第44話 シンクロする吐息(美咲視点・ルナ視点)
――Side 美咲――
惚れてまうやろ!
なに!?
なんなの!?
あの映画のワンシーンみたいな巧先生の登場の仕方は!
死を覚悟した私の前に颯爽と現れて、絶体絶命のピンチから救い出してくれるなんて……かっこよかったよぉ!
最初から巧先生だと気付いてれば、もっとあのシチュに酔えたかもしれないけど……まあ、それどころじゃなかったしね。
なんだかんだで巧先生におんぶしてもらって、ダンジョン内を爆走している今も、まだまだドキドキが止まらない。
これがあの有名な吊り橋効果ってやつなのかしら?
こんなん絶対に……惚れてまうやろ!
突然のお姫様抱っこも思い出すとニヤニヤしちゃう。
はぁ〜落ち着かなきゃ。私は女優。決してチョロい女ではないはず。感情のコントロール位お手の物よ。そうでしょ美咲?
落ち着いて……ふぅ~……はぁ〜
……深呼吸したら巧先生の匂いを最大限に吸い込んでしまったみたい。……よき……ね。これも凄くよきだわ。くせになりそう。
違う違う、そうじゃない。いったん落ち着かないと……
そもそもね、そう、そもそも……
巧先生は私の外見や女優という記号ではなく、ありのままの『私』を感じてくれる人。目が見えないからこそ、巧先生との触れ合いには安心感があった。
優しく、仕事にも誠実で、目には映らない真実を見ている人間だと感じていたのよね。男性としても魅力的だったから、あの日、勇気を出して専属のお願いもしてみたんだっけ。……断られちゃったけど。
こんなにときめいちゃうなんて私は……やっぱり巧先生の事が好き……なんだろうな。いや、今までそうじゃなかったとしても惚れるやつだよ、あれは。物語の主人公とヒロインか!? っていうぐらい素敵だったよ。
はぁ〜……巧先生の背中……安心するな。
捕まる力が自然と強くなってしまい、今までよりぎゅっと体が密着した。
馬車では他の人の目もあるので、私達三人はほとんどの時間を無言で過ごした。私の前に座る巧先生とルナちゃん。
……それにしても、初めて見た時から薄々気付いていたけれど、明るいところで改めてよく見ると、ルナちゃんってとんでもない美少女だよね。もし日本にいたら、ナンバーワンのアイドルになれるぐらいのポテンシャルがあるよ。
加えて、もふもふ!
そう! もふもふの尻尾にケモミミ!
これはずるい! 正直羨ましいですよ、これは。なんてものを装備しているのでしょうか? 胸もかなり大きいしね。私負けちゃってるよ……
女優としての演技力対決なら私も負けませんけどね!
あれ?
馬車酔いなのかな? 巧先生がなんだかぐったりしているような?
「巧先生大丈夫ですか?」
「タクミ様大丈夫ですか?」
……ルナちゃんと見事にハモってしまった。
「うん……ちょっときついけど大丈夫だよ……」
大丈夫なら良いんだけど、少し心配だな。私を背負ってダッシュし続けてもらったのが悪かったのかしら?
ルナちゃんが甲斐甲斐しく巧先生のお世話を始めた。
……巧先生とルナちゃんの間からは……なんというか、甘い雰囲気がただよっているんだよね……二人はすでにお付き合いしていたりするのだろうか?
お願いして一緒に連れてきてもらったというのに、ひょっとして私ってとんでもないお邪魔虫だったりするのかな。
さっきまでテンション爆上がりだったのに、その事が頭をよぎってからは、テンションだだ下がりだよ……二人の関係を聞くのが怖い……
離れている間にこんな美少女と二人でコンビを組んでいるなんて……巧先生がひとりぼっちじゃなかったのは良いことだけど……ちょっと悔しいな……私の方が付き合いは長いのに……
私のもう一人の命の恩人だし、私が同行するのを快く受け入れてくれたルナちゃんには感謝しかないけど……
「「はぁ〜」」
?
なんだかわからないけど、ルナちゃんとため息までハモってしまった……恋人、もしくは恋人に匹敵するポジにいるルナちゃんにも、ため息をつきたくなるようなことがあるのかしら?
――Side ルナ――
西へと向かう馬車では他の人の目もあるので、私達三人はほとんどの時間を無言で過ごしました。私の前に座るのはミサキさん。いえ、ホワイトさんでしたね。うっかり人前でミサキさんと呼ばないように普段から気を付けておかなければいけませんね。
それにしても……改めてよく見ると……ミサキさんって同性の私が見てもクラクラ来ちゃうくらい美しいですね……なんかモスグリーンとミックスしてとてもいい匂いまでしてますし……
大人の女性特有の落ち着き、品のある立ち居振る舞い、タクミ様を見る柔和な笑顔。どれもこれも私には到底及びもつかない、凄く素敵な大人の魅力です。
タクミ様からミサキさんのことは少し聞いていましたけど……ひょっとして元カノさんだったりするのでしょうか?
タクミ様を見るミサキさんの目は、どう見ても恋する乙女のものですよね……仲間意識が高まります。
あれ? タクミ様また馬車酔いでしょうか?
「タクミ様大丈夫ですか?」
「巧先生大丈夫ですか?」
……ミサキさんと見事にハモってしまいました。
「うん……ちょっときついけど大丈夫だよ……」
うーん、何でしょうか? 今のタクミ様は以前の馬車酔いとは違うような気がしますね。後できちんと問いただして、タクミ様の状態をしっかり把握しておかなければ……
タクミ様の介抱をしている間にも何度もミサキさんと視線がぶつかります。こちらも気になりますね。
……もしも、もしもですけど……タクミ様がミサキさんの方が良くなったりしたら、私はポイッっと捨てられちゃったりするのでしょうか?
いや、タクミ様はそういう不義理なことをする方ではありませんよね……わかってはいるのですが不安になってしまいます。どうなったとしても……いざとなれば従者として、どこまでも憑いて行く所存なのは変わりませんが……
「「はぁ〜」」
?
なぜか、ミサキさんとため息までハモってしまいました……同性から見ても完璧な大人の女性であるミサキさんにも、ため息をつきたくなるようなことがあるのでしょうか?
第三章がスタートしました。第三章も引き続き応援よろしくお願いしますm(_ _)m




