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第51話 赤ちゃん

 ホワイト無双の為の育成計画をわいわいと語り合った後、宿を出て厩舎に預けていたメイとラヴィを回収する。


「おはよう。メイ、ラヴィ」


「「ブルルル」」


 うおっと!? 挨拶なのか、ベロリン、ベロリンと左右から長い舌で顔面を舐められた。


「むぅ……タクミ様を舐めるのは私の役目だというのに……」


 そんな役目が本当にあるの? まぁ、いつも癒してもらっているから否定はしないけど……


 メイとラヴィの全身をチェックし、特に足周りを念入りに調べる。治療してから一晩たったけど、二頭の体調は問題ないようだ。


「良し! 今日もよろしくね!」


「「ヒヒーン!」」


 気合十分の二頭にまたがり出発の号令をかける。勇ましく号令はかけれども僕がやっている事といえば、振り落とされないようにルナの腰にしがみつくだけというのが、なんともしまらない。


「ルナ、僕も早く一人で乗馬出来るようになりたいんだけど……練習っていつから始められるかな?」


「メイもラヴィもタクミ様がご主人様だと認識しているみたいなので、この様子なら移動しながらでも練習できそうですね」


「ほんとに? 良かった!」


「二頭とも賢いですから、たぶん手綱を握って声がけするだけで、問題なく進路を走ってくれると思います。その中で少しずつ手綱捌きと馬と呼吸を合わせる事を覚えていきましょう。次の休憩の時にミサキさんの前に乗って早速始めますか? それとも私がラヴィに乗り換えて教えましょうか?」


「うーん……馬を乗り換えるのも、順番を変えるのも悪い気がするから美咲さんに教えてもらおうかな」


「わかりました。それでは合図の出し方を一通りお伝えしますので見て覚えてくださいね」


 ルナ先生のつむじを上から覗き込みながら、手綱捌きの座学……いやこれも実地か? 乗馬技術の見学が始まった。美咲さんにも声をかけて、練習しながら進むことを伝える。 




 乗馬の練習は精神力を養うというのは本当だった。


 なんと、移動中は常に二人のたわわちゃんが、交互に僕の背中を攻撃してくるのだ。どうしても意識が背中に集中してしまうのを、鋼の精神でもって手綱へと集中する。これが実に難しいということを思い知った今日このごろ。


 ルナなんて絶対にわざと押し付けて面白がってるだろ!? っていうぐらい押しつぶしてきていたからね。


 そんなこんなで乗馬の練習をしつつ西へ進むこと三日。三人で一部屋はもはや必須のようで……毎日のルーティンとして、僕の柔道技(立技・寝技)とルナの狼牙封禍拳の修練を三人で行い、二人への整体マッサージという流れが加わった。


 そしてルナのペロペロマッサージ中の僕のエネルギー切れによる寝落ち。


 気のせいかもしれないけど、ルナだけじゃなく、日に日に美咲さんの匂いが僕の体からも香ってくるようになっている気がする。これだけ一緒に生活すればそういうもんかとも思えるけど……寝起きが一番匂いが濃いのがなんとも不思議だ。


 今日も西へと街道を駆ける。メイとラヴィは本当にお利口さんなので、僕も一人でも乗馬が出来るようになった。でもたぶん他の馬だと、思うようにいうことを聞いてくれないんだろうな、というのもなんとなくわかる。慢心せずに練習を続けていこう。


「順調に進んでこれたので、明日の夕方には目的地のダンジョンに到着できそうですね」


 メイに騎乗中に、背中のルナが話しかけてきた。


「そうみたいだね。ダンジョンに入ったら安全地帯を探して数時間休ませてもらうね」


「はい。毎日常時スキルの発動お疲れ様です。その時は私がしっかり見張っていますので安心して休んでください」


「ありがとう……あれ? ルナ、左奥の茂みがなんか光ってない?」


「え? どこですか?」


「あそこだよ。ほら! 光ってるっていうよりは揺らめいてる? ほんとに見えない? ひょっとして神眼にだけ映っているのかな?」


 思わず声が大きくなってしまった。


「私にも見えないよ。巧君そのまま揺らめきの方に進んでみて。神眼にだけ見えている場所なんてわくわくするじゃない!」


「わかった。メイ左に行こう」


 神眼に映る揺らめきを頼りに街道から外れて左に進みしばらく進むと、茂みの奥に小さな泉があった。


「綺麗な泉ですね。ちょうどよいので休憩しましょう」


 光や揺らめきは水面の反射だったのかな?


 ルナの呼びかけに皆が頷き、馬から降りて泉に近付いた。


 ふっ、と全身に違和感を覚えた次の瞬間。


「「「え!?」」」


 僕らはみんな揃って、真っ白な空間に入り込んでいた。


「なにこれ!?」

「とにかく戦闘準備だ!」


 突然の事態に驚くが、三人で二頭を中心にして背中合わせにその場にかたまり、周囲を警戒する。しばらく警戒態勢のまま様子を見るが、真っ白なだけで特になにかが襲ってくるわけでもなさそうだった。


「……まさかこれは……幼い頃に噂で聞いた……出会うことはまずないと言われている幻の……『迷宮の赤ちゃん(ベビーダンジョン)』では!?」


 ルナの驚愕のつぶやきがやけに大きく耳に響いてきた。



 

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