第5話 トンネルの秘密
「ステータスオープン!」
脳裏にステータスボードが浮かんでいる。
名前:徳本 巧
種族:人間
魂の位階:2
筋力:3
耐久:3
敏捷:2
器用:6
知覚:6
知力:2
精神:3
運 :1
歪み耐性:1
・
・
・
これをこうすれば……
筋力:2
耐久:1
敏捷:6
器用:4
知覚:10
知力:1
精神:1
運 :1
歪み耐性:1
うわっ!?
凄い!
知覚を10に変更したとたん、反響音で探知した時とは比べ物にならないほどに、手に取るように周囲の状況がわかる!
見たことはないけど話に聞く、レーダー探知による3D画像化ってところだろうか?
ホブゴブリンウォーリア、なんて醜悪な顔をしているんだ。これは確かに人間じゃないな。
しかも恐ろしい形相で……危ないっ! 横薙ぎに斬りつけてきた!
だが、わかる! わかるぞ!
剣の長さも、軌道も、ホブゴブリンウォーリアの全身の筋肉の動きまでもがわかる!
しかも、思ったよりもスローモーションのように感じるぞ! 自分の敏捷を上げているのも効果的なのかもしれない。
多分、今の僕の筋力だと奴の剣を受け止めたりはできない。刃をかわすぎりぎりの位置どりで、一歩斜め後ろに下がる。
ホブゴブリンウォーリアの剣が空を切る!
返す刀で、後ろに下がった僕を斬ろうと、ホブゴブリンウォーリアが大きく踏み込んだその瞬間!
僕は踏み込んだ奴の左足が着地する直前に、全力で短槍で足払いをした。
あるはずの床を踏みしめることができなかったホブゴブリンウォーリアの巨体は、見事に宙を舞い背中から激しく床に叩きつけられた。
しかし、ホブゴブリンウォーリアは随分とタフなようだ。
すぐに起き上がろうと、床に片腕をつこうとしたので、その腕を躊躇なく払い、再び転ばせる。
僕の背後にいたルナは、既に動き出している。もう一度起き上がろうとした奴を転ばしたタイミングで、ルナがホブゴブリンウォーリアの首にショートソードを突き入れた。
「くっ、硬い!」
切っ先は刺さったが、それ以上は剣が進まないようだ。だが起き上がろうともがく奴の動きが鈍った。再びステータスを変更し、器用を1に筋力を5にしてホブゴブリンウォーリアの首に短槍を突き刺すと、あっけなくズブリと首を貫通した。
手に嫌な感覚が伝わってきたが、奴が使っていた剣を遺して、まもなくホブゴブリンウォーリアは消えた。そしてその体があった所には子供の握り拳位の一つの石が現れた。
「生きてる……私、生き残れたんだ……」
震える声でルナがぽつりと呟いた。
「ルナ大丈夫? 足、怪我しているんだろ? 僕が応急処置するから診せてみなよ」
ルナがあせあせとして手をふる。
「え!? だ、大丈夫です! 狼獣人はこんな怪我なんか舐めておけばすぐに治りますから!」
そう言って座り込むと、右足を抱え込むようにして足首をペロペロと舐め始めた。よくよく感知してみると、ルナはすり切れた粗末な服を着ている。
「大丈夫だよ、僕が勝手にやることだからお金は要らないからね。ほらみせて」
「で、でも……」
ルナの戸惑いを黙殺してしゃがむと、右足を触診した。
「あ……」
「うん、良かった。じん帯は深く傷ついていない。骨にも異常はなさそうだ。捻挫だね。……そういえば」
日本から着てきた施術着のポケットに入ったままだったテーピングを使って、足首をガッチリと固定する。
「はい、これで大丈夫。しばらくは安静にしてね」
「命を助けてもらったうえに、怪我の手当てまで……ありがとうございます。このご恩は一生忘れません! あの……良かったらお名前を教えてもらえますか?」
「ああ、ごめん。まだ名乗っていなかったね。巧だよ。徳本巧」
「タクミ……様」
「ははっ、様はいらないよ。大袈裟だなぁ」
「いえ! 命の恩人に敬意を払うのは当然のことです! 犬人種は特に恩義を大切にします。ご迷惑でなければ、助けてもらったこの命、一生従者としてお仕えしたいぐらいです!」
凄い勢いでぐいぐいくるな、この女の子。まるで尻尾をぶんぶん振っている愛犬みたいだ。って、実際にルナの尻尾がぱたぱたと揺れている。
戦闘中は必死だったから、あまり意識していなかったけど、狼獣人と言うだけあって、ふわっとした三角耳と、もふっとした尻尾が本当に生えているんだよな。目鼻立ちも凄く整っており、人気女優の美咲さんに勝るとも劣らない程だ。
「いや、大袈裟だって。命の恩人と言うなら、僕にとってのルナもそうだよ。僕一人だと、最初のゴブリンスカウト? あいつらに殺されていたと思う。それでも恩をっていうんだったら、少しの間でいいから、僕の知らないことを色々教えてくれないかな?」
「はい! 喜んで!」
さっきよりも大きく尻尾が揺れている。
「モンスターってなに?」
「モンスターとは人類にとって脅威となる生き物の総称です。 ダンジョンコアの『世界の歪みエネルギー』から生まれた、討伐すると魔石などを遺して消えるダンジョンモンスターと、ダンジョンとは関係なく、ダンジョン外で世界の自然な生態系の一部として存在する野生のモンスターがいます」
「歪みがどうのこうのって王様が言っていたな……それじゃあダンジョンってどういうこと? 僕はトンネルを越えて『歪みのない街』という所に向かっていたはずなんだけど……ここは一体どこなの?」
ぱたぱたしていたルナの尻尾が、ピタリと止まった。
「ダンジョンは世界の根幹となる『界理』が乱れ変質して産み出された『歪み』が凝縮した場所です。階層が深まるにつれて歪みの濃度が増し、出現するモンスターはより強力になります。
ここは『影の回廊』という初級ダンジョンです。出てくるモンスターのランクは低いのですが、初級といわれつつも、待ち伏せ、暗殺タイプのモンスターが多いので、私達みたいな鼻の効く獣人以外には人気のないダンジョンなんですよ……そして……『歪みのない街』とは死後の世界の事です」
「死後の世界? それってどういうこと?」
「……『歪みのない街』『歪みのない場所』などと呼ばれていますが、いずれも私達にとっては、安らぎに満ちた死後の世界だと言い伝えられています……」
ルナの声がわなわなと震えている。
「つまり……僕はここで死ねって言われていたってことなのか?」
案内人の兵士の奴ら!
それとも僕にあいつらを付けた王様やゼニス王国もグルなのか!?
やってくれたな!
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「巧とルナはこの後一体どうなるのっ……!?」
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