第31話 ルナ無双
「歯ごたえがなさすぎますね」
ルナが強過ぎる。
「これでは技の錬磨になりません。もっとひりついた闘いを大切にしたいところですね……少し考えた方が良いかもしれません」
……Eランクモンスターじゃ全く相手にならない。
既に第三階層の中盤まで進んで来たが、ここに来るまでの間に出てきたモンスターは、ルナが全て一人で倒している。
前回苦戦したサンショウウオのようなモンスター『グロウサラマンダー』をあっけなく倒してしまった。
グロウサラマンダーが気付いた時には、既にぬるりとした動きで必殺の間合いに接近しており、ルナのショートソードが急所を貫く。魔法スキル『水鉄砲』を使う間もなく消えていったグロウサラマンダーが憐れに思えるほどだった。
ルナのステータスを何度も変更して、脳筋モードにした結果がこれだ。ルナが普通の狼獣人だったらこうなるという予測を立て、それに合わせてポイントを割り振ってみた。
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変更前
名前:ルナ
種族:狼獣人
魂の位階:8
筋力:1
耐久:1
敏捷:1
器用:2
知覚:4
知力:5
精神:5
運 :2
歪み耐性:2
職業:歪界者
職業熟練度:4
スキル:アイテムボックス(レベル4)、剣術(レベル4)、体術(レベル4)、盾術(レベル3)、界渡り
装備:鉄のショートソード
:鉄貼りの小丸盾
:革の胴鎧
:革の帽子
:革のブーツ
変更後
魂の位階:8
筋力:4
耐久:3
敏捷:5
器用:3
知覚:4
知力:1
精神:1
運 :1
歪み耐性:1
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ルナの生来の才能では、肉体の強化ができずにくすぶっていたらしいが、それを補う技術と戦闘勘を死に物狂いで身に着けてきた結果……整合後の肉体の強化と相まって強力な獣人戦士が爆誕してしまった。
「あっ! お肉が出ました♪」
グロウサラマンダーのドロップした肉と魔石をいそいそと回収し、とても良い笑顔で戻って来るルナ。お肉ドロップの時は尻尾の揺れも倍速だ。こっちまで嬉しくなるね。
「肉もドロップしたし、今日はこれくらいで帰ろうか?」
「そうですね、時間的にもいい頃合いですね」
ダンジョンから出るとちょうど夕焼けが始まるところだった。僕らの腹時計は正確無比だな。はずしたことがない。
ルンルン気分でギルドの買取カウンターへと向かう僕とルナ。あっ今日もミケさんがいた。ミケさんは一体いつ休んでいるのだろう?
「昨日はお楽しみでしたにぇ」
いつものぱっちりお目々をすぼめて、ジト目で僕達のことを見つめるミケさん。
「今まで毎日来ていたのに、昨日はなんで来なかったんだろうにゃぁ?」
「あはははは」
笑ってごまかす僕。ミケさんの鑑定眼には何が映っているのだろう。
トトトっとミケさんの元へより、何かを耳打ちしたルナとにっこり頷くミケさん。
二人でいったい何を通じ合っているのか……少しの間ガールズトークをした後、今日の戦果の魔石とドロップ品を出すとミケさん目がキラリと光る。
「ミケさん、グロウサラマンダーのお肉を手に入れたんで、一緒に食べませんか? お礼をしたいんでごちそうしますよ」
「今日はまだ仕事が続くから……そうだにゃあ、ニ日後が休みだからその日でもいいかにゃ?」
「はい! 楽しみにしていますね」
ルナがミケさんを誘ったので、僕も同じ日にアニキ達を誘おうかな。ルナとのことを報告したいしね。皆で一緒に飲んだら楽しそうだ。
宿に戻り眠る準備を終えると、ルナと二人でベッドに座った。今日からは宿の部屋をダブルベットに変更してもらっている。
ルナは戦闘中で集中している時以外では、まだ歩く時の動きが少しぎこちないところがある。
「ルナ、まだ痛かったりする?」
「初めは少し痛かったですけど、今はなんとなく違和感があるだけで平気ですよ」
「無理はしないでね?」
「大丈夫ですよ。この程度の痛みは舐めればすぐに治りますから」
「そ、そう……」
な、舐めて治すんだ……ルナだもんな。か、身体も柔らかいし、楽々できそうだよね……そっか〜……
「ふぁ!? ち、違います! い、今のは例え話というか、比喩というか!?」
ボンっと擬音が聞こえてきそうな勢いでルナが爆発し赤面した。しまった、僕が脳内で想像してニヤけてしまったのが伝わってしまったか?
「や、やってませんからね!? ツバを付けとけば治る痛みでしたよって言いたいだけですからね!?」
「そ、そうだね」
そっか〜、ツバは付けるのか〜……やっぱり指で付けるのかな?? そっかぁ……
くっ! 見逃してしまった……
「ふぁぁ!? タクミ様! なんて顔をしているんですか! い、今のも違います! 違いますからね!? 私にとってはすぐに治る痛みだったって伝えたいだけですからね!?」
真っ赤っ赤な顔をして、必死でイヤイヤと首を振るルナが可愛い。
「わ、私はそんな子じゃないですからね!? そ、それにタクミ様がいるからそんな必要ないというか……」
涙目になり、すねていじけるルナも可愛い。あらあら、尻尾がへんにょりしちゃって、耳もしおれてぺったりしちゃってるよ。
ちょっといじめすぎたかな?
……もっとも、僕は想像しただけで何もしていないけど。
ルナの三角耳をカリカリし、同時に尻尾もシュッシュッと撫でさする。ルナの耳に息がフーフー当るように耳打ちして尋ねてみた。
「ルナ……僕がいるとどうして必要ないか教えて?」
「だって……タクミ様が色々してくださるじゃないですか……」
……かわいいかよ。
そんなことを言われたら……もう止まらないよね。




