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第59話 聖女と整合師

 チュンチュン……チチチ……


 小鳥のさえずりが遠くに聞こえ、一条の光が顔に当たり目が覚めた。


 右腕に少しの重みを感じつつ、まどろみながら身をよじると左手に柔らかい感触が訪れた。


「ぁん……」


 幸せな手触りに目を開けると、雨戸の隙間から差し込む朝日に照らされた美咲さんの艶めかしく豊かな双丘があった。


 昨夜の愛しさ溢れる深い交流をまざまざと思い出し、思わず笑みがこぼれる。


 身体の調子を良くするための整体目的とは違い、愛し合う目的で初めて触れた美咲さんの敏感な反応がかわいらし過ぎて……とても優しいだけではいられなかった。


 ……少し無理をさせちゃったかもしれないな……あの透き通るようなソプラノボイスで、誘うように熱っぽく甘い声を上げられたら……たまらなくなるのは仕方ないよね。


 美咲さんは僕の腕枕の上で、まだすやすやと寝息を立てている。目が覚めていないようなので、ムクムクと湧き上がるいたずら心のままに彼女の瑞々しいプルプルの唇に優しく優しくキスを落とす。


 ちゅっ……


 ……何回で目を覚ますかな? 


 ……ちゅっ……ちゅっ


 ……ちゅばっ……早くも返答があった。両手で僕の頬を押さえた美咲さんと目が合うと、ホッと、大きなため息が聞こえた。


「……良かった……夢じゃなかった……んっ」


 せっかくの幸せな夜を夢にされたら困るので、長い目覚めのキスをじっくりと堪能する。


「ぷはっ……巧君ってけっこういじわるなのね……朝からこんなにエッチなキスをするなんて……」 


「そうかな? ……あ……()は大丈夫? 今、辛かったりする?」


「え? うーん、少し痛いし、まだ何か挟まっているみたいな感覚はあるけど……平気だよ? 昨日の夜は……時間をかけて全身をたっぷりと蕩けさせられちゃったから……全然辛くないし……むしろ気持ち良すぎちゃうし……私、自分の体があんな風になっちゃうなんて知らなかった……ってもう! 巧君のばかっ! すけべっ! なんてこと言わせんのよ!」


 怒られてしまったので、唇をふさいで黙らせる。うん、むくれた顔も超絶かわいい。


「……巧君はどうだった? その……私……ちゃんとできてた?」

 

「……控えめに言って、最高でした」


「そ、そうなのね」


「うん。僕はほら……日本では目が見えなかったから、美咲さんの女優としての姿は分からなかったけど、ラジオから流れる美咲さんの声は毎回楽しみに聞かせてもらっていたんだよ。美咲さんの声の大ファンだったんだけど……いつもは凛とした可憐な声でかわいく反応されたり、色々言ってもらえたりするのはもうね……すっっっごく興奮した!」


「…………言わないで…………」


 昨晩のことを思い出したのか聞きたくなかった、というように両耳を押さえてイヤイヤと恥じらう美咲さんが……とてもいい……


 そして隙をさらしたプルンと揺れる山と谷間に僕の目は釘付けになってしまう。


 そう、今の僕は耳だけでなく目でも楽しめるのだ。五感で味わう美咲さん。……愛しくてたまらないね。


 …………おっと欲に負けて大事なことを忘れるところだった。……神眼モードを全開にして、と……


「やん」


 美咲さんの胸を凝視して、おもむろに左胸に手を添える。


「……ん……あ……今からするの? も、もう朝だからルナちゃんが来ちゃうよ……」


 ヤバい、美咲さんの甘い声に目的が変わってしまいそう……


 気をしっかりと保って、神眼に映る美咲さんのステータス欄の憎き『移動支援』スキルに照準を合わせて……


 消えろ! 


 強く念じる。


「んぁ……だめ……だってば……」


 頼む……消えてくれ!


 強く強く念じ、触れている右手に力が入ってしまう。


 必死に移動支援スキルよ消えろと念じていると、『オン/オフ――削除』という項目に変化した。


 出た! 


 削除ぉぉぉ!! 




 ポチッとな。




「っん!? ん~~〜」


 削除ボタンを押したとたん、美咲さんの背が弓なりに跳ね、盛大に声が上がる。そして美咲さんのステータスボードの中から『移動支援』というスキル名自体が完全に消えた。


「……はぁはぁ……」


 ふぅ~。良かった。移動支援スキルめ!


 やってやったぜ。


 これで……移動支援スキルを妨害する僕の『制交』スキルも使わなくて良くなる!


 自分のステータスボードをいじり『制交』スキルをオフにすると、美咲さんを包んでいたスキルの膜が消え、そこに流れ続けていた僕の魔力も途絶えた。


 ――軽い。


 ずっと背負っていた重石を下ろしたかのように、全身が軽くなった。


「ふうぅぅ……」


 ……これで一安心だ。今後、たとえ僕に何かあったとしても……美咲さんはもう完全に自由だ。


 トロンとした瞳の美咲さんと目が合う。


「美咲さん……もう大丈夫だよ」


「……はあはあ……え? ……なにが?」


「たった今、僕の整合スキルで美咲さんの移動支援スキルを完全に消すことができた」


「えっ? えっ? ……どういうこと?」


「実は僕には『性交』っていうスキルがあってね……精神と肉体が深く交わることによって魂の回路(パス)を構築することができるそうなんだ。そうなると自分だけではなくて魂の回路(パス)が繋がった人も『整合』することができるみたいなんだよね」


「……性交……って……」


 ポカンとした顔の美咲さんに、ルナとの関係で確かめたスキルと、美咲さんを守り続けるかわりに魔力を垂れ流し続けていた制交スキルのことについて説明した。


「美咲さんはもう、ゼニス王国の鎖から完全に解き放たれたんだよ……そういう訳だから、僕も魔力枯渇に悩まされずに済むので今後は元気いっぱいです。これで僕が足を引っ張ることもなくなるし、安心して旅ができるね!」

 

「……そんな大事なこと……どうしてもっと早く言ってくれなかったの?」


 今にも泣き出しそうな顔になった美咲さんがぽつりと呟く。


「……移動支援スキルの削除と引き換えにやらせろなんて……言えないよ。他人の整合はルナしかやったことがないから、必ずできる保証もなかったし。……僕が頑張って『制交』スキルの魔力を負担していればなんとかなっていたんだし……」


 正直な気持ちを口にすると、美咲さんは驚いた顔で一瞬固まった。そして彼女の大きな瞳から、ぽろりと涙がこぼれ落ちる。


「……もう……ばか! 巧君のばか!」


 美咲さんは僕の胸に顔を埋めると、子供のように声を上げて泣き出してしまった。僕の肩をぽかぽかと叩いてくる。


「私のために……そんな事をしてくれていたなんて……どれだけ私をっ……」


 肩に押し付けられた顔の熱さと、胸元に染み込んでくる涙の感触。


 彼女が僕のことを想ってくれているのかが、言葉以上にその震える肩から伝わってくる。


「……ずるいよ巧君……付き合う前からそこまで大事にされてたら……嬉しくて涙が止まらないじゃない……」


「美咲さん……結婚するんだからこれからはもっともっと大事にするからね」


 僕の腕で優しく背中を覆い、美咲さんが落ち着くまでそっと抱きしめ続けた。





 

 落ち着いた後に二人揃って朝の身支度を整える。


 そして朝のルーティンで自分のステータスを改めて確認したところ……


聖合(せいごう)】というスキルが新たに生えていた……

ついに美咲さんと結ばれ、二人は自由を得ました〜♪

ここまで思いの他長くかかってしまった(^_^;)


「面白かった!」

「続きが気になる、読みたい!」

「巧とルナ・美咲はこの後一体どうなるのっ……!?」


と思っていただけましたら、


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