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第50話 ロールプレイ

 ふわぁ〜。よく寝た!


 昨夜はルナにマッサージされながら寝落ちしちゃったんだっけ。意識がなくなる直前にルナと美咲さんが何か会話をしていたような気もするけど、全く覚えていないや。


 まぁいいか。重要なことなら僕にもちゃんと話してくれるだろうし……

 

 ん?……くんくん……


 なんとなく……ルナだけじゃなくて、僕の身体から微かに美咲さんの匂いもするような?……気がする?


 ……同じ部屋で寝てるから……そのせいかな?


 それにしても毎回倒れるように眠っているのに、やっぱり魔力は完全回復とはならないみたいだ。


『制交』スキルでの魔力垂れ流し状態のマイナス分を全て埋めるには睡眠だけでは足りないようなので、早く魂の位階(レベル)を上げて魔力総量を増やしたい。


 ルナと美咲さん、二人が眠るそれぞれのベッドからもゴソゴソと動く音が聞こえてきた。


「おはよう」

「おはようございますタクミ様」

「巧君おはよう」


 二人の身支度が終わるまでは、そちらを振り向かないようにしつつ自分の支度を終える。親しき仲にも礼儀あり、だからね。一日の中で一番気を使う時間帯だよ。


 シュルシュルという衣擦れの音に加えて、二人の息づかいまでが悩ましく僕の五感を刺激してきて困る。おっと煩悩退散、煩悩退散!


 意識を向けるだけで相手の姿形が丸分かりな能力を持つ身だからこそ、きちんと線引きをしないとね。おっと煩悩退散、煩悩退散!


 うーん、童貞だった頃は簡単だったのに、ルナの全てを知ってしまってからは、どうしても意識がそっちに引っ張られてしまう。


 あれ? ひょっとして三人一部屋が続く限り、ルナといちゃいちゃエチチな時間は永遠にやって来ないのでは?


 美咲さんを仲間外れにしているみたいになっちゃうもんね? ルナといちゃいちゃしてヤッちゃうと、きっと美咲さんの疎外感が半端ないよね?


 ということはこの先ずっと生殺し?


 今明かされる衝撃の真実!? 

 

 男女三人(パーティー)の恐ろしいワナにかかってしまったのか!?


 ミケさんが言ってたっけ、「歪界者(ヴァリアント)パーティーの解散理由の第一位は男女の痴情のもつれ」だって……


 早くゼニス王国から遠くに落ち延びて、護衛がいらない状態になればルナと二人部屋にしても良いのだろうけど、魔力枯渇は辛いから、ダンジョンでレベル上げ兼スキルをオフにしての休息もやりたい。


 アッチをたてればコッチがたたず。


 もどかしいな。


 ……ふー、なぜ僕は朝っぱらから脳内ピンク色全開で悶々としているのか。落ち着け巧! 煩悩退散、煩悩退散!


 あ、身支度が終わったっぽい。精神統一して頭からピンク色を抜こう。


「えーっと、昨日はルナの情報収集の結果を聞く前に寝ちゃってごめん。どうだった?」


「西への進路の途中に二つダンジョンがあるそうです。一つは中規模ダンジョンで多くの人が攻略しているみたいですね。もう一つは小規模で実入りの悪い人気(にんき)のないダンジョンのようです」


「昨日ルナちゃんと話し合ったのだけど……私達にとっては人気のないダンジョンの方が、人に会わずに済むから良いんじゃないかなと考えたんだけど……巧君はどう思う?」


「それで良いんじゃないかな。僕も賛成。今後のために少しレベル上げに時間を取りたいね。そういえば美咲さんは高レベルの割に全然スキルが育ってないよね。スキルは『聖域展開』ただ一つだけ。何か理由があるの?」


「……漬物石だったから……」


「え? 今なんて?」


「危ないからって何もやらせてもらえなかったの。私はそこにいるだけでいいって言われて……何もやらせてもらえなかった……私のダンジョンモンスター弱体化の力、聖域展開っていうんだね。それすら知らなかった……」


「多分他の人にはスキルが見えていなかったと思うよ。地雷スキル以外は白紙に見えていたんじゃないかな。それじゃあ今の美咲さんは何かやりたいことってある? 


僕は今まで握ったこともなかった槍を使う内に、槍術のスキルが生えてきたからね……今のうちに方針を決めてスキルが生えるように立ち回った方が良さそう」


「やりたいこと……か。……笑わないで聞いてくれる?」


「もちろん! 笑ったりなんかしないよ」


「私は嘆かない。私は祈らない。私が為すのは、世界の(ことわり)をあるべき姿に戻す、ただそれだけ。―—それが私、ホワイトの救済だ」

 

 なんだなんだ!? 美咲さんが突然見得(みえ)をきり始めたぞ!?


「神聖術と武術を極めた修道僧(モンク)の一撃を、その身に刻みなさい!――聖拳(セイントフィスト)!!」

 

 おー! かっこいい!


 流れるようなカンフーの型からの正拳突きのポーズがキマってる!


「っていうキャラクターなんだよね、『ファンタジー・サーガ(ファンサ・)ⅩⅤ(フィフティーン)』のホワイトは。職業(ジョブ)が僧侶系と武道家系をそれぞれマスタークラスで極めた修道僧(モンク)なの。主人公キャラ達の中でも攻撃と回復を自己完結できる使い勝手のいいキャラ!……あと……CV(キャラクターボイス)が私……」


「あ〜、その話、以前日本で施術中に話してくれた事があったよね」


「そうそう。巧君、覚えていてくれたんだ。なんか嬉しいな」


「美咲さんはエクササイズでジークンドーの道場に通っていたんだっけ?」


「ストレス発散と体型維持の為に週一でね。痣をつけるのはNGだったから、実は組手はやったことがないんだけれどね。ジークンドーの達人ポジの『カンフー刑事(デカ)』の役をやった時からだから、もう三年間続けているかな。


それもあって……無理やり転移させられたとはいえ、せっかく魔法がある世界に来てしまったのなら……ホワイトのロールプレイをやりたいの」


 置物扱いだった頃の無情な時期からの脱却として、役になりきって活躍したいという美咲さんの秘めた思いを聞いて……僕の胸にも昔感じていた、ある思いがこみ上げてきた。


 美咲さんをぎゅっと抱きしめる。


「美咲さん、辛かったですね……僕も昔、小学生ぐらいの頃までは目が見えないことを理由に、そこにいるだけでいいと言われて何もやらせてもらえなかったことがあります。


そうすると……僕なんて、いてもいなくてもどっちでもいい存在なのかと思えてしまって、凄く辛かったんです。もちろん僕のことを心配して優しさからそう言ってくれている人がほとんどでした。


でも駄目でした。人間って実存が大事なんですよね。人を頼りにして、頼りにされてっていう関係がないと……人生がとても虚しく感じてしまいます……」


 腕の中で美咲さんの肩が震えている。僕の服に、温かい涙がじんわりと染み込んでいくのを感じた。


「徳本整骨・整体院で働こうと決めてからは心が凄く楽になったし、実際に父のサポートとして患者さんやお客様との触れ合いを通して毎日がとても充実していたからね。幸い目が見えなくとも僕の施術は好評だったから、仕事もとても楽しかったし。


……美咲さんがホワイトになりきって、この世界で活躍するのを楽しみにしてるからね。頑張って! そのためのサポートもしっかりするから任せて!」


「もちろん私もお手伝いしますよ!」


 僕らの様子を静かに見つめていたルナも、僕の行動を肯定するように強く頷いた。


「……巧君、ルナちゃん、ありがとう」


 美咲さんの肩の震えがおさまったので、抱きしめていた体を離すと、美咲さんはハンカチでそっと涙をぬぐった。


「ふふっ、こんなに親身になってもらえたら、私、めいいっぱい頑張っちゃうんだからね! 魔力が暴走した時に一度だけすんごい治癒魔法が使えたから、頑張ればその内に聖女らしく白魔法系全般が普通に使えるようになるといいな」 


「魔法が使えないのは……『聖域展開』のスキルが何かしら関係しているのかもしれないね。グレーアウトしてるし。僕の神眼でもっと美咲さんのことが見えるようになったら、解決の糸口が掴めるかも」


「ミサキさんの物理攻撃は、取り敢えず杖術から狙っていくのが良さそうですね。そうすれば連動して少しは物理攻撃系のステータスも上がっていくでしょうから……その後折を見て体術を加えていくのはどうでしょう?」


 ホワイト無双の為の育成計画を、三人でワイワイと存分に語り合った。


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