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第61話 誤配線

 僕と美咲さんから発せられた虹色に輝く光が消え、室内は元の静寂と色を取り戻した。


「一瞬だったけど……凄く綺麗な光だったね……なんだか胸がぽかぽかしてるみたい……」


 うっとりとした表情を浮かべて、美咲さんがしみじみと呟いた。


「美咲さんも? 僕も胸というか……全身が熱く感じるよ。聖合の効果だと思うんだけど……美咲さん、ステータスボードを確認してみて」

 

 促された美咲さんが目前の中空に視線を動かすと、驚きの声をあげる。


「え!? スキルが……何もなかったスキルが!? 新しく使えるようになってる!? ……聖域展開(サンクチュアリ)、回復魔法、支援魔法、神聖魔法……凄い……今まで何をしても全然魔法が使えなかったのに……」


 感極まった声には涙も交じり肩を震わせていた。


治癒師(ヒーラー)が覚える魔法に加えて神聖魔法とは……凄いですね……流石は聖女といいますか……ミサキさん、おめでとうございます」


「ぐすっ……ありがとうルナちゃん……」


「ますます私もうかうかしていられませんね……もっとタクミ様のお役に立てるように頑張らなくては……」


 小さくそう呟き、ぐっと両拳を固く握るルナ。かわいい。


 対抗意識を燃やすのは良いけど……二人とも仲良くしてくださいね? 頼みますよ? 


「良かったね、美咲さん。おめでとう。僕も神眼がパワーアップしたみたいで、前よりももっとよく見えるようになったよ。どうやら美咲さんは今までは『聖女』としてのリソースの全てを聖域展開(サンクチュアリ)に強制的に使われていたみたいだね。それが聖合でちゃんと整えられて、本来の力を発揮できるようになったようだよ。


聖域展開(サンクチュアリ)は、範囲指定、強度指定、域内浄化、任意の対象に聖属性付与ができるうえにちゃんとオン・オフで展開できるって書いてあるよ……ひょっとしたら……僕のせいで美咲さんに不便をかけていたのかもしれない……ごめんね」


「ううん、巧君は何も悪くないよ。私達はちゃんと同じところに召喚されたんだし……悪いのは巧君を追い出したゼニス王国でしょ」


「そう言ってもらえると僕も気が楽になるけど、たくさん苦労しただろうから……」


「大丈夫よ。……これからは二人で一つなんだし……」


 美咲さんはぽっと頬を染め、声がだんだん小さくなりながら答える。


「うん、これからは僕もすぐ側にいるし、三人で頑張っていこうね! それから魔法を使えるようになったならそのままでもいいかもしれないけど……美咲さんのことも整合できるようになったから、自由にステータスを割り振れるようになったけど変更してみる? 何か希望があるなら教えてね」

 

「整合って巧君が自分のステータスを自由にできるチートなやつだよね。……そっか……それなら一度全ての数値を平均的にバランスよく変えてもらおうかな。『ホワイト』無双をやりたいのは本当のことだし、少しは前衛っぽいことも慣れておきたいしね」


「了解! 全部平均的にだね。それでは再びちょっと失礼して……」


「あんっ……また触るの?」


「こうしないとできないから……嫌かもしれないけど……ごめんね」


「ん……いやじゃ……ないよ……」


 恥じらいながらピクピクする美咲さんが超かわいい。危うく目的を忘れそうになるとは……整合とはなんて危険なスキルなんだ……


 目を凝らして美咲さんのステータスボードの各種パラメーターに意識を集中して操作していると、美咲さんの肉体の中に心臓付近から虹色の円筒形が伸びているのが透けて見えた。


 んん?? 何だこれは?


 伸びた先では、頭のてっぺんから尾てい骨にまで一直線に貫く虹色の光の柱と繋がっている。


 更に目を凝らすと、円筒形は七色の線で構成されているみたいだ。藍色と紫色の線が凄く太く、青の線が中くらい、緑がそれよりやや細く、赤、橙、黄色の線は凄く細い。


 

 ――――――――――――――――――――


名前:白石 美咲

種族:人間

魂の位階(レベル):51(2→0)

筋力:2→10

耐久:2→10

敏捷:3→10

器用:6→9

知覚:10→10

知力:19→10

精神:20→10

運 :4

歪み耐性:6→1


職業:聖女

職業熟練度:4


スキル:聖域展開、アイテムボックス、言語理解、移動支援、歪み耐性、回復魔法(レベル1)、支援魔法(レベル1)、神聖魔法(レベル1)


装備:白の堅杖

  :アイアンボアの胸当て

  :アイアンボアの帽子

  :アイアンボアのブーツ


称号:ダンジョン攻略者


 ――――――――――――――――――――


 訝しみながらステータスボードを操作して整合を終わらせると……肉体の中の七色の線がぐにぐにと変化し始めた。どの色の線も中くらいの太さになり、ピタリと変化が落ち着いた。


 ??


 ひょっとして、と思い自分の肉体にも目を凝らすと神眼モードの僕自身は青、藍、紫が太く黄色が中くらいで残りが細い。


 これは……一本一本がステータスの七つの項目に対応しているのか?


「終わったよ。美咲さん、これで良いか確認してみて」


「わっ、本当にステータス値が変わってる!? うん、これで色々試してみるね! 凄いよ巧君! ありがとう!」 

 

「どういたしまして! これで物理攻撃も十分強くなっただろうから、鍛えまくって美咲さんの望み通り物理と回復に特化した修道僧(モンク)を極められるといいね!」


「楽しみだわ」


 ロールプレイを楽しむ第一歩がやりやすくなったことで美咲さんは実に嬉しそうだ。


 ふとルナはどうなんだろう、とルナの胸も神眼で凝視してみた。ステータスボードが胸元に浮かぶのと同時に、肉体の方にも虹色の円筒形――七色の線――が透けて見える。


 あれ? おかしいな? 


 何度もまばたきをして目を凝らす。


「ルナ、ちょっとじっとしててね」


 やっぱり……何か……違う?

 

 これは……心臓から延びてる線がねじれている……のか?


 自分や美咲さんと何度も見比べると、心臓から出ている赤色の線のつながる先が正中線上では藍色の位置に、橙色の線が青色の位置に、黄色の線が紫色の位置にずれてしまっていることに気付いた。


「今まで見えていなかったけどおかしな部分が見つかったから、ちょっとルナも整合してみるね」 


 ルナに許可を取ると、きょとんとしながらも了解してくれたので、何度か整合してみると、ぐにぐにと線の太さが変わって細くなったり太くなったりはするが、ねじれはそのままだった。


 自分のステータスボードでも何度か数値を動かしてみると、どうやらステータスボードとの対比で確認できた組み合わせがあり、

【筋力】赤

【耐久】橙

【敏捷】黄

【器用】緑

【知覚】青

【知力】藍

【精神】紫

となっているようだ。


 そしてルナのねじれた線の繋がりを放置するのはあまり良くないように感じるが、ステータスボードをいくらいじっても問題解決にはならなさそうだった。


 だが……今の自分にならなんとかできそうだと直感が働く。


「ルナ、今からルナの界理(ロゴス)に直接触れて、ねじれてしまっておかしくなっているところを正常にすることを試させて欲しい」


「……タクミ様が必要だと思われるならば、どうぞ遠慮なくお願いします」 

 

 僕を一心に見つめる眼差しに、怖れは全くない。厚い信頼に感謝しつつ、界理(ロゴス)の外科処置を始める。


 間違いがないように上半身裸になってもらいベッドに座ってもらう。よりクリアに見えるようにして、ルナの界理(ロゴス)の核である心臓部分に手を伸ばす。


 しかし……当然と言うべきか、大きな胸に邪魔されて身体の中にまでは手が届かない。


 ……答えはすぐそこにあるような気がするんだけど……


 もどかしい思いに、全身からじっとりと汗が出る。


 そうだ!


 迷宮の赤ちゃん(ベビーダンジョン)で神眼モードを全開放した時の虹色を耳に移せた感覚を思い出し、虹色が右手に移るように強く念じるも思うように眼から虹色を動かせない。


 あの時はできたんだけどな……あっ!


「美咲さん、今すぐ僕に『だ〜れだっ?』ってやってくれません?」


「? いいわよ? だ〜れだ?」


 僕の背後にまわった美咲さんが僕の両眼を優しく覆う。


「そのまま顔と身体から手を離さずに、右目から右手に導いていってくれるかな?」


「オッケー」


 美咲さんに視界を遮ってもらい、手の温もりをガイドにして虹色を移すように念じるとゆっくりと右手に虹色が移っていった。


「よし!」


 今の感覚を忘れないように……そのまま虹色をズブズブとルナの体内に侵入していく。


「!? た、タクミ様!? なんだか……とても温かいのが……わ、私の中に……くぅ……ん……入ってきています!?」


 肉体を透過し、魂の深淵に触れるような不思議な弾力が、虹色を通して指先から手のひらへと伝わってきた。


 左目の神眼でルナの体内を凝視しつつ、患部全体を、右腕から溢れさせた虹色で包み込む。


 虹色で包み込んだまま赤色と藍色をねじれないように正常な位置に繋ぎ直す。


「あああぁぁぁ!?」


 ルナから叫び声が漏れるが、身体に障害が残るような深刻な事態ではなさそうだ。慎重にルナの容態を確認しながら、橙色と青色、黄色と紫色をそれぞれ順番に繋ぎ直した。


「ん~~〜!?!?!?」


 ルナ自身の界理(ロゴス)が一瞬虹色に強く光り、声にならない声をあげるとがっくりとうなだれた。  


「ルナ!? だ、大丈夫!?」

 

 処置が終わったので患部全体を覆っていた虹色をゆっくりとルナの体内から右手に戻すと、数秒の静寂の後、ルナが目を覚ました。


「……大丈夫です」


 ぼーっとした顔付きながらも、はっきりと受け答えをしてくれた。


「……身体が……凄くスッキリしました」


 ルナは立ち上がると全身を動かして力強く宣言した。


 神眼でじっくり観察すると七色の線は問題なく正常な位置に収まっており、ステータスボード上にも異常はない。


「ほっ……良かった」


「身体から余計な力みが完全に消えた感覚がします。タクミ様……ありがとうございました」



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― 新着の感想 ―
こんばんは。 つまりルナはアレですかね? レトロゲームの本体で例えるなら『ゲーム機から伸びた映像出力のケーブルが、テレビ側の音声出力に挿さってた』みたいな、間違った場所に接続してた→今回正しく接続し…
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