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特攻流し

作者: 口羽龍
掲載日:2026/04/12

 村松英也むらまつひでやはニートだ。オンラインゲームが楽しいと思って、まったく仕事をやろうとしない。仕事で自分の楽しみが奪われるのが嫌だと思っていた。度々、家族から注意されるが、その度に暴力を加える。なので、母はそんな英也に手を焼いて、部屋に来ようとも思わない。一緒にご飯を食べようとも思わない。部屋の前にご飯を置いて、それ以外は部屋に近寄ろうとしない。


 そんな生活が10年近く続いたある日の事だ。英也はある夢を見た。そこは、テントのようなところだ。いったいここはどこだろう。どうして自分はここにいるんだろう。英也は首をかしげた。一体、自分の身に何が起こっているんだろう。


「うーん・・・」


 と、そこに軍服を着た男が入ってきた。その男は険しい表情だ。


「おい! お前、行くぞ!」

「えっ・・・」


 英也は呆然としている。一体何だろう。


「行け!」


 英也は叩かれた。こんなに厳しい人、見た事がない。この人は一体誰だろう。


「痛い!」


 英也は男に連れていかれた。そこには飛行機がある。その飛行機は零戦のようだ。図鑑でしか見た事がない。どうして目の前にそれがあるんだろうか? まさか、それに乗せられるんだろうか? その下には、小さな飛行機があるが、コクピットがある以外は、まるで白いミサイルのようだ。まさか、あれは特攻機の『桜花』だろうか?


「えっ、どこ?」


 英也は、今置かれた状況が理解できない。


「わかってるだろ! 今日は出撃の日だ!」


 英也は呆然としている。何事だろうか?


「は、はい・・・」


 英也は目の前の水を飲まされるように言われる。どうしてそんなものを飲むんだろうか? 英也は水を飲んだ。


「成功を祈る!」


 英也はみんなについていき、飛行機に乗った。みんなが乗るから、乗ろうと思った。だが、心の中では乗りたくなかった。これから何が起こるんだろう。全く理解できない。


「行ってこい!」

「はい・・・」


 英也は飛行機に乗り込んだ。英也の他に、何人かの男が乗っているが、みんな軍服を着ている。


 程なくして、飛行機は離陸した。ぐんぐん高度を上げていく。英也はその様子を見ている。どうして自分はこんなのにのせられているんだろうか? どういう事だろうか?


 飛行機は海の上にやって来た。海には何隻もの潜水艦がある。それを見て、英也は下の小さな飛行機に乗せられた。英也は抵抗した。こんな事、したくない。オンラインゲームで遊びたい。


「突っ込め!」


 小さな飛行機は飛行機から離れた。そして、潜水艦に一直線に向かっていく。英也は呆然とそれを見ている。


「うわーーーーーー!」


 そして、小さな飛行機は潜水艦にぶつかった。


 英也は目を覚ました。夢だったようだ。あの夢は一体、何だったんだろう。あまりにも怖い夢だったな。戦時中の特攻の夢だったようだ。


「夢か・・・」


 英也はため息をついた。あの夢が全く理解できない。


「何やったんやろ・・・」


 英也は考え込んだ。あの夢が頭から離れない。悪夢を忘れたい。その為には、どうすればいいんだろうか?


「悪い夢、見てもうたから、ネットサーフィンをして紛らわそう」


 英也はネットサーフィンを始めた。現実から逃げたい、悪夢を忘れたいと思っているようだ。


ひでー、ごはん置いとくね」


 母の声だ。英也は時計を見た。もう夕食の時間だ。この部屋に引きこもって以降、時間という概念が全く薄れてしまった。だが、英也はそれを全く気にしていなかった。好きな時間に起き、好きなだけオンラインゲームをする。これほどの幸せはないと思っていた。


「はーい!」


 英也はドアを開け、食事を取った。今日の晩ご飯はハンバーグだ。とてもおいしそうだな。


 戻る間、母は何かを気にしていた。実は数日前、母のもとに召集令状らしきものが届いた。これはどういう事だろうか? もう戦争はとっくに昔に終わっているのに。


 その頃、英也はネットサーフィンをしながら晩ご飯を食べていた。やっぱりハンバーグはおいしいな。


「ほんま、何やったんやろ・・・」


 英也はあの夢の事がいまだに忘れられないようだ。これから起きる大変な事の前兆のようで、怖いな。


「わからんな」


 だが、そんな事をしていたら、楽しくオンラインゲームができない。忘れよう。


「まぁ、ええか。忘れよ」


 食べ終わった英也は、食器などを部屋の前に置き、オンラインゲームを始めた。これが一番楽しい時だな。嫌な事を全部忘れる事ができる。


「やっぱオンラインゲームは最高やな」


 英也はオンラインゲームに熱中していた。とても面白いな。やっぱりオンラインゲームって、最高だ。


「よし! やったーーーーーーー!」


 英也は約4時間も熱中していた。英也は時計を見た。もう夜の11時だ。もっと楽しみたいな。


「あー、疲れたな・・・」


 英也は背伸びをした。その時、辺りが暗くなった。どうしたんだろうか?


「あれっ!?」


 英也は辺りを見渡した。停電だろうか?


 再び部屋が明るくなると、そこはテントのような所だ。まるで夢で見た場所のようだ。


 そこに、軍服を着た男がやって来た。夢で見た男と同じ顔だ。


「行くぞ!」

「えっ!?」


 英也は呆然としている。まさか、あの夢は正夢の前兆だったのかな?


「おい! 寝ぼけてんのか? 行くんだぞ!」

「だから何やねん!」


 英也は抵抗した。だが男は強い。


「なんだその口は!」


 男は持っていた鞭で叩いた。怖くなって、英也は抵抗できなくなった。


「痛い!」

「行くぞ!」


 男は英也を引っ張った。英也はおびえていた。


「は、はい・・・」


 英也が連れていかれた先には、飛行機がある。そしてその下には、小さな飛行機もある。あの時の夢同様だ。


 英也は横にいる軍人とともに、水を飲んだ。これも夢と同じだ。


「成功を祈る!」

「乗れ!」

「・・・、はい・・・」


 英也は飛行機に乗せられた。何もかもが、夢そっくりだ。英也は震えていた。このまま僕は死んでいくんだろうか? 死にたくない。もっとオンラインゲームで遊びたい。


 飛行機は空高く飛んでいった。軍服の男たちはその横で手を振っている。英也はその様子を見ている。とても怖いな。早く戻りたいな。だけどもう戻れないだろう。そう思うと、涙が出てくる。


 飛行機は海の上にやって来た。これから潜水艦に突っ込めと言われるだろう。そう思うと、英也はびくびくしてきた。死にたくない。だけど、行かされそうだ。


 英也の予想は当たっていた。英也は小さな飛行機に乗せられた。小さな飛行機は飛行機から離れ、潜水艦に向かって真っすぐ体当たりをしていく。英也はその様子を、コクピットで見る事しかできなかった。


「うわーーーーーーー!」


 そして、英也を乗せた小さな飛行機は潜水艦に突っ込み、大破した。英也は即死だった。




 次の朝、何も知らない母は英也に朝食を届けに来た。もう何年もこうだ。早く仕事を見つけて、就職してほしいのに。どうしたら働こうという気になるんだろうか? 一生、このままだろうか? とても不安になってくる。


「英ー、ごはんよー」


 母は部屋の前に立った。だが、英也の声が聞こえない。母は首をかしげた。


「あれっ、聞こえない・・・」


 まだ寝ているんだろうか? 返事がない時は、だいたいそうだ。その時はゆすって起こしている。


「英!」


 そう思い、部屋に入った。だが、そこに英也はいない。どういう事だろうか?


「あれっ、いない・・・」


 母は呆然となった。英也はどこに行ったんだろうか?


 その夜、母のもとに、ある紙が届いた。それは、英也の死亡告知書だった。死亡日は、昭和20年の6月23日になっていたという。

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