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盲目の整体師は異世界でのんびり過ごしたい〜僕の整合スキル、なぜか性豪って呼ばれています!?美少女達にゴッドハンドを求められ、勝手にハーレムを作られて困っている〜  作者: 大木げん
第二章 迷宮都市ルボンド

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第38話 ターニングポイント

「安い安いよ〜! 出血大サービスだよ〜」


「ほらほら、そこのお兄さん! 九十階層突破記念にスペシャル串焼きはどうだ!?」


 普段は威勢のいい串焼き屋の親父が、どこか上ずった声で客を呼び込んでいる。


歪界者(ヴァリアント)の旦那! ダンジョン行くなら、ルボー商店のポーション持っていかなきゃ!」


「今なら武具が激安価格! 二割引だよ〜!」


 久しぶりの迷宮都市ルボンドは、いつも以上に活気付いていた。どこもかしこも一斉にセールでもやっているのか、割引の声がよく聞こえる。


 店員の呼びかけは、焦りや苛立ちを感じるものも含まれているようだ。一体どうしたのだろう。


「九十階層突破記念だと?」


「ひゃはは、俺ちっと行って来るわ」


「おう、頼む」


 ブルのアニキに一声かけると、あっという間にモヒーのアニキがどこかに走り去ってしまった。


「よし、タクミとルナは依頼主のグレゴリーの旦那と一緒に、ギルドに護衛依頼の達成の報告に行くぞ」


「「わかりました」」


「……これが本当なら一大事ですね。ブルさん、私は仕入れを誤ってしまったかもしれません……」


「いくらなんでも、壁を突破できたからといって、すぐにダンジョン踏破とはいかないだろうさ。まだ落ち込むのは早いぜ旦那!」


「そう……でしたね。ルボンドダンジョンの予想階層は少なくとも第百階層まで……でしたね。私としたことが周囲の雰囲気にのまれてしまったようです……まずはギルドに行きましょう!」

 

 皆さんの会話の意味がよくわからないまま、僕はとりあえずアニキ達の後について、ギルドの受け付けへと向かった。


「よう! 依頼達成の報告に来たぜ」


「グレゴリー商会で発注した護衛依頼は、間違いなく達成され完了いたしました」


「はい。グレゴリー様のご依頼の達成。並びに完了を受理致します。こちらにサインをお願い致します」

 

 順番が来たのでアニキ達がカウンターでやり取りを始めた。制服を着た赤髪ロングのお姉さんは、ハキハキとした丁寧な口調でどんどんと話を進めていく。前払い金を引いた残りの依頼料がブルのアニキに渡された。


「タクミさんとルナさんもありがとうございました。機会がありましたらまた依頼を出しますので、よろしくお願いします」


「こちらこそお世話になりました。今後もよろしくお願いします」


 ブルのアニキから金貨三枚のアルバイト料をもらい、依頼人のグレゴリーさんとは別れた。買い取りカウンターへと向かい、ミケさんに僕らの取り分の未解体の野良モンスターを査定してもらう。


「ミケさんこんにちは。査定お願いします」


「久しぶりだにゃ。その様子じゃ護衛は無事に終わったみたいにゃ」


「はい。色々と教えてもらえたし、とても良い経験になりました」


 ミケさんの目がキラリと光る。


「それは良かったにゃ。全部で銀貨二枚にゃ。こっちは上から下まで歪界者(ヴァリアント)達が気合いを入れてダンジョンにもぐっているから、てんてこ舞いで大忙しだにゃ」


 確かに買い取りカウンターはいつも以上に長い列ができている。


「それじゃあ僕らはこれで。ミケさんお仕事頑張ってくださいね」


「お〜う、また来るにゃ〜」


 ミケさんと別れると、僕らを待ってくれていたアニキ達と共に行きつけのお店へ向かった。程なくしてモヒーのアニキが戻って来た。


「ひゃはは。街は大変なことになってるぜ。原因はゼニス王国だ」


 ゼニス王国の名を聞いた途端に、心臓が大きく跳ねた。嫌な予感しかしない。あの冷たい、感情のない王様の声が、いやでも耳の奥で蘇る。


「ゼニス王国がフォレル王国に話を持ちかけて、五日前に大部隊がダンジョンの踏破を本格的に開始したらしい。しかも投入されているのは精鋭部隊で合計で百五十人にもなる本気(まじ)の攻略部隊だそうだ」 


「そいつはすげえな」


「そして、ゼニス王国が用意した最終兵器によって、なんと九十階層の例の障壁が突破されたんだとよ」


「……なるほど、それで街がここまで変化してしまったのですね」


 サイラスさんの「なるほど」が僕にはよく理解できない。


「どういうことなんですか?」


「ああ、タクミ君はダンジョンが攻略された後の、ダンジョン都市を経験したことはないのですね?」


「はい」


「最終回層まで踏破され、ダンジョンコアが破壊されると、ダンジョンが消えます。ダンジョンが完全攻略されること自体は、歪み(ヴァル)の発生源が一つ絶たれることになるので、めでたいことなのですが……


迷宮都市となるまで発展したルボンドでは、それにより職を失う人が大勢でます」


「えっ!?」 


「私達歪界者(ヴァリアント)は、まだ他のダンジョンへ行けばいいのでそこまで深刻ではありませんが、ここで店を構えている商人は経営に深刻なダメージを負うでしょうね。


それゆえ建前では皆ダンジョンの完全攻略を喜びますが、本音ではありがた迷惑だと思っている者も少なくないはずです」


 なるほど……確かに高い土地代を払って商売をしているのに、いずれ顧客が全員いなくなってしまうとなったら……泣きたくなる案件だな。僕も将来施術院を構えたい立場なので肝に銘じよう。


「というわけで、今のうちに俺らも本腰を入れてダンジョン攻略を進めるか!」


「ひゃはは。そうだな! せっかくサイラスとリードが戻って来たっていうのによぉ」


「まあ、これも神の思し召しだろう。我々は建前を大事にしようじゃないか」


「さっきブルも言っていましたが、まだ踏破されるとは決まっていませんからね。踏破されるにしても一ヶ月はかかるのではないですか? 焦らずに行きましょう」


「タクミ、お前たちはどうするんだ?」


 ブルのアニキの問いかけに、僕は思考を巡らせる。


「ルナ……せっかくの迷宮都市だけど……ゼニス王国が進出した(そういうこと)なら僕は早めに別の街に行こうかと思うんだけど、どう思う?」


「そうですね……元々旅の途中でしたので、これも良い頃合いかと私も思います」


「それじゃあ決まりだね。ブルのアニキ、皆さん、僕らは近日中に別の街へ行きます」


「……そうか。……よし! それじゃあ今日の打ち上げは送別会でもあるな! パーッといこうぜ」


「おっ! ブルの奢りか? ひゃはは」


馬鹿(ぶゎっか)俺らの、だろ?」


「ひゃはは! 違いねぇ!」


「「皆さんありがとうございます」」


 こんなに気持ちの良い人達と知り合えたことは、一生の財産だな。別れるのが惜しくなるよ……


 この日は夜遅くまで楽しく飲んで、アニキ達とはその後別れた。




 翌日になり、西へ行く辻馬車の運行を調べてみると、二日後の早朝しか空いていなかったので、その日の予約をして旅に必要な物の買い出しをした。


「他に何かいるかな?」


「絶対に必要というわけではないのですが……できれば第二階層の『モスグリーン』を手に入れてからこの街を離れたいですね」


 ルナが期待を込めた顔で僕に答える。


「モスグリーンか。……そうだね、モスグリーンがあると色んなお肉が美味しくなるからね! モンスター肉をたくさん狩るより、良いお土産になるかもね。それじゃあ明日は一日、第二階層で狩りをしようか。……試してみたいこともあるし」 


「はい!」


 ルナの尻尾が揺れ、笑顔で溢れる。そのままイチャイチャしたりしてその日は過ごした。


 迷宮都市ルボンドで過ごす最後の日の早朝。僕らは二人で買い取りカウンターのミケさんの元を訪ねた。

 

「ミケさん!」


 ルナが声をかけると、ミケさんが笑顔で応える。


「朝に来るなんて珍しいにゃ」


「実は……国のダンジョン攻略部隊のことがあるので……僕達は早めに別の街に行こうと思いまして……」


「……そうかにゃ……うん、それもいい選択だにゃ。……ただ……寂しくなるにゃあ」


「ミケさぁん」


 ルナが涙ぐんでミケさんに抱きつくと、ミケさんが優しくハグをしてポンポンと頭を撫でてくれている。


「他の街でも、二人で仲良く過ごすといいにゃ。とにかくいつでも注意深く過ごして、絶対に死んじゃだめにゃよ? 生きていれば、そのうちひょっこり会うこともあるはずにゃ」


「はい」


「タクミはルナを大事にすること。特に獣人の(オス)には気をつけるにゃ。無理やり連れ去られたりしないようにもっと力をつけなきゃだめにゃよ」


「そうならないように……頑張ります」


「最後にわざわざ会いに来てくれて嬉しかったにゃ」


 別れ際のミケさんの瞳が潤み、キラリと光る。


「「今までお世話になりました」」


「お〜う、またにゃ」


 僕ともかたく握手を交わしてくれて、笑顔で送り出してもらえた。


 



「……僕のせいでミケさんともお別れすることになってごめんね」


 ギルドを出ると、申し訳ない気がしてルナに謝った。二人は姉妹のように仲が良かったからな……


「いえ、私が一人だったとしても、今までもあちこちを転々としていましたから……出会いと別れはタクミ様のせいなんかじゃないですよ」


「……そうかな」 


「そうですよ! さぁ明日からの愛の逃避行に備えて、ルボンドダンジョンでの最後の狩りを楽しみましょう!」


 僕より若いのに、ルナは僕よりもよほどしっかりしているな。メンタルが強い。


「……そうだね! よし行こうか!」


 



 第三階層の前室へ『界渡り』で転移し、そこから階段を上って第二階層のボス部屋へと向かった。第二階層のボスモンスター、モスゴーレムの額の苔部分をルナが鋼のショートソードであっさりと切り払う。


 今日の目的は一日中狩りをすることなので、ルナのステータスは脳筋モードに整合済みだ。モスゴーレムは魔石と高級野菜『モスグリーン』を遺して消えていった。


「おっ! 出た出た! まだまだ検証が必要だけど、僕の『幸運モード』の効果もありそうだね」


 今回の狩りに備えて、僕は秘策を用意した。攻撃も防御もルナ一人で十分な程に僕らも成長したので、僕のステータスを知覚10以外は『運』の項目に極振りしたのだ。 


「たしか……ギルドの情報ではモスグリーンの出現率は五分の一でした。検証のためにも、じゃんじゃん狩りましょう」


 犬耳をピクピクさせながら、興奮気味にルナがドロップアイテムを回収する。

 

「ルボンドダンジョンのボスモンスターが復活するのは一時間に一度だったよね……それじゃあ復活するまでは適度に休憩しつつ、他のモス肉を狩ってまわろうか」


「はい♪」


 第二階層をうろついてモスフロッグとモススネークを狩ると面白いように肉をドロップした。……これは作戦成功で間違いないかな。


 第二階層で戦っていた頃は敬遠していた、背中に苔やキノコを背負ったナメクジ型のモンスター『モススラッグ』も討伐することに。


 モススラッグの動きは遅いが、溶解液を吐き出してくるので戦わないようにしていたのだ。


 何より肉をドロップしないしね。


 モススラッグが溶解液を吐き出すよりも早くルナが斬り伏せると、狙い通りキノコをドロップした。このキノコは、毒消しの材料として重宝されるそうだ。


 モスゴーレムを倒しては、待ち時間に通常モンスターの三モスを狩る、というドロップアイテムの乱獲を続けているとお昼になった。


 ちょうどよいので休憩し、神眼でドロップアイテムの鑑定をしていると……


 ヴォーンという音を発し、突然ダンジョンが鳴動した。


「ルナ!? 今の見た!?」

 

「?? 何をですか?」


「下だ! 下から何かが来る!?」


 神眼が捉えたその虹色の光は、まるで転移の軌跡をなぞっているかのように見えた。階層という概念そのものが、その光の前では意味をなさないのか。


 虹色の発光体は、あっという間に第二階層を通り過ぎるかと思われたその瞬間、僕らからさほど遠くない位置でピタリと止まり、発光が徐々に弱くなっていく。今はダンジョンの壁も透過して光が見えているようだが――光は刻々と弱まっている。


 


「面白かった!」

「続きが気になる、読みたい!」

「巧とルナはこの後一体どうなるのっ……!?」


 と思っていただけましたら、


 下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。


 面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!


 ブックマークもいただけると本当にうれしいです。


 執筆の励みになりますので、何卒よろしくお願いいたします。

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