龍馬改造計画~主人公に返り咲け!!~前編~
※この小説はフィクションです。
萌「もっと熱くなれよ」
会長室で手を組んで待っていた我らが生徒会長がサンフィルターから漏れる太陽光を背に呟いた。
龍馬「・・・はい?」
萌「せやからもっと熱くなるんや」
龍馬「・・・ちょ、ちょっと待ってくださいよ会長。急にそんなこと言われても全く理解が」
そうか、やっぱ自覚しとらんかったか。萌は続けて言う。
萌「副会長。例のファイルを」
萌の目前にテーブルを滑る一冊のファイルが止まった。
萌「今までの行動をまとめさしてもろたよ、坂本竜馬。ハッキリ言わしてもらうわ」
君には、主人公の素質が足りない
龍馬「ハ・・・?な、どういうことですかそれ」
萌「ああ、コレ本編ちゃうからタメ口オッケーやで。で、これ聞いてどう思う?」
龍馬「どういうことだよコレ!?俺なんかやったか!?」
萌「ようわかっとらへんな」
萌は1枚の茶封筒をファイルから出し、中のざらばん紙を抜き取り、読み上げた。
― 坂本 龍馬 殿
あなたのいままでの現実世界及び幻界での行動を一部始終記録させていただいた結果、
あなたの行動に対して『全創作物推進委員会・創作キャラクター科主人公部部長「主人 公太郎」及び数十名の主人公』の部内会議の末、あなたは主人公を演じるにあたって必要となる技能の程度が基準値より下回っていることが結論付けられました。従って、あなたから主人公の資格を剥奪、『脇役部』への身柄譲渡が仮決定しました。
ついてはあなたに三つの権利が『創作キャラクター科憲章第19章から22章』に基づいて与えられます。
・主人公の資格を再取得する試験を受ける権利(この権利と以下の権利は憲章第22章で保障されます。以下省略)
・上記の試験を受けるために知識を再び得る権利
・脇役としての最低限の知識を得る権利
権利の行使については後述の期限までに以下の住所に必要事項とを記入し、お近くの郵便局に送付ください。
(消印は認めません)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
龍馬「・・・なにこれ!?突っ込みどころが多すぎる」
萌「ああ。というわけで今からアンタ主人公から脇役に格下げやから。これ刀を武器にしてる主人公はほぼ全員賛同したらしいし。主に○村剣心とか伊達○宗とか」
龍馬「え?ちょっと待って!?俺が主人公じゃなくなったらどうなんの!?」
萌「その点に当たっては聖子ちゃんがソロ主人公兼ヒロインとして頑張ってくれるから。明日の○ージャみたいに」
龍馬「具体例出された!?」
萌「物語読み返したんやけどさー、怪しい思われ始めたんは聖子ちゃんを助けるつもりが逆に助けられたあたりやったんやろうな」
龍馬「でも、俺必死になって」
萌「主人公ならあそこで先生なりクラスメートなりが通りかかったはずなんや。その点でもはやヘタレ。で、調査される切っ掛けになったんはシュンを引き渡したシーンやったな」
龍馬「ヘタレって・・・でも俺、しっかり悔やんで、そんで連れ帰して」
萌「壁ドン」
龍馬「え?」
萌「シュンを渡したその夜、・・・龍馬は熱血系もクール系も持ってるんやったな?せやな?その場合あの後一人にしてくれってうちに言うってなってな。誰もいーひんとこで壁を横殴りしてシュンに対しての贖罪とそうした自分への怒りを涙にして流し、それを陰で覘くヒロインもしくはウチら仲間の描写等等があったはずなんや。でもそうじゃなかった、うちはしっかり読んでんで?引き渡して「慣れてますから」ってったとこから「売り渡したことになる」の下りまで。なんであの時聖子ちゃん想像しとんの?極め付けには同じ章の中で聖子を泣かせるという単体もしくは一定の物で起こすべきことまでやってもうたんやから仕方ない思うで?」
龍馬「で、でもそんな主人公は最近何処にでもいる!」
萌「そう。本当ならその一例と坂本龍馬はスルーされるはずやった。しかし・・・」
龍馬「しかし・・・?」
萌「・・・天宮聖子という、もう一人の主人公がいる」
龍馬「そ、それが」
萌「彼女はハッキリ言って主人公や。仲間思いで優しいし、ヒロインらしく恋もする。そして何より―――――」
龍馬「な、何より・・・?」
萌「カワイイがあるんや!そう!カワイイは正義なんや!!ヘタレ主人公と女主人公なら一人であの物語は十分やと委員会や主人公部にも判断されたんや!」
龍馬「ウワアアアアアアアアアアアアアアアア」
萌の説教に頭を抱える龍馬。
自分の主人公としての行動に信念と責任を持っていた彼が揺らいだ瞬間だった。
主人公・・・いや、元主人公が、自分を「本当の意味」で疑ったのだ。
龍馬「お・・・おお・・・・」
打ちひしがれた主人公(笑)。
萌「・・・坂本龍馬。アンタに一通手紙もろてる。アンタを応援しとる子の手紙や。読むなら渡すし、読まないならそれはそれで処分する。・・・どうする?」
龍馬「・・・」
首を振る龍馬。
萌「そ。これからどうするんや」
龍馬「・・・戻ってきてやる・・・!」
萌「・・・」
龍馬「俺はまだ、終わっていない。聖子や、みんなと一緒に、主人公として物語の、『俺たちの創世記』主人公として歩んでいきたい」
萌「そうゆーと思ったわ」
萌は一枚のメモ用紙を龍馬に渡す。
萌「権利の行使願いはうちの方で出しとく。試験日は追って連絡するわ。・・・この場所で、いい顔になってきぃや!坂本りゅっ・・・」
・・・。
龍馬「噛ん・・・」
萌「あ、あかん!主人公度が減っとるんや!!主人公なら名前を噛まれたりしないはずやから!!ほら!急げ!さかむっ・・・」
龍馬は走る。萌の噛み噛みなんてもう聞かなかった。
果たして、龍馬は主人公の座に返り咲けるのか!?中編へ続く!
本人に文句言われたら消します