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盲目の整体師は異世界でのんびり過ごしたい〜僕の整合スキル、なぜか性豪って呼ばれています!?美少女達にゴッドハンドを求められ、勝手にハーレムを作られて困っている〜  作者: 大木げん
第二章 迷宮都市ルボンド

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第26話 歪んだ才能の果て

清光(せいこう)


 僕がそう口にした瞬間、ルナの体に淡く透き通った光が降り注いだ。


 温もりを感じる光がルナの体を優しく包み込み、ひときわ強く輝くと体から黒い靄が立ち上り消えていった。


「何……? その光は何なの!?」

 

 デリアが驚きに目を見開く。

 

 神眼でルナのステータスボードを確認すると、麻痺と毒の欄が消えていた。


 ――――――――――――――――――――――


【清光】――清浄な光で対象の歪み(ヴァル)を取り除き、体内の界理(ロゴス)の異常を健全な状態に保つ。状態異常を癒やすことが可能。


 ――――――――――――――――――――――


 整合師の熟練度2で得た新たなスキルは、今僕が最も欲していたルナの命を救う(すべ)だった。しかし、ルナの体は毒により衰弱しきっており、まだ意識は戻らない。


「くそっ!」


 ポーションで体力を回復させようと思ったが、全てヴァンス達に渡してしまっている。


「タクミ……お前!? まさか回復系だったのか!?」


「さあ?」


 そんなことを言われても僕自身だってわからないのに説明なんてできるはずがない。


 今までに神眼で何度も見たヴァンスとデリアのステータスを目に焼き付け、対抗できそうなステータス項目にポイントを振る。


 ――――――――――――――――――――――


ヴァンス

種族:人間

魂の位階(レベル):20(5)

筋力:8

耐久:7

敏捷:6

器用:5

知覚:4

知力:2

精神:3

運 :2

歪み耐性:3


職業:重剣士

職業熟練度:6


スキル:重剣術(レベル6)、剛力(レベル3)、鉄壁(レベル2)、威圧(レベル1)、アイテムボックス(レベル10)、界渡り



デリア

種族:人間

魂の位階(レベル):19(4)

筋力:2

耐久:2

敏捷:3

器用:5

知覚:6

知力:8

精神:8

運 :2

歪み耐性:3


職業:治癒術師

職業熟練度:6

スキル:回復魔法(レベル6)、支援魔法(レベル4)、魔法陣展開(レベル2)、隠密(レベル2)、界渡り、アイテムボックス(レベル10)




名前:徳本 巧

種族:人間

魂の位階(レベル):7

筋力:2

耐久:2

敏捷:9

器用:5

知覚:10

知力:1

精神:1

運 :1

歪み耐性:1


職業:整合師 

職業熟練度:2

スキル:整合、清光、アイテムボックス、言語理解 、神眼、体術(レベル3)、槍術(レベル2)



 ――――――――――――――――――――――


 ヴァンスの戦闘スタイルは圧倒的な膂力と大剣による破壊力抜群の猛ラッシュだ。接近させてはならない。そして、ルナを絶対に守りきる!


 今のヴァンスとデリアは僕の呪い発言と、清光スキルを見て行動が後手後手に回っている。この隙を逃がすわけにはいかない。


 素早く足元の手頃な石を拾い、デリアに投げつける!


 ビュッ! ビュッ!


 ガ、ガン!


 器用が高いおかげで狙い違わずデリアの頭と胸に石は飛んで行ったが、ヴァンスの大剣で難無くはたき落とされてしまった。ヴァンスがデリアの視界を遮らない絶妙な立ち位置にて守っている。二人の連携の高さが垣間見える位置取りだ。


「ふん! 無駄だぞ! その程度どうということもない」


「降り注ぐ守護の光よ、我が意に従い彼の者を守る衣となれ! 『保護光膜プロテクション・ヴェール』」

 デリアが防御魔法を唱えた。


 続けて石つぶてを飛ばす! そしてアイテムボックスから革袋を取り出し、デリアの足元へと投げる!


 ガン! バシャ! ジュウゥ〜……


「ちっ、明かりが! デリア、明かりだ!」


「ちょっと待って!」


 よし! 


 石と連続して水の入った革袋を投げた。ヴァンスに断ち切られた水袋は中の水を足元に飛び散らせ、焚き火の火を消した。


 狙い通りだ!


 洞窟の中が闇に包まれるが、僕には関係ない。


 ビュッ!


 石つぶてを投げて牽制してルナの身体を奥へと運ぶ。更に移動して鉄の短槍を手に取り、ヴァンスの腕を狙い槍を突き出す!


 ザシュ! ガキン!


「甘いぜ」


 ぎりぎりで大剣に防がれ、僕の突きは皮膚を削った程度だった。ちっ! 流石はDランクか!? この暗闇でよく対応できたな!?


 ザッ! ガン!

 ザシュ! ガガン!


「ははっ! こんだけ接近したら気配でわかるぜ?」


 獰猛な笑みを浮かべヴァンスが吼える! 全身を血濡れにしながらも、深い一撃は入れさせてもらえない! 防御魔法や、ヴァンスのスキル『鉄壁』の効果もあるのか!?


「光よ! 我が頭上に集い、闇を払う灯火となれ!『常光球(ライト・グローブ)』」


「ははっ! 明かりがつきゃあこっちのもんだぜ!」


「ちょっと血だるまじゃない! なに格下にやられてんのよ!」


「うるせぇ! こいつ異様に速いんだよ! 一撃は軽いから大したことはないがな!」

 

 圧倒的に僕が有利な状況で決めきれなかった……


「おらおら! 今度はこっちの番だぜ!」 


 ヴァンスの猛ラッシュが僕に襲いかかる!


 チチチチィン!


――封禍(ふうか)拳は風化(ふうか)拳なり――


 ルナから得た狼牙封禍拳(ろうがふうかけん)の極意は風化だと教わった。人間をはるかに凌ぐモンスターの力とまともに張り合ってはならない。時に突風のように、時に優しいそよ風のように、体を風のように自在に操る――圧倒的膂力を相手に、柳に風と相手の力を受け流す。


 武術として体系化されており、武器を選ばない。まだすべては修めていないが、感覚的にはわかる。手首の力を極限まで抜き、柔らかく短槍を操る。受け止めるのではなく受け流す。力は要らない。


 まだ未熟だが、敏捷と知覚を上げているのでヴァンスの攻撃が若干スローモーションに見えている。そのおかげでなんとか受け流しに成功している。


「我が身に宿る生命の輝きよ、傷つきし者に安寧の光を届けよ! 『生命治癒(ライフ・ヒーリング)』」 


 デリアの回復魔法が!?


 くそっ! ヴァンスの傷口がみるみるうちに回復していく……せっかく手傷を負わせていたのに振り出しに戻ってしまった。


 治療の済んだヴァンスのラッシュは更に回転率を上げ、洞窟の中央付近まで押し込まれてしまった。


 チン! ギャリン!

 

 まずい!? この剣の軌道は!


 僕の脛を水平に切るのではなく。地面に対して斜め下に打ち下ろしてきた! これでは力を逃がしきれない!? 


 短槍を使って天井高くへとジャンプして逃れる!


「ははっ! 飛んだな! 空中では体勢を変えられない! 終わりだ!」


 僕の着地を絶好のタイミングで切り裂こうと待ち構えるヴァンス。


「終わりなのはお前の方だ!」


 アイテムボックス(・・・・・・・・)に溜め込んでいた第二階層の大量の岩を一気に放出する!


 ドドドドッ!!!

 

「ぎゃー!!」


 ガシャ! グシャッ!


 トン、トン、岩を順々に飛び降り、地面へと着地する。


「ヴァンス! そんな……ありえない! まだよ! 終わりじゃないわ!――我が身に宿る生命の輝きよ、傷つきし者に安寧の光を届けよ! 『生命治癒(ライフ・ヒーリング)』」


 回復魔法がヴァンスに向かって放たれたが、これだけの岩に潰されては、さすがに無理だろう。


『死なば諸共』僕のハッタリ呪いの正体だ。万が一襲われて殺されたら、アイテムボックスの中身が溢れて襲撃者にイタチの最後っ屁をかますための、嫌がらせのようなトラップ。こんな形で役に立つとはね。

 

 用心のためにヴァンスに注意を払っていたが、物音一つ立たない。


 よし! 次はデリアだ!


「動くな!」


 デリアが寝ているルナの首にナイフを突きつけている。


 まずいぞ!? ヴァンスに集中し過ぎてデリアを見失っていた!? いや、そこまで意識を離した覚えはない。デリアのスキル『隠密』の効果か!?


「かわいいルナが死んでもいいの? もう猶予は与えないわ。今すぐさっき渡した飴玉(キャンディー)を食べなさい! 食べなければルナを殺す!」


 デリアの手がわずかに動き、ルナの首に血が滲み始めた。

 

「さあ、早く! 脅しじゃないわよ!」


「ルナ!」


 頼む! 目覚めてくれ、ルナ!


「早くしなさい!」


「ルナ!」


 僕が、もう一度呼びかけた瞬間、ルナの手がデリアのナイフを握った右腕を引きつけて固定した。そのまま流れるように重心を移動させて、一気に体を入れ替えた!


 デリアの腕を極めている! 腕挫手固(うでひしぎてがため)だ! 痛みに耐えきれなかったか、デリアがナイフを手放した!


「……ッ、やめて!」


 デリアの悲鳴。容赦なく力を加えるルナ。関節が軋む鈍い音、次いでバキッという折れる音。デリアの絶叫が鼓膜を震わせる。


 ルナの動きは止まらない。極めた腕を軸に、一瞬で体勢を移行させる。ルナの三角絞めにデリアの顔は更に苦悶に歪み、もがくような動きが次第に小さく、そして完全に途絶えた。


 デリアから完全に力が抜け、ぐったりと動かなくなったことを確認して、ようやく僕は安堵の息を吐いた。完璧にオチている。


「ルナ大丈夫!?」


「まだふらふらしますが、なんとか……」


 急いで散乱していたポーションを回収し、ルナに駆け寄って飲ませた。


 ドゴン!


「ぐぅおおお!!」


 岩が吹っ飛び、粉塵の中からヴァンスが鬼の形相で現れた。右肘と左膝が折れ曲がり、体中から血を流している。


「やってくれたな! もう容赦しねぇぇ゙!」


 そんな状態でまだやれるのか!? なんてタフなんだ!?


「ひゃははは! ようやく追いついたぜ」


「タクミ様! 新手が!?」


 次から次へと、今度は誰だ!?


「よう、ヴァンス。久しぶりに会ったらいい男になっちまってるな」


「お前は!? 怒れる暴牛(レイジング・ブル)! なぜこんな所に!?」


 僕が初めてギルドに登録に行ったときに絡まれたブル&モヒーか!? あの特徴的な髪型は忘れられない!


「なぜって? 初心者狩りを探していたからさ」


「……そうだったのか。 助けてくれ! 犯人はタクミとルナだったんだ! 俺も殺されるところだった。ふぅ〜助かったぜ」


「なっ!?」


 なんてことを言いやがる!? こいつらは顔見知りらしい。まさか始めからグルなのか!? 


「ひゃははは、そいつはおかしいなぁ。ヴァンス。その兄ちゃん達がこのダンジョンに来たのはだいたい一月(ひとつき)前だぜ。事件はもう一年以上続いているんだ」


「そ、それは……」


「ギルドも馬鹿じゃねえ。慎重派だったのに姿が見えなくなっていった奴らの内、ほぼ全員とお前たちは関係があった。なんでだろうなぁ。ひゃははは」


「そ、そんなことを俺が知るはずないだろう!」


「後は決定的な瞬間を押さえるだけだったんだが……済まなかったな兄ちゃん。モヒーのスキル『追跡(スニーク)』で後を追っていたんだが、途中で足跡が途絶えていてな……なんとか間に合ったみたいでよかったぜ」


 その言葉を聞いて、被害者面をしていたヴァンスの演技がピタリとやみ、小刻みに痙攣している。


「うおぉ!!」


 残された片足で大ジャンプをしてブルに飛びかかったヴァンス。だがその大剣が振るわれる前に、目にも止まらぬ速度で放たれたモヒーの矢が連続してヴァンスの身体を射抜き、岩に釘付けにしてしまった。


「ぎゃあぁぁぁ!」


「反省の色は無し……か」


 一歩また一歩と、無造作にヴァンスに向かって歩んでいくブル。


「ま、待ってくれ! わ、悪かった! 俺が間違ってい……」


 ブルの曲刀がひらめき、銀閃がほとばしるとヴァンスの首がぼとりと落ちた。


「こ、殺した……」


 思わず、声が漏れた。

 

 瓦礫の山に首を落とされ、横たわるヴァンスの死体。僕は、この男を殺そうとまで思っていたのか? ルナを、大切な仲間を守るために、戦闘中は無我夢中だった。だが、実際に目の前で命が奪われる光景は、あまりにも重い。

 

「あん? 何言ってんだ、(あん)ちゃん。既にこいつらはお尋ね者なんだぜ? |デッド・オア・アライブ《生死を問わず》で俺たちゃヴァンスとデリアの捕獲を請け負ってんだ。こいつぐらいの実力がある戦闘職を大人しくさせたまま拘束するのは困難だ。」


「そ、それでも……あなた達なら安全に拘束できたんじゃ?」


「隙を見せて暴れられたら、俺たちの誰かが死ぬかもしれねえんだぞ?」

 

 ブルの言葉に、僕は何も言い返せなかった。目の前に横たわるヴァンス。その死を前に、僕はただ怯えている。


「お前だって、殺す気でやってたんだろ?」

 

 そう問いかけられ、喉の奥がひりつく。

 

「もう終わったつもりになってたみたいだが、そうじゃねぇんだ。……ああ、さてはお前さん、まだ童貞か。この世界で生きていくんなら、敵は殺す覚悟も持たなきゃなんねえぞ。そうじゃなきゃ……お前さんの大切なやつが、目の前で死ぬぞ?」

 

 ブルはルナの方を見て、指で首をかき切る仕草をした。

 

 その瞬間、頭を殴られたような衝撃が走る。

 

 自分が甘かったのだと痛感した。ダンジョン探索が楽しいと思い始めていた僕には重い決断だが……ルナを守る為にはいざという時に戸惑わないよう、覚悟しなくちゃいけない。


 ボロボロのルナを抱きかかえ、今日という日を深く胸に刻んだ。




 



VS初心者狩りが決着しました。

これからは一日一話での投稿となります。よろしくお願いします。


「面白かった!」

「続きが気になる、読みたい!」

「巧とルナはこの後一体どうなるのっ……!?」


 と思っていただけましたら、


 下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。


 面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!


 ブックマークもいただけると本当にうれしいです。


 執筆の励みになりますので、何卒よろしくお願いいたします。

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