそっと目元を拭った。



「――なっそんなに笑うんじゃねぇ!」


「あははっ! ――あ、ごめんなさいつい面白くて……なんか不思議な感じだなぁ」


「何も面白くねぇわっ! 極悪人アレスも早く離れろやっこのおたんこなすっ!」


「――お、おうwすまんすまん」



 アレスはつい調子に乗ってしまったことを反省すると、二ヤつきながら急いでゼウスの傍を離れる。



「ふふっ、君って本当に面白い人なんだねっ!」


「あぁん? 当たり前じゃんwww真にモテる男はカッコイイだけじゃなくて中身も面白くなくちゃな~この俺様みたいにっ! つーか、君じゃなくておれっちにはちゃんとした格好良い名前があるんだが?? ――あ、そういえばお前の名前は何て言うんだ?」


「――僕、ですか……?」


「他に誰がいるんだよwww。ちなみにぃ~おれっちはゼウス! 加藤ゼウスってんだ! なまらカッコイイ名前だろ~これ??」


「加藤、ゼウスさんですか?」


「――うっわっwwwダサっ! ダサすぎて引くわ~オヤジwww」


「……は? 極悪人の分際で俺の名前にケチをつけるだと?? ……少なくとも『加藤もこみち』って名前よりかはよっぽどかっこいいだろっ!」


「誰だよwww加藤もこみちってwww」


「俺の元々の体の名前だよ! マジありえんくらいダサくね?? ハーデスニキほんとセンスないわぁ~」


「あーその体の名前か……なるほどね。いやいや普通に、『ゼウスよりは断然良い名前』だろw」


「お前……後で屋上な? 逃げんなよ??」


「何だよその学校のヤンキーみたいなノリはw。悪かったよ――で、君は何て名前なんだ?」



 アレスはこれ以上刺激するとまた父が暴れてしまうのではないかと危惧したのか、すぐに謝ると話を少年に振った。



「あ、えっと……」


「ん~~? はっきりしないやつだなぁ――おい、お前は何ていうんだよ! あぁん??」


「ぼ……僕は――」



 少年は名前を聞かれると一瞬、ためらいと不安の入り混じった表情を浮かべた。だが、すぐに


「皐月トーマ――といいます」


と、胸に手を当てながらハッキリとした口調で自己紹介をしていた。

 その時の彼の眼はどこか大きな決断をした時のような決意と自信を彷彿させると同時に、暗く寂しい影も潜んでいるようにゼウスには感じられた。



「皐月……トーマ、か」




………………



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