僕の人生は僕のものだと・・・
無事に『霊廟の森』にたどり着いた運び屋の青年。
しかし森は閉ざされ、中に入ることはできない。
困っている時、青年に声をかけたのは・・・
こんにちは、おばあ様。
お加減はいかがですか?
あの時は驚いたのですから、仕方ないじゃないですか。
俺の父、祖父の幼い頃から変わらず、これからもそうであるとばかり思っていた貴女が倒れられたのです。大騒ぎになっても、大げさではないでしょう。
しかも、原因があのようなことだなんて。
恐ろしいものですね、バンムレットという植物は。
一見すると、可愛らしい花を年中咲かせるだけのありふれたものなのに。
森の動植物の生態を壊し、森を司る精霊のおばあ様を殺しそうとするなんて。
しかも、これを森に植えたのが彼女だなんて。
許せませんよ、未だに。
地の御方はご存知ではないのでしょう?
そうでしょうね。
娘であるおばあ様を殺されかけたというのに、彼女が精霊王となるのを許したと聞いて不思議だったのです。
もしもご存知なら、怒りで大地が裂けていたのではないですか?
いいえ。
不敬であろうと自分の生まれ育った国を加護する精霊を、しかも貴族である彼女にとっては祖先でもあるのに、殺そうとしたのです。例え知らなかったとはいえ、注意してもやめようとしなかった。
『こんなに綺麗なものがお墓の周りにあったら、地の精霊王様も喜んでくださるわ』
そう言っていたそうです。
『どうして、そんな意地悪なことをいうの?殺風景なんだから、お花があったほうがいいわ』
ともね。
それに、俺にも訳の分からないことを言ってきました。
『エルフでも人間でもないとしても、貴方は貴方です。』
意味が分かりません。
確かに、俺は人間である父とエルフである母の子ですが、それがなんだと言うのでしょう。
下位精霊と人が一つになり生まれる魔術師の果てであるエルフは、そのせいで常識が通用しづらく忌避される存在ですが、母は普通に王城で暮らしていますし、兄たちも王妃様も母や俺と仲良くやっています。
そういえば、学園でも『フレイ様について何か困っていませんか』と言われましたね。俺がフレイと一緒にいると傍に来て『私は貴方の助けになりたいのです』と。何故俺から婚約者であるフレイを遠ざけようとするのが助けになると思ったのでしょうか。
火の御方や水の御方、多くの人が彼女を褒め称えますが、俺にはそうとは思えないことばかりなのです。
申し訳ありません。
こんなこと、おばあ様にお聞かせするなんて。
止めてください。
俺ももういい年ですよ。
可愛いなんて言われても嬉しくありません。
手紙をお持ちしたんです。
運び屋が困っていましたよ。
『霊廟の森』に届けて欲しいと言われたが中に入れないと。
ここは、貴女が許した者や血を持つ者しか入れませんからね。
帝国のルイーズ辺境伯の次女マリアンナ・ルイーズからですね。
お知り合いだったのですか?
高名な奇人一族の御息女と。
えっ
そうですか、かつて風の精霊王だった御方ですか。
だから、風の民たちはあちらに向かったのですね。
そんなことを俺に教えてもいいのですか?
王位を継ぐものは知っているって・・・
俺は第三王子。兄上たちがいるじゃないですか。
えっ、兄上たちがそう言っているんですか!!?
何故。
はぁ、婿入りする?エルフになる?
何勝手なことを言っているんですか、兄上たちは!!?
・・・・・・俺以外皆知っている・・・
おばあ様。
ちょっと、家族全員で話し合いをしますので保留にしておいて下さい、その話は。
それで、風の御方であられたマリアンナ嬢は何と?
見せていいんですか、手紙なんて?
・・・・・・・・・・何をなされたんですか、おばあ様。
めちゃくちゃ怒っているみたいですが・・・
『変なことを精霊たちに教えないでちょうだい』って・・・・
はぁ、
風の精霊たちが風の御方に許していただける方法。
モフモフ好きなんですね、風の御方。
そうですか、この森の動物たちで癒されていた。
そんなに当時は疲れることばかりだったのですか、風の御方の周りは。
そうですね。
民の幼い子供たちの上目遣いの泣き落としを一蹴できるなんて、火の精霊王じゃないんだから出来ませんよね。
・・・なんですか、その闇の精霊王の『僕と貴女の徒然なる日々』って?
はぁ。封印されている間に書かれた妄想日記?
確かに、高位精霊たちが全員そんな風になるなんて言われたら許すしかありませんね。
考えただけでも、ぞっとします。
分かりました。
風の御方はとてもお優しい御方なのですね。
そのような方法であろうと、許してくださるのですから。
彼女とはまったく違うということは、よく分かりました。
それで、これから世界はどうなるのですか?
世界が危うくなる中、
一向に火も水も、そして彼女も、
世界を救う旅をした彼女の仲間たちも、
天空の島から出てくる御様子もない。
あの皇国の宮殿で引きこもっていると有名な光の御方や、
姿を見せても動かないことで有名な闇の御方までもが、外に出て民や精霊たちに直接指示を出し、力を振るっているというのに、です。
そんな時に、かつての風の精霊王の存在を俺に明かしたのです。
おばあ様、俺は何をすれば良いのですか?
分かりました。
そのように・・・・。
お任せ下さい。
俺としても、この事態は早く終息させたいのです。
お忘れですか?
フレイとの、結婚式があるんですよ?
その際は、是非おばあ様も招待させて下さい。
ミントの100倍強力な植物だとでも思ってください。
可愛らしい花を年中咲かせる、その上他の植物や動物を排除してくれるので、一般的には整地しておきたい(お墓みたいな場所)では広がらないようにする囲い術をかけられ植えられています。ヒロインはそれを思って、森の中にある墓の周りに植えたのですが・・・
攻略対象・アズラート
彼だけは何処ぞのメイドの奮闘でヒロインの取り巻きにならずすみました。
フレイとは相思相愛です。
エルフ
魔術師が己を極めた結果、精霊と融合して誕生する存在。
研究馬鹿とか魔術馬鹿が大半で一般人とは会話が成立しないことが多い。
アズラートの母親は、エルフでは希少な常識人。