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中3の夏休み
お盆真っ只中
夏休みに入ってから、2人で会うのは久しぶりだ
休みに入ってすぐ吉は夏期講習に通う事になり、なかなか遊ぶ事ができなかった
「どこいくー?」
「学校行かへん?屋上とか絶対気持ちいいで
今日曇りやしそんな暑ないし」
「ほやけど、今お盆やで開いてへんやろ」
「忍び込めばええやん、旧校舎の階段やったら入れるって」
「まじ?行く?笑」
「行こ行こ笑」
こんなノリで今日も俺たちは自転車を走らせる
お盆中の学校は部活も無く
グラウンドにも、職員室にも誰もいない
旧校舎の外階段から屋上に続く梯子を登る
(何度も登った事があるので慣れている)
屋上に上がると湿気を纏った潮風がムワッと
吹き付ける
「あー、巻貝の中身の匂いがするーーー」
「やめろ、潮風って言え笑」
「全然涼しくないけど、気持ちいいなーーー」
2人で空を見上げた。
雲に覆われた空はどんよりと暗い
俺は、空が近い様に思えて手を伸ばした
「夏休み前にさ、俺、担任に呼び出されて」
「え?吉が?何でなん、成績いいやん」
「話があるって言われて、ついてったら
宿直室やって」
「はぁ?宿直室って先生が寝泊まりする
畳の部屋やろ?何で?」
「知らんけど、、
最近1人でいる事多いけど、何か悩みでもあるんか?って言われて」
「ほんで??」
「マッサージされた」
「きっっっっも!!!きっっっっつ!!
えーー!!何それ!こわ!!」
「そやろ?俺走って逃げたもん」
吉の担任は3年時に赴任してきた新しい先生で、割と若い
ちょっと馴れ馴れしくて、仲良くなる生徒と
そうでない生徒に別れる
俺は別に何とも思わないけど(接点ないし)
吉は苦手だと言っていた
「ほんで、こないだ
担任から電話かかってきてさ」
「え!!」
「勉強みたるから、今から学校おいで
って言われて
気持ち悪すぎて、そのまま切った。」
「やばーー!
ただの親切?狙われてるって事?
てか何で番号知ってんの?!こわー!!」
「知らんけど、、怖すぎひん?」
「いや、怖すぎ怖すぎ!!ムリすぎ!」
やんなーー
と言った吉は
屋上の柵から身を乗り出し下を覗きこむ
「もう、大人全員気持ち悪い
親もうるさいし
何でもいいからほっといてくれへんかな笑」
吉は最近1人になりたがる
教室では自席に座って
ただ、ぼんやりと窓の外を見てる事が多い
俺が遊びに誘っても来ない事が多くなった
塾が増えて、一緒に帰る事もなくなっていた
「あ!」
柵から身を乗り出していた
吉は海の方を指差した
「利輝、見て!!」
指差した方を見てみると
瀬名が泳いでいた
「瀬名やん
あいつほんまに海好きやな笑」
2人は柵にもたれて
瀬名が泳いでるのを見ていると
女の子が瀬名に近づいてきた
その後、楽しそうに手を繋ぎ泳ぎだした
あらら、瀬名ったらモテモテやん
と思いながら
女の子をよく見ると
茶弥だった。
2人は楽しそうに沖の方に泳いで行った
俺は何とも言えなくて、吉の方を見た
吉は薄っすら笑ってるだけで
感情は読み取れない
「コラーーー!!!」
下の方から声がする
「何?!」
下を見てみると、学校の周りを掃除していたらしい
用務員のジジイが箒を振りかざして
こちらに向かってくる
「めんどくせーーー!逃げよ!」
2人は急いで梯子を降りて
逃げようととするが
ジジイは既に屋上に続く外階段を登ってきていた
このままじゃ階段で鉢合わせだ
めちゃくちゃ急いだが
案の定、2階を降りようとした付近で
ジジイと鉢合わせてしまった
「お前らー!!何年生やーーー!!!
3年やったら内申に響くぞー!!」
「チッ、うるさ、どけ!!」
俺は横からすり抜けて逃げようとしたが
吉は腕を掴まれてしまった
「コラー!!職員室来んかー!!」
「離せ!!!」
吉は掴まれた腕を振り解き、ジジイを押した
痩せ型のジジイは簡単に後ろに飛んで
そのまま階段から落ちてしまった
ゴロゴロと体をあちこち打ち付けながら
下まで落ちていく
用務員のジジイは
最後、後頭部を強く打ち付け
そのまま動かなくなった
「え、、、」
2人の足は
固まって動かない
息をするのも忘れて、無言で
ジジイを見ていると
ジジイの後頭部からじわじわと血が流れ出てきて、水溜りを作った
これって、、、
まじでやばいやつじゃ、、、
「き、吉、」
隣の吉を見ると、真っ青な顔をしている
「と、とりあえず、見に行こう」
俺が言い
2人でジジイの側に行った
血は止まる事なく並々と更に水溜りを広げていた
頭をぶつけた衝撃で
眼球が少し飛び出している
「………」
そのまま、動けず
2人は黙ったまま
じっとジジイを見て
どうすればいいか、頭をフル回転させていた
10分くらいたった頃、ポツポツと雨が降り出した
雨は次第に強くなり
俺も吉も、ジジイもそのまま濡れた
血はキレイに洗い流されてゆく
俺は、ゆっくりと排水溝まで流れていく
赤い血を見た
「吉、背負って」
「え…」
吉の背はこの夏グングン伸びて
今は170ちょいあるだろう
俺はといえば、今160ちょいくらいで
まだまだ伸びしろあると思う
吉は背が高く肩幅も広いし
小柄なジジイを背負うくらい楽に出来るだろう
「隠そう」
「…わかった」




