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海辺の町  作者: 八朔
12/12

12



あの日から、1週間後

吉からラインが来た




「俺、やっぱり利輝とおりたい」





俺はすぐに電話して

今夜、出発する事に決めた




荷物は最小限

建築士の資格の本は置いていく



吉がおれば何もいらん






ふと、自分の右手を見ると

吉を殴った時についた傷が残っていた



俺は目を瞑って

その拳で自分の顔を殴った







その夜

吉の家の近くの空き地で待ち合わせた




「おす」


「おー、行くか」


「吉荷物多くね?笑」


「いや、利輝が少なすぎ笑


あ、待って、飲みもん買っていい?」




丁度、近くに自販機があったので吉は財布を出して水を買おうとした時



吉は利輝の異変に気づいた




「え!どうしたん!?それ!!」



自販機の光に照らされた

利輝の顔は瞼が腫れ上がっていて

口元から血が滲んでいた


さっきは暗くて気づかなかったけど





「吉、殴ってごめん」


よく見ると、利輝の右手の拳も赤く血が滲んでいた




「お前、あほやな笑」


「やかましわ、体張った謝罪を受け取らんかい」



2人は笑った



吉はリュックを開けてタオルを出して渡してくれた



「ありがとう…」



開いたリュックから見えた

輪ゴムでまとめてある錠剤のシートの束





吉の命はいつまで保つのだろう






「おし!ほんなら、とりあえず

大阪目指して行くぞ!」


「おーーー!」





一緒にいられるだけで、それでいい

本当に他に何もいらないって思う



俺の世界は

吉がいてくれたら

それだけで意味のあるものになる


吉がいると何をしても楽しくて嬉しい

特別なんだ



この先、ずっと吉と一緒におりたい。





自分勝手なのは分かってる

よくないのかも、って何度も考えた



それでも、俺と一緒にいて欲しい




それが俺の答え




「利輝!何か歌って!」



利輝は、うーーん、と少し考えてから 

大きく息を吸った





「僕たちを縛りつけて

1人ぼっちにさせようとした

すべての大人に感謝します!!!!」





漕ぎ出した自転車は想像よりずっと軽くて

2人は歌いながら真っ暗な道を行く





【終】

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