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盲目の整体師は異世界でのんびり過ごしたい〜僕の整合スキル、なぜか性豪って呼ばれています!?美少女達にゴッドハンドを求められ、勝手にハーレムを作られて困っている〜  作者: 大木げん
第二章 迷宮都市ルボンド

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第23話 ミケさんの涙

「ルナ! 回り込んで注意を引きつけてくれ!」

「位置取りオッケーです! いきます!」


 第二階層のボスモンスター、モスゴーレムを左右から挟み撃ちにし、剣と槍の連撃を繰り返す。


 モスゴーレムは巨大な苔とシダでできたゴーレムで、動きは鈍いがその巨体から繰り出される一撃は強力だ。


 だがルナと僕、二人の同時攻撃に反撃の対象を絞りきれないようで、その巨体の動きはますます鈍くなっていく。次第により攻撃力が高い僕が与えるダメージが蓄積して、モスゴーレムのターゲットが明確に僕へと定まったようだ。


 ルナのことをガン無視して僕だけを殺そうと暴れ狂うモスゴーレム。その隙に、完全にフリーになったルナが、モスゴーレムの足の関節部分のツタを斬りつける!


 足が一本もげたモスゴーレムが激しく転倒した!


 だがボスモンスターだけあって、それでは終わらなかった。モスゴーレムの手の指から十本のツタが伸び、僕らを絡め取ろうとする。そのツタを切り払いつつ本体に接近し、ルナが周囲と色の違う額の苔に剣を突き刺す。


 弱点であるらしい額の苔部分は脆かったようで、ルナのショートソードは深々と刺さり、その後モスゴーレムは魔石と高級野菜『モスグリーン』を遺して消えていった。


「やったね!」

「やりましたね!」


 笑顔のルナとハイタッチを交わし、第二階層突破の喜びを分かち合う。僕たちのコンビネーションもなかなか様になってきたね。ボス戦を終えて、息がピッタリだと実感したよ。


 なにか言いたげにモジモジしているルナの頭を「お疲れ様」と言って撫でてあげると、ボス部屋の奥へと向かった。奥には扉があり、下へと降りる階段が続いている。


「モスグリーンはお肉に巻いて食べると、とっても美味しいらしいので楽しみですね♪ あ……そ、それとも買い取ってもらって資金にしますか?」


「僕はダンジョンの食材は全部自分達で食べてみたいな」


「そ、そうですよね! 私もそうしたいです!」


 ボスを倒した時よりも尻尾の動きが大きいところを見ると、ルナの食への欲求はかなり大きいみたいだね……まあ、僕も同じなんだけど。地球では絶対に食べれないものを食べるチャンスは逃したくないよね。


 会話をしながら階段を降りていくと、第三階層の前室に辿り着いた。ルナが右手を石板に触れ、左手は僕と繋ぐ。


「界渡り、第一階層へ!」


 ルナの掛け声と共に体が浮遊感に包まれた。ダンジョンを出て歪界者(ヴァリアント)ギルドの買取カウンターに向かうと、今日もミケさんがいた。


「こんばんは。買取をお願いします」


「おっ、毎日頑張って感心だにゃ」

 

 アイテムボックスから大量のF・Eランクの魔石と、ボス部屋のモスゴーレムの魔石を取り出した。ミケさんの目がキラリと光る。

 

「モスゴーレムの魔石があるにゃ。第二階層はクリアしたんだにゃ。おめでとう! モスグリーンはドロップしなかったのかにゃ? 今日は全部で銀貨一枚と大銅貨八枚だにゃ」


「モスグリーンもドロップしましたよ♪ モスグリーンは自分達で食べるんです♪」


「……それは残念だにゃ。売って欲しかったにゃあ」


「うーん、私達も食べたいのでそれはできません……そうだ! 今から打ち上げに行くんですけど、ミケさんも一緒に行きませんか?」


「まだ後一時間仕事が残っているから無理だにゃ」


「終わるまで待ちますよ♪」 


「……食べさせてもらっても、買取査定のアップはできにゃいにゃよ?」


「いいんですよ、それで! ミケさんと一緒にご飯を食べたいだけなんですから」


 ミケさんの尻尾がぶるると震える。


「ルナの言葉がとっても嬉しいにゃ。タクミもそれでいいのかにゃ?」


「もちろん! 一緒に食べましょう。お祝いしてください」


「それじゃあ、一時間後にまた来て欲しいにゃ」


『焼肉かぶりつき』に寄って予約をすると、食材を預けて調理を任せ一度宿に戻った。身綺麗にした後に再びギルドに行くと、ちょうどミケさんの仕事が終わって出発できるようだ。




「「「かんぱーい」」」


 スペシャルメニューの『羊のモスグリーン巻き』が絶品だった。かなりクセが強いはずの羊肉(マトン)がレタスのような見た目をした野菜『モスグリーン』の包容力によって、強烈に芳醇な香りへと変化していた。特有の臭みをまったく感じず、只々肉のうまみのみが襲ってくる。


「これこれ! これが食べたかったんだにゃ!」

「何個でもイケますね!」

「エールも美味い!」


「こっちの『チーズたっぷりのモスグリーンサラダ』も美味いから食べてみて欲しいにゃ」

「わぁ、モスグリーン単体でも美味しいのに、この組み合わせの相性も抜群ですね♪」

「これをつまみにして飲むと、さらにエールが美味い!」


 アルコールもまわって盛り上がってきたところで、急にミケさんが真剣な顔になった。


「二人とも……よく聞いて欲しいにゃ……新進気鋭の三人組パーティーが消息不明になったにゃ」


「それって……」


「あいつらは無茶をして実力以上の階層に突っ走るような奴らじゃなかったにゃ……おそらく……初心者(ビギナー)狩りにやられたのにゃ……」


「……」

「……」


 僕達とこうして飲んでいるみたいに、そのパーティーともミケさんは仕事以外でも交流があったのかもしれない。


 なんとも言えない気分になる。


「二人とも本当に気をつけるにゃよ? ダンジョンの中で知らないやつに迂闊に近寄っては駄目にゃよ? 死んだら承知しないからにゃ?」


「気をつけます」

 

「ギルドも犯人探しに力を入れているけど、なかなか犯人の尻尾が掴めないのにゃ……悔しいにゃ……」


 それからのミケさんはグダグダだった。ミケさんは泣き上戸だったらしい。


 いなくなったパーティーの話をいくつも聞かされた。その中には無謀にも実力以上の階層に突撃して、おそらくモンスターに返り討ちにあった人達も結構いるらしい。僕達も本当に気を引き締めなければいけないな。謙虚堅実をモットーに頑張ろう。


 楽しくも悲しい打ち上げは、ミケさんが寝落ちしたことでお開きになった。僕も男なので、無防備になったらミケさんこそ危ないですよ? 信用してもらえているのかな?


 ミケさんを自宅に送り、僕らも宿に帰った。日課になっている寝る前のステータスチェックをしたところ……


「ルナ! 僕の『整合師』の職業熟練度が! 2になってる!」


「本当ですか!? おめでとうございます!」


「眠いけど、善は急げだ。早速ルナのステータスを変更できるか試してみよう!」


「はい! お願いします!」


 神眼モードでルナのステータスを確認してみると……


 ――――――――――――――――――


名前:ルナ

種族:狼獣人

魂の位階(レベル):8

筋力:1

耐久:1

敏捷:1

器用:3

知覚:4

知力:5

精神:5

運 :1

歪み耐性:2


職業:歪界者ヴァリアント

職業熟練度:4

スキル:アイテムボックス(レベル4)、剣術(レベル4)、体術(レベル4)、盾術(レベル3)、界渡り


 ――――――――――――――――



 神眼でルナのステータスを捉えつつ、整合スキルでルナのステータスの変更を試みる。


 知力を1にし、筋力が5になるように念を込める。


 むむむむむ。


 筋力アップ・筋力アップ・筋力アップ・筋力アップ!


 う・ご・けっ!


 変われ! 変化しろ!


「はぁはぁはぁ……ごめんルナ駄目だった……やっぱり他人のステータスは無理なのかな?」


「えいっ!」


「ルナ!?」


「今度はこれでやってみてください!」


 これでって……ぎゅうぎゅうに抱きつかれているので、やりづらいんだけど……


「ルナ……酔ってる?」


「酔ってるけど酔ってましぇん! ちゃんと考えていまふ! ピッタリくっついたら効果が違うかもしれません! これでもう一度お願いしまふ!」


 僕の胸にルナの熱い吐息がかかって、どきどきしてしまう。ぐいぐい押し付けられる胸の感触が心地よく、夜着からはみ出した素肌の両足が艶めかしく絡みついてくる。 


 いや、絶対に酔っておかしくなっているだろう? それともいつもの触りたがりか? 


 でも効果はあるかも? 僕もルナをギュッと抱きしめる。もう一度穴が空くほどルナのステータスボードを見つめて念を送る。


 送る送る送る送る……何度も何度も念じても、ルナのステータスは一切変化しなかった。


「ごめんルナ……駄目だったみたい……」


「……すーすー……」


 って寝てんのかい!!


 どうすんだよこれ。体を引っ剥がしたら起こしちゃいそうでかわいそうだし……もういいや、僕も眠いからもう寝る!


 



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