地と水と火
「あの、ヴぁぁか(わか)君が。」
「おい、若君が風の御方の娘の父親って知ってた奴。」
目元を押さえ、怒りに殴りこみそうな己を制している第一位
己の感じた嫌な予感を信じて、極力優しく見えるように作った笑みを浮かべた第二位
その問いに応じて、まっすぐに手を伸ばした第三位、第四位、第五位たち。
「どうして、知らせなかった!!!」
「『森の姫』のお願いでしたので。」
「そうそう。姫の笑顔には敵いませんもん。」
「っていうか、御息女様。森にいましたけど、気づかなかったんですか?
姫、おなか抱えて笑ってましたよ?」
「あの、主様がお気づきになられると?」
「「「あぁぁ」」」
「それで、ヴぁぁカ君が主様を眠らせたというのは?」
「それは私たちも存じませんでした。」
三人は首が捥げるほどに振り続ける。
黙っているくらいは出来るが、そんな主を害するようなことは了承できるわけがない。
「・・・姫様か・・・」
「一度、若君と姫君合わせてお説教だな。・・・・懐かしい・・・・」
深緑の色を纏った、かつての同胞が相反する場所にいる。
「第5位。…どうして…」
我が君が呆然と呟いておられるのが聞こえる。
どうして、などとおかしなことを。
生じてより、あの時まで、雛鳥のように我が君の傍に着いて回っていたあの子をつき放ち、顧みなかったのは貴方ではないか。
その言葉が正当なものであったにも関わらず、水の精霊王に否定された精霊がどうなるかなど分かっておられる筈なのに・・・。
そのような顔をされていても、その幼き風から手を離そうとはなさらないのですね・・・。
ならば、もういいのだろう。
今、我が君の側に変わらずあるのは私だけ。
第 2位、第3位は消耗し何時覚めるかも分からぬ眠りに入り、第4位は消えた。
それでも、我が君は気づかれない。
気づいてくださるならばと思ってきたけれど・・・
全ては、計画の通りに。
本当に・・・ヒロインなんて現れなければ良かったのに。
か細く震える子供に寄り添う火の精霊王。
この姿を島にいる火の精霊以外が見たのは、如何程も前になるのだろうか。
この方は、人々が火の精霊王を何といっているのかご存知なのか。
いや、絶対に知らぬことだろう。
知っていたのなら、こんな風に愚かにあることが出来るわけがない。
知られているのなら、計画がここまで進むわけがない。
世界を救う為の計画ではあるが、この方にとっては滅びの計画だ。
怒り狂い、その身より生まれる炎をもって世界を焼き尽くそうとするだろう。
計画に重要な人間達を失わせ、己を守ろうとするだろうな。
この方にとって、人間などあってもなくても構わぬものだそうだから。
「第一位。ようやく、ですね。」
火の高位精霊たちが喜びを押さえきれず、その顔に漏れ出ている。
「まだ我慢していろ。ばれたら、事だ。」
「申し訳ありません。
ですが、これで人々が守れると思うと。」
「そうですよぉ。
目を盗んで人々に力を貸すのは二度とゴメンだってのぉ。疲れるぅ。」
仕方ない奴等だ。
だが、それだけ望んだ時間だ。
どれだけ待ったか。
もしかしたら、とも思った。
だが、恋というものに溺れたと表現されてからは、完全に見限っている。
「よく見ておけよ。
これから起こることは、俺たちの罪だ。主を止めなかったな」
乙女ゲームなんて悪趣味なものからの解放の時だ。
乙女ゲームの逆ハーの後ってどうなるんだろう?何もかも台無しになっていったら面白いな、と書き始めた話です。
逆ハーエンドなヒロインと脱悪役なヒロインのその後、
こんな訳の分からないような話に反応を示してくださる皆様は、神のような方々だと感激しております。