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ルイーズとの出会いを果たしてから1か月、アルバートの誕生パーティーがやってきた。
俺は一昨日に届いたばかりの服に身を包み、母さんによる最終チェックを受けている。
「流石私の子!」
この頃はウサギや鳥ではなく、鹿や魔物退治までをこなすようになった母さんは、側室と言うよりも僧兵に近い井出達である。
そんな母さんから流石私の子!とか言われると、将来は冒険者とか僧兵を目指した方が良いのかな?なんて思えてくる。
いやいや、俺は光属性持ちなんだから、リリアンナなんぞがいなくてもこの国の防御壁を維持できる位には光の魔力を強化しなきゃならないんだ。
今はまだ年老いた聖女が老いた身体に鞭打って祈りを捧げていて、足りない魔力を魔塔にいる光属性の何人かが交代で魔力供給をしているんだけど……魔力供給で維持ができるんなら、別にリリアンナがいなくなってもルイーズでもいけたんじゃないのか?
なのに、隣国の王太子と結婚してこの国からリリアンナが出た途端に国中で災害が頻発するようになったのは偶然?
聖女に限界が来たのかもな。
「お待たせ、迎えに来たよ!」
エントランスでアルバートのお付きか騎士が迎えに来るのだろうと待っていると、まさかのご本人が直々に迎えに来た。
誕生日を祝うパーティーで、パートナーとなるご令嬢ではなく弟をエスコートしようなんて……でも、折角迎えに来てもらったんだし付いて行こう。
王子と一緒なら暗殺部隊も動き難いだろうし、本館の使用人たちの嫌味の声も大人しいだろう。
それに……アルバートがリリアンナをエスコートするなんて大惨事が避けられる。
よし、ならば予防線を張っておこう。
「兄様と入場できるなんて嬉しいです!これからも毎回兄様と一緒が良いです!」
こう言っておけば、少なくともブラコンが発動している間はエスコートする人物として俺が候補に上がるはずだ。
「アルケイン……なんて可愛……嬉しいことを言ってくれるんだ!」
流石ブラコン、弟の言葉に対する肯定感が酷い。
これ、もしかしたら「リリアンナとは婚約しないで」って言えば聞いてくれる可能性もあるんじゃないか?
でもな……第2王子である俺がリリアンナは止めろと言ってしまったら、アルバート以外の人間には「リリアンナと婚約すると第2王子にとっては都合が悪い。つまり勢力うんたらの関係で王太子の地位をうんたらで王位継承権を狙っているのではー」とかなんとか深読みされて、むしろリリアンナとの婚約が原作よりも早くに進められる可能性がある。
まずは一切王位に興味がないと示さないと、なにを言っても逆効果になりそうだ。
まぁ、俺の支持者がいるとも思えないし、今のところアルバートはブラコンではあるけど優秀だ。
後は俺を暗殺しようとしている王妃が下手をうって黒幕だとバレさえしなければ、アルバートの未来は明るい。
この際だから大々的な場面で将来の夢は冒険者になることーとか、魔塔で魔法の研究をしたいーとか無邪気に発表するか?
夢を語るくらいなら第2王子という肩書が外されることはないだろうし、ルイーズを立派にする期間は王族の一員として過ごせる……筈だ。
「どうしたんだい?疲れた?馬車を用意する?」
本館までの道すがら、黙ったままの俺を気遣ったのかアルバートが歩みを止めて覗き込んできた。
「……兄様は、僕が……例えば旅に出たいと言ったら……」
「駄目だ!そんな危ないことさせられないよ!どうしてもというなら一緒に行くからね!何処に行きたい?」
うん、想像以上の過保護っぷり。
これじゃあ少なくとも冒険者になりたいと発表するのは、アルバートのブラコンが治ってからになりそうだ。
なら、何処に行きたい?と聞かれた手前、物凄く近場を答えておこう。
「また一緒に市場に行きたいです」
これからもちょくちょくルイーズと会いたいし、俺が潰そうと思っていたリリアンナによる地球の知識披露をルイーズに発表してもらって、そのままルイーズの功績にするのも悪くないし、遊びの一環として社交界レッスンを教え込むのも悪くない。
だとしたら、外見は僧兵にしか見えないけども社交界のルールとか作法を一通りマスターしている母さんに教育を頼んでみる?
でも、ルイーズのノビノビとした性格を考えると王族になるより商人として成長した方が良いんじゃないだろうか?
原作最大の被害者であるルイーズを再びアルバートの妻にしようとしている俺の行動は正しいのだろうか?
いや、ルイーズは将来商売がうまくいったことで男爵令嬢となる身だ。
平民上がりだといじめを受けることは目に見えてるんだから、それを回避させるためにはアルバート関係なくデビュー戦までにある程度の教養を身につけておくことが重要。
その武器を整える時期は、早ければ早い程良い。




