第18話 第一階層
モンスターを見つけた僕は、思わず鉄の短槍をギュッと握りしめた。
角うさぎを取り囲んだ子供たちは、中々の連携で角うさぎを逃さないように追い詰めている。
「そっち行ったぞ!」
「おう! 逃がすなよ! 囲め囲め!」
「馬鹿野郎! 角うさぎの正面に立つな!」
監督していた大人の男性が少年を突き飛ばしたので、かろうじてその子は角うさぎの突進からそれて無事だった。
「ほら! ぼさっとしてないで、はやく囲みに戻らないと逃げられてしまいますよ!」
もう一人の大人の女性からも転んだ少年へと激が飛ぶ。
突き飛ばされた少年はすぐに囲みに復帰し、子供たちのこん棒の乱打によって角うさぎは倒れた。しばらくすると、角うさぎは煙のように消えて居なくなり、クズ魔石と小さな肉を残した。
「あっ! あの子たちラッキーですね。お肉が出ましたよ」
ルナが羨ましそうに言う。
「もう行って大丈夫なのかな?」
「はい大丈夫です。進みましょう」
監督者二人がこちらをちらりと見て目礼をしてきたので、僕たちも目礼を返す。
僕達はずんずん前に進んで行くので、すぐに子供たちはジャングルの緑に遮られ視界から消えて行った。
「私も子供の頃に、ああやってダンジョンで大人に特訓してもらっていました。懐かしいです」
「へー、ルナの子供の頃か。可愛かったんだろうなぁ」
「! ……そ、そんなに特別なことはありませんでしたよ?」
「えー、絶対そんなことないでしょ。僕がその時そばにいたら、頑張ってるちっちゃいルナを間違いなく可愛がって、よしよししてあげてるよ」
「……今でも良いですよ……」
「え?」
「いえ、なんでもありません……タクミ様、モンスターです!」
「うん、僕にも見えたよ」
僕らの前に大型犬位の大きさのネズミが現れた。神眼によると、ビッグラットと書いてある。
そのまんまだな!
ルナが、盾を構えて右斜め前に立ち、ビッグラットを引きつける。ルナに飛びかかったビッグラットを器用に盾で受け流した。
すかさず体勢の崩れたビッグラットを僕が鉄の槍で突くと、ずぶり、とあっけなく突き刺さりビッグラットは倒れて消えた。
やっぱりこの感触にはまだ慣れないな……後に残されたクズ魔石を眺めていると、ルナがこちらをじっと見ている。
「タクミ様、方針変更して早めにG・Fランク帯の所は突破して、Eランク帯の所に行きましょう。装備的にも技術的にも、おそらく私達コンビにとってはそこが適正です。あまり長く下のランクと安易に戦い続けると、敵を侮り、油断が染み付いてしまいます」
「なるほど。一理あるね。じゃあそうしよう。この世界で生きてきた、ルナが考えたプランに従うよ」
「……たくさん稼げば、またお肉をお腹いっぱい食べれますし……」
まさか、本音はそっち……じゃないよね?
一階層から三階層までのダンジョン地図は、昨日ギルドの購買で買ってある。地図とルナの鼻を頼りに、とっととEランクモンスターが出てくる二階層まで進むことにした。
そうはいっても、第一階層のジャングルは広いので、丸二日かけてようやく次の階層への大扉にたどり着いた。
なんだかんだでここに来るまでに結構な数のモンスターを倒している。僕とルナで交互にソロで倒すようにしたので、少しは経験になったはずだ。
「タクミ様、地図によるとここのボス部屋にいるのはEランクのシルバーウルフです。さっき三体倒したFランクのブルーウルフの強化版になります。ウルフの動きには慣れましたか?」
「もう大丈夫だよ」
装備の手入れをしつつ、ボス対策を話し合う。
基本的にはルナが前に出て、盾役として敵を引きつけて、隙をついて筋力をあげた僕が槍で突く。シンプルイズベストだ。必勝パターンと言ってもいい。
「もし駄目そうならプランBで行くから数秒耐えてね」
「わかりました。では、開けます」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッッ
少し押しただけで、重厚な大扉は自ら開いていく。
「来ます!」
ボス部屋をジグザグに走りながら、シルバーウルフがこちらに突進してきた。
ガン!
弾いたルナの盾が大きな音をたてる!
「せい!」
僕の短槍の一撃をシルバーウルフは立体的な機動で縦に大ジャンプし、僕を飛び越えて軽々と避けた。
あっこれは……無理だな。
「ルナ! プランBで行くぞ!」
「はい!」
「ステータスオープン!」
脳裏にステータスボードが浮かんでいる。
――――――――――――――――――――
名前:徳本 巧
種族:人間
魂の位階:3
筋力:3
耐久:1
敏捷:1
器用:1
知覚:10
知力:5
精神:5
運 :1
歪み耐性:1
・
・
・
神眼をオフにして脳筋シフトにすれば……
筋力:4
耐久:3
敏捷:4
器用:3
知覚:10
知力:1
精神:1
運 :1
歪み耐性:1
――――――――――――――――――――――――――
ぶっちゃけ神眼をオフにして視覚情報を遮断しても、知覚10があれば十分に周囲の把握はできる。
おっ、シルバーウルフの動きが少し遅く感じるぞ。ポイントの割り振りはこれくらいで良さそうだ。
短いようで長い一秒程の時が過ぎ、肉体にステータス値が反映された。
「ルナ! お待たせ!」
僕がルナの前におどり出て、シルバーウルフを迎え討つ。
「はっ!!」
突進してきたシルバーウルフに対し、一呼吸での三段突きを胸をめがけて突き入れる!
銀閃はあやまたず三度シルバーウルフに突き刺さり、その後、魔石と毛皮を残してシルバーウルフは消えてしまった。
「ふー、やっぱりEランクのボスの動きについていくのは厳しかったね」
「お見事でした! さすがはタクミ様です!」
「ルナが、耐えてくれたお陰だよ! ルナはどこも怪我してない?」
「はい、平気でした!」
舐めときゃ治る、が信条のルナのことだから、彼女の平気はあてにならない。念の為きっちりと診察したが、今回は本当に大丈夫だったようだ。
そういえば……昨日撫でてもらいたそうなことを……言ってたよな。
「ルナもお疲れ様」
労いを込めてルナの頭を優しく一撫ですると、「ふぁ!」っと、妙な声がルナから飛び出した。
尻尾が小刻みにぷるぷると揺れている。これは……もっと撫でたほうが良いのだろうか?
祝・第一階層突破!
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「巧とルナはこの後一体どうなるのっ……!?」
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