スマホの章 第2話
遊びは続きます。
まだ引き返せるはずなのに、なぜか足は止まりません。
立川君が、怒鳴りつけるようにそう答えた瞬間!
立川君が持つ稲見君のスマホの画面から、大きな半透明の腕が飛び出し、
僕達の身体を、すっぽりと覆い被せたのだ!!
このとき僕達は、何が起こったのか理解できず、ピクリとも動けなかった。
すると、半透明の腕の中に居る僕達の身体が小さくなり、着ている服も、小さくなった体のサイズになり、
立川君の憎たらしい顔は、可愛らしい顔へと変わり、気が付いたときには、
立川君は完全に女の子へと変わってしまっていたのだ!
僕も、赤木君も馬場君も稲見君も、女の子へと変わってしまっていた。
そして、いつの間にか半透明の腕は消え去っていた。
稲見君のスマホは、話中の時の音が、プープープーと鳴るだけだった。
立川君は、稲見君のスマホを持ったまま、ただボォ~と佇んでいた。
僕達も、皆の顔を見てオロオロするだけだった。 誰も、何も言葉を発する者は居なかった。
このとき僕達5人は、揃って男から女に変身してしまったのだった。
スマホの章 第2話
⋯━☞とある神社の境内☜━⋯
最初に声を出したのは僕だった。
元気:
「これ夢?」
誰も今起きた事を、現実だと受け入れたくないかのように、ただ押し黙ったまんまだった。
僕は、今にも何かが弾けてしまいそうな空気をかき消したかったから、
何とか踏ん張って声を出したのに、益々空気が重くなってしまった。
稲見:
「え? どうしよう?」
赤木と馬場:
「……」
立川:
「こんな、まさか?」
今起きた事が、現実なんだと確信すると、更に空気が重くなる。
以前よりも少し長くなった髪とまつ毛。 狭くなった肩幅。 自然と内股になる足。
1オクターブは高くなった声。 括れたウエストに、丸く大きくなった腰とお尻。
少し細くなった顎に手足。 あるはずが無かった胸の膨らみ。
そして、今まであったはずの物が、股間には何も感じられなかった。
それぞれには、以前の面影こそは残ってはいるが、何も知らないクラスの他の連中が僕達を見たって、
きっと、誰も僕達だとは気付かないだろうと思った。
みんな、それら全てを自覚をしてはいるが、誰も声に出して確かめる事はしなかった。
立川:
「おい! お前、何て事をしてくれたんだ!!」
稲見:
「ぇえ!? 僕は何も」
元気と赤木と馬場:
「……」
立川君は、他の者達の事など気遣う事もせずに、ただ自分が女に成ってしまった事を、稲見君の所為かのように責める。
だが、今の立川君には、以前のようなイジメっ子のイメージを感じられなかった。
ちょっとイジワルな、可愛い女の子にしか、誰の目にも映らなかった。
だからなのか、僕には今の立川君を、ちっとも怖いなんて感じなかった。
元気:
「ちょっと待ってよ!」
立川:
「ぁあ!?」
稲見と赤木と馬場:
「!?」
元気:
「なんで、稲見君の所為にするんだよ! こんな事になったのも、君が勝手な事をしたからじゃないのか?」
立川:
「なんだと!? 俺が悪いって言うのか!」
立川君は、今まで僕達に凄んできたときと同じように、僕を睨みつけて大声で怒鳴り上げる。
でもやっぱり、以前のようなイジメっ子の刺々しさなど感じない。
僕は、今の立川君は女の子なのだから、今の僕にだって勝てるかも知れないと思った。
自分自身も、女の子に成ってしまった事を忘れて、立川君に食って掛かる。
元気:
「だって、そうだろぉ!? もしあの時、稲見君に任せて勝手な事などしなかったら、
もしかしたら何も起きずに、無事に済んだかも知れなかったのにさっ!」
立川:
「なんだテメェ! チビのくせに生意気だぞ!」
元気:
「お前だって、僕とそれほど変わらないじゃないか!!」
稲見と赤木と馬場:
「……」
そう。 以前の僕と立川君となら、立川君の方が背が高かった。
でも、今の僕と立川君、それに他の奴等を見ても、みんな同じくらいの背丈になっていた。
だから僕は、今なら立川君にだって勝てるかも知れないと思った。
気が付くと僕は、立川君と掴み合ったり引っ掻きあったりと、まるで女の子同士の喧嘩になっていた。
元気:
「なによぉ! アンタが悪いんでしょ!!」
立川:
「グズグズしていた稲見が悪いのよぉ!!」
赤木:
「ちょっと、やめなさいよアンタ達!!」
馬場:
「そうよ! 今そんな事をしていたって、何も解決しないでしょ!!」
元気と立川:
「!!……」
何時しか、僕達の言葉遣いまでもが、女の子をしていた。
それに気付くと、こんな事をしている場合じゃないと悟り、僕達は元に戻る方法を考える事にした。
だが結局、思いつくのは、もう一度スマホを使って女に成る前と同じ事をする事だけ。
また、あの得体の知れない者(謎の声)に遭遇しなければならないのかと思うと正直怖くなるのだが、
今は、その方法しか元に戻る方法など無いと、みんな感じていた。
立川:
「じゃぁ、さっきと同じ事をするっていうの?」
元気:
「そうよ! だって、アイツ(謎の声)が私達を女にしたのは間違いないでしょ?」
立川:
「そ、それはそうだけど」
稲見と赤木と馬場:
「!!……」
その時、誰もが気付いた事があった。
さっきまでは、立川君は以前のイジメっ子を思わせる刺々しい話し方だったのに、
今は、普通の女の子っぽく、そして以前よりも気弱になっているようにも感じた。
だが僕は、そんな事になど構う事をせず、僕がみんなを指示し、
また稲見君を中心に囲んで、スマホを右手に持ち、みんなに同時に稲見君に電話をかけるように合図をする。
元気:
「みんな、いい?」
みんな:
「うん!」
元気:
「じゃぁ、いちにのさん!!」
「「「「ピッ!」」」」
僕の合図とともに、みんな一斉に発信ボタンを押した。
でも、なぜかさっきと同じ事が起こらなかった。
稲見君のスマホに繋がったのは、立川君の電話だった。
あの謎の声ではなかったのだ。
稲見:
「繋がった!? も、もしもし?」
立川:
「はい!」
稲見:
「え?…た、立川君?」
元気と赤木と馬場:
「!?」
立川:
「そんな」
みんな:
「……」
結局、その後何度も試したのだが、あの謎の声を聞く事はできなかった。
仕方なく僕達は、このままの姿で家に帰る事にした。
でも、家に帰って家族が今の僕を見たら、何て言うだろうか? それが心配だった。
他の連中も、それが心配だと言って、肩を落として帰っていった。
そして、家に着いたのだが
⋯━☞自宅☜━⋯
カチャ!
元気:
「ただいま」
僕は、そっと玄関のドアを開けた。
そして、音がしないように静かにドアを閉める。
パタン!
{{{ズズン}}}
元気:
「!!……」
僕の家は、けっして古いわけじゃない。
でも、どんなに静かに玄関のドアを閉めても、一階のリビングにまで、
ドアを閉めたときの衝撃が伝わり、音など聞こえなくても、誰かがドアを閉めたと必ず気付かれてしまう。
案の定、母親に僕が帰って来た事に気付かれてしまった。
母親は、少し怒った風な顔をして、スリッパをパタパタと鳴らして玄関まで走ってきた。
パタパタパタパタ
母親:
「んもぉ! こんな時間まで、何所へ行ってたの!?」
元気:
「ご、ごめんなさい!!」
母親:
「女の子が、こんな暗くなるまで遊び呆けてるなんて!」
元気:
「えっ!?」
母親は、今までと変わらず、帰りが遅くなった僕を叱った。
でも、その時母親は確かに言った。 僕に向かって『女の子』と。
僕は、混乱した。 絶対に、男のはずの僕が女に成っているのを見て、驚くか別人だと思うかと思っていた。
なのに、何も無かったかのように、母親は女の子に成ってしまった僕に向かって、平然とそう言ったのだ。
あたかも、僕が以前から女の子だったかのように。
元気:
「……」
母親:
「なぁに? そんな間の抜けた顔しちゃって! ほら、さっさと上がりなさい!!
もうすぐお父さんも帰ってくるわよ! 叱られないうちに、お風呂に入っちゃいなさい!!」
元気:
「は、はいっ!!」
タッタッタッタッタッタ
僕は、訳が解らずままも、自分の部屋へと向かった。
すると、今までの自分の部屋とはガラっと様子が変わってしまっていて、
目に入るもの全てが女の子の物へと変わっていたのだ。
⋯━☞自宅の自室☜━⋯
元気:
「これは!?」
僕は、益々混乱した。
それと同時に、僕の他に女の子に成ってしまった連中の事が気になったので、
先ずは、稲見君へ電話をかけてみた。
元気:
「あ、稲見君? わたし僕、佐田だけど。 そっちじゃ、どうなってる?」
稲見:
「それが誰も気付いてくれないのよ。 それに、私の事を『サキ』って呼ぶの! 私の名前は、『サトシ』なのに。」
元気:
「ぇえ!? じゃぁ、他の人達は?」
稲見:
「うん。 馬場君に電話してみたんだけど、やっぱり誰も気付かないみたいだったって!」
元気:
「!!うぅ~む。」
どうやら、僕達5人は、以前から女の子だった事に成ってしまっているようだった。
これじゃ、僕達は以前は男だったなんて、証明する事も出来ない!
これから、どうしたものか?
違和感が、少し形を持ち始めました。
次回、選択が物語を動かします。




