第二十一話 父子の戯れ 中編
※大幅な修正の必要あり(2022年現在)
修正が完了したら前書きの文言を消します(前書きのないものは基本的に修正の必要なしです)。それまでは隙間時間でちょこちょこ修正するので、修正完了版のみ読みたい方は前書きの有無で判断してください。よろしくお願いします。
「いててて……本気で死ぬかと思ったぞ~」
「お、お父さんが押し倒しておっぱい揉んだりするからでしょっ!!」
ゼウスの頭の上には、大きく腫れ上がったたんこぶが二つ出来ていた。
「だってよ~。エロ本燃やされたら、常識的に考えて普通頭に血が上っちゃわない?? アテナじゃなかったら激おこプンプンドリーム越えてんぜw?」
「私もちょっとやりすぎちゃったかもだけど――元はと言えばお父さんが悪いんだからねっ!!! ……まぁ、可哀想だからグッズは特別に許してあげるわ」
彼女はゼウスのコレクションを見つめると、仕方なさそうに呟いた。
「――マジッ!? キタァアア!!!」
許してもらえることが分かるとゼウスは、ガッツポーズをし雄叫びをあげた。
「いやぁ~、娘のパイオツもちょっととはいえ堪能できたし~。殴られはしたけど、これもしかしたら――お釣くるレベルなんじゃねww? ははっ、もう一回揉みてぇなぁ!!」
「あらあら、まだ無駄口が叩ける余裕があったの? ――もう一発いっとくww?」
「――――っヒィィイィッ!」
拳を振り上げたアテナを見た彼は、頭を隠しながら地にひれ伏すと震えだした。
「御許し下さい御許し下さい御許し下さいぃっ!」
「はぁ……冗談よ。もう殴ったりしないからそんなに怯えなくても――」
「――いえっ! 全部おれっちが悪いんです!!」
ゼウスは畳に額をこれでもかと擦り付けながら、謝罪していた。
「……もぉ~、お父さんはいつも大袈裟なのよw。――ほら、いつまでそうしてるの? 私も悪かったから、ね? 元気出してよ」
アテナはそう言うと、彼の頭を優しく撫でてあげた。
「よしよし~。これに懲りたら、ちゃんと整理整頓をするのよ。それから、御近所の人達と仲良くしてね……何かあった時助けてもらえるように」
「――分かったンゴ。なるべく気を付けるンゴ」
「うんうん。素直でよろしい! ――よしっ!! じゃあ今から晩御飯の準備するから、お父さんは適当にくつろいでてっ!」
彼の言葉に安堵の表情を浮かべたアテナは、鞄の中からひよこ柄のエプロンを取り出すと、身に付け始めた。
「――えっ? あれっ、お前料理作れたっけ!?」
「そりゃあ、作れるわよ。今日はもともとそのために来たんだし……。誰かさんのせいで予想外に掃除するはめになったけどねw?」
「マジかwww。ほんとだよなぁw? ったく、誰のせいだよマジでwww」
「――お父さんでしょっ!」
「かたじけない」
「……でも、確かにお父さんに手料理食べてもらったことはあんまりないよね」
「言われてみれば確かにそうだよなぁ。お前が料理かぁ……。俺のなかでは――小さいときに砂場で作った泥団子を食わされた、苦い思い出しかないんだがwww」
ゼウスは舌を出すと、大きく顔を歪めてみせた。
「もぉ、お父さんたらいつの話をしてるのよ~w」
「ははは、そうだな。――そうか、お前が作ってくれてもいつもヘラが自分の飯を食えって言うから、ちゃんと食べたことないんだよなぁ」
「そうなんだよね~。ヘラさん、お父さんが食べる前にいつも毒味とか言ってチェックしては美味しくないっていうの……ほんと困っちゃうw。……そっかぁ、まだ食べたことないんだ」
アテナは一瞬悲しそうな顔を見せるも、すぐに笑顔に変わり
「――よぉ~っし、じゃあ今日は気合い入れて頑張るぞっ!」
と言うと、台所で調理を始めた。
「ふ~んふ~ん。ららららぁ~」
アテナは袋から野菜を取り出すと、鼻歌混じりにトントントンとリズミカルに包丁を動かしている。
「……くつろいでてつってもな~」
手持ち無沙汰の状態に置かれたゼウスは、お尻をポリポリとかくとエロ本があった場所を見つめた。
(あーあ、おれっちのエロ本コレクションが……)
彼は、灰すら残らずきれいさっぱり消えてしまった山脈に心を寄せていた。大事な物を消されれば普通、長く尾を引いてしまっても無理はないのだが、彼はというと――意外と落ち着いていた。
「……惜しいことをしたなぁ。あれ集めんの結構大変だったんだけどなぁ……。――まぁいいや、本命は別にあるしw。やっぱ今の時代に求められるのはリスク管理だよなぁwww」
実は、ゼウスは本当に大事なものは別に隠していたのだ。それを守れたことと、娘の作り出す家庭的で落ち着いた雰囲気に気が緩んでいた彼は、うっかりと本音を吐いてしまっていた。
「ららら~――ん? ……今なんて??」
アテナは動かしていた包丁の手を止めると振り返り、ゼウスをじと~っと見つめた。
「――――やべっ!! ……え? 何も言ってないよw??」
「今、本命は別にあるって言ったわよね?」
「――っ聞こえてんじゃねぇかぁっ!! ――あっ……」
ゼウスは自分が犯してしまった最大の失態に気づくと、青ざめた。
「……ふーん。本命……ねぇ?」
アテナは包丁をまな板の上に置くと、コレクションに目を向けた。
「――あ、あのさ! アテナちゃん疲れたでしょ~www? まぁ、座ってゆっくりし――」
「どいて」
アテナは行かせまいとするゼウスを簡単に振り払うと、コレクションを一つずつ凝視しだした。
(――ヤバイッ! 頼む気づくな気づくな気づくな! ――神よっ! おれっちを救ってください!!)
ゼウスは目を閉じると、無意識のうちに神への祈りを捧げ始めた。無力な彼は、自分が神々の王であるという自覚さえ失ってしまうほど追い詰められていた。
だが、そんな彼の祈りは無情にも神へ届くことはなかった。
「……そういえば――なにこの箱……?」
アテナは、大きめの木箱を見つけると目を細めた。
「掃除の時から気にはなっていたんだけど――なにこれ?? やけに大事な物が入ってそうだよね? ねぇw??」
彼女は不気味な笑みを浮かべると、ゼウスの目を見た。
「――あっ!! そ、それはぁ……な、なんでもねーよw? 何もあるわけねぇ~じゃんよぉw! 何言ってんのwww??」
痛いところを突かれたゼウスは平静を装おうとするも、視線があちらこちらにと泳いでいた。そんな彼の様子にアテナは、
(――あやしい……)
と感じて顔を近づけると、ゼウスの瞳をジーッと見つめた。
「――なっ、あやしくねーよっ!!」
彼はアテナの目線に耐えきれなくなり、目線を逸らすとつい思ったことを口に出してしまっていた。
「別に怪しいなんて一言も言ってないんだけど? ――ねぇ、何で目を合わせてくれないの?」
「……ぐっ」
「何もやましい物が入ってないんだったらじゃあ――中、見てもいいわよね??」
アテナはゼウスと目を合わせようと、ぐいぐい彼に迫る。
「だ、だめだよ」
「なんで? なんでもないならみせれるでしょ??」
「ん? 今なんでもって――」
「とぼけても無駄よ!」
「――っ!……」
アテナの厳しい追求にさらされたゼウスは、暫しの沈黙の後――
「――わかった。おれっちの負けだ……。おめ~なかなかやるじゃん
www。中身はお察しの通りエロ本だ。――だが、正直に話したんだ。これは見逃してくれ」
と、遂に観念し白状していた。
「ほんとにお父さんは、もぉ~。……一応チェックさせてもらいます」
「こ、このエロ本たちだけは見逃してくれっ! 俺はなぁ……健やかなるときも、病めるときもこいつらと共に生きてきたんだ。付き合いはまだ短いが、こいつらはおれっちの大事な仲間で、宝物なんだ! 頼むっ!!」
ゼウスは土下座をすると、必死に彼女に懇願していた。
「……はぁ。一応チェックするだけです」
「ほんとに? 今、チェックだけって言ったね??」
「……一応、そのつもりです」
「何だよ~wwビビらせやがって! ったくしょうがねぇなぁ~特別におれっちの至高の品々を見してやるかぁ! 特別だぞ? いつもはダメだぞw??」
ゼウスは取られることがないと知った途端に、彼女に自分のコレクションを見せびらかしたい衝動に駈られていた。
「いいから早くしなさいっ!」
「おうおう荒ぶってるね~怖い怖いw。おれっちのエロ本がそんなに見たいとか、お客さんなかなかお目が高いね~」
ゼウスはノリノリで箱を開けると、中からお気に入りのエロ本を取り出し、アテナに見せびらかした。
「お客さん、これなんかどうです??」
「ん。これは?」
「もえみちゃんときちなちゃんの百合ものがた――」
「没収」
「エエェエッ!?」
いきなり没収と言われたゼウスは、あまりの衝撃に目ん玉が飛び出そうになるほど驚き、腰を抜かしそうになっていた。
「――ふふっ冗談よw。どうしたのそんな面白い顔しちゃってw?……ん~確かに絵は綺麗かもね。内容は……ノーコメントで」
アテナは中身をつまらなさそうにパラパラとめくると、畳の上にエロ本をポンと置いた。
「冗談抜きで焦ったわぁ……。じゃあこれは――」
ゼウスはアテナに自慢のコレクションを次々に披露していった。
………………
「ごめん。今のところ全然価値が分からないわwww。もういっそのこと全部捨てちゃったら?」
「アテナちゃん、ちょっと冗談きつすぎない?? さすがのおれっちもそこまで言われるとメンタルブレイク不可避なんだが……」
ゼウスはアテナのきつい物言いに泣きそうになりながらも、最後の一冊を取り出す。
「――あ。そうかこれがあったわ……」
「……ん、なに? まだあるの??」
明らかに今までと反応の違うゼウス。そんな彼の様子に、アテナも一体どんなエロ本なのかと少し興味が湧いていた。
「ん、ああ。まぁ、これは……おれっちの一番の宝物かな」
「へぇ~、どんなの? 見せて見せて、なになに……『禁断の親子愛 in アテネ』? なにこれ??」
アテナはタイトルを読むと首を傾げ、ゼウスの顔を見た。
「え~っとなんか、おれっちとお前が愛を育むエロ本らしいんだけどさ。絵がめっちゃ綺麗でやばいんだよね! それにストーリーも良さげで、俺的にかなりポイント高いんだわ~。――お前も嬉しいだろ?」
ゼウスは照れながら彼女にそう告げる。
「な、なななにをいってるの!? そんなわけないでしょっ!?」
「へっへっへ。ま、まぁ騙されたと思って見てみろよ。これぇ~この女の子とかお前そっくりd――」
「――はぁーっ!!」
「ほげっ!!」
………………
「いててて……。みぞおちは反則だろ~、乱暴ダメ絶対!」
「はぁはぁ……お、お父さんがアホなことばっか言ってるからでしょ!」
「暴力的で口調まで厳しくなっちゃって……。あ~あ、アテナがこの娘みたいにエッチで優しかったらなぁw?」
ゼウスは『禁断の親子愛 in アテネ』のヒロインを指差しながら残念そうに彼女に言った。
「なっ……なりません!!! ――ふつう、娘にこんなエロ本どや顔で見せる? ほんと頭おかしいんじゃないのw?」
「――おいぃ、何言ってんだ!!! ふざけんなよwwおまえ――こんな重要文化財をけなすとか! ……さすがのおれっちも怒っちゃうぞ?」
「そっちじゃなくて『お父さんを』けなしてるんだけど……」
「ですよね~~ww」
ゼウスはニシシと白い歯を見せると、アテナに宝物を渡した。
「……ふん、一応見ておきます。無駄だと思うけどね!」
「まぁ、見てみ。それ、お前にめっちゃ似ててさぁ……俺は好きなんだよね」
ゼウスは両手の人指しをツンツン合わせながら、アテナに言った。
(はぁ、くだらない。どうせさっきみたいな駄作と同じでしょw?)
彼女はゼウスから『禁断の親子愛 in アテネ』を受けとると、どうせただのエロ本だろうとたかをくくり、中身を見て――驚いた。
(……こ――これはっ! うそっ……す、すごいっ)
アテナは冒頭からいきなり始まる過激な内容に、顔全体を真っ赤にさせると――悶絶していた。
「う、うみゅ~~」
「ちょ、ちょっとアテナさん。大丈夫ですか?」
「…………」
「あ、アテナ――」
「――ちょっと静かにしてっ!!」
「はっ、はい!」
………………
「…………はっ!!」
アテナは、半時経ってようやく我に返った。彼女は夢中で読み進めると、気になるページを行ったり来たりしながらなんやかんやで、既に半分近くまで読み終えていた。
「あ、あのぉ~。アテナさん?」
「……おほん。この本は――私が預っておきます。こんなヤバイものお父さんが見たらダメです」
「えっ……チェックするだけって、没収も冗談だって?」
「そう思ってたけどやっぱりダメです! こんなの見てるから頭がおかしくなるんですっ!」
「頭おかしいとか言うなしwww」
「ごめんなさい、元からだったわw。――とにかくっ! こういうのを読んでるから、痴漢とかしちゃうんです!」
「え~。……じゃあ、何さ。その神作もうおれっちのところに帰ってこないの?」
ゼウスは不安そうな顔で、アテナに聞いた。
「……い、いえ。預かるだけです」
「あれれ~こりゃあおかしいぞ~w? なんかハマってたっぽいし~もしかして帰ってこっそり続きを読むつもりなのかなぁ?」
「そ、そそそそんなことあるわけないじゃないっ!!」
「おやおやおやぁ~? お前ひょっとして――ムッツリスケベw?」
「――なっ! そんなんじゃ――」
「いーんだよ。お父ちゃんは何でも分かってるからさぁ~www
。いやぁ~、それにしてもお前も意外と年頃の女の子だったんだな~。うん、健全健全!」
「――む~! むー!」
ゼウスに図星を突かれ、良い反論が見つからなかったアテナは顔を赤く染めると、ぷく~っと頬を膨らませて抗議することしか出来なかった。
「おいおいw。な~んも恥ずかしがることはないさっ! 父ちゃん嬉しいゾッ! ささっ、遠慮すんなってwwwもっと自分に正直になれよぉっwww!」
「――ふんっ!!」
「――――ンゴッ!?」
………………
「……で、正直になった結果がこれですかい? アテナちゃん」
ゼウスのたんこぶは5つに増えていた。
「こんなにボカスカ殴られたら頭の形変わっちまって、誰からも判別してもらえなくなっちまうよ~。俺やだよ~葬式の時にこの人誰?って言われんの……」
「……ふん!」
「な、なぁ。悪かったよ。機嫌直してくれよなっ? この本、特別に貸してやるからさぁ……」
「……ほんと? はぁ~。も、もう~お父さんはしょうがないなぁ」
ソッポを向いていたアテナだったが、ゼウスが貸してくれると言うと、機嫌を取り戻した。
「やったやった! ――あ、じゃあこれ貸すからさっ。ずばりっ、残りのこいつらは――もえみちゃんたちは見逃してくれるんだよね?」
「……それはダメ」
「――なんでよおおおおおっ!! 嘘つき嘘つきっ! た、頼む! こいつらに罪はないんだ。悪いのはぜぇ~んぶおれっちだ。なんでもするから許してくれ!」
「ん? いま何でもするって言ったよね?」
「……あ、ああ」
「――じゃあ、やっぱりその本以外の残り、全部捨てて」
「……ふ、ふ~ん。なるほどね。おまえなかなかやるじゃんwwww」
二人の攻防はしばらく続いた。両者とも一歩も譲ろうとはしなかった。
………………
「……良かろう。そこまでお前が我が至高のエロ本たちを欲するなれば、父を倒して奪い取るがいい!」
「お父さん……漫画の読みすぎよ」
「う、うるさいっ! そんなに欲しければこの俺を越えていけっ!」
「う~ん。越えるも何も、低過ぎてむしろそれ以上下回るほうが難しいんですけど……」
「はぁっ? アテナよ、さすがにそれは父に対する尊敬が足りなさすぎ――」
「――隙ありっ!」
アテナはゼウスに、空手チョップを繰り出すと彼の腕に抱えられたお気に入りのエロ本を奪おうとした。
――が、咄嗟にゼウスはそれを後ろに放り投げると、アテナの一撃をあえて受け、エロ本を見事に守ってみせた。
「――ぐっ……ってぇ! ――おっとぉ! ふぅ~あぶねぇあぶねぇwこいつはそう簡単に渡さないぜ? アテナちゃんはすぐそうやって暴力にたよろうとするからなぁ? 単純単純~w。もうお前の攻撃見切ったわw。ほら――こいよw?」
ゼウスは左手の先を前に出すとクイクイッと動かし、彼女を挑発した。
「あら~なかなかやるわね。――じゃあ次は手加減する必要はないわね。……ハァーッ!!」
アテナはニヤリと笑うと、掛け声とともに床に手を当てた。
すると――彼女の足元に羽を象った紋章が現れ、なんと足首が金色色に輝き始めた。
「――あっ、おまっ高速移動使うとかチートだろwww」
「あははっ! こうやってお父さんを一方的に蹂躙するの楽しいなぁ~。私、なんか目覚めちゃいそう」
「はははっ! さすがおれっちの娘だ! 良い卑怯っぷりだぜ!」
「なっ! 違うわよっ。……いえ、違わないわ! そう私はその本が読みたいの! だから、本気で奪いに行くわよっ!」
「ついに本性を顕しやがったなこのエロガキがっ! 良かろう、お前の力存分に見せてみろwww」
「ふふっ、一瞬で決着をつけてあげるわ! これで終わりよっ!!」
アテナは力を解放させると、ゼウスに突撃する体勢をとった。
(くそ~、このままだと確実にやられるっ! どうすれば……。 ――そうかっ、あれだっ!)
ゼウスは突破口を思い付いたのか大きく深呼吸をすると、真剣な顔つきになった。
「スゥ~ッ、ハァ~ッ……」
「――ん? 何か抵抗でもするつもり? 無駄よ私のスピードに叶うわけがないわ」
「……確かにお前のその能力は全盛期のおれっちでも止められるか分からないほどのチート能力だ。――だが、そう易々といくかなw??」
ゼウスは不敵な笑みを浮かべると、なんといきなりエロ本をパンツの中に押し込んだ!!
「あらよっとwww」
「――あっ!!!」
彼の予想外の行動に度肝を抜かれたアテナは、思わず声をあげていた。
「ハハハハ! いくら早くなってもさぁ! お前にこれが取れるのかなぁ?? ん~w? え? どうよおれっちの完璧すぎる作戦www? 勝ち確不可避www」
「…………」
「あれあれ~? さっきまでの威勢はどうしたのかなぁ? どうしたほら、こいよwww?」
「……はぁ、ほんとお父さんは変わらないわねw」
そう言うとアテナは高速移動を解き、ゆっくりとゼウスに近づいていった。
「えっ、何で……」
「お父さんの思い付く策略なんて所詮その程度ってことよw」
「――えっ。ちょwwなんでおまっえっ!?」
ゼウスはアテナの行動が理解できず、困惑していた。
「あのね、そんなのどってことないでしょ~、呪文を使うまでもないわ。だって二人で暮らしてたとき、お父さんのパンツ洗ってたの私だもん。よゆーよよゆーww」
「あっ、そうだった――」
「そんなことをしてもムダなんだからっ! いい加減観念しなさいっ!!」
「――っ!! あっやめてっ! ――――いや~んえっちぃいいいっ!!!」
ゼウスのささやかな抵抗もむなしく、彼の宝物はアテナの手に渡ってしまった。
………………