第21話 Eランク昇格祝い
ルボンドダンジョンの第二階層に、毎日日帰りで潜るようになって二週間が過ぎた。
その間に僕の魂の位階がもう一つ上がりレベル5に、歪界者の職業熟練度が一つ上がり2になった。
レベルが一つ上がるとステータスが一つ上がるので、見違えるほど戦闘が楽になる。ステータスポイントの一つ分とはそれ程の効果がある。
「ミケさんこんばんは」
「いらっしゃいにゃ。今日も来たのにゃ」
「査定をお願いします」
魔石をジャラジャラとアイテムボックスから取り出すと、ミケさんの目がキラリと光る。
「今日は銀貨一枚と大銅貨四枚だにゃ」
ギルド証を水晶玉にかざすと、水晶玉に記された文字を見ていたミケさんが言う。
「おっ! 二人ともEランクモンスターの討伐数が規定を満たしたにゃ。ギルドの受付に行って歪界者Eランクの申請をしてくると良いにゃ」
「本当ですか!?」
ルナが前のめりになってミケさんに詰め寄る。
「本当にゃ。Bランクまでは討伐数で昇級できるから、間違いなくEランクになれるにゃ」
ルナが目を見開き胸に手を当てて、ぷるぷると震えている。尻尾は右に左にと激しく揺り動いているので、昇級の感動を噛みしめているのだろう。
「良かったね、ルナ」
「はい……良かったですぅ……これも全てタクミ様のおかげです」
「二人で頑張ってきたんだから、二人のおかげさ」
「タクミ様……それでもタクミ様と出会ってなければEランクになんて絶対になれていなかったので……タクミ様と出会えて本当に良かったです」
「ふふっ、それは僕も同じだよ。ルナに出会ってなければ、そもそもダンジョンなんか潜ってないからね。それじゃあ今日はお祝いに『焼肉かぶりつき』に行こうか」
「はい!」
ルナが目を潤ませながら、元気よく返事した。
「はいはい、ウチの前でイチャついてにゃいで、とっとと行って肉でも食ってハッスルしてくるにゃ。まったく……彼氏がいないウチの前で……困ったもんにゃ」
「ミケさん!」
ルナがミケさんの肩をポカポカと叩いている。二人はけっこう仲が良いよね。もふもふ美女同士の絡みは和みますな。
僕、目が見えるようになって本当に良かったよ……
ギルド受付けでの昇格手続きも無事に終わり、僕らは晴れてEランクの歪界者となった。
大通りから路地に入り少し進むと、食欲をそそる肉の香ばしい匂いが漂う、看板に骨付き肉の絵が描いてある店がある。今日が三回目となる『焼肉かぶりつき』へとやって来た。
このお店は歪界者御用達で、モンスター肉の持ち込みが可能だ。持ち込んだ肉の三割を寄付することで、残りを調理して提供してもらえる。
「モンスター肉をギルドに売るよりも、ここで食べさせてもらった方がお得ですね♪」
ルナがモンスター肉を目で追いかけながらそう言う。
モスフロッグの肉とモススネークの肉をお店のスタッフに預けて、そちらの調理が終わるまでは、牛肉を焼いてもらった。
「Eランクの昇格を祝って! 乾ぱ〜い」
「乾杯!」
ルナと二人でエールで乾杯して看板メニューの牛肉を味わう。脂身のついた牛の骨付き肉にかぶりつくと、飛び出す肉汁が口いっぱいに広がる。
美味い! 脳天を刺激する肉の旨味を堪能しつつ、エールを流し込むと、炭酸で肉の脂っこさがさっぱりと洗い流され、次の一口をまた新鮮な感覚で味わえる。無限ループだ。
二人で楽しく飲み食いしていると、水色髪のデリア、灰色髪のヴァンスがお店に入って来たのに気付いた。
今日は珍しく子供達を連れていない。
「ヴァンス、デリア!」
「おう、なんだタクミとルナか」
返事をするヴァンスの声が沈んでいる。なんだか二人の空気が重い。
「良かったら一緒に食べないかい?」
ちょうど良い具合にモンスター肉がテーブルに運ばれてきた。デリアとヴァンスも僕らのテーブルで一緒に食べる事になったので、二人にも苔肉を振る舞った。
『苔生したモスフロッグの燻製』――燻煙の香ばしさと、苔が放つ控えめながら爽やかな香りが混じり合い、食欲をそそる。
淡い桃色に染まった身は驚くほど柔らかく、鶏肉にも似たさっぱりとした味わいが口いっぱいに広がった。旨味が燻煙で閉じ込められていて、肉の中に凝縮している!
なんじゃこりゃあ! 噛むたびに燻製の香りと、相次いで苔が持つ清涼な風味が鼻に抜けていって……一噛みするごとに食欲が増すなんて!
「どんな味かと思ったけど……モンスター肉……病み付きになっちゃうな……売らずに自分達で食べて良かった!」
「またドロップするまで狩りましょう!」
モンスター肉のドロップは、不思議なことに塊肉でドロップする。モンスターによって出やすさや量もまちまちだけど、モス肉は中々ドロップしない。
『モススネーク肉の唐揚げ』――分厚く切り分けられた白い身は、低温の油でじっくりと、その後高温でカラッと二度揚げされて、黄金色の衣をまとっている。
「ん~~!」
「はふはふ! うんまっ!」
少し弾力があり、プリッとした歯ごたえが残りつつ、外はカリッと、中はふっくらと柔らかい。まるで上質な白身魚のようだ。噛みしめるごとに口の中でほろほろとほどけ、微かな甘みと強烈な旨味、少しピリッとした刺激が舌を襲う。
「久しぶりに食べたけど、やっぱりモス肉は美味しいわね」
「美味いよな。二人ともレアドロップ品なのに良く取れたな。相当粘ったのか?」
美味しいものを食べ、アルコールで気持ちがほぐれたのか、ヴァンスとデリアも段々と饒舌になっていく。
「今日はいつもと違うけど、二人ともどうかしたの?」
「……まあ、なんというか、自分達の限界を突きつけられてな」
「もう一年前から薄々気付いていたんだけどね。今日久しぶりに私の魂の位階が上がったんだけどさ、身体には何の恩恵も感じないのよ」
……言うわけにはいかないけど、僕の神眼にはその答えが映されている。二人のステータスボードは魂の位階の隣に(5)や(4)となっていて、ポイントが余っているのだ。
街の中を歩いている歪界者を神眼で観察した結果と、この世界の一般常識的に知られた話をルナから聞いて考察したことがある。
基本的にはステータス値は、年齢プラス魂の位階の合計値が最大値になっているらしい。
始めは皆どんどん何らかのステータス値が1ずつ上がって行くが、人によって異なるある一定値を越えると、ステータス値に割り振られなくなっていく――みたいだった。
長い時間訓練を続けた人は、ステータス値が再び割り振られて上昇する場合もある事から、ステータス値により超人じみていくことに、肉体の方が追いついていないのかもしれない。
「私達が三年前に最初に面倒をみてあげた子供たちの中に、レオナルドって子がいてね……その子は凄かったのよ。たった一年であっという間にBランクまで駆け上っていってさ。才能の塊みたいな子だったのよ……それにひきかえ、私達は……もう何年もDランク止まりで打ち止めよ」
「それに気付いて以来、子供達の育成に力を入れることにしたってわけだ。悪ガキ共には、いつも出世払いで俺達にいい思いさせろよって言い含めてな……はっはっはっ」
ヴァンスが自嘲気味に乾いた笑い声を上げるが、その哀愁漂うただならぬ雰囲気にかける言葉がない。
なぜならば、僕の勘だが、多分僕には限界がない。レベルが上がってステータスポイントが入れば、必ず好きなように割り振れる。『整合スキル』とはそういうものだという確信があった。
「おっ! なんだなんだ! 俺達に気を使ったりすんなって!」
「そ、そうだね。さあもっと注文して食べよっか!」
「そうですね♪ 持ち込んだモス肉を食べ尽くすまでは帰れませんよー! さぁ、ヴァンスさんもデリアさんもばんばん食べてください!」
今日は嫌なことなんか忘れて、楽しく飲もうじゃないか。
祝ランクアップ!
「面白かった!」
「続きが気になる!」
「タクミとルナの今後はどうなるのっ・・・!」
「美咲さんはまだかよ?」
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