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俺ゼウスの生まれ変わりなんだけど、無双してたらボッチになった件について  作者: 紅羽 慧(お神)
この歳で初体験とか……これもう分かんねえな編
3/63

第三話 俺、天空神辞めっから!



「ん~……はぁっ!? ちょ待てよあぁっ!?? そんなの聞いてねぇぞカスwwwいきなりすぎて鼻水出たわ」



 ハーデスは弟のむちゃくちゃな話にもたれかかっていたイスから転げ落ちると、鼻の辺りを袖で拭いた。



「えーっ! ヘラのやつが、兄貴なら俺を人間に転生させて、下界に送ってくれるって言ってたぞ! もし嘘なら、兄貴とヘラの尻を思いっきりペンペンしてやらないとなんだけどっ!」


「何で俺も叩かれんだよ。別にいいけど」


「やだよ、ばっちいもん」


「いや、どっちだよwww。んーまぁ、お前があの頭のおかしい奴の尻をどうしようが俺には関係ないんだがな。ちなみに言ったのは本当だ。確かに言ったかもしれんがその~、半分冗談で言ったわけでして。いやぁたまげたねぇこりゃ」



 ハーデスは倒れたイスを丁寧に元の配置に直すと、ゼウスの顔をまじまじと見つめた。



「えー冗談かよ」


「いやまさか、人間嫌いなお前が本気でそんなことを言うとは思わなくてな」


「確かにそうなんだけどなぁ。ちょちょちょいってな感じで、簡単に転生出来ねぇの?」


「あのなぁゼウス。よいか? そもそも転生というのはだな。どこぞのラノベなんぞと違って実際そんな簡単にホイホイ出来るもんじゃないんだぞ! あの魔法使うとオナニーしまくった後並にすげぇ疲れんだよね。出来れば使いたくねんだわ。わりとマジでこれはガチ」


「そんなん知らねーよwww。適当に冥界に落ちてきた人間つかってさぁ、俺様を下界に転生させてくんね? 俺クラスになるとレベルが高すぎて逆に人間になれないっつうか~わかるっしょ?」


「えー、ちょーめんどいー」


「なんなら俺の天空神の位を兄貴にやるからさぁ。ガチで頼むわー」



 ゼウスはソファーに大きくもたれかかると、鼻くそをほじりながら兄に偉そうな口調で頼みこんだ。

 ゼウスの言葉にハーデスは渋い顔をしたものの、彼の口から天空神の位をやるという言葉が出た瞬間、表情は一変した。



「なん、だと? お前今、天空神の位あげるって言ったよねっ?」


「言ったけどどうした?」


「うっはっそれまじ? 神じゃぁ~んwww。ついに……ついに、時代が俺に追いついちゃったかんじ? それまじやばくね?」



 ハーデスは余程嬉しかったのか、その場で鼻歌をまじえながら小躍りしだした。



「なんだ、そんなに俺の天空神の位が欲しかったのかよ?」


「なんだよってお前、あの天空神だよ? そんなの欲しいに決まってんだろ!」


「どんだけだよ。あーでもそういえば昔、天空神になりたいって言ってたっけ? 領土じゃんけんで負けて、めちゃくちゃ悔しがってたもんな」


「そうなんよねぇ~。じゃんけんに負けて冥界をべることになったはいいけどさ。冥王って労働基準法違反してる忙しさなんだよなぁ。俺っていっつも貧乏くじばっか引いてる気がする……損な役回りすぎじゃね? だいたい、お前があの時後出しでチョキをグーに変えなかったら俺が勝って天空神になっていたんだぞ!」



 ハーデスはそう言うと、頬骨がくっきりと浮き出た顔を目一杯に膨らませ、不満を表した。領土じゃんけんとは、冥界、海と大地、そして天界を誰が統治するかを決めるために行われた儀式である。



「いやいや今さらそんなこと言われましても。それに兄貴もあの当時は”冥王ってなんかくそ格好良くね? 天空神とかにわかがなるものだわw”とかほざいてたじゃねぇか」


「お前よくあんな昔のこと覚えてんな。あの時はなー、そういう風に言わないと心の安定を保てないくらい落ち込んでたんだよ! 察してくれよバカもんっ!」


「まぁ、いいじゃん? やっとこれで念願の天空神になれるんだからさっ!」



 ゼウスはそう言うとハーデスの肩を軽く二回ほど叩き、窓から外の様子を見た。



「いざこうもあっさり天空神をもらえるとなると、なんかすげぇ不安になってきたんだけど。ほんとに俺が天空神の位もらっちゃっていいの??」


「別にいんじゃね?」


「ゼウス。ほんとに、いいんだな??」


「ま、天界の女は嫌ってほど遊びつくしたしな。もうやることはねえからよぉっ。兄貴の好きにしていいぞ。その代わりおれっちはぁ、これから人間界でヤりまくってくっから☆キラーン


「――――ちょっw! お前マジうらやまふざけろしwww。ねぇねぇ、人間界に良さげな感じの可愛い娘がいたらさ~、後で冥界にも何人か送ってくれない? 天界って噂でしか聞いたことないけど、勘違いブスの地雷女しかいないイメージだからさ。なっ!」



 ハーデスはゼウスの膝にすりよると、泣きつくように懇願した。



「しょうがねえなぁ~このゴミクズはぁwww。いいけど、その分しっかり働いてもらうからなっ!」


「やったぜハハハ、任せとけよ! 俺を誰だと思っている? 泣く子も黙る冥王ハーデス様だぞ?? 大船に乗ったつもりでいとけYO!」



 ハーデスは埃っぽいマントを広げ、ガリガリに痩せ細った胸を目一杯に張った。



「ヒュ~~~かぁ~っくいぃ~wwwよっ、冥界一!」


「あら、そうかしらw? つか俺、冥王だしな」


「それな。じゃじゃ、さっそく頼むぜハーデスニキ!」


「乗るしかねぇな、このビックウェーブに……ヒイエァッ!」



 ハーデスは元気よく叫ぶと、ふところから灰色の本を取り出した。



「それって、あぁ。それが例の、冥界に送られて来た人間のリストが載ってるっていう、悔恨かいこんの書ネクロノミアか」


「……」



 ゼウスは、無言でページをめくる真剣な兄の姿に少し圧倒されつつ、彼の手元で禍々(まがまが)しいオーラを放つそれを凝視した。



「あぁ、そうだ。よしっ。ではゼウスよ、覚悟はよいか?」



 ハーデスはある箇所を食い入るような眼差まなざしで念入りに確認すると本を閉じ、ゼウスに勇ましい声で問いかける。



「おう、あたぼーよっ!」


「そうか。ならばっ、この冥王ハーデスの後について参れ!」


「オーケーボス。ハーデスニキ、あんたぁ今最高に輝いてるぜ?」


「ふっ、当然だな」



 ハーデスはおだてる弟に対して自信満々にうなずくと、部屋の扉を勢いよく開けた。

 彼らは部屋を出ると、館の地下にある転生の間へと向かっていった。




………………




「さて、準備はこんなところでしょうかね?」



 転生の間についたハーデスは、人指し指の先に魔力を込めると床に大きく丸い円を描き、続いてその中を面妖な文字と絵で満たしていった。

 


「えーっ、こんな幼稚園児の落書きみてぇなんでほんとに人間に転生出来んの! ほんとかなぁ~にわかには信じがたいなぁ? パチこいてんじゃねぇよなぁ!」


「はぁ? 大丈夫だわwwwちゃんと転生出来るわボケ!」


「ほんとかよ! なんか不安になってきたわ」


「まったくお前は。態度は宇宙並みにでかいくせに、器はおちょこ並みに小せぇのな!」


「石橋を叩いて渡る堅実なイケメンといって欲しいものだね」


「あーはいはいw。ふぁ~ぁ。ほならぁ、どこに転生させんの?」



 ハーデスはゼウスの言葉を軽く聞き流すと、めんどくさそうに大きなあくびをかき、行き先を尋ねた。



「ん~そうだなぁ。とりあえず、オタクとかいう調子こいた人種がいる秋葉原に送ってくれぃ!」


「あー、やっぱあそこね」


「そそ。まっ、ぶっちゃけた話どこで降ろしてもワープ使えるからいいんだけどな。俺マジ全知全能~♪」


「うはっw、お前のその能力チートすぎんよ~。ねぇねぇっ、俺も天空神になったらその魔法使える? 冥界内とか狭い範囲なら俺もワープ出来るんだけどさ~天界までは無理なんだよなぁ。正直さぁ、天空神の位もらっても天界まで歩いていくのくそだるいんだよねw」


「ムリムリムリッ! この呪文は俺様の固有スキルだからぁっ! 絶対無理! 死んでも無理!!! 残念だったながははwくそざまぁぁwww」


「まじかぁー。じゃあ、今まで通り徒歩で行くわぁ」



 ハーデスは真っ向から弟に否定され肩を落とした。



「たしかに兄貴のとこから俺のとこ来んのに、だいたい200年くらいかかんもんなぁ?」


「それなんだよなぁ~、まじでくそっ! 頭悪すぎだろ徒歩とかwwwほんと何なのっ!? この前お前のところにやっと着いたと思ったら、留守ですごめんなさいとか、まじでふざけんなよこらwww。誰か転送システム早く作れやカス! 何が全知全能だよクソったれ!」


「は? だからこうして来てやったんだろ! 俺のせいにすんなよハゲ、テメェでなんとかしろや」


「出来るかよwww。お前に会いたいと思ってもさぁ。俺からはそう簡単に会いに行けないじゃんかぁ? だからさー今日お前がこうやって来てくれて実は俺、超ハッピーなんだぜブラザーッ!!!」



 ハーデスはゼウスに抱きつき、痩せこけた頬をこれでもかと押し付けた。



「――おいっ!!! ちょっ離れろよ気色悪いっ! 俺はノンケだぜ?」



 ゼウスは不気味な笑みを浮かべてすり寄る兄を全力で振り払い、押しのけた。



「おおっとおっ、こりゃあ失敬失敬。いやぁ~俺氏、最近BLにはまっててなぁ! すまんすまんつい衝動的になっちまったぜ! あっ、ちなみにこれ超オヌヌメ!」



 拒絶されたハーデスは、めげる様子もなく両手をあげニヤリと笑った。彼は床に散乱していた本の中から一冊をピックアップすると、満面の笑みを携えてゼウスに紹介する。



「あー部屋に入ったときから気づいてたけど、あえて触れなかったのに話題に出しちゃったかぁー」


「そりゃあ良いもんは皆で共有しないとね~? 最終鬼畜メガネバーストはいいぞ〜」


「その本てBLだろ? ヘラがこの前読んでて絶賛してた。流行ってんの?」


「あー、だろうな。だってこの本ヘラに勧めたの俺だもん」


「アンタだったんかーーーいwww!!! 男と男が交わるとか、まじきもくね? ありえないんだけど~何がいいのそれ?」


「お前マジで言ってんの?? BLの良さが分からないとかチンカスだなぁ? だから全知全能なのに無能とか皆から言われんだよ。分かってんのかクソ髭野郎」



 蓄えた自慢の髭を馬鹿にされ、頭にきたゼウスは即座にハーデスに言い返す。



「兄貴こそぉ、相変わらず気色悪いやつだなwww。だからホモガイコツって言われんだよ! とりあえずぅ能書きはいいからさぁ! はやく送ってくれよ~俺もう待ちきれねぇよっ!」



 段々兄とのやりとりが面倒臭くなってきたゼウスは、ハーデスをかした。



「んだよ~、せっかく面白いもん紹介してやってんのに言いたい放題言いやがって。じゃあ、もう適当な奴で適当な場所に適当に送るぞぉぉ~いいかぁん?」


「よろぴく」


「へいへい。命の御霊みたまよここにぃ~来たれ! うんちゃらかんちゃら~ほいっ!」



 ハーデスが転生の呪文を唱えると、ゼウスの体がピンクの煙に包まれる。



「おぉっこれが例の転生呪文トランス・マイグレイトか! つかっ詠唱適当すぎんだろ」


「大丈夫だ、転生はきちんと成功する」


「ほんとかよwww。じゃ、ちょっくら下界で大暴れしてくるんであとよろしくニキー」


「あぁ、気を付けていけよ」


「なに心配そうな顔してんだよ。しばらく会わないと思うけど、兄貴も暇が出来たら人間界に来いよ!」


「……おう」



 ゼウスは複雑な表情で自分を見つめる兄に手を振って別れを告げると、煙と共に人間界へと飛んでいった。




………………



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