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禁じられていた遊び(スマホの章)  作者: 嬉々ゆう


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スマホの章 第3話

誰もが一度は思う。

“これくらいなら大丈夫”と。

 僕は、ごく平凡な中学生、『佐田 元気』。 イジメっ子でもなければ、イジメられっ子でもない。

 どちらかと言うと、イジメを目撃しても何も出来ずに、ただ見て見ぬ振りをして、

 何時も安全地帯に居るような、一番卑怯な奴なのかも知れない。


 そんなある日、イジメっ子を撃退する方法を思いついた。

 ある、恐怖体験投稿サイトで見つけたものを、実際にやってみようって事になった。

 ソイツの名は、憎っくきイジメッコの立川君。

 僕は比較的仲良しなクラスメイトの赤木君と馬場君、そしていつも立川君にイジメられている稲見君を連れて、

 学校近くの神社の境内へ向かい、そして実行した。


 だが僕達は、スマホを使って何者かを呼び出してしまい、全員が女の子にされてしまった。

 その後に何度か同じように、その何者かを呼び出して元の男に戻してもらおうと思ったのだが、

 二度とその者を呼び出す事はできず、結局そのまま家に帰ることになった。


 だが不思議なことに、家の家族達は女の子になってしまった僕の事を、

 最初から女の子だったかのように接するのだ。

 これはいったい、どういう事なのだろうか?





 スマホの章 第3話


 ⋯━☞自宅の自室☜━⋯



 母親:

「ミキ! ミキー!」


 僕:

「ああ……うん?」


 母親:

「ミキ! いつまで寝ているの! 早くしないと学校に遅れるわよ!」


 僕:

「ミキ? 誰よそれぇ~?」


 母親:

「何を言ってるのミキ? あんたに決まってるでしょ! 夜遊びのし過ぎで自分の名前も忘れちゃったの?」


 ガバッ!


 ミキ:

「はぁい?!」



 ミキはベッドから飛び起きた。

 すると母親がミキを怪訝な表情で見下ろしている。

 そう。 この女の子の今の名は、”佐田 ミキ”。

 昨日の夕方までは、”元気”という名前の男の子だったのに、今は見てのとおり女の子。

 それと不思議な事に、家族全員がミキを最初から女の子だったかのように接している。

 これも、あの謎の声の主の仕業なのだろうか?

 もっと不可解なのは、ミキ自身には男の子だった頃の記憶がシッカリと残っている事だった。



 ミキ:

「ちっ……違うのママ!! 私はミキって名前じゃなくって……って、なんで私は自分を私って呼んでるのよ?!」


 母親:

「はぁ?」


 ミキ:

「そ、それよりも、私は元々男の子だったの! 覚えているでしょママ?

 あれぇ!? なんでママの事をママって呼んでるの私!? って、また私って呼んでるしぃ~」



 ミキが混乱する訳は、”元気”という名前の男の頃、自分を”僕”と呼んでいたし、

 母親の事を、”お母さん”と呼んでいたからだ。

 それに今では、自分を”わたし”と呼び、母親を”ママ”と呼ぶ以外ではなぜか違和感があり考えられない事。

 ミキの頭の中ではパニック状態なのに、その周りの人達はごく自然に振舞っている。

 そこがまた余計に、ミキを混乱させるのだった。



 母親:

「……ミキ、頭打った?」


 ミキ:

「え?……」


 母親:

「んもぉ! フザケてないで、さっさと用意しなさい! 着替えは、ここに置いておきますからね」


 トットットット……バタン!


 ミキ:

「!!……」



 母親は、そうとだけ言って部屋を出て行ってしまった。



 ミキ:

「!!……え? えぇー!! ちゃんと聞いてよママぁ!! やっ!? 何この部屋!?」






 そして、今自分が居る部屋がすっかり変わっている事に気付く。

 青系をベースとした模様だったカーペットと壁紙が、ピンクをベースとした模様に変わり、

 ベッドやカーテンまでピンク色に変わっていて、少年漫画雑誌なんかも全てが少女漫画に変わっていた。



 ミキ:

「何よこの服ぅ!? ね、ネグリジェ~!? やぁ! やっやっや……セーラー服ぅ!?」



 そして更に変わってしまっている物に気付く。

 今自分が着ているのはネグリジェだった。 夕べは確か、Tシャツにジャージを着て寝てしまったはずなのに。

 それに、ラックに掛けてあった学生服が、セーラー服に変わっている。

 まさかと思い半分想像していたのだが、クローゼットの中身の下着類なども全て女の子の物に入れ替わってしまっていた。

 もうパニクってしまったミキは、女の子として部屋の外へ出る事ができなくて、またベッドの中に潜り込んだ。

 このまま女の子の姿で学校へ行くなんて、とても考えられなかった。

 もし、学校では家族とは違う反応をされたらと思うと、不安で仕方が無かった。


 そこへまた、母親がやって来る。



 バンッ!

 母親:

「いい加減に早くしなさい!! 今何時だと思ってるの!?」


 ミキ:

「いやっ! 今日は何処にも行かない!」


 母親:

「はぁ? 何よいきなり?」


 ミキ:

「ママ、私の服とか下着とか、全部女の子の服に替えちゃったでしょ!」


 母親:

「何を解らない事を言ってるの!? ほらぁ、早くっ!」


 ガバッ!


 ミキ:

「やっ!」



 母親は、ミキが頭から被っている布団を引き剥がした。

 ミキはベッドの上で、コタツの中の猫のように丸くなっている。

 そんなミキの様子を見た母親は、ちょっと我が子を心配する。



 母親:

「ミキ、まさか学校でイジメられているの?」


 ミキ:

「!……」


 母親:

「もしイジメられているんなら、ママにだけは話してちょうだいね? ママ、きっとミキのために……」


 ミキ:

「そんなんじゃないったら!」


 母親:

「!!……だったらグズグズしていないで、さっさと支度しなさい!」


 ミキ:

「……はぁ」



 母親は、安堵した様子ではあったが、すぐさま怖い顔して怒鳴る。

 ミキは、深いため息をついた。

 するとそのとき玄関のチャイムが鳴り、間もなく父親の声が聞こえてきた。

 どうやら誰かが迎えに来たようだった。



 ピンポォ~ン♪


 母親:

「あら、誰かしら?」


 ミキ:

「……」


 父親:

「おーいミキー! 友達が迎えに来ているぞー!」


 ミキ:

「!?」


 母親:

「ほら! お友達が来てるんだって! さぁ、早く!」


 ミキ:

「あぁ~んもぉ~わかったぁ!」


 のそのそ……



 ミキは、友達が迎えに来たのなら仕方がないと観念して、学校へ行く準備を整える。

 着慣れないセーラー服に袖を通して、一生穿くこともないはずだったスカートを穿く。

 リボンは流石に結べないので、スカートのポケットにリボンを詰め込んで、

 赤い女子用に変わった学生カバンを持って、階段を駆け下りた。


 すると玄関ドア前で母親に捕まり、またネチネチと小言を言われる。



 ミキ:

「行って来ます!」


 母親:

「ちょっと待ちなさい!」


 ミキ:

「もぉ~なに?」


 母親:

「はい、コッチ向いて!」



 母親がミキの肩をガッと持ち、クルリと回す。



 ミキ︰

「ううっ……」 


 母親︰

「スカートが下がっているわよ! もおもおもお! 男の子のズボンみたいな穿き方して! スカートは腰ではなくってウエストで穿くものって言ってるでしょ! ほら、ハンカチとティッシュは持った?」


 ミキ:

「ん? うぅん……持ってない」


 母親:

「やっぱり! ほんとにもぉ~だらしない娘ね! ほら!」


 ミキ:

「ありがと……」

(スカートの穿き方なんて知らないし……)



 などと思いながら、ブツブツ何かと文句を言う。

 ズボンなら腰で穿くものだが、スカートはウエストで穿くものだんで、今このとき知ったのだから仕方がない。

 母親は、ハンカチとティッシュをスカートのポケットの中に入れてくれた。

 そして、ポケットの中から顔を出していたリボンを抜き取り、結んでくれる。



 母親:

「何時まで経ってもリボンも結べないのね? ったく、だらしない! もっとシャキっとしなさい女の子なのだから!」


 ミキ:

「……」



 そう小言を言われ煩いなと思いながらも、なんだか気持ちが穏やかになる自分が居た。

 母親はリボンを結ぶと、ミキを玄関の方へ振り向かせて、ポン!と背中を叩いて言った。



 母親:

「はい、できあがり! 気をつけて行ってらっしゃい。 帰りは真っ直ぐ帰って来るのよ?」


 ミキ:

「はいはい。 じゃぁ、行ってきます」


 母親:

「はい」


 カチャ……パタン!



 ミキは、結局このまま学校へ向かう事になった。

 玄関を出ると、そこに立っていたのは結構可愛い女の子だった。

 ミキには一緒に学校へ行くような友達なんて女子には居ない。

 でも、その女の子がクラスメイトであるのが理解できる。 それは、稲見君だった。



 ⋯━☞通学路☜━⋯


 稲見:

「おはよ」


 ミキ:

「……おはよ」



 朝の挨拶を交わすと、二人は学校へ向かって歩き出した。

 稲見の家は、ミキの家に比較的近い事もあって、時々登校するとき一緒になる事がある。

 でも今日は、稲見からわざわざ迎えに来てくれた。

 きっと稲見も、一人で学校へ行くのが不安だったのだろう。



 稲見:

「……どうだった?」


 ミキ:

「見てのとおりよ」


 稲見:

「コッチもだよ。 私達、どうなっちゃうんだろうね?」


 ミキ:

「そんな事聞かれたって、私にも解らないわよ」


 稲見:

「うん。 立川さん、来るのかな?」


 ミキ:

「さぁ……」


 稲見:

「……」


 ミキ:

「……」


 トットットットット……



 二人は、その後は何も言葉を交わすこともなく、学校へ着いてしまった。



 ・⋯━☞学校校門前☜━⋯・



 ミキと稲見:

「はぁ……」



 二人は校門前で立ち止まり、同時にため息をつく。

 すると後方から駆けてくる足音が聞こえた。

 そしてその直後!



 タッタッタッタッタッタ!

 ババッ!


 ミキと稲見:

「「きゃぁっ!!」」


 男子A:

「やっりぃ~!」


 男子B:

「いい物みっけ!」


 ミキと稲見:

「「!!……」」



 後ろから駆けてきたのは、ミキと稲見の同じクラスの男子生徒達だった。

 ソイツらは、二人のスカートを思い切り捲り上げたのだ。

 思わず二人は、女の子の悲鳴を上げてしまう。



 ミキ:

「な、何をすんのよこのスケベ!」


 稲見:

「んもーバカぁ!!」



 咄嗟に出る言葉も、やっぱり女の子をしている二人。

 そしてそんな二人を、女の子として接する男子達。

 この男子達も、ミキと稲見には最初から女の子だったかのように接する。

 やっぱり、他の生徒達も同じなのだろうか? 先生達も? いや、もしかしたらミキ達を知る全ての人達も?



 男子A:

「そんな所に、ボーっと突っ立てるのが悪いんだよぉ~♪」


 男子B:

「そーいうこと! お前ら油断しすぎ!」


 ミキと稲見:

「んむむ……」


 男子A:

「じゃぁなぁ~ミキちゃん! 先に行ってるぞ~」


 ミキ:

「み、ミキちゃん!?」



 ミキは、小学生までなら友達から名前で呼ばれた事があるが、中学になってからは名前なんかで呼ばれた事などなかった。

 しかもその名前は、”元気”ではなく、”ミキちゃん”である。

 更に混乱するミキだった。



 男子B:

「サキちゃんも、早く来いよ~」


 稲見:

「サキちゃん!?……」



 稲見も、きっとミキと同じだろう。

 小学生までなら名前で呼ぶ友達も居ただろうが、今はそんな友達など居ないし、しかもイジメに遭っていたのだから、

 名前で呼ばれるなんて事があるはずがなかった。

 なのに今はこうして、”サキちゃん”と、”ちゃん付け”で呼ばれたのだ。

 ”もしかしたら、今ならイジメられないで済むかも?” と、少し嬉しく感じたサキだった。



 男子A:

「あ、そうだ! チョコよろしくぅ!」


 男子B:

「俺も~! これで二つは確実にゲット~♪」


 ミキとサキ:

「「な!?……」」


 タッタッタッタッタッタ……


 ミキとサキ:

「「……」」



 やはり、学校でも二人は女の子として通っているようだ。

 それに男子達の反応からして、二人は結構男子からモテるようでもある。

 そう言えば、もうすぐバレンタイン? 女の子から男の子へチョコを送る日だと思い出した二人だった。

 まさか自分がチョコをあげる側になるだなんて、思いもしなかった。

 こんな事など想像もしなかったが、なぜだかそれほど不快には思わず、むしろ気分が良かった。

 だがこのまま女の子として生きてゆくなんて、とても考えられなかった。

 二人は、もう一度あの神社に行って、メンバーを揃えて行ってみる事を話し合った。

境界線は、案外あいまいなものです。

次回、その線を越えます。

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