第13話 ゼニス王国からの脱出
『移動支援』スキルはとんでもない地雷スキルだった。
危なかった……スキルにオン、オフ機能が付いていて良かったよ。オンのままではどこに逃げても追手が来るところだった。
色々あり過ぎて、移動支援スキルは実験中だったことを今の今まで忘れていたことはおいといて……違いを比較するためにオフにしておいて良かったぁ!
でも……怖いな。うっかり間違って操作ミスして、オンにしちゃったら……僕の居場所がバレちゃうよね。
いっそのこと、オンやオフだけでなく、『移動支援』スキルを消去できたら良いのに……こんなものいらない! 一生ゼニス王国の紐付きなんてイヤだ! 削除! デリート! アンインストール! 消えろ!
ムカつく王様の声を思い出してしまいつつ、必死に移動支援スキルよ消えろと念じていると、『オン/オフ――削除』という項目に変化した。
喜んで削除を押すと「一度削除すると二度と元には戻せません」という案内が出てきた。それが望みだからいいんだよ。削除ぉぉぉ!
ポチッとな。
削除を押したとたん、なんとなく体が軽くなった気がした。そしてステータスボードの中から『移動支援』というスキル名自体が完全に消えた。
ふぅ~。良かった。やったぜ。
ふとこちらを見ているルナに視線を向けると、ルナにくすくすと笑われた。
「どうしたの?」
「いえ、突然タクミ様が百面相をしながら、上半身だけで踊りだしたのが面白くて」
「え?」
どうやら、ステータスボードと格闘する僕の姿は、外から見ると変な踊りを踊っているように見えたらしい。
ルナは僕の内情を知っているから良いとして、馬車の他の乗客からしたら変人だよね。反省。おとなしく座っていよう。
その後の馬車での時間は、神眼スキルを負担なく使いこなすための制御訓練に費やした。
二日目の宿に到着して、馬車では話せなかったことをルナと色々と話し合う。
ルナによれば、ヴァラリア世界の人達で、ステータスボードを自分で確認できる人は、鑑定眼系統のスキル持ちぐらいしかいないらしい。この世界の人がどうやって自分のステータスを把握するのかといえば、神殿や国が所持している鑑定玉を使って調べてもらうという。
更に言うと、僕の整合スキルのように、ステータスボードの内容を変更したり、ステータスの数値を変化させるスキルなど聞いたこともないそうだ。
移動支援スキルをオンオフできたのも、僕が整合スキルを持っていたからなのかもしれない。
美咲さん達は……大丈夫なのかな? ゼニス王国と良い関係が築けている間はいいのだろうけど……僕みたいに関係が悪くなってしまったら……どうなっちゃうんだろう。……逃げることもできないってことだよね。
そういえば、優しくしてもらったのに、美咲さんに何も言わずに国外逃亡しちゃっているんだよな……仕方ないとはいえ、突然音信不通になってしまうことにちょっと罪悪感が。
とはいえ、どうしようもないので、彼女たちの幸運を祈るほかにやれることはない。
ルナと顔を見合わせると、コクリと頷きあった。いよいよ今日のメインイベントを始める。改めてルナのステータスを神眼で確認してみた。
――――――――――――――――――――
名前:ルナ
種族:狼獣人
魂の位階:5
筋力:1
耐久:1
敏捷:1
器用:2
知覚:3
知力:5
精神:5
運 :1
歪み耐性:1
職業:歪界者
職業熟練度:3
スキル:アイテムボックス(レベル3)、剣術(レベル3)、体術(レベル2)、盾術(レベル1)
――――――――――――――――
そして、僕の整合スキルのステータスボードを操作できる能力。
神眼でルナのステータスを捉えつつ、整合スキルでルナのステータスの変更を試みる。上手くいけば、ルナのコンプレックスも無くしてあげることができるはずだが……
知力を1にし、筋力が5になるように念を込める。
むむむむむ。
う・ご・けっ!
変われ変われ変われ変われ!
変化しろ!
「はぁはぁはぁ……くそっ! 駄目だったか……自分のは変更できても他人のステータスは無理なのか? ルナのステータスが神眼で見えるようになったから、いけるかと思ったんだけどな……そうだ! 手を触れた状態でもう一回やってみよう!」
「はい!」
僕の出した手を、ルナが指と指を絡めて握り返してきた。こ、これは、恋人つなぎってやつでは!?
絡みつくルナの手の熱と、しなやかな指の感触にどぎまぎしてしまう。いや、きっとルナに他意はないので、僕がここで恥ずかしがるのはおかしいのだろう。
ルナの手をこちらからもギュッと握りしめ、もう一度穴が空くほどルナのステータスボードを見つめて念を送る。
送る送る送る送る……何度も何度も念じても、ルナのステータスは一切変化しなかった。
「ごめんルナ……駄目だったみたい……」
「大丈夫ですよ! 私は今、とても嬉しいです! タクミ様が私のために、一生懸命に頑張ってくれていることが伝わってきましたので!」
絡めあった指をニギニギしながらルナがとびきりの笑顔を見せてくれた。
「それでも……ぬか喜びさせちゃったのが申し訳なくて……」
「それでしたら……私と一緒にダンジョンに潜ってみませんか? タクミ様の整合スキルは、職業『整合師』由来のスキルだと思うので、ダンジョン内で沢山の経験を積んで『整合師』の職業熟練度を上げれば、より効果が高まって、いずれは他者のステータスも変更できるかもしれません」
「ダンジョン……ってあのトンネルみたいなとこかぁ。おっかないモンスターが出てくる所でしょ? 僕にできるかな……」
「タクミ様はお強いので、無理をせず段階を踏めば、最終的にはかなり深くまで潜れると思いますよ! 私が足手まといになっちゃうかもしれませんが……」
「そんなことはないよ。もしダンジョンに行くなら、その時はルナと一緒だと安心できるからね」
信じられるルナと一緒なら、そしてルナのコンプレックスを払拭できる可能性があるのなら、ダンジョンに潜ってみようかな、という気になってしまうのが不思議だ。
「本当ですか!? 嬉しいです!」
ルナの尻尾がぶんぶん揺れている。ルナはダンジョンに行くのがよっぽど好きなんだね。
「それに、Dランクモンスターを難なく倒すことのできたタクミ様なら、金策としてもダンジョンに潜るのは有効だと思います。ホブゴブリンウォーリアの魔石は高く売れるはずですから。
店舗を構えるには相当の資金が必要だと、行商人の方から聞いたことがあります。タクミ様の目標である施術所を開くためにも、頑張ってダンジョンで稼ぎましょう!」
ふんすっと力強く宣言するルナがかわいい。ピコピコ動くふわふわの三角耳がとてもかわいい。そんなルナのためと、自分のためにもなるのなら、行くしかないね!
「よし、それじゃあフォレル王国に無事に着いたら、ひとまずダンジョンに行ってみよう!」
「はい! フォレル王国に入ってすぐの所に、ルボンドという大規模なダンジョン都市があります。そこには大勢の人が過ごしているので、潜伏するのにも打ってつけです」
打ち合わせが終わり、新たな目標が決定した。
寝る準備も終わったので、僕がルナの身体を揉みほぐし、ルナが僕の顔を舐める。なぜかルーティンとなりつつある、癒し癒されの不思議な時間。ルナにはよだれ多めではなく、よだれ少なめでお願いしときました。
翌日からの国境の街への四日間の馬車の旅は無事に終わった。野盗やモンスターに襲われることもなく、特筆することは特にない。しいて言えば、なぜかダンディさんが日に日にゲッソリとやせ衰えていき、かわりにマダムが妙にツヤツヤになり、終始ご機嫌だったことぐらいか。
ゼニス王国の国境の街から、フォレル王国のルボンド・ダンジョン行きの馬車に乗り換えて、二日。ついに僕らはゼニス王国からの脱出に成功し、ダンジョン都市へと到着した。
ここまでお読みくださり、誠にありがとうございます。
『第一章 ゼニス王国』は今話で終了となり、次回からは『第二章 迷宮都市ルボンド』を投稿いたします。
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