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第52話 コアルーム

迷宮の赤ちゃん(ベビーダンジョン)では!?」


「「迷宮の赤ちゃん(ベビーダンジョン)?」」


「はい。またの名を幸運のダンジョンと言います。もしここが迷宮の赤ちゃん(ベビーダンジョン)だった場合、ここはもう既にダンジョンの中であり、この場こそがダンジョンのコアルームであるはずです」


「え? ダンジョンに入ったばかりなのに? コアルームってダンジョンの最奥にあるんじゃないの?」


迷宮の赤ちゃん(ベビーダンジョン)ですから。文字通り出来立てほやほやのダンジョンです。ダンジョンモンスターもトラップも存在せず、それでありながら……流石はダンジョンコアらしく膨大なエネルギーを蓄えているそうなのです。


そのコアを破壊すると……なんとですね、赤ちゃんでありながらもSランクモンスターの討伐相当の経験値を取得できる上に、ダンジョン攻略者の称号も手に入るそうなのですよ!」


「それは凄いね! まさに幸運のダンジョンだね!」


「それを見つけることが出来るなんて巧君の神眼って本当に凄いわね!」


「流石はタクミ様です!」


 二人のよいしょが凄い。警戒モードから一転、一気にお祭り騒ぎだ。いや、でも実際に見つける事ができた以上、僕らが幸運なのは間違いない。ワッショイワッショイ!


「コアルームってどれぐらいの広さなんだろう」


「だいたい十メル四方だという話ですよ」


 白いモヤがかかっていて、ほんの少ししか先の見えないダンジョンのコアルームと思しき場所を全員で慎重に進んで行くと……すぐに台座の上に鎮座する、バレーボールほどの大きさの灰色の水晶玉のような物を発見した。


「これがダンジョンコアなのかな?」


「たぶんそうだと思います」


「巧君! コアを見て! 時々チラリと虹色に光っているわ!?」


「ほんとだね」


 ダンジョンコアがあるコアルーム。ここはダンジョンの中で間違いないようだ。ダンジョンコアが急に活発になったのかもしれないけれど、ここはすでに喉元に刃物を突きつけている状態。


「いざとなれば、コアを即破壊できるので危険はないでしょう」


 となれば……『制交』スキルで常に不足している魔力をダンジョン内で寝て、一度満タンにまで回復することができそうだ。


 美咲さんの魂に紐付けされている憎き『移動支援』スキルはダンジョン内から外には発信できない。ダンジョン内では移動支援スキルを封印するために常時展開している『制交』スキルをオフにすることができるからね。


【制交】――対象から発せられる界理(ロゴス)の信号と外部との「交信」を強制的に「制御」し、情報の把握を不可能にする能力。情報の読み取りを制することで、信号を無効化、あるいは誤った情報を受信させる。


「ルナ、美咲さん、悪いんだけど、ダンジョンコアを壊すのは少し待ってもらって、数時間ここで眠らせてもらっても良いかな?」 


 ルナが僕の方を見てこくりと頷く。美咲さんはきょとんした顔で首をかしげ、僕を見てきた。


「え? わざわざダンジョン内で寝るの? それなら早くコアを壊して宿屋に全速力で向かった方がいいんじゃない?」


 ……もっともな意見だけど……


「僕がもっているスキルの中で、ダンジョン外で魔力を消費して常時展開するスキルがあってね、ダンジョン内ではそれをオフにできるから、完全に休めるのはダンジョンの中だけなんだ」


 真実を言ってしまうと、美咲さんに気を使わせてしまうので、少しぼかして説明した。


「ふーん、そうだったんだ。……あ、だからいつも夜になると倒れるように寝ていたのね。知らなかったわ。そういうことなら、何時間でも休んでちょうだい」


「ありがとう。それじゃあ早速休ませてもらうね」


 アイテムボックスから寝袋を取り出し、外套を下敷きにして床に直接寝ようとしたら、美咲さんから待ったがかかった。


「え? 巧君それで寝るの?」


「そうだけど……他に何かある?」


「え? ダンジョンで寝るといったらこれじゃないの?」


 美咲さんが自分のアイテムボックスからベッドを取り出した。……そうだった。美咲さん達は国を挙げてのダンジョン攻略部隊だったから……テントの中で立派なベッドに寝るのが標準仕様だと言ってたっけ……なんとセレブなダンジョン攻略……


「残念だけど僕はベッドを持っていないから……」


「じゃあ私のを貸してあげるからこっちで寝てよ。そのほうが絶対に疲れが取れるから!」


「ね、寝袋で寝るから平気だよ!?」


「だめよ! 疲れが取れなかったら意味ないじゃない! ……あ!? それとも変な匂いがしたりする? ……それはやだな……」


 自分のベッドの匂いをくんくんと嗅ぐ美咲さん。


「うん、変な匂いはしてないはず。たぶん。……シーツは大量に持ってるから、毎日清潔な物に取り替えてるから大丈夫なはずだし……」


 うんうん、と一人で納得して一人で頷く美咲さん。


「巧君、準備できたから使ってね!」


 ポンポン、とベッドを叩きながら、とても良い笑顔で勧めてきた。……これは断りきれないな……


「あ、ありがとう。それじゃあ貸してもらうね」


 本当にいいんだろうか? 女の子のベッドで寝るなんて、なんとなくいけないことをしているような気分になってしまうな……靴を脱いで横になり上掛けをかける。


 あ……美咲さんの匂いがする。本人は自分の匂いだから気付いていないんだろうな、きっと。もちろん臭いとかそういう悪い匂いではない。女の子特有の甘い匂いだ……


 ルナがダンジョンコアにつきっきりになり、異常があればすぐにコアを破壊するようだ。美咲さんは僕の側でいざという時に起こす係りらしい。魔馬達もルナに言われて周囲を警戒してくれるみたいだね。


 ふと横を見ると美咲さんと目が合い、ニコッと微笑まれた。……えーっと……これはずっと顔を見られながら寝なきゃいけないのか? 眠れる気がしないんだが? ……普段からペロペロマッサージ中に寝落ちしてるから今更かな?


 美咲さんのいい匂いに包まれながら目を閉じると、さっきまでの思いとはうらはらに、すぐにウトウトしだした。……こんなにすぐに眠気が来るなんて……よっぽど疲れが溜まっていたのかな……





 




 どのぐらい寝ていたのか、ふと目を開けると灰色の空間の中で僕は立っていた。


 あれ……? ……寝ていたんじゃなかったっけ?


 灰色の空間の下には、更に十メートル四方ほどの白い空間があり、僕の目の前には、砂時計のように上からさらさらと何かが落ちて来ており、白い空間の上や周囲に降り積もっていた。

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