第12話 地雷スキル
馬車の旅二日目は快調とは言いがたかった。
新たなスキルである『神眼』になれて、使いこなせるようにするために、移動中はずっと神眼の制御訓練をしていたからだ。
神眼のめまいプラス馬車の振動のダブルパンチは中々にこたえる。神眼を使いこなすために耐久値にステータスを割り振れなかったのも大きい。
僕がぐったりし、ルナは寝不足で僕の肩にもたれかかって、うつらうつらとしていた。
おかげで、昨日仲良くなった同乗者の中年商人夫婦のマダムに「あらあら、二人して……昨晩は盛り上がって寝られなかったのかしら。若いって良いわねぇ、うらやましいわ」などと、冷やかされてしまうことに。
そしてその後マダムの熱い視線は旦那さんに向かっており……旦那さんはタジタジになっていた。明日の馬車では二人が、いやダンディな旦那さんがぐったりしているかもしれない。
神眼スキルで自分のステータスをじっと見ていると、ステータスの内容も文字で詳細に説明されることがわかった。
まずは一番気になる『神眼』を調べてみた。
【神眼】あらゆる情報(ステータス、アイテム、魔素など)を視覚情報として直接捉えることができる能力。世界の根幹であり、あらゆるものにあまねく宿ってもいる界理に記録された情報を直接読み取る力。魔力や生命力、歪みなども、光や色、情報として認識できる。
今の僕の目が見えるようになったのは、人間の目の仕組みで光を見ているのではなく、光のかわりに界理を見ているということなのかな? 摩訶不思議だが、嬉しい変化なので素直に受け入れよう。
界理って、なんだろうと思い、改めてルナにも聞いてみた。
「界理は界理ですよ? 自然界の石や草木にも、動物にも、私にもタクミ様の中にも存在しています。魔法やスキルを発動する力の源でもあります」
この世界独特の原子とか、謎エネルギーっぽい。どこかに大きな塊があったりするのだろうか? それとも『一は全、全は一』みたいな感じなのだろうか?
続いて整合スキルを調べてみる。
【整合】物理的・魔力的・精神的な構造そのものに存在する「歪みと界理」を感知し、それをステータスボードを通じて「整え」、本来あるべき清らかな界理の状態へと「統合」する能力。
整合スキルは、ステータスボードをいじって改善するっていう認識で良いのかな? じゃあ整合師はどうなんだろう?
【整合師】徳本巧固有のユニーク職業。世界の「歪み」を感知し、「調和」へと整える能力をもつ。世界の根源である界理に作用する。
うーん、わかったような、わからないような……
続いて各種パラメーターも見てみた。
僕はゲーム知識がないので、こういうことには疎い。それでも僕の整合スキルは、このステータスボードというものを使いこなすのが最大の特徴のようなので、今のうちにしっかりと調べておかないとね。
【筋力】物理的な力強さ。物理攻撃の威力、持ち運べる重量、力仕事の効率に影響。
【耐久】身体の頑丈さや生命活動の持続力。物理防御力、負傷からの回復速度、長時間の肉体的活動に対する持続性、物理的な状態異常への抵抗力に影響。
【敏捷】身体全体の動きの速さや、瞬間的な反応速度。主な効果は、移動速度、そして素早い身のこなしによる物理攻撃・防御での回避・命中に影響。
【器用】手先などの精密さや身体各部の協調性。物理攻撃の命中率と回避率(特に精密な動きを要する場合)、生産活動の成功率や品質、罠の解除、繊細な作業の精度に影響。魔法の複雑な印を結ぶ際の精密な制御にも副次的に影響。
【知覚】五感の鋭さと、それに伴う環境や現象の洞察力。 素材の品質見極め、隠されたアイテムや罠の発見、敵の弱点を見抜く、周囲の状況を詳細に把握するといった情報収集能力に影響。物理戦闘における敵の動きの予測や、魔法の兆候(魔素の流れや詠唱の微細な変化など)の察知にも影響。
【知力】知識の習得、論理的思考、そして世界の根源たる界理の法則を理解し、応用する能力。 魔法の「威力」と「複雑さ」に直結し、魔法攻撃力、魔法の習得速度、一部の知識系スキルに影響。
【精神】精神力や意志の強さ、そして魔法や魔素の運用における制御機能。魔素の最大許容量、魔素の回復速度、魔法防御力、精神系の状態異常耐性、一部の精神系スキルに影響。魔法の「制御」「安定性」「純粋さ」に直結。
【運】様々な偶然の要素に影響。クリティカル攻撃の発生率、アイテムドロップ率、罠の回避、予期せぬ幸運などに影響。
【歪み耐性】世界に遍在する「歪み」や、ダンジョン、モンスターから放出される「歪みエネルギー」に対する抵抗力。精神汚染、肉体的な変質、奇病、呪いといった「歪み」に起因する悪影響を受けにくくする。
知力と、精神の説明が少し分かりづらかったけど、昨日聞いたルナの説明と合わせると、知力は魔法の「設計図」、精神は「エンジンと制御装置」という感じなのかな?
どのみち魔法を使えない僕にとっては、神眼を運用するためのステータスでしかないようだ。
こうしてステータス値というのを落ち着いて見てみると、『歪み耐性』っていうのだけが、なんだか特別感あるよね。
「ルナ、歪み耐性ってなんなの?」
「歪み耐性はこの世界で生きていくのに不可欠のものです。不幸にも幼児期までに歪み耐性が身に付かなかった者は、残念ながら長生きできません。
それとダンジョンに潜る場合は、深層に行くほど強力な歪みが発生しているので、それ相応の耐性を獲得していないと、どれだけの強者であろうと強力な歪みに汚染されて死んでしまいます」
なんとも恐ろしい話だよ。あの王様が歪みをこの世界から無くしたいと言っていることだけは理解できるかな。
【職業熟練度】その職業固有の活動における専門的な知識、技術、経験の深さを示す。職業活動の習熟度に応じて上昇し、固有スキルや能力の強化に繋がる。非戦闘系の職能はモンスター討伐では上昇しない。
【職業スキル】現在の職業に紐づく能力。職業レベルに応じて強化・習得される。
この二つは説明そのままみたいだね。
あっ、スキル欄に『移動支援』があった。そういえばこれがなんなのか、良くわからなかったんだよね。色々なことが一気に起こりすぎて、オフにしたまま忘れてしまっていたよ……
【移動支援】広大な異世界で迷子にならないための支援機能。応用すればマッピングに利用可能。
迷子にならないためのって言われても、どう使えばいいのか、これでは結局良くわからないよ。
疑問に思いながら更にスキル名を凝視していると、新たな文言が浮かび上がってきた。
(異世界召喚の儀式により、召喚者の魂に紐付けられている。対応する受信機を使えば、位置情報がどこにいても把握可能。ただし、ダンジョン内では歪みにより界理の乱れが大きいため、同一階層しか受信できない)
これって……GPSの発信機みたいなものなんじゃ!?




